喰種のヴィランアカデミア   作:パンダ丸

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 注意!原作キャラ死亡表現があります。愛を込めて書きましたが、死ぬのは予想外の推しキャラかもしれません。それはそれで……という方のみの閲覧でお願いします。



6話 個性「喰種」である。

 

 

 脳無を食べ急に苦しみ出した赤赤孿が立ち上がった時に出した赫子は、今までの透き通った血液のような色とは違い紫紺と赤色に変わっていた。顔の左半分を覆う同色のマスクのようなものが現れ、赫子には曲がった棘のようなものが規則的に着いている。

 

 

___まるで、巨大なムカデのようだ

 

 

 誰かが呟いた。孿は赫子をしならせてズドンッと地面を打つ。その一撃だけで地面が割れる。

 

「ハハッ、ハァ、ハッ、アッハハハ……ケーキッ!!」

 

 そう言って赫子を振り回す。その攻撃はヒーローとその卵だけではなく仲間のはずの死柄木弔にまで当たった。

 

「ってぇ、おいレン!何してんだッ!」

「味方まで……?」

「様子がおかしい、みんな離れろ!」

 

 オールマイトは生徒達を下がらせ庇いながら反撃の隙を伺うが暴れる赫子によって距離を詰めれない。死柄木弔は再生した脳無を盾にして、黒霧を隣に控えさせた。

 

「__CAROLINASMASH(カロライナスマッシュ)!」

「ゔっ、アハ、アハハッ!」

 

 オールマイトの放った技により赫子の一部が吹き飛び、右腕が折れて有り得ない方向にねじ曲がる、が

 

「君も再生持ちか……」

「ハァ、ハハッ……はー、ズドン」

 

 体を一瞬で再生しズドンと自分で口にしながらオールマイトに物凄いスピードで赫子を振り上げ攻撃する。

 

「グハッ……ハァ、これは拙いな……」

「おい、黒霧……あのパワーとスピード、あと色合い。脳無みたいじゃないか?」

「それに、再生の速さも前回見た時より速くなってる気がします。」

「食べたことによる強化か……?」

 

 脳無を盾にして安全圏に移動した死柄木弔と黒霧は平静を取り戻し思案する。

 赤赤孿に起きた変化、その推測は正しかった。脳無の細胞を取り込み吸収して自分の糧とした。そして、その影響は赫子に現れる。

 

「脳無と合わせりゃ最強だぞ……

 ただでさえ残念な頭がもっと空っぽになってんのは最悪だが。」

「ええ、下手したら私たちが食べられそうです。」

 

 

 

「アハッ……ドーン……アハ、ハッ」

 

 視界に入っていない死柄木弔と黒霧は標的にはならずオールマイトにひたすら攻撃を続ける。彼は後ろに生徒らを庇っているため退けずに攻撃を受け続ける。地面が割れ逃げ場が少なくなった。オールマイトが膝を着いた隙に赫子が切島を襲い彼の意識を刈り取った。そして彼の体は血に沈む。

 その状況を打破しようとした生徒の一人が動く。彼は激怒していた、自分の邪魔をするヴィラン共に。

 

「___榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)

 オールマイトばっか狙ってんじゃねぇ、俺が相手だァ!!」

「かっちゃん!?」

 

 爆豪は自我を失った化け物の標的を自分に変更させようとして大規模な爆発を当てた。タメが長かったため避けられたが、狙い通り孿は彼に攻撃を仕掛ける。

 

「……ケーキ、は?」

「クソイカレ野郎ッ!」

 

 赫子による連続攻撃を爆破で防ぎながら応戦する。しかし、

 

「アハッ……ズドーン」

「ガッ!」

 

 瞬きした一瞬で背後に移動され後ろから突かれて脇腹を抉られる。体勢を崩してしまい赫子に捕まる。

 

「爆豪少年!」

「……脳無。」

 

