喰種のヴィランアカデミア   作:パンダ丸

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2話 英雄(ヒーロー)は人を憎まず、

 

 

 祖父を食べてからもう俺は動物の肉では生きていけなくなった。だから定期的に喰場で狩りをしていたのだ。

 食べても食べても飢えたまま(満たされない)。そのうえ人間としてのルールを守る理由はなくなった。その内、歯止めが効かなくなっていった。

 

 ここまで長くなったが話は現在に戻り今、俺が追われているのは人を喰ったのがヒーローたちにバレたという普通の理由だ。

 歪んだ生活の中、祖父との大切な約束を守るために高校の入学式に行った。そこで俺の整っているらしい前世と変わらない顔面に引き寄せられた初々しい制服を着た同級生の女の子を喰場まで連れて行った。久々の若い女の肉、楽しく食事をしていたのだがうっかり他のヴィランを追いかけていたヒーローと鉢合わせてしまった。不幸な、いや人類にとっては幸運な事故である。

 

 

 

「能力違法行使及び食人の罪、まさに邪悪の権化……」

 

 裏路地で赫子を使って逃げていた。俺を追いかけているヒーロー数人は倒したが一人だけ根性ある奴が、まだ着いてきている。網目のような柄の全身タイツで頭ごと被っている中身を暴きたくなるようなコスチュームだ。

 

「アンタ強いな、ヒーロー名は?」

 

「"シンリンカムイ"だ、貴様を捕まえる!

 

 懲戒__先制必縛"ウルシ鎖牢(さろう)"!」

 

「っく……!」

 

 必殺技のらしき名前を叫び樹木で俺を拘束しようとしている。赫子で樹木を破壊して拘束を解く。続けて繰り出される攻撃を防ぎ続けるがシンリンカムイはかなりしつこい。逃げる隙を見せてくれない。

 

「った!おい、前見ろよ。」

「っと……食料見ィっけ」

「そこの人、逃げろ!」

 

 裏路地を移動した先で後ろ暗い仕事をしているだろう風貌の男とぶつかった。これもまたコイツの運命だ、やることは一つしかないよなと思いながら男を捕まえる。

 

「それじゃあ、」

 

 

__いただきます

 

 

「や、やめろおおお!」

「アハ、ハハッ、お前まっじぃ〜」

 

 男の悲痛な叫びをBGMにそいつの左腕に齧り付く。この男の肉はあまり美味しく感じなかった。先程とても美味しい肉を食べてしまったからか、それともこの男が悪人だからか。

 

「き、貴様……!何てことを!」

「自分でさっき言ってたんじゃん、人喰い鬼って。まぁ俺は鬼じゃなくて喰種だけど。」

「い、痛い、痛い痛い……ゔっ!」

 

 シンリンカムイが追いついたので一回男を離して地面に放り投げる。そしてそのままシンリンカムイに攻撃を仕掛ける。

 

「ぐっ……!」

「ハハ、俺の赫子強くない?なぁ!?」

 

 赫子で刺突して、人質を庇って避けられないシンリンカムイの脇腹を抉った。この一撃で戦いやすくなったのを理解した。

 

「外道が!!」

 

 そう言いながら転がっていた男に木を向け離れた場所に移動させた。美味くないとはいえ腕しか喰えなかったのが残念だ。

 シンリンカムイは俺を捕まえたいだろうが、傷は浅くない様子だ。肉を食べて回復できたし、逃げれそうだし、本当いいタイミングで人肉が居てくれたもんだ。

 

「ヒーローはソイツ見捨てられねえんだって?早く病院行かないと死んじゃうよーっと……じゃあなカムイくん。」

 

 そう言って赫子でビル同士の壁の隙間をジャンプして登り逃げた。予想通り手負いのシンリンカムイは追って来なかった。

 ヴィランより重傷者を優先するのか、それとも今後俺に喰われる人を守るために一人の犠牲を見ないふりするのか、どちらが正しいヒーローなのだろうか……まぁ俺は興味もクソもないが。

 

「おい、待て!

