彼岸花が如く   作:お湯を切る!

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試験勉強とか色々あって投稿遅れました。また、文章力が前話と比べて著しく落ちています。それでも言い方はどうぞ。


Sweetness sought again

「また来ちゃったよ…」

 

俺が錦木からお礼として喫茶リコリコに案内されてから数日後、俺は再びその喫茶店へと足を運んでいた。

 

 外観と言い、店の雰囲気と言い、全てストライクゾーンど真ん中なこの店を俺は相当気に入った。その副作用か大学の帰り道に禁断症状の如く、突然ここの珈琲や和菓子を食べたい衝動に襲われ、今に至るのだ。

 

 さて…錦木やミカさんは居るだろうか? 柄にも無く期待しながらリコリコの扉を開いてみる。するとーーー

 

「この前のイケメンッ!捕獲ー!」

 

 アレ?なんかデジャブ。

 

飛び掛かって来る眼鏡の女性店員を俺は身を翻して避ける、しかし避けられても尚相手は再び飛び掛かって来た。

 

「おおうっ!」

 

 今度は屈む様にして女性を回避する。うん、アカンわ。何か事情は知らんけどこの女アカンわ。何と言うか、眼力からしてヤバい、マジのバーサーカーじゃん。逃がすまじと執念じみた一種の殺意を向けられている気分だし、明らかにこの人は異常だ。

 

「イケメン!身長良し! 体格良し!」

 

「いやー! たーすーけーてー!」

 

 店の中を小学生の鬼ごっこの様にグルグルと回りながら、俺は逃げる。どうやらこの時間帯は暇らしく、客が俺しか居ないのが不幸中の幸いだろう。

 

 しかし、何時になったら追いかけるのを辞めるんだ? この店員結構息切れしているけど、眼光がさらにヤバくなっているのは気のせいだろうか?

 

「おい、ミズキ。それくらいにしといてやれ。」

 

「ハァ…ハァ…チッ、ここまでか。」

 

 するとミカさんが店の奥から出て来て、絶賛俺と鬼ごっこ中の店員さんを宥める。すると女性の店員さんも頭の血がダウンしたのか息切れしつつも俺を追いかけるのを辞める。どうやらミカさんが店長と言う立場は弁えているらしい。

 

「ミカさん、お邪魔しています。また来ちゃいました。」

 

「フフッ。ああ、よく来たな。ゆっくりしていってくれ。」

 

俺は女性店員を止めてくれたミカさんに感謝しつつ、以前座った所と同じカウンター席へと腰掛ける。

 

「あはは…元気の良い店員さんですね。…錦木は何処に?」

 

「ああ、アイツのシフトは午後からだ。そろそろ来るんじゃないか?」

 

「くそーっ! 結局あの子目当てかー!」

 

そう言いながら地団駄を踏むミズキと呼ばれた女性店員。一体この人は何にそんなに執着してるのだろうか。内心困惑しつつ、ミカさんにこの前頼んだ物と同じ珈琲と羊羮を注文する。そうか…錦木は今居ないのか…

 

近くのカウンター席に座り、物思いに耽る。今ここには年上の大人達しか居ない。こんな空間は既に慣れっこだと思っていたが、やはりおじさんが居ない事が影響しているのか、どうにも落ち着かない。

 

「お待ちどう。珈琲と羊羮だ。」

 

ミカさんから注文の品を貰う。羊羮を一口食べて、続けて珈琲を一口飲む。

 

旨い。

 

昨日食べた時も思ったが、ここの羊羮と珈琲は合わせて食べると絶品だ。だが、そんな甘味の中に俺はどこか物足りなさを感じていた。

 

味も良い、香りも良い、雰囲気も良い。だが妙にしっくり来ない。今日俺がこの店に来るのは2回目で、長く通っていた訳じゃない。だが何処か、最後のパズルのピースがどうにも嵌まらない様な違和感を感じ、気が付けば珈琲を飲む手を少しだけ休ませていた。

 

「それで? 名前は何て言うのよ。」

 

隣の椅子に座り、こちらに向き合いながら訊いてくミズキと呼ばれていた女性店員。俺は特に気兼ねする事なく自分の名を名乗る。

 

