ありがとうございます!
これからも精進します。
今回は完全一人視点なので、視点変更用の“side”表記は不採用にしてあります。
一歩歩いた。
燃える街、崩れる建物。
その中で、黒い風が暴れている。
二歩歩いた。
黒い風は周りの人々に触れ、増え、その場には亡骸のみが残る。
風が止む事は無い。
三歩歩いた。
動かせると思った身体は動かない。
風は私の制御を外れ、吹き荒ぶばかり。
私は何がしたかったのだろう…?
とある世界線、1945年のドイツ、ベルリンにて
私、アイムート・ヴァルトルート・フォン・キルヒアイゼンはドイツ系貴族の生まれだった。
幼少の頃は双子の姉の後ろでウジウジしているだけの子供だった。
何もしたく無かった、とも言えるだろう。
少しだけ成長し将来に悩んだ私は結局姉であるベアトリスと共にドイツの軍に志願した。
この先起こる事を姉に一切伝えないまま。
そして、私は姉とその上官と共に“その瞬間”に立ち会った。
“黄金の獣”ラインハルト・ハイドリヒ
そして、
“水銀”カール・エルンスト・メルクリウス
“Dies irae”という世界で無限に等しい回数繰り返された、しかし決定的な出会い。
私はその事実に恐怖した。
それは運命からは逃れられないと宣告された瞬間だった。
『Dies irae』
元々はPCゲームだったこの作品を私が“一度目の生”で目にしたのは14歳、某思春期に発症する病気の患者の一人に私も名を連ねていた頃だ。
当時の私は病状を加速させる作中の詠唱に心躍らせる、ただの学生だった。
緩やかな滅びに向かう国で、無為に創作物を貪る権利を与えられていた。ただの学生。
“一度目”の最期に思ったことは、なんだったか、もう覚えてすらいないが…
ただの学生としての“一度目”が終わったのがその頃である事も確かだ。
“二度目の生”に話は移る。
突如として目覚めた私は、ナチスのファシズムが全盛の時代。
一人の少女として目覚めた。
そして、永劫の呪縛、その
目を覚ましたのは、一年後。
当時14歳。奇しくも“一度目”で死んだ年齢だった。
人が変わった様に塞ぎ込んだ私を親は半ば見捨てた。
世話はされる。会話もする。教養だって身につけた。だけど、両親の目は姉から私に向く事は無かった。
嫌悪…いや忌避されていたのだろう。
娘に愛情を注いでいた両親は“中身”が変わってしまったことに直感で気づいたのだと、今ならわかる。
時代が違えば異端審問モノだ。
そうして成長する内、私は幾度となく見た永劫の通りの人生を辿って行った。
踏み外すこと自体はできた。
しかし、その一歩が踏み出せなかった。
簡単で当然な事だが…私の知る『Dies irae』原作本編に
アイムートという人物は存在しない。
当然“一度目”の動画サイトで見た各ルートの展開など未来予知に殆ど意味を成さなかった。
そして、行間を全て記している物語などない。
それからは、誰と話し、何をするのかが世界にいかなる結果を生むのか、手探りで探して、いやそのフリだけして結局何も変えなかった。
ただ何もしなくても、私を異端視する人達の声だけは増えた。
端的に言うなら、幼かった。
という事なのだろう。
その中で唯一私を
共に軍に入り、姉は敬愛の対象を見つけた。
エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ。
当時はまだ大尉だったか。
私のような依存・崇拝ではない。姉のソレは、真に“敬愛”だった。
姉は積極的に意見を具申したし、かの女傑が道を踏み外したならば、それを正道に引き戻そうとした。
その全て無駄であることを、私は、知っていた。
1945年、ドイツ、ベルリン。
炎に包まれた街は地獄の様相だった。
とうとうこの日が来たか、という思考だけが私の頭を支配していた。
対照に、姉は絶望していた。
軍人として敬愛していた人物がその本懐を忘れ、同胞を殺しているのを見て姉のような人物に絶望するなと言う方が無理のある事だった。
聖櫃に取り込まれ、解放の贄となる魂はその後、無限の闘争を強いられる。原作ではこれを避けるため、姉は断腸の思いで両親を殺した。
ただ、私は姉に親殺しの罪過を背負って欲しくなかった。