 ……喰種と言ったな、いつか捕まえるぞ!」

「ハイハイ。」

 

 しつこそうなヒーローに目つけられてしまったなと思うが、また鉢合うことはないだろうと手を振りそのまま逃げる。

 このまま好き勝手にやっていたらいつか捕まりそうだなと思うが、この生活しかできないので現状維持しかないだろう。

 

 

 

 

 この昂ったテンションのまま家に帰るのもつまらないのでユラユラと適当に歩いていると、ビルに付けられた大画面の映像広告を見上げている人が見えた。

 

 

『今日未明一人の心ない犯罪者によって未成年の少女が殺されました。また、先程被害者が通う高校で五名の生徒が殺されているのが発見されました。警察は同一人物の犯行と見て捜査をしています。犯人は現在も逃走を続けており、個性は未だ詳細不明、しかし非常に危険です。(ヴィラン)名は"喰種(グール)"、この顔を見かけたらすぐに110番、警察とヒーローに連絡を。』

 

 

 普段は広告が流れているはずの画面には楽しそうに笑っている顔が映っていた。それは俺の中学の時の卒業写真である。どこで手に入れたんだと思うが、それよりも大画面に自分の顔が映っているのは初めてのことなので少し照れる。

 

 

「喰種…?物騒な名前、ってヴィランだから当たり前か〜」

「でも見てよ、金髪に真っ赤な瞳、イケメンじゃん!」

「確かにちょっとカッコいいかも……!」

 

 

「制服って、本名は出てないけど未成年は顔も隠されるんじゃなかった?」

「それが適用されないくらい悪いことをしたか、過去の写真とかじゃないかな。どっちにしても怖いねー」

 

 

 真後ろにいる俺に気づかず喋っている女の人計4名は、凶悪なヴィランを物騒、怖いと言いながらも本気で思っている様子はない。これがヒーロー飽和社会である。平和ボケしてんなあと感じるが平和を率先して壊す俺は何も言えない。

 

 写真出てるってことは俺の身元がバレてしまっているだろう。うっかりやらかしちゃったなーと思いつつもお姉さん四人という豪華な夜ご飯を調達する。

 

「オネーサンたち、俺カッコよく映ってる?」

 

 お姉さん四人に後ろから声をかける。

 近くで彼女たちをじっくり観察すると左から、ツイード生地のセットアップのベストとミニスカート、薄手のピンクニットにフレアジーンズ、アームウォーマー付きの白いトップスにグレーチェックのマーメイドスカート、黒のドレスワンピースを着ている。長い髪を巻いていて爪までキラキラしている。もれなく全員スタイルが良い。

 美味しそう、と改めて思いお腹が鳴りそうになった。

 

「え……?」

「ちょ、この顔!」

「に、逃げ……」

 

 振り向いたお姉さんたちは暗闇で化け物でも見たような顔をしていた。焦って脱げた片足のピンヒールすら気にしないで逃げようとする彼女たちを四人まとめて赫子で拘束する。

 

 

__いただきます

 

 

「「「「っきゃあああ!」」」」

 

 若々しい女達の甲高い悲鳴。せっかくの晩餐だ、一人ずつゆっくり食べる。女の肉は何度喰べても美味しい。美味しくて、美味しくて止まれそうにない。

 

「イヤ、イヤアアア!!!!」

「アハ、ハハハ、ハァ……最っ高の晩餐だ!」

 

「嫌、やめて……お願い。」

「ごめんなさい、ごめんなさい。」

「助けて、助けてよ!ヒーロー!」

 

 一人を食べ終わった段階で他三人の悲鳴がどんどん大きくなる。ここはいつもの喰場ではないので人もまばらではあるがいる。ヒーローや警察に通報するのみで誰も近寄って来ないが。

 

「チッ、肉の癖にうるさいんだけど。」

 

 楽しい食事を姦しい声で邪魔された。イラついたので残り三人の内二人をグチャッグチャッと音を立ててすぐに喰べる。カムイが重傷者を置いて俺を捕まえていたらこの三人は喰われなかったのにな、とどうでもいいことを考えた。

 そして、最後の一人に目を向ける。

 

「もう、やめて。何でもするからお願い。やめてください……」

「じゃあ俺の飢えを満たしてよ、その体でさあ!」

 

 そう言って最後の肉を喰べようとするが、後ろから気配を感じたためその場から飛び退く。どうやら攻撃されそうになっていたようだ。

 

「貴様が、先程報道されていた"喰種"か?」

「らしーね」

 

 挨拶をしながらギリギリ視認できるくらいの細い糸のようなもので拘束されそうになるが赫子を操り躱す。カムイといいこの青デニム男といい、ヒーローは拘束系の個性がマストなのだろうか。それはともかく、前世には居なかったヒーローにはとても興味があったので質問した。

