逃亡海兵のルフィとウタ 短編集   作:Nines star

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逃亡海兵ストロングワールド⑥

第五話 宣言

 

 

 

 

 

 海の上をメルヴィユが往く。

 大海賊“金獅子”の野望を乗せ、船と呼ぶにはあまりにも巨大なそれは往くのだ。

 

「お爺さま。海賊船の船長たちが揃いました」

 

 司令室に座るシキヘ彼の孫娘であるイルが告げる。そうか、とシキは笑みを浮かべた。

 

「では予定通りのデモンストレーションだ。イル、“歌姫”にも見せておいてやれ。おれの仲間になるんだ。秘密はねェほうがいい」

「わかりました」

 

 スカートの裾を掴み、一礼。その女性が映像電伝虫を手に部屋を出て行く。

 その背を見送ると、シキは近くにいるDrインディゴともう一人、白衣を着た壮年の男へと声をかけた。

 

「計画を開始しろ」

「了解です!」

「フランケン部隊を動かせばいいんだな、旦那」

 

 頷くインディゴ。そしてもう一人──“墓荒らしのレムナント”が確認するようにシキに問う。元政府の科学者であったがそのあまりにも倫理観が欠落した研究故に追放され、シキに拾われた人物だ。

 彼の言う『フランケン』とは死体を改造し、機械化して作られたサイボーグ兵器だ。そこに意思はなく、彼の命令通りに動く文字通りの操り人形である。

 政府に隠れて行った数々の墓荒らし、他国の研究の情報を得るための情報漏洩、挙句自身の研究のために最高機密たるペガパンクの研究データまで持ち出そうとしたため政府に追われることとなり、賞金首となったレムナント。

 抱える情報故に懸賞金は高いが、個人としての戦闘能力は然程ではない。ただ、インディゴと共にこの島の生物の研究を行ったり、文字通り使い捨ての便利なフランケン部隊などシキとしては非常に重宝する人物である。

 

「ああ。おめェのフランケン部隊ならダフトグリーンの影響を受けねェ。あの樹の毒は厄介だからな」

 

 大量に吸い込むと体の一部に痣が現れ、そこが徐々に硬直化していきやがては死に至る病……『ダフト』。元々が死体であり、そもそもサイボーグであるフランケン部隊であれば呼吸をしないため影響が少ない。たとえ吸い込んだとしても所詮は死体だ。使い捨てにできる。

 

「あの樹の対策は、結局対処療法だけですからねぇ」

「ガスマスクを着けるか、それでもかかっちまったら“IQ”から作った薬で治すか。強力過ぎるってのも厄介だよなぁ。ガスマスクも結局、絶対ではないし」

 

 肩を竦める科学者二人。科学者であるからこそ、この二人はあの樹の持つ力の危険性とそれに対処する難しさを知っている。

 だが、シキはそれを笑って流す。

 

「構わねェさ。その強さのおかげでここにおれたちが作った怪物共も近付かねェんだ。それで十分と言っても良い。あの樹の毒で毒ガスを作るより、怪物共を放つ方が万倍効果がある。それは東の海で実証済みだ」

 

 ニュースにもなっている東の海の街の壊滅事件。あれは実験であると共にデモンストレーションだ。事実、アレを見た海賊たちが彼の下に集まっている。

 

「毒といやァ、シーザーの野郎は元気かねぇ」

 

 準備をしながら、レムナントがぼやくように言う。シーザー、とインディゴが問うとレムナントが頷いた。

 

「まず、おれは自分をクズだと自覚してるんだが」

「まあクズだな」

「正面から言われると傷つく……」

 

 インディゴに言われ、シクシクと泣き真似をするレムナント。彼はすぐに立ち直ると、まあ、と言葉を紡いだ。

 

「元はおれと同じで政府の研究者だったんだよ。あいつは自分をクズだと自覚してねぇ上におれ以上のクズだった」

「それはもう人としてどうなんだ? お前以上となると相当だろう」

 

 シキに言われ、傷ついたフリをするレムナント。話が進まねェ、とシキに言われた彼は言葉を続けた。

 

「クズだが、無茶苦茶優秀だった。特に毒関連についてはもう天才だ。あいつならダフトグリーンの対策も考えれたかもな」

「へぇ……」

「インディゴの旦那も凄いと思うぜ? “IQ”の研究と、“S.I.Q”の開発はあんたじゃなきゃ無理だ。ただ毒に関しては、あいつの方が上だと思う」

 

