喰種のヴィランアカデミア   作:パンダ丸

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4話 敵連合開幕

 

 

 

 敵連合に加入した日から数日が経過した。

 

 先生が食事を用意してくれるのでわざわざ狩りに行く必要もなくある意味ヒモ生活を送っていた。狩りは狩りで楽しくて好きだが最近は喰っちゃ寝生活から抜け出せていなかった。今日もBARに昼から居たが夕方までほぼ動いていない。そろそろ学校らしいことはないのかと考える。

 

「俺の初授業は何すんの?」

 

 授業、体育、個性カウンセリング、道徳の講演会など、体育以外嫌いだからあまり自ら進んでやりたくはないが高校を卒業するためなら仕方なくでもやってやろう。

 

「"雄英高校襲撃"だ。」

「ふーん。」

「驚かないんですね。」

 

 何で雄英を襲撃するんだろうと疑問に思うが、ヴィラン活動兼授業なのでどうでもいいかと考え直す。

 

「雄英って人間沢山いんの?」

「いるだろ。」

「ヒーローも沢山いますね。」

 

 弔の答えにワイングラスを拭いていた黒霧が付け足す。あんまり興味なかったが確か雄英はヒーローを育成する高校だった気がする。俺たち敵連合とは正反対の学校だ。

 

「ヒーローか少し楽しみだな

……で、俺は何すればいーの?」

「適当に人食ってろ。」

「雑!」

 

 俺が雑な扱いに憤慨していると、お前のその行動だけで奴らを恐怖に陥れることができる、と褒められた。そして弔は腕を広げてケタケタ笑いながら言う。

 

「雄英で教師をしているNo.1ヒーロー・オールマイトを殺し、レンが生徒らを食らう。雄英の信用は地に落ちる!

 

 ヒーロー社会崩壊の始まりだ……!」

 

 

 

 

 

 

 それから数日後。昨日は弔と黒霧が二人でどこかに出掛けていたが今日は朝から暇そうにしていた。俺は常に暇なのでBARの横の物置部屋に放置されていた三人掛けのソファを持ち出して寝そべっていたが、バーカウンターで飲んでいた弔に呼びかけられた。

 

「レン、外行くぞ。」

「めんどい……」

()()だ。」

「授業なら仕方ないかぁ……」

 

 ()()()()のために渋々起き上がった。話を聞くに雄英襲撃のために人員を増やす授業らしい。いわゆる悪意のスカウトだ。どんな(クズ)に出会えるだろうか。

 

 弔と悪い奴らが潜んでいる裏の繁華街の更に奥、工場の跡地に行く。どうやら先生の伝で招集自体は終わっているらしくヴィランの集団が居た。黒霧は他にやることがあったらしく一緒に移動はしなかったが、先にそこに着いていた。というか俺たちもワープすればよかったのでは、と思ったが余計なことを言うと弔が不機嫌になりそうだったので黙っておいた。

 

「ここに集まってもらったのは他でもない、平和の象徴オールマイトを殺すための力を貸してもらいたいからです。」

 

 と、黒霧が説明を始めた。オールマイトを殺すという実現不可能にも聞こえる言葉をヴィラン共はすぐには飲み込めないようだった。しかし、数秒後には口元に笑みを浮かべる無鉄砲共の姿があった。その中でも冷静な奴が黒霧に質問した。

 

「オールマイトを殺す、か。凄え魅力的な言葉だが勝算はあるのか?」

「ええ、まず雄英高校に襲撃、そしてそこで授業を行う生徒を人質に取りつつオールマイトを殺す。オールマイトの相手はこちらで行いますので貴方方には子供たちの相手をお任せします。」

「へぇ、雄英か。良いねェ!」

「ヒーローも生徒も嬲り殺しだァ!」

 

 黒霧の言葉に、そして「雄英」という憎悪の対象に連中は盛り上がる。しかし、クズの中には脳みその中身が詰まっている奴も居るわけで、

 

「オールマイトの相手ができる奴なんかいるのかい?」

 

 と痛いところをつかれる。いや、策はあるし完璧だがこちらとしては答えたくないとさっき言っていた。ちなみに俺はその相手について知ってはいるが、詳しくは帰って会わせてからとのことだ。俺より遥かに強いであろうオールマイトを殺せる奴というのは興味がある。

 

「びびってんのか?」

「あ?」

「安心しろよ、俺たちが見せてやるから。平和の象徴が殺され、ヒーロー社会が崩れるところをさァ!」

「……」

 

 弔の質問に答えていない演説にヴィランたちの心はグッと掴まれたようだ。弔は言葉を続ける。

 

「そして、奴らに言ってやるのさ。暴力は暴力しか生まないのだと!お前らが築き上げた平和は見せかけのものなのだと!