 意識のない切島を遠くに運んだオールマイトが爆豪を助け出そうと走るが、死柄木弔の指示によって動いた脳無が立ち塞がり殴り倒される。赫子は爆豪の体を折るように締め付け続ける。

 

「アハ、ハハハッ!」

「ゔっ……」

 

 爆豪の額は両腕が折れるような痛みにより汗が出るが、それでも耐えるようなくぐもった声のみで悲鳴を上げないのは彼のプライドの高さだろう。

 爆豪がここまでやられている姿___彼の敗北、という信じられない姿を見た緑谷、そしてクラスメイトを助けるために轟が動いた。

 

「かっちゃんを放せぇ___SMASH!」

「爆豪ッ!」

「ゔあっ……ハ、ハァ」

 

 超スピードとパワーで緑谷が孿の顔を殴り、締め付けが緩んだ隙に爆豪を赫子から救出し離れた場所は移動させた。そして、一瞬の内に轟が孿の足元から首までを凍らせる。

 殴られた孿の額から血が噴き出し、彼は唯一動かせる頭をユラユラと動かす。まともに超パワーを人間に当ててしまった緑谷は慌てて、化け物の心配をする。

 

「ど、どうしよう……リカバリーガール呼ばないとっ!」

「落ち着け緑谷、コイツは再生持ちだ。それにこれで終わりだとは、」

 

「ギィ、ヤアアアア!」

「は……?」

 

 生存本能の強い喰種がこれで終わる筈がなかった。赫子を再度出し自分の体ごと貫いて氷を砕く。そしてグチャッと音を立てながら自分の赫子を喰らう。孿は嘔吐(えず)きながらも喰べ続け、貫いた部分を再生する。

 

「……い、あ、まい?……甘い、ないッ!」

 

 氷から脱出する際に犠牲にした右腕は再生できないようだが、体の重心が定まらない中でもフラフラと緑谷、轟に近づく。

 

「あー、グサリ……?」

「逃げ、」

 

 禍々しい色の赫子から予備動作もなく先端部分から鱗が放たれた___鱗赫だ。

 

 緑谷と轟は何とか避けるが、孿は二本の赫子を頭の両斜め上で構えて機関銃(マシンガン)のように連射し二人の逃げる方向へ追い続けた。緑谷はボロボロの腕を庇いながら逃げるもその動きは遅く、当たりそうになる。轟はそんな緑谷を自身の氷で庇いながら自らも逃げる。そしてついに、

 

「ッ!」

「と、轟くんっ!」

 

 個性の使いすぎにより体が冷え切り動きが鈍っていた轟の左腕に鱗が命中した。本来なら刺さった部分が痛む程度の技、しかしそこには孿本人も知らない効果があった。

 

「……何だこれ、クソッ、動かねえ……」

「血は出てない、毒?」

「体を麻痺させる系の何かだろ。俺は大丈夫だ、痛みはねえし右側が使えりゃ問題ねえ。」

「……でも、」

 

 孿の「先生」は本人に内緒で密かに実験をしていた。彼に与える肉に麻痺毒を含ませていたのだ。その肉が彼の細胞となり赫子となった。

 食した当時、刺激や痛みに慣れている彼は首を傾げる程度で特に真剣に考えることはなかった。彼の中身の詰まっていない脳が戦いにおいて初めて利となった場面であった。

 

「緑谷、この状況じゃ長期戦は不利だ。一気に決めたい。」

「うん、それにオールマイトもまだ戦ってるからあっちに行かせたくもないね……かっちゃんも心配だし。」

 

 オールマイトは緑谷らとは少し離れた場所で脳無と肉弾戦を繰り広げていた。そして爆豪は全身の骨が痛み、それに伴い気を失っていた。

 緑谷と轟は状況を確認して化け物と相対する覚悟を決めた。

 

「両腕は使えない、なら()で、

 ___SMASH!!」

「これで終わらせる……!」

「グッ……」

 

