逃亡海兵のルフィとウタ 短編集   作:Nines star

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逃亡海兵Water Seven⑭

 

 

 

第八話 ままならぬ世界

 

 

 

 海軍は基本的に支部という形で加盟国の近隣に基地を設置している。これには多くの理由があり、例えば一国内に支部を設置するよりも複数の国を見ることのできる位置に支部を設置することで効率化を図るためなどといったものだ。

 無論、全てがそうであるというわけではない。例えばかつて“白猟のスモーカー”が身を置いていたローグタウンは偉大なる航路への玄関口であると共に“海賊王”を処刑した街という重要性から彼を筆頭とした戦力を常駐させていた。

 つまりケース・バイ・ケースではある。だが実際に見てみると、加盟国内に海軍が駐屯している国は非常に少ないのも事実だ。例えば加盟国の中でも非常に重要な位置にあるアラバスタ王国には海軍の戦力は駐屯していない。これは彼の国が“国王軍”という戦力を有していることと、何よりも加盟国としての主権を世界政府が尊重しているためだ。

 そう、尊重。相手を重んじ、尊ぶ。実に便利な言葉だと思うのはこの場で向かい合う海兵と市長の共通する認識だ。

 ままならないと思っているのもきっと同じ。だが、だからといって情で政治はできない。

 

「カリファ、人払いを」

「はい」

 

 アイスバーグが秘書のカリファへと告げると、すぐさま彼女が動き出した。アイスバーグは人望厚い人間だ。彼が表に出るとどうしても人が集まってくる。公開しながらできる話であるならばともかく、今からする話は余人に聞かせるべきではない。

 

「こっちへ来てくれ。あまり時間は取れないが」

「申し訳ありません」

 

 オリンが頭を下げ、イスカと共にアイスバーグへついて行く。そんな彼女たちの下へシャオがビリーと共に走り寄ってきた。

 

「お姉ちゃんどこいくの?」

「クオッ」

 

 一人と一羽。あのメルヴィユしか知らぬ身である彼女たちにとってこのウォーターセブンは珍しい物の宝庫なのだろう。その目は輝きっぱなしだ。

 そんなシャオの目線に合わせるようにしゃがみ込み、オリンは言葉を紡ぐ。

 

「ちょっとお話をね。もう少しだけ待っててくれる?」

「うん!」

「クオッ!」

 

 元気一杯の返答。そんな姿を見て、少しだけこちらも元気が出てきた気がする。

 

「私が見ておこう」

 

 そしてオリンに対してそんなことを言うのはイスカだ。ここに来る途中までは正義のコートを羽織っていなかった彼女はここに着いた時からそれを羽織っている。そんな彼女はシャオとビリーを軽く撫でながら言葉を紡いだ。

 

「私の任務はここに来るまでの護衛だ。特使としての任務はそちらのものであり、私の領分ではない」

 

 それに、とイスカは言った。どこか申し訳なさそうな色をその瞳に宿しながら。

 

「私がいない方が話せることもあるだろう?」

「……了解しました」

 

 気遣いと、押し付けるような形になってしまうことへの負い目。

 真面目な人だと思った。……だからこそ、こんな貧乏くじの立場である護衛任務を率先して引き受けてくれたのだろうが。

 

「こっちだ」

 

 シャオたちとの会話を待っていてくれたアイスバーグが区切りと見て声をかけてきた。彼が示す先にあるのは簡易なテントである。

 示されるままに中へ入る。中は見た目よりも広く、大きな机と幾つもの机が置かれていた。周囲に置かれた工具や机の上の設計図と思しき図面から推察するにここは簡易の詰所らしい。

 

「少々散らかっているが容赦してくれ」

「いえ」

 

 そして促されるままに着席する。大きな机を挟み、オリンとアイスバーグが向かい合う。

 

「──まず一つ目だ」

 

 空気が僅かに張り詰めた。ウォーターセブン市長にして“ガレーラ・カンパニー”社長。一つの都市の“王”たる存在がオリンを真正面から見据えている。

 