 そうしたら次は俺たちの時代だ。制限された個性の使用、自由に力を振るうのは楽しいだろうなァ?今までお前らを馬鹿にしてきた平和ボケした市民たちも、暴力で解決してきたヒーローたちも全て!地に堕ちるのさ!可哀想になァ?

 

___これは、自由を手に入れるための正当な行為だ。奴らに見せつけろ!お前たちの力を!」

 

 弔の言葉に黙って聞いていたヴィラン共が昂るのが分かる。そして「うおおおおおおお!」と叫んだ。スカウト成功のようだ。

 

「襲撃は三日後、黒霧(コイツ)の個性で雄英までワープするからまたここに集まってくれ。」

 

 ヴィラン共は皆従順に頷く。この短時間でよく躾けられたものだ。破茶滅茶で筋の通っていない言葉だったのにも関わらず彼らを惹きつける弔のカリスマ性を感じる。

 そんな中、一人が俺を指差して発言した。

 

「つーかよ、一つ気になってたんだがそこのガキは何だ?制服なんか着てガキの遊びじゃねえんだぞ。」

 

 今日は授業なので入学式以来行っていない前の高校の制服を着ている。敵連合は制服も()()だからだ。それの何がおかしいのか分からなかったので首を傾げる。

 

「……?」

「何か言えよ。」

「学校の授業だからな。」

「ハァ?」

 

 ハァ?とは何だ、会話ができない。人間の癖に知能が獣以下なのだろうか。心底理解できないという顔をする男に苛立つ。コイツはスカウトされただけで友達でもないので殺してもいい筈だ。

 

「弔くん、コレ喰っていいよな?」

「落ち着いてください、レン。」

「……一人くらい良いか。確かにお前はガキだが舐められてちゃあ主犯格としての面子が立たねえ。」

「死柄木弔!?」

 

 黒霧が俺を諌めようとするが弔の許可があったためそのまま男を喰うことを決めた。異常な空気を感じたのか男が俺に殴りかかってくるが赫子を出してあっさり捕まえ締め付ける。

 

「ハハッ、捕まえたァ!」

 

 弱いな、と見つめていると弔からの強い視線を感じた。先生からもらう食料は肉の状態に加工されているので生きたまま弔の前で捕食するのは初めてだった。

 

 

___いただきます

 

 

「や、やめ……ぐっあああ!」

 

 恐怖と痛みが合わさった悲鳴を聞きながらジワジワと喰らう。腹の肉に辿り着くころには叫びが止み絶命していた。下から食べたからか男の血が俺に降りかかった。見せしめのために、骨などを残し喰い散らかした状態で死体を放り投げる。めちゃくちゃ美味いわけではないが不味くはない、それなりの味だった。赫子を仕舞い辺りを見回すと、跡地にいた全員の視線が此方を向いていた。

 

「ハッ、化け物見るような視線をどうも。」

「ような、じゃなくて化け物だろ。

……生きたままは初めて見たが話に聞くよりエグい画だな。」

 

 挨拶すると弔にツッコまれた挙句どうでもいい感想をもらった。しかしエグいと言う割に楽しそうに、可笑しそうに目は輝いているのが印象的だった。

 

「いやいやいや、何でアンタらそんな冷静なんだよ!?」

「い、今何が起こった……?」

「人間を生きたまま丸ごと食ったぞ……」

「ば、バケモンだろ……」

 

 クズ共といえど食人はかなりの衝撃だったらしい。体が震え、目に映る恐怖が隠しきれていない。これから平和の象徴を殺すんだからこのくらいスルーして欲しいものだ。

 

「これで分かったろ、ガキだからって舐めてかかるな。雄英の生徒らも警戒しろってこった。」

「まとめ方適当だな。」

 

 今の出来事を誤魔化しているのか正当化しているのか分からない言葉を弔が挟む。

 

「お、思い出した。金髪に赤い瞳と制服……コイツこの前指名手配されてた"喰種"だ!」

「……」

 