 緑谷は足でフルパワーの蹴りを轟は氷を右腕に固めて殴る。それぞれ初めて挑戦した個性の使い方であった。暴れる赫子に掠りながらも孿の腹、頭にクリーンヒットした。彼は吹っ飛ばされて壁に激突して動かなかった。

 

「レン、食え!」

 

 今度こそ倒した、ように見えた。

 どこからか投げられた脳無の片足と片腕を、本人の意識とは別に動いた赫子が捕食した。死柄木弔が脳無に命じて孿に与えたのだ。

 彼は再度得た力を糧に再び動き出した。

 

「少し焦りましたが、まだ戦えるようですね。」

「フフッ、永久機関の完成だな……」

 

「余所見……なんて余裕じゃないかっ!」

 

 隙を窺っていたオールマイトは脳無、死柄木弔、黒霧の三人が孿の方に気を取られている内に超スピードで動いた。迷うことなく死柄木の方へ行ったのは司令塔がいなくなれば脳無も停止すると思ったからだ。

 

 しかし一瞬の内に体を再生した脳無も素早くオールマイトと死柄木弔の間に入り盾となった。

 

「余所見ねぇ……あっちが心配なのはお前の方じゃないか?」

 

 その言葉は間違っていなかった。まだ年若いとはいえ凶悪で凶暴なヴィラン、そんな相手をヒーローの卵たちにさせるのは己の不甲斐なさゆえであり歯痒かった。

 

 

 

 そして双方共に戦いはヒートアップしていく。

 

 緑谷&轟VS孿の攻防は最初は一進一退だったものの、だんだんと一方的になっていった。

 

「……あっ!」

「あーズドン」

「おい緑谷……ヴッ!」

 

 両腕両足がまともに動けなくなった緑谷を轟が庇いながら戦っていたが、ついに緑谷が転びそれに気を取られた轟も赫子に太腿を貫かれてしまった。そして身動きの取れない緑谷は赫子に弾き飛ばされ、数分前に孿が衝突した壁に今度は自分がぶつかってしまった。二人とももう動けない。

 

「肉……ケーキ……肉……ケーキ……?」

 

 

 

 

 一方、オールマイトVS脳無は、オールマイトがショック吸収の限界を越えるまで拳を撃つ作戦に切り替え、ひたすら撃ち合っていた。だんだん脳無の方が後ろに下がっていき押されている様子だ。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!ヴィランよ、こんな言葉を知ってるか!?

 

___更に向こうへ、Puls Ultla!」

 

 オールマイトはそう言うと、USJの天井を突き破る程の威力で脳無を吹っ飛ばした。その時の衝撃で演習場が揺れる程だった。

 

「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば充分だったろうに300発も撃ってしまった。

……さてとヴィラン、お互い早めに決着つけたいね。」

 

 そう言いながらやっと辺りを見回す余裕を持てたオールマイトは冷や汗をかく。緑谷、轟共に倒れ伏していたからだ。虚勢を張ってはいるが自分はもう個性を使えそうにない。できるのは肉壁のみ。

 孿の赫子が二人に近づく、既に役立たずになってしまったヒーローはせめて、と自分が二人の元まで駆け寄り盾となろうとした。彼の体を勢いを増した赫子が貫くと思われたその時、

 

 

 

 

___ドロン!

 

 

「___忍法千枚通(せんまいどお)し!」

「先制必縛___ウルシ鎖牢(さろう)!」

「___キャニオンカノン!」

 

 

 ヒーローは()()()遅れてやって来る。

 

ーーエッジショット、シンリンカムイ、Mt.レディ参戦

 

 

 エッジショットは孿の肺を貫き、

 シンリンカムイは樹木でオールマイト、そして意識のない緑谷と轟の三人を助け出しつつ孿を拘束、

 Mt.レディは拘束されて身動きの取れない孿に飛び蹴りを食らわせた。

 