「言っていることは理解した。確かにこのウォーターセブンには明確な戦力が存在しねェ。あるとしても精々が警察程度だ。だからこそその穴を海軍が埋めるってのはまァ、筋が通っている」

 

 淡々とした口調。アイスバーグが述べたことは今回海軍が持ってきた案における建前上の理由だ。

 ウォーターセブンは世界政府御用達の造船会社を抱える都市であるが、その規模に対して防衛のための軍隊を有していない。だがそれは様々な理由があってのことであるし、少なくとも現在に至るまでそれで不都合が起こったことはない。

 

「だが、何故今だ?」

 

 故にこれは当然の疑問であった。そう、何故今なのか。

 

「タイミングなんざいくらでもあったはずだ。このウォーターセブンに海列車ができた時でもいい。経済が上向き始めた時でもいい。造船会社が合併し、“ガレーラ・カンパニー”ができた時でもいい。──世界政府が“ガレーラ・カンパニー”を指定業者とした時でもいい」

 

 このウォーターセブンが歩んだ道程、その全てに関わっていた男は言う。それをやるのであればタイミングなどいくらでも合ったはずだと。

 だが、世界政府も海軍もその全てをスルーしていた。その果てに今だ。どうしてもアイスバーグにはそこが引っかかっていた。

 

「タイミングは今しかないと……そう、判断しております」

 

 対し、気圧されながらもオリンはそう言葉を紡いだ。そんな彼女に対し、アイスバーグが眉を顰める。

 彼にしてみれば意図が掴めないことであろう。当たり前だ。これは世界政府にとっての都合がいいタイミングなのだから。

 

「今しかない……?」

 

 腕を組み、思考を始めるアイスバーグ。彼は聡明な政治家であり経営者だ。故に根本的な部分で見落としていることがある。

 政治家と経営者──或いは商人。彼らには一つの共通することがある。それは建前上であろうと表面上であろうと不公平であろうと、『Win-Winの関係』を前面に押し出して行動することだ。こちらが得をしてお前は損をしろというのは交渉を主な役目とする彼らが決して口にしてはならないことである。

 そして勘違いしやすいが、『Win-Winの関係』とは平等とイコールではない。どちらもが利益を得られるようにという考え方である以上、片方が10の利益を得てもう片方が1の利益であったとしても成立する。ビジネスとはそういうものだ。

 ただ、本当にそれが利益であるのかどうかを見極めることのできる目がないと後々悲惨なことになることも多いのだが……それは置いておこう。

 まあ、要するにだ。

 そういう世界で生きてきたアイスバーグという男にとって、今回の世界政府の考えを即座に読み取るのは難しかった。彼らの思考にあるのは自らの利益を第一とした思考であり、相手の利益に対する提案がないからである。

 

「……成程な。そういうことか」

 

 だが、やはりアイスバーグという男は優れた能力を持つ人物だ。思考を整理することでそこに到達したらしい。彼は呆れた調子で言葉を紡ぐ。

 

「世界政府がやらかしたことの後始末におれたちを巻き込むつもりか?」

「……これは双方にとって利益があることと考えています」

「表面上はな」

 

 ふう、と一度息を吐くアイスバーグ。胸元のティラノサウルスと名付けられたネズミが小さく鳴いた。

 

「ここがどういう都市であり、何を以て生計を立てているかはわかるか?」

「造船都市であり、観光都市。この辺りの経済の中心の一つです」

「そうだ。だがこの時代、客を選べるはずもねェ」

 

 相手がオリンという海兵であるからこそアイスバーグは直接的な話し方をしない。それは黙認されていることであるからだ。

 この問答についてはオリンも想定していた。故に澱みなく応じる。

 

「今後は海軍が駐留することにより、安全を保証できるものと考えております」

「……成程、それは助かる」

 

 このやり取りによって、その話題については終了した。どちらも直接的には触れられない話題だ。故に押し流すしかない。グレーはグレーのままに、である。

 数秒の沈黙。張り詰めた空気の中、アイスバーグが次の言葉を紡ぐ。

 