 どうしてんのかねぇ、とぼやくレムナント。まあどうせクズなりにやってんだろうけど、と彼が言うとシキが笑った。

 

「ジハハハハ! そこまで言うクズってのも興味がある。探してみるか? そいつがおれの下に付くような野郎なら、勧誘するが」

「わかりやすいクズだから、金さえ渡せば旦那の下にはつくと思うぜ」

「そいつはいいな。ついでに探そう。……まあ、それよりも先にこれだ。おい、船長共への映像中継準備は?」

「終わっております! いつでもいけます!」

 

 よし、とシキは頷く。

 

「結束を強めるためだ。派手に行こうじゃねェか!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 シキの旗下に入りたいとしてこの地に来た海賊たちは、雪の降る外に集められていた。全員がドレスコードを守るとしてスーツを纏っており、待っている。

 五千を超え、下手をすれば万に届くのではないかという海賊たち。その彼らは、巨大な電伝虫が画面に映そうとする映像を待っている。

 

「寒い中ご苦労だ海賊共! お前らがシキ親分の盃を受けに来たのはよーくわかってる!」

 

 その巨大な電伝虫の傍らで、一人の海賊が声を上げていた。その男の姿に、周囲の海賊たちが声を顰めて言葉を交わす。

 

「おい、あいつ……“蹴撃のドリーマー”か?」

「おいおい、“新世界”の大物じゃねぇか」

「あんな奴までシキは傘下にしてんのか」

 

 懸賞金も三億を超える男、ドリーマー。彼もまたシキが“七武海”を模して組織した“七宝剣”の一角である。

 既に“七宝剣”はシキと盃を交わしており、今いる海賊たちとは別格の扱いを受けていた。とはいえ、彼らの悪名と実力は同業者である海賊こそ一番よく知っている。故に、むしろ彼らが味方であるということは歓迎する要素しかない。

 

「シキ親分の盃を受けることについて、条件は一つ。“裏切らない”、ただこれだけだ。裏切りは即座に粛清される」

 

 だが、とドリーマーは言葉を続ける。

 

「親分は慈悲深く、誠実な方だ。お前らは東の海を滅ぼすという話を既に聞いているだろうが、こうも思っているはずだ。『その方法は?』とな」

 

 その言葉には、海賊たちも内心で同意した。東の海の街が壊滅するニュースは知っているが、具体的な話を知らない。

 

「おれにしてみれば、盃の後でいいと思うんだがな。ただ親分はお前たちに証拠を見せ、その後に受けるかどうかを決めればいいと仰った」

 

 そこで、映像が繋がる。丁度良い、とドリーマーが笑った。

 

「見るがいい海賊共! これが親分が語る東の海壊滅の根拠だ!」

 

 

 そこに映されていたのは、狂乱だった。

 この島に住む異常な生物たちの存在を、海賊たちは既に知っている。だが、彼らはあくまで遠目に見ただけだ。シキの居城が彼らの嫌うダフトグリーンに囲まれているため、怪物たちと彼らが直に触れ合うことはない。

 故に、それが初めてだった。怪物たちの脅威を直に見るのは。

 この島の原住民たちが住む村。それを、多くの怪物たちが蹂躙していく。

 

 

「凄ぇ! 怪物共が村を呑み込んでるぞ!」

「流石親分! やることが違うぜ!」

「これが東の海の街を壊滅させた原因か!」

 

 逃げ惑う原住民たちと、村を飲み込む勢いで破壊する怪物たちを見て海賊たちが大興奮の声を上げる。

 だが、しばらくその光景が映し出されていたのだが、突如その映像が途切れた。

 

「あん?」

 

 ドリーマーが眉を顰める。そして、近くの人間に声をかけた。

 

「おい、映像が切れたぞ。どういうことだ?」

「お、おそらく、映像を送っている“自走式映像電伝虫”が怪物に襲われたものと……」

 

 ドリーマーに凄まれた男が怯えながら言う。その言葉を聞き、ぷっ、とドリーマーは噴き出した。

 

「あっはっはっは! 聞いたかお前ら! 怪物共、勢い余って電伝虫を殺しちまったらしい! とんだハプニングだ!」

 

 ドリーマーのその言葉を受け、海賊たちからも笑い声が上がる。さて、とドリーマーが両手を広げて言う。

 

「最後はハプニングだが、それはしょうがねぇ。そして改めて聞くぞ、海賊共。親分の旗下に入るか?」

 

 大地を揺らすような大歓声が上がった。誰もが興奮した様子で叫んでいる。

 結構、とドリーマーが頷く。

 

