戦姫と魔人の永劫破壊   作:檜山俊彦

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第二十二話 手を繋ぎ、繋がれること

 

 

 

sideヴァイス

 

 

「はい、翼です。」

 

 

「響です。」

 

 

「少し収穫があった。…了子君は?」

 

 

二課本部に戻ったわたしは司令と共に緊急ミーティングに参加していた。

 

 

司令の言葉を聞いて司令室内を見渡して目当ての人物がいない事を探すが…

やはり、いなかった。

あの時、やはり問いただしておけば…

 

 

「まだ出勤していません。朝から連絡不通でして…」

 

 

「そうか…」

 

 

「了子さんならきっと大丈夫です!何が来たってわたしを守ってくれた時のようにドガンってやってくれます!」

 

 

守ってくれた…タイミング的にデュランダルの一件か…そんなことが…

 

 

「いや、戦闘訓練もロクに受講していない桜井女史にそのようなことは…」

 

 

「うぇ?師匠とか了子さんって人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか?」

 

 

響さんの言葉に司令室が疑問に包まれた瞬間、通信が入った。

 

 

「や〜っと繋がった…ごめんね寝坊しちゃったんだけど…通信機の様子が良くなくって…」

 

 

咄嗟に反響定位を開始。向こうの音を探る。

 

 

「無事か?了子君。そっちに何も問題は?」

 

 

「寝坊してゴミを出せなかったけど…何かあったの?」

 

 

「良かったぁ…」

 

 

「ならばいい。それより聞きたいことがある。」

 

 

反響定位による探知が終わった。これは…殆ど黒だけど、一応グレーと言ったところか…

確かに、出来れば信じたいのは事実。

でも、それが許される状況でないのもまた事実。

 

 

司令はどうするのだろうか。

 

 

「せっかちね、何かしら?」

 

 

「“カ・ディンギル”。この言葉が意味する物は?」

 

 

「カ・ディンギルとは古代シュメールの言葉で“高みの存在”。転じて“天を仰ぐ程の塔”を意味しているわね。」

 

 

「何者かがそんな塔を建造していたとして、何故俺達は見過ごして来たのだ?」

 

 

「確かに…そう言われちゃうと…」

 

 

木を隠すなら森の中。塔を隠すなら土の中か。

自分の推測に嫌気がさす。

 

 

「だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるなら仕損じるなよ!」

 

 

「ちょっと野暮用を済ませてから、私も急いでそっちに向かうわ。」

 

 

 

緊急ミーティングは終わり、わたしも近くの機器に接続したキーボードでオペレーター達に混じって作業を進める。

 

 

「どんな瑣末な事でも構わん。カ・ディンギルについての情報をかき集めろ!」

 

 

司令の言葉を聞き、カ・ディンギルがどこにあるのかだいたい察しがついてしまったわたしは、二課本部の設計図を確認していた。

 

 

広木防衛大臣暗殺前後の各部構造、システムを比較、点検するために既に組まれていた検出プログラムを流用、改修してスキャンを開始。

並行して、響さんが初めてガングニールを纏った日から今日までのノイズの出現分布に日付のデータを添付していく…

 

 

次いで、警報が鳴り響く。

 

 

「飛行タイプの超大型ノイズが3体…いえもう1体出現!」

 

 

これが“野暮用”…か。本当に笑えない。

しかも、このノイズの出没分布データを見る限り…

 

 

「司令、お恥ずかしながらわたしはもう限界です。“もしもの時”に備えてここで待機させてください。」

 

 

「…!…うむ、わかった。その通りにしよう。」

 

 

他の面々が沈痛な顔をしているが、別にわたしは死なないし、死ぬつもりもない。

 

 

彼女(アイムート)は必ず戻ってくる。

その確信があるから。

 

 

ふと、変わった自分に苦笑した。

わたしもわたしにできる事をしよう。

 

 

 

side立花響

 

