袁家から始まる中華統一   作:鈴木颯手

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裁判に関してはがばがばです。大目に見て欲しいです。


第五十五話「処罰」

「先ずは揚州の面々から始めようか」

 

 論功行賞を終えて捕縛した者達への軍事裁判が始まったがこれはある程度の出来レースとなっている。基本的に孫家以外の者達は処罰を考える時間が多く存在したために処遇をどうするかは既に決定してしまっているのだ。つまり、基本的に処遇を発表するだけであった。

 

「先ずは王朗。貴殿に関しては降伏するという意思を受け取っている。よって会稽群の引き渡し作業後、郡太守の地位をはく奪。県令に降格させる物とする。どこに赴任するかは後々に決定しよう」

「慈悲深き処遇に感謝します」

 

 敗軍の将である王朗はそれ以上語らずに頭を下げた。負けるとは思っていなかったところからの敗北は彼に対してかなりの衝撃を与えており、反抗する意思を削ぎ落していた。

 

「次に太史慈殿だが貴殿は我らに投降し、仕官したいという事で相違ないな?」

「勿論構わないよ。劉繇様には御恩があるけど既に亡くなっちゃってるし、勝った相手に仕えるのも悪くないと思ったしねー」

「その意思を尊重する。太史慈は周沙に預ける。将として使用するなり一武人として使用するなり好きに選ぶといい。望むのならば3千人将までの地位を用意しよう」

「了解しました」

 

 いきなりの3千人将にざわめきが起こるが太史慈の武名を考えればさもありなんと直ぐに鎮静化した。むしろその気になれば将軍位さえ与える事も可能だろう。

 そして、それ以外にも幾人かの将官たちの処遇が発表されたが基本的に処刑されたのは1割ほどであり、残り6割が仕官、3割が地位はく奪の上で追放という形となり、揚州に関する裁判は終了した。

 

「続いて劉琦」

「っ!」

 

 次に行われたのは荊州刺史である劉琦とその配下の裁判だった。名を呼ばれた劉琦はびくりと体を震わせた。捕縛されて以降衰弱している彼女は反董卓連合軍まで見せていた快活さを完全に失いまるで病人の如き姿となっていたがだからと言って板垣が容赦することはなかった。

 

「劉琦、貴様は刺史の地位をはく奪とする。そして本来は処刑、と言いたいところだが桂陽に住まいを用意した。不自由はないと思うが基本的に他者との接触を禁止とする」

「……はい」

 

 劉琦に与えられたのは軟禁という形での追放令に近い物であった。これにより劉琦は死ぬまで他者との接触が大幅に制限され、子孫を作り、残す事さえ出来なくなり劉表の一族の断絶を意味していた。

 

「続いて魏延に関してだが、もう一度聞くが仕官する気はないんだな?」

「んー! んー!」

 

 板垣は残念な者を見る目で魏延に訪ねるが当の本人は目を血走らせながら口枷をはめられた状態で掴みかかろうとしていた。四肢を拘束され、兵に押さえつけられていなければ板垣に襲い掛かっていただろう。

 そんな魏延の様子に板垣はため息をつく。かなりの武勇を誇る彼女を手に入れたい気持ちがあったがこれでは不可能だと板垣は処遇を発表した。

 

「魏延、お前は暫く牢につなぐ。農奴にするには惜しいがこのままではそうなるだろう」

「んーーーーー!!!!」

 

 この調子では農奴として野に放つのも無理だろうと板垣は思いつつ次に移った。

 

「続いて厳顔。貴殿は劉琦軍敗北後に残党をまとめ上げこちらに投降したことを重んじ、一切の罪に問う事はない。むしろ貴殿が望むのであれば県令か郡太守か、与える事は可能だが?」

 

 厳顔に関して板垣はあまり悪感情を持っていない。むしろ友の為に奮闘したのにそれが実らなかったことに対して同情すら感じていた。そのせいか厳顔は内乱時にあった時よりも若干老けたようにも感じられた。

 

「いや、儂は隠居しようと思うておる。今さら地位など不要じゃ」

「……そうか。ではそのように。後で屋敷を用意しましょう。流石にそれは受け取って欲しい」

 

 板垣は惜しいと思いつつも本人が望むように手配を約束した。そして、他の勢力に行かないように南陽近辺の屋敷を与える約束をした。本人にその気がなくともどんな気まぐれが起こるかわからない以上手元に置いておきたいと考えたのだ。