「──納得がいかねェのは、何故ここが選ばれたのかだ」

 

 意図はわかる、とアイスバーグが言葉を続ける。

 

「例の事件の影響でどこもかしこも不安定だ。ここでも一部で議論が起こっている。聞くところによれば、どこぞの国では反乱まで起こっているらしいな。なら頭を抑えるのはそちらからじゃねェのか?」

 

 アイスバーグは暗に『ウォーターセブンは問題ない』と言っている。確かにオリンが見てきたこの都市は活気があり、世間と比べると随分と安定しているように見える。ここで反乱の類など起きることはないだろう。

 だが、だからこそ選ばれたのだ。

 ここに何の問題もないからこそ。

 

「世界政府の決定です」

 

 彼女は軍人だ。故にこそこう答える。それはある種の拒絶であり、答えられないという回答だった。

 オリンはここが選ばれた理由について明確な答えを教えられていない。だが、その意図を察することはできる。そしてそれはきっと間違いではない。

 安定しているから選ばない──違う。

 安定しているからこそ、一定の成果を上げられる確信があるからこそ選ばれたのだ。

 

「…………そうか」

 

 やはりアイスバーグという男は頭が切れる。たった一言である程度を察したらしい。

 

「全く」

 

 それがどういう感情からの呟きなのか。

 オリンには、わからないままだった。

 

 

 

 

 

…………。

……………………。

………………………………。

 

 

 

 

 

 ──いずれにせよ、この場での回答はできない。

 それがアイスバーグの結論であった。当たり前だろう。事実上の“王”であるとはいえ、彼は市民から選ばれた代表だ。彼一人で決めていいこととそうでないことの線引きがある。

 

「カリファ」

「──こちらに」

 

 呼べば即座に現れる秘書。相変わらず優秀だと思うと同時、彼女に一枚の紙を渡す。

 

「これは……」

「読んでおいてくれ。それと緊急で議員たちの招集を。有力者も集まれるだけ集めてくれ」

 

 肩を回し、固まった筋肉をほぐしながら言うアイスバーグ。あのような張り詰めた対話は久し振りな気がする。

 

「しかしこの後にご予定が」

「悪いがキャンセルだ。今日の夜までに話を終わらせる必要がある」

「わかりました」

 

 何故、とかどうして、といったことは聞いてこない。実によくできた秘書だとアイスバーグは思う。有能な人材がいるというのはありがたいことだ。

 

「しかしアイスバーグさん、これは……」

「発表は明日らしい。報道される前に意思の統一を図る必要がある」

 

 厄介なのはここだとアイスバーグは思う。オリンがここへ到着し、アイスバーグと会談の場を持った段階であちら側は動き出している。要するに、最初からこれは既定路線であるということだ。実に手回しのいいことである。

 ここで明確な反対の意思でもぶつければ間違いなく厄介事になる。外堀は完全に埋められてしまっているのだ。ならば後は如何に有利な条件で受け入れるかに注力した方がいい。

 

「急いでくれ。だが慎重にな」

「勿論です」

 

 そしてすぐに動き出すカリファ。その背を見送り、アイスバーグは先程の海兵について思い浮かべた。陰がある印象であったが、それでも言い難いことをはっきりと言い切れるだけの度胸がある優秀な海兵だ。そしておそらく、あの手の人間はこういった腹芸は得意ではないだろう。正直、特使という任務に向いているとは思えなかった。

 だが、それでも海軍と世界政府は彼女を派遣することを決定した。その理由はおそらく彼女の持つ知名度故だろう。

 今や“堕ちた英雄”として世界の──否、“神”の敵となった二人。その元部下の一人であり、数多の戦いを最も近くで見続けてきた海兵のうちの一人。

 彼女が海兵のままでいるという、その事実を体外的にアピールする意味は大きい。故に彼女はここへ来たのだ。

 

(試金石になれと言われているおれたちと、下手をすれば内部からも外部からも批判を浴びる立場になりかねないあの海兵……どちらも貧乏くじだな)