「桐生です。桐生一翔。」

 

「え? 桐生?」

 

「はい、珍しい名字ですかね?」

 

「いや…知り合いにも同じ苗字の人が居たから…ちょっとね…」

 

 先程のエキセントリックな態度から何処か罰が悪そうな様にするミズキさん。自分が福岡に居た時は「桐生」なんて苗字中々見なかったからな…でもそう考えると東京はやはり広いな…もしかしたら都内だけでも10人同じ「桐生」さんが発見されるとか有り得そう。一体東京には何人の「桐生」さんが居るのだろうか。

 

 そんな事を考えていると、どうにも口の中が寂しくなり、珈琲をもう一杯口に運ぶ為に、もう一度ティーカップに手を伸ばす。だがその瞬間、背後の扉が勢い良く開かれ、活気の良い声がホール内に響いた。

 

「お待たせ―! 千束が来ましたー!」

 

そこに居たのは数日前に初めて会った時と同じ赤い服を着た白髪の少女、錦木千束。悪質なナンパをされていた所、俺が助けた女の子だ。

 

「おお!カズト君!来ていたんだー!」

 

 だが彼女がこの店に来た瞬間、最後のパズルのピースがハマったように、自分が今日この店の雰囲気に何処か物足りなさを感じていた理由が明らかになり。不足していた要素が埋まったような気がした。

 

「ああ、何か此処の雰囲気と珈琲の味が癖になっちゃって…」

 

「本当ー!いやー、また来てくれて嬉しいよ!」

 

 ぱあっと花が咲くように明るく笑顔を浮かべる千束。だが勿論此処の雰囲気やコーヒーの事を自分は気に入ってる。だがそれ以上に此処でしか知る事が出来ないものが有る。それは他でもない錦木千束、彼女その者だ。

 

 正直俺はこの店に来たのは2回目で、昨日今日で店の事について詳しく解ったつもりは無い。だが、数日前に感じたあの癖になる心地よさは他ならぬ彼女の者であると、俺は直感していた。

 

 錦木千束―――彼女こそ本物の看板娘と言う物なのだろうな…

 

 コーヒーをもう一杯口に運ぶ俺、砂糖とミルクをたっぷり入れたそれと、彼女の明るい立ち振る舞いは何処か絶妙にマッチし、改めて自分がこの店に求めていた事が彼女だという事を改めて実感したのだった。

 

 

 

「今日も来てくれてありがとー! またよろしくねー!」

 

 そして珈琲も空になり、羊羹も食い終わった後。会計後ろで腕をブンブン振り、千束は俺を見送ってくれる。

 

 喫茶リコリコ…来たのは2回目だけど、珈琲の味と言い、彼女の存在が有って初めてマッチする静けさの中の明るさと言い、正直癖になってしまった。…これではかなり出費が嵩みそうだ。やはりバイトするべきだろうか。

 

 これから金使いが荒くなるであろう自分に苦笑しつつ、喫茶店から家までの道を歩く。すると――――

 

 「おい!そこのお前!」

 

 数人程の柄の悪そうな男達が俺の正面に立ち塞がり、通せんぼする要領で道を阻んできた。

 

「…邪魔だ、そこを退け。」

 

「退くかよクソが。おい、お前。俺の顔忘れたとは言わせねぇぞ。」

 

道を塞いでいた男達の中央で、顔に湿布を張っている男がそう吠える。そうだった…確かコイツは俺が千束を助けた時に殴り飛ばした奴だ。周りをよく見て見れば俺に蹴り飛ばされた奴、土下座して謝っていた奴も居る。

 

「この前の落し前、付けて貰おうか。」

 

するとぞろぞろと人が集まってくる。最初に居た奴らを合わせると、合計で10人程か。

 

「いいよ、相手してあげる。‥‥来い!」

 

「…フン、この人数相手にイキりやがって…オイ! やっちまえ!」

 

数日前に俺が殴った男が号令を掛けると、一斉にその場に居た男達がこちらに駆け寄り襲い掛かってくる。

 

成る程…確かにこの戦い方でこの人数を相手にするのは少し分が悪いな…

 