 その後も劉琦軍の将官たちの処遇は続くが裏切られたという思いがあるせいか、それ以降は厳しい処遇が続いた。金旋と王威は処刑とされ、裁判終了後即座に執行される事となった。他にも揚州の面々とは比べ物にならない程処刑される数が多く、全体の7割にも及んだ。残り3割も農奴か牢屋への収監という形となり、結局、厳顔以外で許されたものは存在しなかった。

 この判決は見ていた者達に対して衝撃を与える事となった。劉琦でこれならそれ以上の裏切り者と言える孫家はどれだけの事態になるのか。それが気になったが先ほどまでとは違い、板垣は少し悲し気な様子で発表する。

 

「続いて孫策」

「……」

 

 最後に孫家の面々の番となった。最初に呼ばれたのは当主である孫策であり、彼女はどんな処遇も受け入れる覚悟を決めていたが板垣から発せられた言葉に驚愕した。

 

「孫策は無罪とする」

「なっ!? なんで……!?」

「確かに孫家の当主であり、裏切り者として処刑するのが一番だろう」

 

 まさかの発表に南陽袁家の面々も驚くが板垣は淡々と続ける。

 

「だが、貴殿の軍師周瑜より助命嘆願があった。孫策は我らが唆したのであって罪はない。全ての罪は我らにあるとな。同様の嘆願を程普、黄蓋、張昭、更に孫権よりされている」

「っ! 冥琳!? それに蓮華まで……!」

 

 孫策は隣で縛られ、並べられた友と妹に驚愕の視線を向けるが二人は先ほどの孫策と同じように覚悟を決めた表情のまま黙っていた。

 

「本来なら受け入れる必要はないが孫策の武は惜しいと判断した。だが、揚州の面々と劉琦と違い、我らを裏切ったことに対して許される事ではない」

 

 そこまで言った板垣はぼそりと何かを零すようにつぶやいたがそれを聞き取れた者はいなかった。しかし、それを零した時に板垣の目に宿った失望と怒りの感情を見れば大体は察せられるだろう。

 

「故に孫策は()()()()()()()()()()()()。条件に付いては他の者達の処遇を発表してからとする」

 

 そういった板垣に対し、孫策は嫌な予感があふれてくる。きっと処刑されるよりもつらいことが待っていると感じるが今の孫策にはそれが発表されるのを黙って待つことしかできなかった。

 

「軍師である周瑜及び孫策の妹である孫権、他黄蓋、程普、張昭。これら孫家一族及び重臣を腰斬の刑とする」

 

 腰斬の刑。これは古代から続く刑罰の一種であり、のこぎり等で腰を切断し、ゆっくりと殺す処刑方法である。即死せずに生きている間は激痛でもだえ苦しむこととなるために重罪人相手に使用される刑罰であった。そして、この刑罰を聞いた孫策は嫌な予感が高まったことに気づく。

 

「そして、孫策。刑はお前が執行せよ」

「……ぇ」

「刑の執行を以て孫策を無罪とする」

 

 冷たいとすら感じる板垣の言葉は孫策を呆然とさせるには十分だった。

 無罪となりたいのなら友と妹、そして長年支えてくれた重臣たちを自らの手で殺せ。板垣はそう言っているのだ。

 

「他の面々は農奴や牢への収監とする。孫策、お前に拒否権はない。貴様が決めた裏切りは貴様の手で決着をつけてもらう」

「……ぁ、あ。ぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「これにて裁判は終了とする。そして広場にて罪人の処刑を開始する。閲覧は自由とするが執行の邪魔をする場合は罰を受ける事になる。気を付けるように」

 

 未だ現実を受け入れられない孫策を置いて板垣は集まった者達に解散令を出した。次々と部屋を退出していく中で、板垣はそっと孫策に近づくと呟いた。

 

「死ねると思ったか?

安心しろ。殺しはしない。

はっきり言って独立は予想できていたがあのタイミングは予想外だった。

あれには俺も怒りを覚えたものさ。

だから殺さない。殺してしまえば痛みは一瞬だ。

お前には自らの選択の後悔と友と、妹と重臣を自らの手で殺したという意識を背負って生きてもらう。

それがお前に与える罪だ」

「……」

 

 板垣はそういうと孫策の元を離れ、部屋を後にした。孫策は体の奥底で何かが砕け散るのを自覚しながら兵に連れられて広場へと歩いていくのだった。

 




孫家、実は初期段階では孫策と板垣が一騎打ちをして勝った方が負けた方に勢力事仕えるという話にする予定でした。そして孫策が負けるも孫策と板垣が恋仲になり、孫家の勢力を取り込んだ南陽袁家が勢力を拡大していくはずでした。
反董卓連合軍時にエタった際にその設定を忘れた結果こんなことに……。
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