 ヴィランもしっかりニュースは見ているらしい。しかもちゃんと詳細を覚えている。先生が居たら褒めていたことだろう。

 

「あり得ねえ、あの報道は本当だったのか。」

「俺は比喩だと思ってぜ。」

「でもよ、タルタロスに収容されている犯罪者とかには似たような奴だって居ただろ。」

「そ、そうだな。」

 

 自分たちを無理矢理納得させ恐怖を押し殺したようだった。これから一緒に戦いに行くのだからいちいちビビられてもこっちが困る。喰べたくなってしまうだろう。

 

「綺麗な(ツラ)して何て所業だ……でも、俺たちだってこれから好きに人を痛ぶれるようになるんだ。この人みたいに!」

「あ、ああ、そうだな!自由に民間人を殺せるぜ!」

 

 ヴィラン共の顔に浮かぶのは恐怖の次は歓喜だった。忙しい奴らだな、と思うが奮い立つのは悪くない。士気が上がれば弔の機嫌が良くなるし襲撃も成功するだろうから。

 

「お前ら食われたくなかったらあんま腹空かしてるコイツに近づくなよ。面倒だからな。」

「じゃあな、ヴィラン(非常食)共。」

 

 場が落ち着いたところで解散し、俺と弔と黒霧の三人はワープでBARに戻った。ワープする寸前の歓喜から恐怖に戻ったヴィラン共の青褪めた顔が面白かった。

 

 帰ってから俺はスカウト関連で特に何もしていないことに気づいたけどまぁいいかと納得して頷いていた。

 

「ハァ……あんなこと言って逃げ出したらどーすんだよ。」

「逃げたら逃げたで喰う。」

「そういうことじゃねぇ……雑魚だがそれなりの戦力だぞ?」

 

 非常食という言い方が良くなかったようだ。しかし、俺としては雑魚共の前で本性を隠して接待行動など冗談じゃない。ストレスで全員喰う未来が見える。そんなことを考えているとやっぱり黒霧が間に入って弔を諌めてくれた。

 

「まぁまぁ、落ち着いてください死柄木弔。確かにレンの蛮行に恐怖している者も多いですが、その分惹きつけられた者も居ましたし……」

「……そうだな、まぁ思ったより集められたし良しとするか。」

 

 弔は黒霧の言葉に納得して落ち着いた。黒霧はとても良い自慢の友達だ、人間なのかは知らないが。

 

「そんなことよりあのオールマイトを殺せるっていう奴に会わせてよ。」

「ああ、黒霧。」

「かしこまりました。」

 

 そう言って黒霧がモヤを広げて何かを出す。それは脳が剥き出しで筋骨隆々の大男だった。人間らしい見た目ではない。

 

「人間?……あんま美味そうじゃないな。」

「レンは人を美味しそうかどうかで判断してるのですか……」

「"脳無"。改造人間だ、食うなよ。」

「一応同じ生徒だし喰わない……多分。」

 

 少し自信はないが美味そうじゃないし人間という判定が怪しい部分もあるので喰うのはやめておく。

 

「よろしく脳無先輩。」

 

 と言って握手しようと手を差し出すと、脳無は俺の手を握った。俺の手は強すぎる力にグチャッと弾けた。

 

「?」

「……」

「お前やっぱり馬鹿だろ。」

 

 よく分からなかったので首を傾げつつも、右手を再生して距離を取った。弔には呆れられた。

 

「脳無はオールマイト並みのパワーとスピードになっている。お前のことは果物みたいに握り潰せる。」

「俺の手を握り潰す意味は?」

「顔がムカついたんじゃないか?」

「酷い。」

 

 自我など無さそうな雰囲気してる癖に、と不満タラタラな俺はBARのソファで不貞寝した。そんな俺を見て弔は馬鹿にしたように言った。

 

「やっぱガキだな……そういえばお前何歳だ?」

 

 その言葉を聞いて俺は考え込む。病室でおじいさんに15歳の誕生日おめでとうと祝われたきり俺の歳を数える人間はいなくなったが、あれから1年経っただろうか。日付など意識したことがなかったので分からない。

 

「忘れた。」

「レンと出会ったのが高校の入学式当日だったそうなので15〜16歳でしょう。」

「思ったより下じゃねえか。」

 

 15〜16なのは俺も分かっていたが黒霧が補足してくれた。黒霧は不明、弔は約20歳らしい。二人とも年齢があやふやなあたり根っからの裏の人間らしい。というか弔は同級生より先輩だった。

