写輪眼と斬魄刀貰って白ひげの能力で現代に転生した人 作:パプリカ23
最近改築されたらしい校舎は、外壁からして綺麗で格式高い、なるほど名門の学校だなと感じさせる様相だった。我が家に攫ってきた若枝紫苑はどうやらこの学校に通っていたらしい。いた。というのは彼女が既に退学処分を受けており、学校から追い出されているから。
互いの言い分すら満足に訊かなかったのは、怠慢なのか、それともいじめの加害者側の娘の親が権力を持っていたからなのか。どちらにせよいまいち信用のおけない学び舎だなと思う。
校門には初老の男性教師が立っていて、登校中の生徒に元気よく挨拶をしている。観察していると、登校する生徒の数がまばらになっていき途切れた。そのタイミングで教師に近づいていく。
「ん?…あー何か?」
「おはようございます」
「…おはようございます」
訝し気にこちらを見ている教師、ちらちらと視線が上へ下へ動いているが、気にせずにサングラスを外す。彼は息を呑んで目を見張った。
赤い瞳が、見惚れる彼を貫いて意思を奪う。
「少し…訊きたいことがあるんだけど」
「…どうぞ……何でも、訊いてください」
「若枝紫苑って子、知ってる?知ってたら色々教えてほしいんだ」
「…はぃ、知ってます」
ぺらぺらと話し出した教師から、紫苑から聞いていた話の裏を取っていく。いじめっ子の主犯はかなり学校内で有名な生徒らしく、この教師は担当学年でないにもかかわらず良く知っていた。裏であくどいことはしているようであったが、証拠がないこと、親がうるさいことを理由に学校は紫苑を見捨てたらしい。
「ありがとう、助かったよ。私のことは忘れてね」
「はぃ…忘れます…」
教師に礼を言ってから、私は校舎へと足を進めた。校舎でフードを深々と被った人間がうろうろしてたら即通報されかねないが、生憎私には見聞色がある。察知能力だけだと思われがちだが、実は隠密にも使えるのである。
目的の教室の近くに着くと、部屋の中央付近で大声で話す女子生徒が見えた。他の人間の迷惑を考えない大声で、甘ったるい、鼻にかかったぶりっ子声が特徴的だった。聞いていた容姿や周囲の反応からして、彼女で間違いあるまい。
チャンスは意外にすぐに訪れた。りぼんは取り巻き二人を引き連れてトイレへと向かっていく。トイレくらい一人で行け。
三人がトイレに入ったタイミングで私も入り、りぼんが入っている個室のドアを何度か強く蹴りつけた。どんどんと戸が揺れて、ぱらぱらと埃と木屑が落ちていく。
「ひっ!?な、なに!?ちょっと!れんか?りま?どっち!?」
「し、知らない!私じゃない!」
「え?え?りぼんちゃんじゃないの!?」
どうやら三人は仲間の誰かがいたずらしていると思っているらしい。普段からこんな野蛮なことをやっているのだろうか、いや、やってそうだな。仕方ないので声を出してあげることにする。これで誰がやっているか分かるだろう。
どんと強く蹴りを戸に入れて声を出す。
「おいごらぁ!あけんかいっ!」
「ひぃ!?だれなの!?うそでしょ!?学校でしょここ!?」
あれ?おかしいな、なおさら煩くなってしまった。ピーピー喚かれると他の生徒がやって来てしまうのだが…
私は最終手段としてドアを蹴り破ることにした。上から覗けばいいとか、そういうことは全然全くこれっぽっちも考えに無かった。考えに無かったのでしょうがなしにドアを蹴り破る。
ずがんと音が鳴って蝶番が壊れる。ドアが少女たちを圧し潰し悲鳴が上がるが、気にせずドアをどかして取り巻き二人を神威空間に収納していく。最後にドアの下でパンツを半分ずりさげたまま、藻掻いていたりぼんと一緒に神威空間に入る。
「な…何ここ…?どこ?ひっ!貴方だれ?」
それにしても肝が太い少女だ。取り巻き二人は縮こまっているのに、りぼんだけはすぐにこちらに質問を始めて状況を理解しようと頑張っている。この辺りの強かさは流石である。
「質問は私がする。黙ってろハナッタレ」
「な……」
絶句したりぼんを放って、フードを払い、マスクを取りながら後ろの二人を見る。彼女たちの目線が私の金髪に吸い寄せられたのが解かる。尋問には果てしなく便利な容姿だなと思った。
「いくつか訊く。訊かれたことにだけ喚かず静かに答えろ。ぎゃーぎゃー騒いで私の時間を浪費させたら72時間ぶっ続けで拷問するぞ」
実のところ、私にそんな芸当はできないが、別にこいつらには判断などできないだろう。こう言って脅しておけばことが楽に進みそうだなと思っただけである。
事実、目の前の少女二人は首を凄い勢いで縦に振っている。さて、何から訊こうか…?