 

 嫌なものだ、とアイスバーグは息を吐く。だが自分は市長なのだ。できることをやるしかない。

 覚悟を決め、歩き出すアイスバーグ。その中でふと気になったことがあった。

 あの海兵たちが来た時からずっとあった違和感。それは。

 

「……あの海兵」

 

 ──“正義”のコートを、着ていなかった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 派閥だとか、政治だとか。自分はそういうものが苦手だとイスカは思っている。

 海軍は巨大な組織だ。そして組織というのは巨大になればなるほどに様々な人間が集まり、そうした結果発生するのが組織の力学だ。個人でできることには限界があり、そして海軍という軍隊である以上部隊単位での行動が基本となる。そうなれば部隊を動かすだけの理由と筋というものが必要になるのだ。

 それを円滑に進めるためのものが派閥であり政治と言えるだろう。徹底的な現場主義である海軍だが、だからこそ実力と肩書き、実績が重要視される。無理を通すには地位が必要だと言ったのはどこの将官だっただろうか。

 その辺りのことがイスカは不得手だ。彼女の実績を考えると出世が遅いのはそれが理由だろう。

 

“どうにも真っ直ぐ過ぎる。もう少し搦め手というものを学んだ方がいい”

 

 世話になった恩師とも言える教官に久し振りに会った時、そんなことを言われたのを覚えている。だが無理だ。その搦め手というものを実践した結果起こった事件。あの事件で自分の“正義”が揺らぐことになってしまった。

 本当に……ままならない。

 

「……“正義”、か」

 

 話し合いが終わって出てきたオリンを遠目に見ながら、イスカはポツリと呟く。彼女は羽織っていた“正義”のコートを脱ぐと、丁寧に畳んで鞄の中へと仕舞い込んだ。このコートが随分重く感じるようになったのはいつからだろう。

 昔はもっと単純であったはずの言葉だ。それがいつの間にかとても難しいものになってしまったような気がする。

 イスカが海兵になった理由は彼女の過去だ。家族を、友を、日常を海賊によって奪われた。その時の全てを灰にしようとする燃え盛る炎の記憶は今も尚彼女を責め苛み、時折叫び出したくなるほどの衝撃として残り続けている。

 だが同時に、その記憶こそが彼女を立ち上がらせている原動力でもあるのだ。

 

 ──自分と同じような想いをする者が、これ以上生まれないように。

 ──悪い奴は全員捕まえてやる。

 

 それは若さ故の無鉄砲さと、しかしだからこそ純粋な夢であった。彼女の“正義”は正しく“義”によるものであったのだ。

 だがあの日。シャボンディ諸島でその“正義”が揺らぐ事件が起こる。

 全てを奪ったあの炎は──彼女の手を焼き、全てを奪ったその火は“正義”を背負う者が起こしたものであった。海賊という“悪”を討つために、その“正義”が全てを燃やし尽くしたのだ。

 叩きつけるような真実と現実。その最中、確かにあった芯が揺らぐ。

 誓い、掲げたもの。

 自分が海兵である理由。

 折れず、揺るがないと信じていたその始まりが……揺らいでしまった。

 

(ままならないな)

 

 内心で呟きながら、だがそれでもと思う。

 ──あの日、彼の手を取らなかった。

 差し伸べられた手。優しく、しかしどこまでも臆病なあの手をイスカは取らなかったのだ。

 どうしてなのだろう。

 わからない。ずっとわからないままだ。

 だから、きっと。

 

 その答えを得るために、イスカという海兵は戦っている。

 

「お待たせしました」

「お帰りなさい!」

「クオッ!」

 

 こちらへと歩み寄ると共に軽く頭を下げたオリンへ、シャオとビリーが元気よく応じる。この子達はいつも元気だな、と小さくイスカは笑った。

 そして彼女はオリンに対して敬礼をすると、言葉を紡いだ。

 

「任務だ。謝るようなことではない。……それで、結果は?」

「やはり結論はすぐに出すことはできないと。今日の夜10時に改めて会談します」

 