「何で君たちがここに……?」

「過去の喰種との交戦時、逃げられそうだったので彼の触手に発信器を取り付けていました。」

 

 オールマイトの問いにエッジショットは答える。孿の逃亡時、それはエッジショットが背後から背中を貫かれた時だ。

 

 その攻撃を視界に入れた時には手遅れだったためせめてもと警察に渡されていた超小型発信器を孿の赫子の根本部分に付けていたのだ。

 幸い、と言うべきかここ数日は孿の赫子が根本から破壊されるような事態は起きなかったので付いたままになっていた。

 

「今まで反応は無かったが急に雄英の敷地内であるここを示し始めたので、何らかの事態が起こっていると仮定して参った。」

「も〜焦りましたよ!パトロールしてたら急にエッジショットさんが降って来るんですもん。カムイさんも喰種って聞いたら血相変えて飛び出すし!」

「一大事と思った故に。」

 

 オールマイトはその言葉に心底安堵した。自分以外にも生徒らを守ってくれる存在がいることに。

 

「三人ともすまない、私はあの脳無とやらで精一杯だった。恥を偲んで頼もう、生徒らを守ってくれ……!」

 

 もちろんです、と三人は頷く。自分達が今ここにいることに自分で安心する。現状、最悪を免れているからだ。

 オールマイトは了承の言葉を聞いた後限界が来ていたのか意識を失った。

 

 そして三人は辺りを見回し倒れている大男、そして遠くから様子を見ているだけのヴィランであろう二人組を見つけた。

 最優先を喰種として、先に倒すことをアイコンタクトで決定した。

 

「あー……?」

 

 意識を取り戻した孿が未だ再生できない片腕を庇いながらフラフラと立ち上がる。まだ、自我を取り戻してはいないようで何かをブツブツと呟いている。

 

「Mt.レディ、子どもだからと油断するなよ!」

「……名指し!?」

 

 ヒーローとして少し抜けている部分があるMt.レディをエッジショットが忠告した。

 

「ハァ、ハァ……あー、ズドン」

 

 孿はフラフラと上半身がぶれる中、赫子で三人の肉を抉ろうとする。戦いながら彼の呟く言葉はまともではない。

 

「ちょっ何この子!様子おかしすぎますって……!」

「喰種よ、随分様相が違うようだが……」

 

 シンリンカムイとMt.レディは孿の様子に戸惑う。彼らはヒーローの中ではまだ若手でここまで狂気に達してしまったヴィランをほとんど見たことがない。それでも、

 

「シンリンカムイ!お前も俺もそうやって躊躇したから人々を救えなかったんだ、最初から本気で行くぞ……!」

「……ハイッ!」

 

 ヒーローの先輩の言葉に気合いを入れ直し警戒しつつ確保のチャンスを窺う。

 

「甘いの、ちょーだい?」

「……くっ」

 

 Mt.レディは背後の子供達を守りながら警戒し、エッジショットが赫子を避けつつ孿の気を引く。そしてシンリンカムイはその隙に樹木で捕まえようとするが、

 

「妬けるなァ、ヒーロー……レンばっかり構ってんなよ。」

「……!?」

 

 黒霧が死柄木弔の手だけをワープさせ、樹木を崩壊させた。腕に辿り着く前に逃げることができたがその間にエッジショットが孿の攻撃を食らった。

 

「カムイッ!……ゔっ」

「___タイタンクリフ!」

 

 焦ったMt.レディが巨大化し孿を蹴り飛ばそうとするが、予備動作が大きい攻撃では、強化され速くなった孿に当たらない。

 

「に、肉……!」

「ちょっ……」

 

 今まで視線が定まらず揺れていた孿の瞳が巨大化した人間を見て輝いた。憧れのおもちゃを見つけた子供のようだった。

 

 そして彼はMt.レディの巨大化した首に飛びついた。振り払おうとするが素早い動きに追いつけない。それを見て危険を察知したエッジショットが攻撃を仕掛ける。

 

