sideアイムート
調子に乗っていた、のだろう。“活動”でもどうとでもなるのだと、この世界に舐めてかかっていた。
…でももう、遠慮して、躊躇って、大事な人達が…犠牲になるというなら、それ以外の全てを殺し尽くすことを私は躊躇わない。
翼の容態はかなり悪い。『絶唱』のバックファイアによる重症で病院に運び込まれた。
一命は取り留めたものの、容態が安定するまでは絶対安静…なのだそうだ。
司令はテキパキと指示を出し、鎧の行方を追っている。
私は既に二課の融合症例研究室、通称『保管庫』に戻っていた。ここはメディカルルームと直通になっており、検査や永劫破壊の研究などを行っている。まぁ、日本政府に提出しているレポートは本質から逸れたもののため
響と緒川が話しているのを、保管庫に常設されたパソコンから病院のカメラをハッキングして覗き見ている。
緒川が一瞬こちらを見ていた。まぁ、気づくとは思ってたけど…
「ご存知とは思いますが、翼さんはかつてアーティストユニットを組んでいました。」
「ツヴァイウイング…ですよね…」
「その時のパートナーが天羽奏さん。今は貴女の胸にあるガングニールのシンフォギア奏者でした。」
緒川は続ける。
「二年前のあの日、ノイズの襲撃を受けたライブの被害を最小限に抑えるため、奏さんは、『絶唱』を解き放ったんです。」
「『絶唱』…翼さんも言っていた…」
「奏者への負荷を厭わず、シンフォギアの力を限界以上に引き出す絶唱はノイズの大群を一気に殲滅せしめましたが…同時に奏さんの命をも燃やし尽くしました。」
「それは…わたしを救うためですか?」
答えはない。それも一因ということだろう。
緒川は購入したコーヒーを一口飲んで話を続ける。
「奏さんの殉職。ツヴァイウイングは解散、独りになった翼さんは奏さんの抜けた穴を埋めるべく、がむしゃらに戦って来ました。」
私は一年しか翼を見ていないが、それでもわかる。いつも隣にいた人がいない。その喪失を、戦う間ずっと感じていただろう。
それでも、翼は止まらなかった。膝を折る事を良しとせず、進み続けた。
「同年代の女の子が知って然るべき恋愛や遊びも覚えず、自分を殺し、ただ一振りの剣として生きて来ました。」
「そして今日剣として、死ぬことすら覚悟して、歌を歌いました。」
「不器用ですよね…でも、それが“風鳴翼”の生き方なんです。」
「そんな…酷すぎます…!そしてわたしは、翼さんのことなんにも知らずに…なのに…一緒に戦いたいって…!奏さんの代わりになるって…!」
泣きじゃくる響。それを見て思う。誰もが固有の人間性を持つ、れっきとした個人であるならば、他の何かになるためには自分を殺すしかない。陽だまりに入れるのは、
「僕も貴女に奏さんの代わりになって欲しいなんて思っていません。そんなこと、誰も望んでいません。」
「ねぇ、響さん、僕からのお願い、聞いて貰えませんか?」
「…ッ…」
急いで涙を拭う響。
「翼さんのことを嫌いにならないでください。翼さんを世界に独りぼっちになんて、させないでください。」
「…はい。」
「あぁ、あとアイムートさん、いつまで盗み見を?」
「へっ!?」
私は響に電話をかけた。これが手っ取り早いのもあるし緒川含め二課所属メンバーとの直接の接触は禁則事項だからだ。
「もしもし、こちらアイゼン。」
「アイゼンさん……」
「頑張ったね。」
「えっ…?でも…」
「人同士の戦いは初陣だったんでしょ?なら、生き残ってガングニールを無事に持ち帰った。相手の目的は貴女の奪取だったのだから、ならそれは十分すぎる戦果。だから、誇っていい。翼の絶唱も究極的には貴女を守るためだったんだから。もし罪の意識を感じるなら、“何のために戦うのか”、考えておいて。」
「ッ!…はい。」
「私が言いたい事は言ったから、緒川、響を寮まで送ってあげて。」
「わかりました。行きましょう、響さん。」
side立花響
今わたしは車でリディアンの寮へ向かっている。
緒川さんの言葉。アイゼンさんの言葉。
考えなきゃいけないことはたくさんで、それでも、一個づつ解決しなきゃいけない。
そしてふと、思った。
「緒川さん。」
「どうしました?響さん。」
「アイゼン…アイムートさんが言っていた“自立稼動する聖遺物”って…?何があったんですか?」
一見すると普通の人に見えるアイゼンさん。でも、初めて見た時のあの恐怖が、今でも忘れられない。
「確かに、響さんも二課の一員、知っておいた方がいいのかもしれません。御説明します。」
そして緒川さんが説明してくれたのは、アイゼンさんの術理“永劫破壊”。そして、融合した聖遺物の生み出す“死の誘引”とその弊害ーー万象に平等な死の誘引は人間にも分け隔てなく適用されること。そしてそれがわかってから“保管庫”と呼ばれている場所に隔離され、基本的に人間との接触を禁じられていること、例外は高レベルのフォニックゲインを生み出せる奏者だけだということ。
「彼女は、いつも、大丈夫だと笑います。本当は寂しい筈なのに。だからこそできる限り支えたい、そう思うんです。」
緒川さんはそう言って笑った。
太陽は輝き始め、今日も長かった夜は終わった。
戦姫は知った。魔人の意味を。
しかし、その渇望を知るのは、まだ先…
ようやくアイゼン氏が司令室に顔を出せない理由を書けました。
理由は近くに居続けると人間であっても死なせてしまうから、ですね。黒円卓時代は周りに魔人しかいなかったので気づかなかったデメリットでした。
という訳で第十二話、どうだったでしょうか?
早いこと形成を出したい…しかし自分の筆が全く動かない…
というジレンマを抱えております。
そして、誠に勝手ながら今回にてアンケートを終了させて頂きます。集計結果は“XV編までやれ”、との事でした!
…が、頑張ります!
あまり期待せずお待ちください。
これからも“戦姫と魔人の永劫破壊”をよろしくお願いします。
追記:感想募集のタグ付けていいですか?
今のところG編まではやろうと思っているのですが、その後どこまでやるかを募集します。
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G編までで良きよ。
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キャロル見たい!GX編までやれ!
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AXZ編までやらなければ許さん!
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XVまでやれ!やるんだァ!