side風鳴翼
腕部のプロテクターが砕けた。
致命傷こそ防いでいるが…
「ハハハッ…どうだ?立花響と刃を交えた感想は…」
裂けた自らの身体を如何なる技術にてか再生させるフィーネ。
「お前の望みであったな…」
「人の在り方すら捨て去ったと…!」
「私と融合したネフシュタンの力だ。面白かろう?」
すると
見間違えでなければ、先程雪音が命懸けで防いだ一撃の二射目。
「まさか…!」
「そう驚くな…カ・ディンギルが如何に最強、最大の兵器だとしてもただの一撃で終わってしまうのでは兵器としては欠陥品。必要がある限り何発でも撃ち放てる…」
「そのために、エネルギー炉心には“不滅の刃”デュランダルを取り付けてある…それは尽きることの無い無限の心臓なのだ…」
恍惚とした表情を浮かべるフィーネ。
だが…
「だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かす者は居なくなる…!」
立ち上がる立花。そこに、未だ理知の光は見えない。
しかし…
「立花…私はカ・ディンギルを止める…だから…」
立花に切っ先を向け、仮初の敵意を放つ。
立花は私に飛びかかり、それを私は…
「うん…?」
刃を地に刺し、無手で受け止め、抱きしめた。
胸に立花の手が少し刺さった。
それを引き抜く。
「これは…束ねて繋げる力の筈だろ…?」
小刀を一本取り出し、立花の影に放つ。
“影縫い”、かつて雪音にも使った技だ。
だが、今度は倒すためではなく、守るために。
立花の動きが止まったのを確認して、離れ、フィーネの方へ歩む。
「奏から継いだ力をそんな風に、使わないでくれ…」
言葉は、もうこれで十分な筈だ。
更に進んで、止まる。
「待たせたな…と、言いたかったんだが…」
「なんだと…?」
すると私の隣に一人の女性が降り立つ。
「お久しぶりです。アイゼン女史。」
「そうだね…久しぶり、翼。そして、戻ってきたよ、了子。」
sideアイゼン
頃合いを見計らって、私も了子の前に現れた。
響には、結局何も出来なかった。
少し悔しい。
クリスがいないのも、そういう事だろう。
しかし、この後の事は考えてある。
そのために…
「貴様…あれ程砕けた心で、戻ってきたと…!?」
「みっともなく泣き喚いてね。まぁ、生き汚いのは私の十八番なんだ。許してよ。」
了子を、止める。
そのまま翼とアイコンタクトを取る。私の意思が伝わり、翼は了子に背を向けた。
そしてそのままハイタッチ。
さぁ、バトンは渡された。
黒い風が強く、強く吹き荒ぶ。
その風に対して翼が“天の逆鱗”で乗り、加速し、飛翔する。
了子の憎々しげにこちらを見る瞳と目を合わせる。
「魔人同士、仲良くしようか。」
形成
Yetzirah――
命の価値を指し示せ
Rom hat gesprochen
私の詠唱に従い、ルーン文字の刻まれた黄金の剣が現れる。
「“形成位階”だと…!?しかし、それより…ッ!」
驚いている了子の顔面にまずは一発食らわせてやると意気込む。
姉さんの剣術をベースとした、踏み込みで了子に迫る。姉を“神速”とするなら私は精々“超速”と言ったところか。
それでも、認識は遅れる。黒い暴風で加速し、超速から、神速の域へ。
「グウッ…!」
了子の顔面に左拳を叩き込み、そのまま右で斬り下し。
斬り上げ、様々な角度から、連撃を仕掛ける。
鎧の再生能力や鞭での防御では、手数が足りない。
こちらの連撃に押し込まれていく。
更に足払いをかけ、姿勢を崩して、超速の上段。
「舐めるなァ!」
鎧から放たれた鞭を見て剣を捨て慌てて避ける。しかしその先には“天の逆鱗”を踏み台にカ・ディンギルへと飛び立った翼が。
「まず…ッ!」
一瞬だけ気を取られた瞬間に、強烈な蹴りが私の腹部を襲う。
吹き飛ばされかけるが、地面に剣を刺して滞空。そのまま重力に引かれ地面へ降りから、姿勢を安定させる。
翼は…ッ…!また、私は…
鞭に叩き落とされた翼を見て一瞬諦めかけたが、そんな中翼は再度
翼は、諦めなかった。
その跳躍を再度邪魔しようとした了子を見てその横っ腹を蹴り飛ばした。
翼は持てる力で、カ・ディンギルを破壊。響に後を託した。
天を仰ぐ程の塔はここに爆散した。
聖遺物“天羽々斬”の信号消失と引き換えに…
side立花響
目が覚めた時、全ては手遅れだった。
翼さんは、爆発の光に巻き込まれ、そのまま見えなくなった。
翼さんが影縫いのために残した小刀も、消滅した。
向こうでは、ヴァイス…いや、アイゼンさんかな…了子さんと戦ってる…
「どこまでも忌々しい!月の破壊は、“バラルの呪詛”を解くと同時に、重力崩壊を引き起こす…」
アイゼンさんは振るわれる鞭を、金色の剣でいなし、躱し、逸らしている。
「惑星規模の天変地異に人類は恐怖し、狼狽え、そして聖遺物の力を振るう私の元に帰順する筈であった…!」
鞭と剣は幾度となくぶつかり合い、その合間に、了子さんがアイゼンさんに叫んでる…
「それをお前は、お前達は…!」
「その勝手な理屈で一体どれだけ…!」
あまりのぶつかり合いに、私の身体も吹き飛ばされた。
翼さん…クリスちゃん…2人共もう居ない…学校も壊れて…みんな居なくなって…わたし…わたしはなんのために、なんのために戦って…
「まだ、終わってないよ。」
アイゼン…さん…?