「___忍法破砕紙絲(はさいしし)!」

「ぐはっ!」

 

 エッジショットは孿の体を内側から破壊した、体を動かせない孿は地面に真っ逆さまに落ちるが、赫子は操れたのでMt.レディの太腿に自分を引き寄せ食らいつく。

 

「いただ、きま、す……!」

「いっ、ゔあああ!」

「Mt.レディ!!」

 

 太腿の肉を抉り捕食する。若い女の肉……それは彼にとってご馳走だった。

 栄養を補給できた孿はすぐに体を完全な状態に再生し、先程よりも一回り大きくなったムカデのような赫子を出す。振り出しに戻った。

 

 エッジショットもシンリンカムイも自分の体より太い赫子に弾き飛ばされ、太刀打ちできない様子だ。そして孿はMt.レディの体に赫子を突き刺し、その傷部分の血を舐め取りながら食らっていく。

 ズドン、ドーンと言って獲物の体に穴を増やしながら笑顔で心底楽しそうに食事をする。その様子は、

 

 

___まるで誕生日ケーキを摘み食いする子どものようだ

 

 

「ケーキ、肉、ケーキ……肉ッ!」

 

「アイツはよく笑ってるがあんなに楽しそうなのは初めて見たな。いいなァ……!」

「確かに、子どもより子どもらしい……」

 

 その様子を遠くで見守ってる死柄木弔と黒霧は呟いた。

 

「クソッ、今助けるぞ……!」

 

 全身に痛みが残っている体を無理矢理動かしエッジショットとシンリンカムイが連携して攻撃を仕掛ける。

 

「___ウルシ鎖牢(さろう)!」

「___忍法紙肢撫切(ししなでぎり)!」

 

 シンリンカムイが食べることに夢中になっていた孿を拘束し、その間にエッジショットが撫でるように体の内側を切り刻んだ。身体の傷は外側まで貫通し今までと比にならないくらいの痛みに、孿は絶叫した。そして、体は地面に叩きつけられる。

 

「……やったか?」

「油断するな、取り敢えず拘束を、」

 

 シンリンカムイとエッジショットが倒れたままの孿に近づくが背後から黒い靄に飲み込まれ少し離れた場所に飛ばされる。

 

 

 

「レン、可哀想になァ?……お前のために()()が来てやったぜ。」

 

 今まで傍観に徹していた死柄木弔と黒霧が痛みにのたうち回る孿に近づく。その手には倒される前に回収しておいた脳無の片足を持っていた。孿はすぐにそれに食らいつき体の損傷を致命傷部分のみ再生した。そしてそのまま死柄木弔の右肩に噛み付いた。

 

「……クソッ、やっぱりか。」

 

 死柄木弔は自身の顔の横にある孿の頭に左手を近づける。

 

「死柄木弔、いけません!」

 

 孿を崩壊させるつもりか、と思った黒霧は慌てて止めるが死柄木弔は開いていた手をグーにして孿の頭を殴りつけただけだった。

 

 

『孿、友達は大事にするんだよ。』

「ッレン!……友達は食わねえんだろ!?」

 

___おじいさんの声と、弔の痛そうな声?

 

 

 それが聞こえた孿は意識を取り戻した。血の滲む弔の肩を見て、そして辺りを見回して事態を遅れて把握する。

 

「?……ア、ハッ……ハァ……弔くん、ごめんなさい。」

「ハハッ、いいぜ。今回だけ許してやる。

 その代わり食い尽くせよ、自由に……そして殺せ!」

「アハハッ、得意分野だッ!」

 

 

___だって俺は、

 

 

 そしてまた痛みに苦しむMt.レディの前に立ち塞がるシンリンカムイとエッジショットに攻撃を仕掛ける。

 

「喰う喰う喰う喰う喰う……

 

 ___鱗赫(りんかく)!」

 