 

「ヒーローだよな、せっかく会ったんだ名前教えてよ!」

「私の名は"ベストジーニスト"。覚えておけ、そして牢獄で反省するがいい!」

「ふ、ぐっ」

 

 ソイツは名乗ると俺に攻撃を仕掛けてきた。バシンッバシンッと赫子をしならせ、対抗するが全て華麗に避けられる。俺の赫子を使った移動と攻撃に伴って壊れたビルの瓦礫を糸で操り俺にぶつけてくる。こういう戦い方の相手は珍しい。女を持ったままなので非常に戦い辛いが、ひたすら避ける。

 

「危な……」

「これを避けるのか。未成年だからと侮っていたのは認めよう、貴様はこの場で捉えねば。」

「褒めてる?よね、ありがとう!確かに俺は褒めて伸びるタイプだっておじいさんも言ってたんだ。」

「何を、」

 

 赫子でジャンプしてまだ倒壊していないビルの屋上まで逃げる。途中でジーニストは明らかに女の方に糸を向けるので一早く人質を助けたいということが分かった。

 

__女は盾になる、そこの一点のみでかなり動きやすくなった。

 

「俺さ、本当は死体でも良いんだよね。」

 

 食べる肉は、と言いながら屋上から捕らえていた女を離す。女は高所から地面に向かって落ちて行く。ヒーローならこれを無視できないだろう。

 

 

「死なせるか____キャッチングクレイドル!」

 

 

 予想通り広範囲の技を出した。ビルとビルの間に無数の糸をネットのように造形し、女の体を丁寧に受け止めた。その隙を狙い赫子をジーニストの腹に向けて刺突するが糸を盾のようにして完全に防がれる。カムイの時と同じ手では通じなかった。

 

「あっれ……カムイくんより全然強いな。

 結局一つ食べ損ねただけだ。」

 

 本当はヒーローを殺してから二人まとめて食べようと思ったのだがそんなに上手くはいかなかった。人質の方に糸を使っているのに防御にも使えるくらい容量があるのか。

 

「欲を掻くから綻ぶのだ、粗製デニムのようにな!」 

 

 そう決め台詞のようなものを言って襲いかかってくる。さらに、糸を渦巻きのように操り刺突してきた。俺がカムイにしたように横っ腹を抉られた。

 

「ッ痛いな……化け物でも痛いんだよ。」

「貴様に食べられた被害者の痛みだ!」

 

 ジーニストはやっと俺に攻撃を当てれたからか余裕を取り戻しているようだ。が、俺の肉への執着を舐めてもらったら困る。

 

「なぁ、知ってる?腹と背中がくっつきそうな空腹を、頭おかしくなるくらいの飢餓感を。無機物ですら肉に見えてるんだ。犬に齧り付いたことだってある、喰いたくない人間もいた。でも駄目なんだ、俺はどこまでいっても喰種なんだ。」

「何を……?」

 

 無数の糸に捉えられている肉に向かって屋上から飛び降りる。そして気絶している女の肉に喰らいつく。うん、やっぱり美味い。

 

「や、やめろおおおお!!!」

「このむぐっ、ふぅ。」

 

 

__ごちそうさまでした

 

 

 俺の食事を止めるためであろうジーニストの攻撃を避けずに糸に体を貫かれながらも、食事を終えた。

 

「ハハハ、やっぱり女の肉は何回食べても美味い!」

「また、守れなかった……」

 

 今日はたくさん食べれたので飢餓感はなくなっていた。ジーニストは膝を着いて衝撃を受けている様子だ。その姿を見ながらそろそろ潮時かなと思い逃げる準備をする。

 

「その血に塗れた口元は……その年で今まで何人喰い殺した!?」

「アンタは今までした食事の回数を覚えているのか?」

「貴様……!せめて捕まえて被害者たちの無念を晴らす!」

「肉に無念もクソも無くない?」

 

 至極当たり前の答えを言ったが、何故かジーニストは激昂していた。こういうやり取りで人間と喰種の決定的な溝を改めて感じる。

 ジーニストは俺が羽織っている上着を操り拘束した。糸を放出する個性ではなく服の繊維を操る個性か。このままではまずいと思い上着を脱ぎ捨てる。が、その隙を狙って腕に攻撃が掠り、そして太腿を貫かれる。彼が本気になっているのを感じた。