 

わたしはノイズ発生で厳戒態勢に移った二課本部からの通信で、状況を伝えられていた。

 

 

「今は人を襲うというよりも、ただ移動していると…」

 

 

「響…」

 

 

「へーき、わたしと翼さんでなんとかするから。だから未来は学校に戻って。」

 

 

「リディアンに…?」

 

 

「いざとなったら…地下のシェルターを解放してこの辺の人達を避難させなきゃいけない。未来にはそれを手伝ってもらいたいんだ。」

 

 

「う、うん…わかった。」

 

 

「ごめん…未来を巻き込んじゃって…」

 

 

「ううん…巻き込まれたなんて思っていないよ。私がリディアンに戻るのは響がどんなに遠くに行ったとしてもちゃんと戻ってこれるように、響の居場所、帰る場所を守る事でもあるんだから。」

 

 

「わたしの…帰る場所…」

 

 

「そう。だから行って。私も響の大切な物を守れるくらいに強くなるから。」

 

 

「小日向未来は、わたしにとっての“陽だまり”なの。未来のそばが一番あったかいところで、わたしが絶対に帰ってくるところ。これまでもそうだし、これからもそう。だからわたしは絶対に帰ってくる。」

 

 

「響…」

 

 

「一緒に流れ星見る約束、まだだしね…」

 

 

「うん…!」

 

 

そうだ。わたしは絶対に帰るんだ。リディアンに、未来のそばに。

その思いがある限り、わたしは、絶対に負けない…!

 

 

「じゃあ…行ってくるよ。」

 

 

 

 

走る中、伝えられた最新の情報だと、現れたノイズの進行方向には“東京スカイタワー”があるらしい。

 

 

「カ・ディンギルが塔を意味するのであれば、スカイタワーはまさにそのものじゃないでしょうか!」

 

 

「スカイタワーには俺達二課が活動時に使用している映像や交信と言った電波情報を統括・制御する役割も備わっている…

 

 

二人共、東京スカイタワーに急行だ!」

 

 

通信を繋げつつも考える。

 

 

「スカイタワー…でもここからじゃ…」

 

 

すると、プロペラの回転音と風の音が聞こえ…わたしはたたらを踏んだ。

 

 

「なんともならない事をなんとかするのが、俺達の仕事だ!」

 

 

やってきたヘリコプターに乗り移り、スカイタワーを目指す。

 

 

少しすると、大型ノイズの姿をとらえた。

ヘリのスライドドアに掴まった状態から空中に躍り出る。

 

 

Balwisyall nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

 

シンフォギアを纏ったわたしは、そのままの勢いでノイズに風穴を空けながら、地面へと降りる。

 

 

翼さんに合流したけど…やっぱり地面からじゃ…

 

 

「頭上を取られることがこうも立ち回り難いとは…!」

 

 

「ヘリを使って、わたし達も空から!…ッ!」

 

 

直後、乗員を感知したのであろうノイズがヘリを攻撃、そのまま爆散してしまった。

 

 

「そんな…!」

 

 

「よくも…!」

 

 

そして飛来するノイズを避け、破壊できるものは壊したけど…

更に頭上から追加されてキリがない。

 

 

更に追撃を加えようと睨んでいると、ノイズに銃撃が刺さる。

攻撃の元にはクリスちゃんがいた。

 

 

「コイツがピーチクパーチク喧しいから、ちょっと出張ってみただけ、それに、勘違いするなよ…!お前達の助っ人になったつもりはねぇ!」

 

 

直後に師匠が「助っ人」と訂正を入れた事でクリスちゃんの顔が赤くなる。

 

 

「そうだ。第二号聖遺物、イチイバルを纏う戦士。“雪音クリス”だ。」

 

 

その言葉に、分かり合えたとわかって飛びつくわたし。

その後は翼さんによって地上と空中の役割分担をする事になった。

 

 