「準備が整い次第、親分はお前らを呼ぶと言ってる。船長共は盃を受ける準備をし、その部下共は近くの部屋で待機してもらう。いいな?」

 

 おおっ、という応じる声が上がる。ドリーマーは頷くと、その場から離れて歩き出す。

 ただ、彼は誰にも見えないところで苛立ちを隠せない顔をしていた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 最初に捕らえられていた場所と同じ地下牢に、ウタは再び繋がれていた。

 イル、と名乗った少女はこの場所に映像電伝虫を持ち込み、彼女にその光景を見せたのだ。そう、彼女が数日であるが過ごした村に起きた惨劇を。

 映像が途切れ、何も映らなくなる。俯いた彼女に、イルが電伝虫を操作しながら言葉を紡いだ。

 

「おそらく、電伝虫が怪物に襲われたのでしょう。これ以上の映像はありませんが、あの村については……」

 

 最後は言葉を濁すイル。その彼女に、ウタが俯いたまま言葉を紡いだ。

 

「あれが、東の海の事件の真相ね」

「はい。その時には多くて三匹ですが、結果は見ての通りです。東の海のような軟弱な海の島であれば、例外なく滅ぼせると」

 

 ギリ、とウタは歯を食い縛る。

 

「あなたは、あなたたちは東の海に何の恨みがあるの!?」

「わかりません」

 

 怒鳴るようなウタの問いに、イルは首を左右に振る。

 

「これはお爺さまが二十年をかけた計画であるということしか、私は知りません。ただ、お爺さまが望むのであれば私はそれに従います。……これを」

 

 言うと、少女は黒いドレスを床に置いた。

 

「この後、お爺さまの旗下に入ることを希望する海賊たちと盃を交わすとのことです。その際、ウタ様も正装して参加するようにと」

「…………」

「従うべきです。あなたはそういう約束で、彼らを生かしたのですから」

 

 再び、歯を食いしばるウタ。

 悔しい。何もできない己が、こんなところで嘆くしかない己が。

 黙り込んでしまったウタ。そんな彼女に、イルは周囲に視線を彷徨わせた後、意を決したように言葉を紡いだ。

 

「ウタ様。実は、私はあなたのファンです」

「……そういえば、シキもそんなことを言ってたね。何、サインでも欲しい?」

 

 吐き捨てるように言うウタ。いえ、とイルは首を横に振った。

 

「あなたの歌が、私にとっての希望であり救いでした。それは事実です。地獄のような日々の中、時折聞こえてくるあなたの歌だけが、私にとって唯一の幸福でした」

 

 けれど、と。

 イルは言う。

 

「私を地獄から連れ出してくださったのは、お爺さまです」

 

 だから、あの人のために命を懸けると彼女は言う。

 

「私はあなたを傷つけたくありません。従ってください」

 

 ウタは、言葉を発しないという方法でしか抵抗ができなかった。

 かつて笑顔を周囲に振り撒き、多くを笑顔にしてきたその顔は。

 どうしようもないほどの悔しさに、染まっていた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 映像が途切れるトラブルはあったが、デモンストレーションが上手くいった。後は、最後の仕上げだ。

 

「イル、目的地は?」

「後一日と経たずに到着します」

 

 ウタを正装に着替えさせたと言ったイルは、シキの私室に訪れて報告を行っていた。新たな葉巻に火を点けながら、シキは問う。

 

「進路のことは、ちゃんと秘密にしてあるな?」

「はい。私を含め、司令室でも一部の者のみです。“七宝剣”も知りません」

 

 ならばいい、とシキは言った。そして、イルに外に出るように言う。

 

「少し、話す相手がいる。外で待機していろ」

「承知いたしました」

 

 スカートを両手でつまみ、一礼して出ていく孫娘。中々癖が抜けねェなァ、とぼやきながらシキは電伝虫を操作する。

 しばらく続く呼び出し音。シキが煙を揺らしながら待っていると、相手が出た。

 

『私だ』

「今回は直接出たか、センゴク」

 

 楽しそうに笑うシキ。何の用だ、と問うセンゴクに、シキが言葉を紡いだ。

 

「最後の警告だ。東の海をおれは滅ぼし、世界を支配する。降伏するなら今だぞ?」

 

 この電話はただの嫌がらせだ。センゴクやガープ、そしておつるには散々煮湯を飲まされた。その意趣返しである。

 だが、相手の反応は思うものとは違った。

 

『シキ。お前は我々を舐め過ぎだ』

「何だと?」

 

 先日の電話の時とは違い、センゴクの言葉には余裕がある。

 

「どういう意味だ?」

『東の海を滅ぼすと言ったな? 未だに偉大なる航路にいる貴様が、どうやってだ?』

 

 こいつ、とシキは思った。

 もしや、計画が漏れている?