 敬礼を返しながらオリンが言う。その言葉を聞き、想定の通りだな、とイスカは頷いた。

 

「だが事実上決まったことだろう?」

「筋道は必要です。予定調和であろうと何であろうと、自分たちで決めたという形を取ることは重要ですから」

「……そういうものか?」

「そういうものです。……おそらく」

 

 微妙に自信がなさそうなオリンであるが、それでも彼女は自分よりもこういう政治的な部分には詳しい。例の二人のフォローのために身につけたという話だが、やはり正しく学ぶことは重要なのだろう。

 自分も学ぶべきなのだろうか──そんなことを思ったところで。

 

「────あっ」

 

 可愛らしい、どこか気の抜けた音が響いた。シャオが少し顔を赤くしてお腹を押さえている。

 

「そういえば、ちゃんとした食事はしていなかったな」

 

 そんな彼女に微笑みかけながらイスカは言う。ここに来る途中でこの三人と一羽はどこかの店で落ち着いて食事ということをしていなかった。見るもの全てが珍しいシャオにとってはどこかで落ち着いて食事をするより、食べ歩きをしながら街を見る方が良さそうであったからだ。

 だがその分動き回ったし、食べ歩きというのは意外と量を食べられない。育ち盛りの少女である。体が食事を要求しているのは頷けた。

 

「任務も一段落ついたし、何か食べよっか?」

「うん!」

 

 オリンの言葉に頷くシャオ。その直後。

 

 ────!

 

 壮大な腹の音が鳴り響いた。道行く通行人までもが思わずこちらへと視線を向けてくるほどだ。イスカやオリン、シャオもまたその音の主の方へと反射的に視線を向ける。

 シャオのそれとは比べ物にならない、腹に響く音であった。……いや、本当に腹の音か?

 

「クオッ……」

 

 どこか恥ずかしそうに鳴く音の主──ビリー。妙なところで恥じらいを持つのだな、とどうでもいいことをイスカは思う。

 

「ビリーもお腹空いた?」

「クオッ」

「私とおんなじだ」

 

 元気な一人と一羽である。仕方がない、とイスカも頷いた。

 だが、そこで彼女にしては珍しいミスをすることになる。

 

「では行こうか。何か食べたいものは──」

「──おっと」

 

 意識が完全に一人と一羽に向いていたからだろう。視線を向けないままに歩き出していた。横手に歩き出した彼女と、丁度道を歩いていたローブ姿の観光客と思しき二人組の片方がぶつかってしまう。

 とはいえ、掠めるような形だ。衝突したわけではない。

 

「すまない。不注意だった」

 

 慌てて謝罪をするイスカ。今のは完全にこちらが悪い。対し、相手は。

 

「いや気……に……」

 

 何故か言葉を途切れさせた。顔を上げるイスカ。飛び込んできた光景に彼女は目を見開く。

 

「……………………は?」

 

 

 ──それを偶然と呼ぶには、あまりにも。

 

 

「なんで」

「お前」

 

 

 あまりにも──悪戯が過ぎるのではないだろうか。

 

 

「エース!?」

「イスカ!?」

 

 

 数多の因縁が絡み合う二人。海兵と海賊という言葉では語り切れない縁を持つ二人。

 決して交わらない道を歩いていた。海兵と海賊、その存在は平行線だ。手を取り合うことなどあり得ないしあってはならない。

 だが、一度だけ。

 そう、一度だけ。

 あったのだ。その瞬間が。

 その手が繋がることは、なかったけれど──

 

 

「────ッ!!」

 

 

 まるでそれは、あの日々の再来のようで。

 海賊を追う海兵と、海兵を迎え撃つ海賊。二人の戦い日々からそう時間は経っていない。記憶にもまだまだ新しい。

 だと、いうのに。

 何故だろう。

 

 どうしようもなく──懐かしかった。

 

 

 
















ここから一気に展開が進むと思います。
思ったより長くなりそうですがどうにかやっていきます。


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