正確には、私が依存できる人物で、高潔な人であって欲しかった。私が親を殺したのはそんな、醜い理由だった。
燃えるベルリンを歩いて、歩いて、燃え盛る先に居たのは、
『
黒円卓に所属する一人の男の呪いが生み出し、成った、肉体と魂の集合体。
代を追うごとに巨大化する生きる屍。
その始まりも私は見ていたし、初代が呪いに喰われるのも予想…と言うより知っていた。
二代目が死と呪いを天秤にかけて、肉塊に取り込まれる事も、知っていた。
でも結局、何もしなかった。
その傲慢の象徴が巡り巡って、我が姉を取り込み、私の前に立つ事のなんと皮肉な事か。
何も変える事をしなかった、私の罪。
その結果をまざまざと見せつけられた。
ゆっくりと、私に迫るトバルカイン。
そうだ、私を裁いてくれ。
貴女にはその権利が…
振り下ろされた大剣は、
「え…?」
確かに、本気のトバルカインと比べればあまりにも遅い斬撃だった。それは確かだ。
でも、直撃コースだったそれを回避できたのは…
“私が避けたから”だった。
「ハッ…ハハハッ!なんだソレは!?口で偽善を言っておきながら、結局何も変わってない!生き足掻いて、その先にッ!何があると言うんだ…!」
涙は出ない。もう枯れた。血は流れない。傷つくことすらない。
魔人対人間は、いつだって一方的だ。
私はそうやってこのベルリンで虐殺をした。
裁かれるべきだ。
許されてはいけない筈だ。
惨たらしい最期を迎えるべきだ。
なのに…
「私は、死にたくない…生きていたい!」
トバルカインの斬撃を避けながら、叫んだ。
そうだ…“一度目”の最期、私は確かに“生きたい”と願った。
恐らく、それが私を形作る根幹。
どうしようもない、私が生きる理由。
故に、私の本当の渇望は
「私は、生きていて…いいですか?」
聞くのは、魔人連中ではない、姉でもない。
三度目の生で、出会った人々。
彼ら彼女らは何も言わない。
選択は、私に委ねられた。
ならば…
「魔人らしく、己の渇望に従って、自由にやるとしよう。」
まずは、この下らない茶番を終わらせる。
私は、
Yetzirah――
Rom hat gesprochen
生み出されるのはルーン文字の刻まれた黄金の剣。
連怨・共喰の魔剣、その剣を身に宿し、融合した魔人が生み出す己のカタチ。
生み出した剣で斬撃を止める。
向こうは“創造位階”
こちらは、ようやく“形成位階”。
本来なら黒円卓に属する魔人に半端な形成で歯向かうなど自殺行為。
しかし、相手が
共喰い。連怨・共喰の魔剣の根幹にある概念。
数多の同胞の血を吸った“事実”と“想念”が私に力を与える。
押されていた私の魔剣は、徐々に、トバルカインの大剣を押し込んでいく。
形勢不利を悟ったか、後ろに下がろうとする。
本来、トバルカインに思考らしい思考はない。
下がるという事も指示されなければしないだろう。
あぁ…本当に、茶番だ。
即座に追いつき、大剣を叩き切る。
所詮、私と聖遺物が生み出した贋作。
姉さんの剣戟は…
「もっと美しかった!」
大上段、一閃。
私はトバルカインを本当の意味で屍に変えた。
切り裂かれた肉の奥には何も無い。
真っ黒な虚無。
瞬間、世界が崩れた。
引きこもりの時間は、終わりだ。
目の前には、
ボロボロで、今にも消えてしまいそうだ。
「ごめん。全部押し付けちゃった。」
答えは無い。
「貴女のお陰で私は道を選べた。死んだ私にも道が出来た。選ぶ時間ができた。確かに地獄みたいな道のりだったけどありがとうって、言わせて欲しい。私を守ってくれていた事も。」
彼女は、私の精神が壊れないようバランサーの役割をしてくれていた。高々普通の人間がここまで保ったのは、一重にそのお陰だ。
「行ってきます。」
私は水底から浮上した。
ようやく、罪に向き合い、“償う”つもりのアイゼン氏。
是非ともフィーネをぶっ飛ばしてくれ。
第二十九話、どうだったでしょうか?
トバルカインの設定ってこれで合ってますよね…有識者の方に教えてもらいたい…
次回から本編に復帰します。
尺の都合で今回端折った戦闘も、フィーネ戦ではじっくり書きたいと思います。
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