 

「痛ってえ……酷いなヒーロー、串刺しなんて。俺じゃなかったら死んでたよ。」

 

 そう言いながら貫かれた穴ぼこだらけの体を再生させる。栄養をたくさん摂っていたからか完璧に再生できた。

 

「その触手が個性じゃないのか。いや、それとも個性の副産物か……食人についても分からないことだらけだな。」

 

 彼は俺の個性共に、人を食べることにも疑問を抱いているようだ。この世界には喰種の知識はないから捕食器官なども分からず終いだろう。

 逃げる隙を窺うが、どうやら俺を殺しても逃がさないくらいの気迫を感じた。

 

「殺気か。本気のヒーローだァ……!」

 

 カムイは人質がいた上に俺が未成年なことに気づいていたんだろう。明らかに全力では戦っていなかった。しかし、それはジーニストも同じはずだった。

 人質は生きているから人質なんだ、殺してはいけない。喰種捜査官と戦っていたからよく理解していたはずなのに、俺の飢えがまた俺の未来の邪魔をした。しかし幾度となく経験したことのあるこのピリついた空気はワクワクする。

 

 

___本気のヒーローは厄介だ。でも、俺は生きなきゃいけない。

 

 

 改めてそう思い赫子を構えるが、

 

 

 

___ドロン!

 

 

「ジーニスト!」

「……エッジショットか!」

「貴方が"喰種"と交戦しているという情報を聞きました。俺の出番ではないと思ったが、途中で手負いのシンリンカムイを見つけたため少々心配になり応援に来ました。」

 

 その判断は正しかったようだ、と現れたのは古風な衣装をまとったヒーローだった。ジーニストと睨み合って相手の出方を探っていたが、これで一対二になってしまった。しかしそんなことより、

 

「その格好って忍者だろ?漫画で見たことあるやつだ、カッコいいなあ……!」

「何だこのヴィランは、やり辛いな。まだ子供だ。」

「油断するな、子供に見えても立派なヴィランだ。残虐、その一言に尽きる。」

 

 俺が本物の忍者に目を輝かせている間に、二人とも本気モードに入ってしまった。彼らの個性は似ていていずれも武器は細いのが厄介だ。次々と繰り出される攻撃を防ぐだけで精一杯だが、死にたくはないので反撃の隙を窺う。

 

「ヒーローが幼気な学生相手に一対二かよ?」

「"喰種"は学生、か。」

「貴様が今まで未来ある子供の学び場に紛れ込んでいたことにゾッとするよ。」

 

「ハッ、俺が人間に紛れられたことなんて一度もねえよ!

 さあ、死んでくれ____鱗赫(りんかく)!」

 

 二人のヒーローにはあまり近づきたくなかったので、赫子を鱗状態にしてその鱗を飛ばす。それは二種類あり、一度刺さったら抜けにくい返しのようなものが付いている鱗と鋭く尖った鱗がある。今の俺の唯一の遠距離攻撃だ。

 

「危ない!」

「っく!……助かりました。」

 

 ジーニストは回避しつつ、エッジショットの服の繊維を操り俺の攻撃から逃した。一度刺さったらジワジワと痛みが続いたり、皮膚を貫く鋭さを持つが刺さらなかったら、ただの硬い物質に成り下がってしまうのだ。

 

「次はこちらから行く____忍法千枚通(せんまいどお)し!」

 

「ぐはっ!」

「……やったか?」

 

 薄くなったエッジショットに肺に小さな穴を開けられた。その後動いたからか血飛沫が飛んだ。樹木や糸で攻撃されるより断然痛かった。しかし、俺の特性として防御は紙だが再生力は強い。血管、そして血の流れを意識してすぐに肺の穴を塞ぐ。

 

「ハァ……疲れた。そろそろ(まず)いな。」

「何故動ける!?」

「ソイツは再生能力を持っている。拘束が一番効くはずだが、あの自由自在に動く触手のようなものに防がれる。どちらも厄介だ。」

 

 攻撃しては防ぎ、防いでは攻撃の隙を伺う。そんな事を繰り返して何分経っただろうか、実際は数分かもしれないが俺には数時間にも感じられた。気づいたら屋上の端まで追い詰められ、だんだん赫子の動きが鈍っていく。その隙を狙われてジーニストに拘束されてしまった。

 

「エッジショット、今だ!」

「っやば、」

 