 

『貴様が今いる場所から東の海の島へ行くには、その速度では最短でも十日はかかる。貴様の口振りからは、今にも滅ぼしに行くかのように聞こえるが』

「ほう。知ったように言うじゃねェか」

『知っているからな。貴様が二人の部隊を襲撃したあの日から、貴様らの居場所と移動速度については既に把握済みだ』

 

 ピクリ、とシキの額の血管が動いた。

 

『貴様の言う“情報”だ。あの部隊の海兵たちを、軟弱と呼んだようだな? はっきり言おう。彼らは勇気を持ち、正義を持つ海兵だ。我らの誇りである。彼らは彼らの任務を果たしてみせた』

「電伝虫の連絡は、一度しかなかったはずだが。その内容についても把握してる」

 

 あの時、ウタの居場所を把握した時に彼らは海軍本部へと連絡していた。その通信内容についても把握している。

 あの海兵たちはウタやCP9からの情報を海軍本部に伝えていた。そこでは狙いが東の海であること、ウタを自分が狙っていることしか伝わっていないはずだ。

 

『技術の進歩というのは我々老人には辛いな、シキ』

 

 小さな笑み。

 

『彼らはそのメルヴィユという島に着き、何度もこちらに連絡を取ろうとした』

 

 そうだ、シキもそれは知っている。それはウタが逃げ出した後もすぐには繋がらず、数日の時間を要した。

 まあ、繋がったからこそシキは場所を察知したわけだが。

 

『まだわからんか? 彼らはウタ准将の部隊に所属している。故に、広報部隊として通常任務中に使う子電伝虫とは別に広範囲へ連絡を取れる電伝虫を持っている』

「それがどうした? この島は遥か上空にある。特別な電伝虫であろうと、奴らが連絡を取れたのは一度だけのはずだ」

『電伝虫で伝えられる“情報”は、何も声だけではない』

 

 ふと、シキの頭にとある会話が浮かんだ。

 あの時、島に潜伏していた者たちが海軍へ連絡を取った時、司令室の技術員が言っていたのだ。

 

“おそらく、“自走式映像伝電虫”の発信を誤認しているようでして。成長し、電波が少し変わると登録外のものと認識してしまうんです。通話もないですし”

 

 その時、自分は融通が利かないと切り捨てた。

 だが、あれは誤作動ではなく。

 正しく、こちらの登録外の連絡だったというのか。

 

『彼らは島を移動する際、彼らの持つ電伝虫を各地に設置した。彼らはそこから通信ではなく、信号を送るよう設定した』

 

 ギリ、とシキの握り締めた手から音がする。

 

『彼らが集めた情報では、確かに貴様は東の海を標的としていた。だが貴様らの進路は、それとは全く違う方向へ進んでいる』

 

 言ってやろうか、とセンゴクは告げる。

 

 

 

『貴様の狙いは、このマリンフォードだ!!』

 

 

 

 シキは、即座に答えられなかった。

 二十年を掛けた計画。それをまさか、ここに来て。

 

『東の海の壊滅はブラフ! 東の海に戦力を向かわせ、手薄になったこのマリンフォードを攻め落とすことこそが貴様の計画だ!』

 

 シキは、一度大きく葉巻の煙を吸い込み、吐き出した。

 東の海の壊滅。そして、世界の海の支配。それがシキの目的であることは事実だ。だがこの計画を練る途中で、彼は一つの考えに至る。

 ──東の海を攻撃して、海軍と戦争になったとして。

 そうなれば、確実な勝利の保証はない。

 海軍という組織、世界政府という存在の強大さを知る彼だからこそ、正面から勝つことの難しさを知っていた。

 だから、策を練った。

 東の海に戦力を散らせ、カイドウの対応のため最高戦力を引き剥がし。

 そうして、手薄になった海軍本部を制圧する。そうなれば、後は混乱する海軍を潰しながら東の海を破壊し、その事実を持って世界政府に降伏を迫る。

 

(なるほど、確かに舐めてたかもしれねェなァ)

 

 思い出すのは、アルキディクスに制圧されたあの木端のような海兵たち。あいつらが情報を海軍に伝え、シキの計画を露見させたのだ。

 だが、とシキは思う。一度息を吐くと、彼の冷静な頭脳が回り始める。

 