 

「レン、誕生日は?」

「さぁ?戸籍あるし見れば分かるけど。」

「まぁどうでもいいか……というか戸籍あるんだな。」

「普通の人間の腹から生まれたもので。」

「内側から食べて出てきたのか?」

「弔くんは俺を何だと思ってんの?」

 

 と、適当な会話を続ける。

 そんな中、弔と同様に黒霧も戸籍があるというのが気になったようだ。彼の話によると、戸籍があると警察にすぐ素性がバレてそれに付随する個性届けから個性の詳細を知られてしまうのは少し痛いらしい。もちろん黒霧と弔は戸籍も個性届けも提出していないようだ。

 

「個性……ヒーロー三人と戦ったし今更だけど。」

 

 今頃捜査とかされてるんだろうなぁと考える。喰場に連れて行った女以外に味見して殺してしまった何人かについてもニュースで報道されていたので真剣に捜査されていそうだ。その話を二人にすると眉を顰められた。

 

「レンが大々的に報道されてんのは知ってたが……ハァ、お前襲撃決行の日までは狩りは禁止だ。」

「嫌だ。」

「嫌だじゃねえ、ヒーローに警戒されてるだろ。

 この数日間先生がお前に肉与えといて良かったな。食料は切らさねえって言ってたしそれで我慢しろ。」

 

 確かに先生にはお腹いっぱい肉をもらったそれなりの恩はあるし、弔と一緒にいるのも楽でいい。なので渋々だが納得した。

 

「……襲撃終わったら狩りはする。」

「ああ、そこまで制限しねえ。ここは自由が売りの()()だからな。」

「ハハッ、最高(最悪)の学校だ。」

 

 敵連合……喰種にとっては悪くないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹すいた。」

 

 そして襲撃当日。俺はというと腹を空かしていた。定期的に摂取できていたからか最近は先生から肉を貰うのを忘れていた。その上今日はいつもより早く起きなければいけなかったのだが、寝坊してしまったため時間もなかった。

 

「黒霧、肉……」

「食べてる時間はありませんよ。貴方が起きたのは襲撃の五分前です。」

「クソだな。」

 

 お腹が空いているので苛立つ。近くに集まっている手下共(と弔が呼んでいる奴ら)を喰いたくなる。

 

「えっとレンくん……?」

「めっちゃ尖った歯見せつけないで……」

「食べないでくださいっす。」

 

 と、周りにいた奴らに言われた。こいつらにはレンくんと呼ばれている。どうやらさん付けするには年下すぎるが呼び捨てして機嫌を損ねたくないという折衷案らしい。最後の奴に関しては恐怖で敬語になってしまっている。

 

「食べられたくない?」

「もちろんっす、駄目です!」

「俺知ってるぜ、それフリって言うんだろ?」

「ぎゃああ違います!」

 

 半分本気、半分冗談で赫子を見せつけていると見かねた黒霧に止められ何かを渡される。

 

「何これ?」

「貴方の先生からです。一応仲間なので衝動的に食べてしまわないように、と。」

「ハァ?」

 

 渡されたのは黒の無機質な口輪だった。自由にしていいと言ったのに制限するとは、と俺が怒っていると黒霧は仲間を食べなければいいし自分で外せるから好きな時に外していいと伝えてきた。そしてさらに弔が付け加える。

 

「要はお前の制服が悪い。そんなんだから舐められるんだよ。」

 

 お前はこれからヴィランとして活動するときは制服着るんだろ?と問われる。どうやら高校の制服を着てガキだと舐められるのを防ぎたいらしい。ヴィランっぽい格好を、ということだった。

 確かに人間に口輪は趣味が悪い。俺は人間ではないので良いが。学生として制服は譲れないので今回それ以外は俺が折れてあげることにして口輪を装着した。準備完了だ。

 

 

「今回襲撃するのは雄英高校ヒーロー科1年A組。授業の担当教師はプロヒーロー・13号、イレイザーヘッド、そして平和の象徴オールマイトだ。」

 

 弔が手下共に言った。彼らはその言葉に奮い立ち気合いを入れて応じた。

 

「じゃあ俺たちは敵連合1年A組か。

 いっぱい俺を知ってもらわないとなァ!」

 

 

 __いざ、襲撃(実習)開始。

 

 

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