俺はいつもの喧嘩の際にとる構えではなく、太極拳の様な構えを取ると、まずは飛び掛かって来た3人を一人をカウンターの要領で回し蹴り、二人目をその勢いを利用して後ろ回し蹴りで吹き飛ばし、3人目は着地と同時に腹へ掌底を放ち、衝撃を浸透させて内部から人体を破壊する。

 

残り7人

 

続けて3人ほど固まっている男たちへ飛び掛かり、三角跳びの要領で頭を蹴り飛ばして、倒す。

 

残り4人

次に俺はサマーソルトキックを一人の男に放ち、間髪入れずに空中に打ち上げると、横回転して足の裏で相手の腹を蹴り飛ばし、ビリヤードの様に奥にいるもう一人の男にそれをぶつける。

 

残り2人

 

「くそったれがぁ!」

 

自棄になって突っ込んで来る一人の男、だが無駄だ。

 

俺は男が攻撃して来る瞬間、一瞬だけ生じる隙を付き、腹部に鉄拳を捩じ込む。古牧流三大奥義の一つ『古牧流虎落とし』その威力は強力無比で、男をたちまち数十m吹き飛ばし、完全にノックアウトした。

 

残り1人

 

「あ、あの…待ってくれ! これは違うんだ! その…そこで伸びている奴に脅されて…好きでこんな事をしたんじゃない!」

 

 大量の汗を額に浮かべながら、最後の一人は必死に弁明しようとする。…よく見たらコイツ、この前土下座して俺に見逃してもらった奴じゃん。

 

抵抗する素振りの無い奴を殴る趣味は俺には無い。でも二度目となると話しは別だ。気は進まないけど、コイツには少し痛い思いをして貰おう。

 

「頼む! 見逃してくれ! たの―――っ!」

 

 瞬間俺は男の胸倉を掴み、鳩尾にボディブローを決める。

 

「ぐぼばぁ!」

 

吹き飛ばす打ち方ではなく、衝撃を体内に留めて相手を痛めつける打ち方。男はたまらず、吐瀉物を撒き散らしながら蹲る。だがこのまま痛がっていても仕方ない。俺は男の神を掴み、此方をを無理矢理向かせる。

 

「次はこんな物じゃ済まないぞ…失せろ! 二度とその面見せるな。いいな!」

 

「は、はいぃ…」

 

半ば放り投げる様に男の頭を離すと、そのまま背を向けて俺はその場を去る。まったく…このご時世、何がきっかけで恨みを買うか解らない…人が多い街は怖いな…

 

 

その後、チンピラを無事ぶっ飛ばした俺は電車に揺られ、駅から歩いてすぐ近くのマンションに着くと、足を止める。

 

 都内に有る一人暮らしするには少し大き目なマンション。ここが上京してから住んでいる俺の家だ。

 

 「あれ?」

 

 扉の鍵を開けようと、ドアノブに手を掛けるが、そこで俺はある事に気付く。

 

 「電気が付いている…?」

 

 窓から電気が付いており、中から人の気配がする。これは誰かが俺の部屋の鍵を使い、家に入り込んだ事を意味していた。誰だ? まぁ大方検討はついてるが…内心呆れつつも、ドアノブを捻り、扉を開く。

 

「お、お帰りー! 一翔君。」

 

そこに居たのは予想通りの人物だった。服装はワインレッドに白ストライプのジャケットに黒のシャツやスラックスをラフに着用し、小物としてきらびやかさが際立つ金のコインネックレスとなど所謂ちょいワルと呼べる風貌。

 

隣町で『スカイファイナンス』と言う消費者金融の社長であり、このマンションのオーナー。秋山駿だった。

 

 




最初のキャラは真島の兄さんにしようと思ったけど、「兄さんと会うなら町中かな」と思ったので、一番有り得そうな設定を付け足して秋山さんにしました。

近い内にサブストーリー的な番外編も投稿しようと思っているので、ご期待ください。

ご感想お待ちしております。




街の代理人

やって欲しいオマージュの元ネタは?

  • 爆弾の時間が迫る中、桐生と薫がキス(2)
  • 真島が狂犬として覚醒する(0)
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