「絶望するにはまだ早いよ、響。」
「響が繋いできた手は、絆は、ちょっとやそっとじゃ壊れやしない。信じようよ。まだ希望はあるんだって。」
それは…
「余計な事を!」
こちらに迫る了子さんと、迎え撃つアイゼンさん。
わたしは…
side小日向未来
寺島さん、安藤さん、そして、板場さんと一緒に、何かできないか考えていた。
それでも、埒が明かないまま、翼さんの聖遺物、“天羽々斬”の信号が消失。
私達は、悲嘆に暮れていた。
そんな時だ。
緒川さんが、周辺のシェルターに居た生存者の人達を連れてきた。そしてその中に居た、一人の女の子。
かつて、響に助けられた、と。
その時女の子が言った“応援”という言葉。
その言葉で思いつく。
私達の安否を知らせる事。それそのものが応援に、響の力になるのではないか…と。
そして、朔夜さんからもたらされた可能性。
学校施設への電源接続。
そして、そこから校舎のスピーカーを使うという手段。
そして、私、板場さん達と、緒川さんで電源接続に必要な切り替えレバーがある場所へ来ていた。
シャッターが中途半端に閉まり、緒川さんでは通れそうにないけど…
「私達が、行こう。大人達が無理でも、私達なら…!こういう時、アニメなら身体の小さいキャラが大活躍するところなんだから!」
「それはアニメの話じゃない…!」
「アニメを真に受けて何が悪い!アニメ上等!ここでやらなきゃ、私はアニメ以下だよ!このままじゃこの先、響の友達だって、胸を張って言えないじゃない!」
「ナイス決断です。私もお手伝いしますわ。」
「だね…ビッキーが頑張ってるのに、その友達が頑張らない理由はないよね。」
「みんな…!」
その後、電源室に入った私達は組体操の要領で、私達自身が板場さんの足場になって、その上に乗った板場さんがジャンプ。制御スイッチを切り替えた。
これで…待っててね、響!
side Re 立花響
アイゼンさんと戦う了子さんは言った。
昔、人を創った存在の巫女だったのだと。
そしていつの間にか、創造主を愛していたのだと。
しかしその思いは“バラルの呪詛”によって告げられず。
統一言語を奪われた人は争いを始めた。
胸の内の思いを伝えるための数千年。
でも、だからって…
「だからと言って、それで!」
再度ぶつかる2人。土煙と、黒い風が吹き荒れる。
「是非を問うだと…?恋心も知らぬお前が!」
「そうか…恋心、私には理解できない感情だね。羨ましいよ。人に友愛以上の感情を抱ける貴女が。」
「なんだと…?」
「そういう点で言えば、了子は普通の人間なんだろうね。」
更に幾度もぶつかる二人、一進一退、傷を負っても再生する了子さんと、傷を負わないよう全て避けるアイゼンさん。
「貴様ッ…!あぁ、もういい、私に並び立つ者など要らぬ…新霊長は、私一人だけでいい。」
そこに聞こえる、歌。
「耳障りな…!」
アイゼンさんが、小さく微笑んだ気がした。
皆んなの、未来の声が聞こえる。リディアンの校歌に乗せて。
皆んな、生きてる…!
「どこから聞こえてくる…この、不快な…歌!歌…だと…!」
「よかった…わたしを支えてくれてる皆んなは、いつだって傍に…」
「皆んなが歌ってるんだ…だから…まだ歌える…!」
「頑張れる!」
「戦える!」
ギアが展開されていくのを感じる。
一人の歌じゃない。皆んなの、皆んなとの歌だから、いつもより暖かい…
「まだ戦えるだと…何を支えに立ち上がる…!?何を握って力と変える…!?鳴り渡る不快な歌の仕業か…?」
「そうだ…お前が纏っているモノはなんだ…?心は確かに折り砕いた筈…なのに…何を纏っている…!?ソレは私が作ったモノか…?お前が纏うソレは一体何なのだ…!?」
ギアを纏って、“飛翔”する。
そうだ…わたし達が纏うのは…
大変遅くなりました!すみません!
第二十九話、どうだったでしょうか?
次回で出来れば最終回にしたいところ…
そして、翼さんの「待たせたな〜」からのくだり、ここでアイゼンを入れなければ手遅れになるため、展開を変えました。大変申し訳ございませんでした。
良ければ、評価、感想、よろしくお願いします。
G編に入った際のアイゼンの初期位置を募集します
-
ライブ会場でマネージャーの真似事
-
ライブ会場で観客に扮する
-
響、クリス両名とソロモンの杖運搬任務
-
記憶の遺跡で業務をこなしつつ米国から隔離