「なるほどなァ……これは確かに、一本取られた。お前の言う海兵どもは、確かに任務を果たしたんだろう」

 

 だが、だからなんだ。

 シキは、電話の向こうの男を嘲笑う。

 

「カイドウの小僧を相手に、三大将全員が出払ったと聞いてるぞ? 確かに最大限の効果はなかったが、全くねェわけじゃァねェ。十分だ」

『ならば、貴様の言葉通りだな』

 

 覚悟のこもった声。幾度となく、聞いた声だ。

 あァ、とシキも頷く。

 

 ──全面戦争だ。

 

 それを最後に通話は切れた。受話器を置き、シキは椅子に深く沈み込む。

 一度、大きく深呼吸。そして、外にいる孫娘に声をかけた。

 

「イル! 計画変更を伝える!」

 

 慌てた様子で入ってくるイル。彼女に対し、シキが指示を出した。

 

「“七宝剣”をここに呼べ! その後、海賊どもと盃を交わす!」

「は、はい」

 

 その指示を聞き、いつもの礼をして出ていく孫娘。その姿を見送り、シキはふん、と鼻を鳴らした。

 

「結局、どこで戦うかの違いでしかねェ」

 

 それに、と彼は呟く。

 

「マリンフォードも気に食わねェ場所だ。今度はあの島を、おれの拠点にしてやる」

 

 そして、彼が集めた“七宝剣”が集まるまで。

 ずっと、彼は無言だった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 惨劇の村の中、一羽の鳥の声が響く。

 

「クオッ、クオッ、クオッ」

 

 その鳥は、進化の新たな形としてウタの前に出てきたアヒルのような姿をした黄色い体躯の鳥だった。

 

“お前ビリビリするから、ビリーな!”

 

 自分が興奮すると発してしまう電撃を受けて怯みもしなかった人間は、名前をくれた。

 

“人懐っこいですね”

“うん。でも、悪い気はしないよね。可愛いし”

 

 自分を一緒に連れ出すように言い、そして外へ出してくれた人間は、優しく自分を撫でてくれた。

 

「クオッ、クオッ……!」

 

 その瞳からは、涙が溢れている。

 惨劇の起こる村の中、ビリーは倒れ伏した人間たちを一人ずつ、建物の影に運んでいた。

 何もできなかった。

 自分を優しく撫でてくれた人間が、連れ去られるのに。

 名付けてくれた人間が、倒れ伏しているのに。

 

「クオッ……!」

 

 最後の一人、自分に名前をくれた人間を運び終えるビリー。しかしそこで、巨大な怪物と彼の目が合った。

 カブトムシのような、しかし、そのサイズはそれこそ軍艦並だ。

 

「クオッ!!」

 

 両の翼を広げ、立ち塞がるビリー。その体は震えていた。

 その怪物は、あまりにも矮小な存在を前に笑う。それでもと、ビリーが踏ん張った瞬間。

 

 

「ぬんッ!!」

 

 

 そんな裂帛の気合いと共に、轟音が響いた。

 怪物の脇腹。そこへ拳を叩き込んだ者がおり、しかもその怪物の体が文字通り村の外より更に遠くに一瞬で吹き飛ばされたことなど、ビリーにはわからなかった。

 あまりの衝撃にビリーの体さえもよろける。だが、気合いで堪えた。

 

「わしはこのままこの村の怪物共を全て殴り飛ばす。お前らは村民の救助を」

「了解しました、私はこちらの方へ」

「たしぎ、お前はその鳥とその後ろの連中につけ。おれはモモンガ中将の反対側に回る」

「はい、了解しました!」

 

 現れた人影は、四つ。

 そのうちの一つ、メガネをかけた人間が言う。

 

「私たちは味方です。後ろの人たちを、助けに来ました」

 

 

 戦争開始まで、後、わずか。







良くも悪くも、狡猾な海賊ですシキは。割とやりたい放題です。
ただセンゴクさんも負けてません。私が書くと何故か彼は格好良くなる。



盛られた設定。
“墓荒らしのレムナント”……自称、自覚のあるクズ。墓荒らしをしたり情報漏洩をしたりとやりたい放題をして追放され、更に賞金首になった。本人曰くシーザーよりマシらしい。どんぐりの背比べという説が有力。“七宝剣”の一角。懸賞金では幹部で一番低い。

“蹴撃のドリーマー”……蹴り技を得意とするチンピラ。ただその実力は確かであり、懸賞金も三億を超える“新世界”の海賊。どうにも、シキに思うところがある様子。
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