 急いで拘束を振り払うために赫子で地面を弾き、屋上から背中を下に向けて飛び降りるが、エッジショットは落ちていく俺の真上まで追いかけてきた。

 

「了解した___忍法破砕紙絲(はさいしし)!」

 

「ぐっ、ああああ!!!!」

 

 攻撃を受け、落ちながら自分の体の内部が破砕されたことが分かった。再生しようとするが上手くいかない、また焦って着地も失敗し地面に叩きつけられた。

 

「ゔっ、ごふっ……」

 

 口から逆流したであろう大量の血を吐き出した。今首切られたら死ぬなと焦っているのか呑気なのか分からないことを考える。

 

「もう諦めろ、若きヴィランよ。」

「捕まるのだ、そして貴様の罪を償え。」

 

 屋上から地面まで降りてきたジーニストに改めて拘束される。そして言われた二人のヒーロー言葉に全身痛む体を無理矢理動かし、見上げて問う。

 

「……ハハッ、そう言うのは死んで償えが定番じゃないの?」

「死で償える罪などあるものか。」

「"罪を憎んで人を憎まず"だ。」

「何それ?」

「有名な外国の思想家の言葉だ、知らんのか?」

「俺まだ高校生なったばっかだしー」

 

 高校生か、とヒーロー二人は考え込む。エッジショット(仲間)が来るまでは激昂して殺す気だったはずのジーニストも落ち着いてしまっていて、何故か(化け物)と会話を続ける。平和ボケしているのは市民だけではないのかもしれない。

 

「駄目だろ、目逸らしたら。

……人喰いの化け物相手にしてるんだからさぁ!」

 

 会話の間に辺りを見渡して俺から目線を外したエッジショットに拘束の隙間から出した赫子を向ける。しかし、

 

「私たちが油断してると思ったか!」

 

 と、普通に防がれる。やはりヒーローは日頃から(クズ)を相手にしてるだけあって不意打ちは通じなかった。

 

「オニーサンら良い人だから教えてあけるけど、化け物は拘束されていようが四肢をもがれてようが止めは刺しておいた方がいい、よ!」

 

 脳や心臓さえあれば生き延びる生物だっているんだよ、と言いながら地中に潜り込ませておいた赫子でエッジショットの背中を地面ごと貫く。

 

「グッ……!」

「エッジショット!」

 

 自分を糸のように薄くできる個性だったら死にはしないだろうが、これで時間は稼げる。俺は緩んだ拘束から抜け出し逃げ始める。

 

「ジーニスト、俺は、大丈夫、なので……」

「分かった、死ぬなよ。

……待て!逃さないぞ、貴様だけは!」

 

 エッジショットの傷を致命傷ではないと判断したからか、ジーニストはそのまま追いかけてくる。

 逃げた先でウーウーという音が聞こえてきていつの間にか武装した警察とパトカーに四方八方を囲まれた。時間稼ぎをしていたのは二人のヒーローの方だったのか。

 

「大人しくしろ、少しでも動けば射殺する!」

「待て、このヴィランは未だ子供だ。」

「ジーニスト!止めないでください!」

「シンリンカムイ、ベストジーニスト、エッジショット、この実力ある三人から逃げ切る個性と食人という危険性を考慮して上官から射殺許可は下りてます。」

 

 

「だが……何故人を食べるのかも聞けていない!」

 

 

 警察とジーニストの間で意見が揺れているようだ。このまま再生しきれていないボロボロの体で逃げきれるとは思っていない。

 

「おい、動くな!撃つぞ!」

「嫌だね。」

 

 誰が人間の言葉に従うか、と動くと言葉通りバーンと音を出して肩を銃で撃たれた。その一発がきっかけになったのか次々に銃弾を撃ち込まれる。

 

 

「グッ、ハハッ……そうだよ、化け物は、殺す、べき……」

 

 

 そう言い最後の力を振り絞って笑った瞬間、いつの間にか(黒い靄)に飲み込まれた。最後に見たのは驚いた表情をする俺の顔を瞳に映してこちらに手を伸ばすヒーローの姿だった。

 

「待て、行くな……喰種!」

 

 

 

 

__もう大丈夫、僕がいる。

 

 





【追記】
 誤字報告ありがとうございます。ここで出た鱗赫は赫子を鱗状態にした原作の名称を借りたオリジナル技になります。羽赫はまた別で出す予定です。指摘ありがとうございます。
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