 鱗を飛ばすが、機動力の高い二人は一つも刺さらず避ける。しかし、

 

「黒霧、ワープ。」

 

 弔の指示によって黒霧は鱗を放つ孿の前に現れてその鱗を二人の元へワープさせた。そして急に現れた鱗が彼らを襲う。

 

「……ッ!でも、このくらい……」

「か、体が……?」

 

 当然、麻痺毒が付与された鱗が全身に当たった彼らは身動きが取れずに地面に落ちた。

 

「いいぞ黒霧、レンッ!よく見とけよヒーロー共、俺たちの化け物を!」

「アハハッ、美味くねえ肉共は邪魔だ!

 これからは豪華な晩餐タイムだァ……!」

 

 孿はMt.レディの元へ向かい。口を大きく開けて鋭い牙を見せつける。

 

「Mt.レディ、子どもらを連れて逃げろッ!」

「体を元に戻せ!今のお前は喰種にとっては格好の、餌だぞ!最悪全部食われてしまうぞ……!」

 

 シンリンカムイはMt.レディの影にいる生徒やオールマイトを連れて行けと逃亡を促す。

 エッジショットは仲間を餌などと呼びたくはなかったが、危険だということを理解してもらうためにあえて使って言った。しかし、

 

「私が、体戻して、標的が子供達、とか先輩に行ったら、それこそ()()でしょう……?」

 

 彼女は本物のヒーロー(自己犠牲の塊)だった。

 

 Mt.レディは体を生きたまま食べられても、肺を貫かれても後ろに退くことはなかった。守るべき人間が自分の後ろにいる……その一心で自分以外の犠牲者を出さなかった。

 

「やめろおおおおお!」

「喰種!食べるなら俺を……!」

 

「ゔっあああああ!」

 

 Mt.レディの絶叫が響き渡る。麻痺毒で全身が動けないエッジショットとシンリンカムイはその姿を見ていることしか出来なかった。

 奇しくも、耐えるように噛み締めた二人の口元は喰種のように真っ赤だった。

 

「人を、守れる、ヒーローに……」

 

 それは、Mt.レディの最後の言葉。そして数十秒後、孿の捕食が続いて耐えきれなくなった彼女の体は元の大きさに戻り前方に倒れうつ伏せになった。

 

 

ーーMt.レディが絶命した瞬間だった

 

 輝かしい未来が待っていたはずの若い人気ヒーローの命が心ない化け物共に奪われた。その身を賭して後ろにいる人々を守り抜く、それが彼女のヒーローとしての()()()であり()()()だった。

 

 

「た、岳山ァァァァ!!!」

「ゔあああああ!!」

 

 

 今度はシンリンカムイの絶叫が響く。そしてエッジショットは言葉にならない声で叫んだ後片目から涙を流す。

 プロヒーローたちの狂乱……その騒ぎによって意識を取り戻したヒーローの卵たちが見たのは食いちぎられているMt.レディの死体、まさしく地獄絵図だったであろう。

 

 

 その様子を見ながら真っ赤に垂れる口元を拭うことなく孿は笑顔で言った。

 

 

 

 

___俺は、喰種だ

 

 

 





 原作の神野の一戦でMt.レディの身を挺して緑谷達を逃す姿から解釈して、彼女のヒーローとしての姿・ヒーローとしての最後を想像した形が今回の話になります。好きだったので書きました!
 主人公は再生するのが最大の強みなので三人で殺す気で行けば犠牲者は出なかったかもですね。

(解説)
 エッジショットの「忍法・紙肢撫切」は本作のオリジナル技です。
 レンくん食べすぎじゃない?ー食べすぎです。でも、前世とは違い赫子を使う時は自身の養分を代償にしているので栄養補給がかなり必要となります。個性使わなければいいというのはもっともです。
 今まで個性持ちの人間を食べても強化されなかったのは適合するものとしないものがあり、適合するのは非常に稀……という裏設定です。今後詳しく出す予定です。


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