戦姫と魔人の永劫破壊   作:檜山俊彦

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これからも精進します!


第十六話 罪のカタチは

 

 

side風鳴翼

 

 

その挨拶は、私以外の面々を驚愕させた。

いや、私も驚いてはいるのだが一度面識があるだけに落ち着いて状況を見ることができた。

 

 

「名を、押し付けたというのは?」

 

 

叔父様の疑問に、もう一人のアイゼン女史…ヴァイスさんは少しづつ語り始めた。

 

 

「始まりは、ただただ純粋な“渇望”でした。私が聖遺物に託した渇望は、“わたしではない誰かになりたい”という求道寄りのもの。はっきり言って外界に作用するとは思ってもみませんでした。でもわたしも聖遺物に少なからず影響を受けていたようで。」

 

 

そこに緒川さんが反応する。

 

 

「まさか、連怨・共喰の魔剣の“死の誘引”が共鳴して…?」

 

 

「察しがいいですね、緒川さん。その通り。彼女は、アイムートは元々は“死んだ人間の魂”だったんです。尤も彼女がやってきたのは完全に偶然でした。」

「しかし、わたしはただ巻き込まれただけの彼女に強制的に体の支配権を与え、わたしは精神の奥底で眠り続けていました。わたしは“黄金の獣”には及ばないものの回帰の記憶を多く持つ人間でした…だから向き合うのが嫌になって…結局ただの言い訳ですね。わたしは逃げたんです。自らの運命と、守るべき家族の命から。」

 

 

そう言って、彼女は口を閉じた。

 

 

深い哀愁と後悔を感じさせるその目は、昏く濁っていた。

白い肌、白い髪を持ちながら、目だけが“昏い”。

 

 

その雰囲気に全員が気圧されていた。

そんな時だ。

 

 

桜井女史が、立花の胸をつついた。

 

 

「んにゃぁぁぁ!にゃんてことぉぉ!」

 

 

「暗くなってもしょうがないでしょ?もっと建設的な話をしなきゃ。ヴァイスちゃん。アイゼンちゃんが目覚めるのはいつ?」

 

 

「彼女が望めば、私にはいつでも身体を明け渡す用意があります。しかし…」

 

 

「そう…ということは…」

 

 

「今の彼女は目覚めを拒否しているんです。同様のとまでは行きませんがわたしも“魔人”。できることはあります。彼女が目覚めるまではわたしがアイムートの代わりになります。」

 

 

先程とは打って変わって覚悟を決めた眼差しをするヴァイスさん。

 

 

だが、彼女が見ているのは私達ではない気がした。

 

 

 

 

side立花響

 

 

アイゼンさんがヴァイスさんになった事がわかって今後の仕事の割り振りなどが決まってから、わたしは寮に帰った。

 

 

よく考えれば、わたしの“未来なら許してくれる”という考えは傲慢以外の何者でもなかった。

 

 

だから…

 

 

「嘘つきッ!隠し事はしないって言った癖に!」

 

 

わたしはその言葉に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

この後の事はよく覚えていない。

 

 

わかったことは…結局、わたしは未来を騙していたということ。

 

 

だから、あの後何度も話しかけても、口も聞いてもらえなくて、ベッドに入っても、不安がいっぱいで…

身勝手だなぁ…わたし…

 

 

次の日、先生に怒られたりしながら、昼休み。

やっぱり、口は聞いてもらえなくて。

 

 

弓場さん達がやってきた後も、“バイト”という言葉に反応した未来は、屋上に向かって走り出した。

 

 

「未来ッ!」

 

 

わたしも慌てて追いかけた。

「謝らなきゃ。」その一心だった。

 

 

「未来…ごめんなさい!」

 

 

心の限りを絞って謝った。

 

 

「どうして響が謝ったりするの?」

 

 

だってそれは…!

 

 

「未来はわたしに対して隠しごとしないって言ってくれたのに、わたしは…未来にずっと隠しごとしてた!わたしは…「それ以上言わないで…!」」

 

 

「これ以上…」

「私は、響の友達じゃいられない…!」

 

 

未来はわたしの横を走り去った。

 

 

 

わたしはわたしの陽だまりを失った。

 

 

 

 

sideヴァイス

 

 

「あったかいものどうぞ。」

 

 

「あったかいものどうも。」

 

 

あおいさんに渡されたコーヒーを飲んで、作業を再開する。

わたしが今やっている作業というのはイチイバル奏者、“雪音クリス”さんの捜索。

 

 

ところどころ途切れた監視カメラの記録から探しているものの、やはりアイムートほど手際良くとはいかない。

地上は夜の時間だが、作業は難航している。

 

 

ちなみに、今わたしがいるのは二課本部の司令室だ。

何故ならわたしが表出している間は“死の誘引”は起きないからである。

 

 

わたしと連怨・共喰の魔剣の霊的接続はなくなっている。

あの剣の性質がわたしの精神を伝播して流れ出るということは無いのでこの部屋にいることができる。

 

 

なんというか、皮肉な話だ。

 

 

彼女(アイムート)が望んだ景色が彼女の預かり知らぬところで完成してしまった。

 

 

わたしが表出している状態は完全にイレギュラーな事態だ。

早く戻ってきてくれるといいんだけど…

 

 

「ん?」

 

 

二時間前の映像に映ったのは探していた後ろ姿。

これは…廃棄されたダムの方向に?

 

 

「捨てられても、忘れられない、か…」

 

 

帰巣本能というやつだろうか。

 

 

「弦十郎さん。わたしも捜索に出ます。雪音クリスの現在位置の予想円はモニターに出しておくので…」

 

 

そう言って、“保管庫”の直通エレベーターからではなく、通常のエレベーターで地上に出る。

 

 

雪音クリスさん。

あなたは、何を成そうとして、何故捨てられたんだろう?

 

 

わたしは…何を…

 

 

 

地上に出たわたしは月を見上げて、その眩しさに目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

吐き出された“白”の罪。

全てを押し付けられた者は、未だ夢現の中。

 






一日遅れてしまいました。すみませんッ!


第二十話、どうだったでしょうか?


ヴァイスはアイムートに全てを押し付け、逃げ出しました。結局、それをどう思っていたのかは、押し付けられた本人のみぞ知る。と言ったところです。



そして、アンケートの投票ありがとうございました!
今回から新たなアンケートが始まります。


こちらもよろしくお願いします。

アイムートはフィーネ戦で覚醒させるつもりなのですが、眠り続ける彼女の夢の内容をどうするか募集します。

  • 本編で話を取るべき
  • 閑話にして欲しい
  • そもそも描写しなくておけ
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