でも、少し楽になっても大局は変わってない…

 

 

少し離れたところで言い合いをしている翼さんとクリスちゃんに合流。クリスちゃんは、「分かり合えない」と言おうとしたみたいだけれど、わたしはそうは思わない。

 

 

「できるよ。誰とだって仲良くなれる。」

 

 

わたしはクリスちゃんと翼さんの手を握った。

今なら、前から分からなかった事が、一つわかる気がする。

 

 

「どうしてわたしにはアームドギアがないんだろうって、ずっと考えてた。ずっと半人前は嫌だなぁって。でも、今はそうは思わない。何もこの手に握ってないから。二人とこうして手を握れる。仲良くなれるからね。」

 

 

「立花…」

 

 

翼さんも、言いたい事をわかってくれたみたい。

アームドギアから手を離して、クリスちゃんに伸ばしてくれた。

 

 

クリスちゃんは戸惑いながらなも、一瞬だけ手を繋いでくれた。

 

 

「コイツにあてられたのか!?」

 

 

「そうだと思う。そして、貴女も。」

 

 

すると、わたし達を覆うノイズの影。

 

 

「親玉を叩かないと、キリがない…」

 

 

「だったらアタシに考えがある。アタシでなきゃできないことだ。イチイバルの特性は長射程広域攻撃。派手にぶっぱなしてやる!」

 

 

その“派手”という言葉に、嫌な予感がしてしまう。

 

 

「まさか…絶唱を…!?」

 

 

「バーカ!アタシの命は安物じゃねぇ!」

 

 

「ならばどうやって…?」

 

 

「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場のないエネルギーを臨界まで溜め込み、一気に解き放ってやる!」

 

 

「だが、チャージ中は丸裸も同然、これだけの数を相手にする状況では…危険すぎる!」

 

 

「だけど、わたし達がクリスちゃんを守ればいいだけの事!」

 

 

作戦は固まった。わたしと翼で先に打って出た。

 

 

 

 

繋ぐ手、繋がる手。手を繋ぐのが、わたしの戦いだッ!

 

 

イチイバル…クリスちゃんがエネルギーを溜めきったのがわかる。

 

 

「「託した!」」

 

 

クリスちゃんはアームドギアを最大展開。大小のミサイルに機関銃を一気に解き放った。

 

ノイズがとんでもない速さで減っていく。

 

 

わたしと翼さんも地上に残ったノイズを倒しきった。

 

 

作戦の成功を喜んで、クリスちゃんに飛びついた。

 

 

「勝てたのは、クリスちゃんのお陰だよ〜!」

 

 

クリスちゃんの戦う理由、“見つけた夢”の内容を聞き出そうとして、電話が鳴った。

 

 

未来から…?

 

 

「響…!学校が…リディアンがノイズに襲われ…」

 

 

そこで電話を途切れた。

だって、ノイズは倒…して…

 

 

わたしは呆然とした。

 

 

 

 

 

 

人を殺す暴虐が襲うのは一所に非ず。

罠と知る者、知らぬ者。その差は…

 

 





どれだけ感動的なシーンも自分の手に掛かると、途端につまらなくなる現実に打ちひしがれています。

第二十六話、どうだったでしょうか?

過去最長を更新しつつも、その実原作とほぼ差異のない回になってしまいました。すみません。

次回からようやくフィーネ戦です。
頑張って描写できるように頑張りたいと思います。

そして、進行中だったアンケートとが今回にて終了です。
結果は“本編で話を取るべき”が一位でした。ありがとうございます!

正直“そもそも描写しなくておけ”が一位だと思っていたので素直にありがたいです。

それでは、評価、感想、よろしくお願いします。

アイムートはフィーネ戦で覚醒させるつもりなのですが、眠り続ける彼女の夢の内容をどうするか募集します。

  • 本編で話を取るべき
  • 閑話にして欲しい
  • そもそも描写しなくておけ
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