「簡潔に行こう、まず若枝紫苑を知ってるな?」
「っ!…は、はい…知って、ます」
二人が恐る恐る頷いた。
「じゃあ、お前らが虐めたことも良く知ってるわけだ」
「…………」
「…いえ…私達じゃ…」
「あ?」
どんと地面を踏み鳴らす。遠くの方で、東京タワーほどの大きさの直方体ががらがらと轟音をたてて崩れ落ちる。衝撃で起こった風が少女たちの顔を撫でる。
「ひっ…し、知ってます!虐めました!すみませんでした!」
「ご、ごめんなさい!」
ビビり散らかしながら謝罪してくる二人を見て、内心であきれ果てる。脇で見ていたりぼんは大体の状況を把握したらしく、静かに私の顔色を探っていた。
「お前らが、紫苑のアカウントを勝手に使って滅茶苦茶にした。それで良いな?」
「ちがっ!わ、私たちは…止めといたほうが良いって…」
「私も!私も言いました」
二人がりぼんの方を恨めし気に見ながら言葉を重ねていく。りぼんは裏切った二人の方を一瞬強く睨んで、私の方へ笑みを向けた。張り付けたような作り笑い、慣れているなと思う。
「わ、私がやってしまいました…ごめんなさい。二人は何にもしてないんです…」
「ふーん…」
視線を彷徨わせながら、悩むように言葉を紡いでいくりぼん。目の端に涙を湛えて指遊びをしながら話す。
「ぜんぶ…全部私が悪いんです…紫苑ちゃんとはその、上手くいかなくて…それでつい…反省してるんです…もし、会えたら謝りたいです」
最後に私へ顔を向けて一筋涙を流して話す。素晴らしいっ!百点です!ご褒美上げちゃおう。
「じゃあ、お前が罰を受けなくちゃな。そうだなぁ…紫苑と同じ目にあってみるか?」
「え……?」
私はサングラスを外して、取り巻き二人を見詰めた。途端にふらふらと頭を揺らす二人に幻術を掛ける。
「お前たちは一生嘘が吐けない。いじめのことを全てネットで晒したくなる」
こくりと頷いてぼうっとしたままの二人を見て、りぼんの顔に焦りが生まれる。ばっとこちらに顔を向けて捲し立てるように喋りだした。
「わ、私が!私の方が紫苑よりも上手くできます!貴方の部下にしてください!あの子より可愛いし、何でもできますから!」
なるほど、やっぱり賢しいガキだ。確かに顔立ちはりぼんの方が良いだろう。愛嬌のある顔をしている。だがまあ、傍には置きたくないな。
「ほ、本当に何でもできます!悪いことしろって言うならします!体も売れます!」
「あー…どうしようかなぁ…裸踊りで背中に名前と住所書いて交番まで行ってもらおうかなぁ……あっそうだ!…ねえ?スクランブル交差点って、雌豚の散歩コースにぴったりだと思わない?」
「ひ…そ、それは、むりです……ほんとうに…許してください…」
震える手で私の足元で土下座するりぼん。まあ、これくらいでいいか。彼女の顔を無理やり引き上げて目線を合わせる。彼女は目を閉じて見ないようにしていたが、甘い。グラグラの実で瞼の筋肉を震わせて強引に開けさせる。
彼女には意識を保ったまま、暗示を掛けておくことにする。
「これから先、他人に迷惑を掛ければ、耐え難い痛みに襲われることになる。一年以内に若枝紫苑に被せたお前の罪を取り払えなければ、お前は一生口を開けなくなる」
「は…はっ…」
「わかったな?」
「わ、わかりました…」
三人と一緒に元の世界へ戻った。幸いまだ人は来ていなかったので、急いでその場を離れる。しばらくすれば紫苑の嫌疑は晴れるだろう。彼女の父親については…うん、まだ少し難しいな。
朝の陽射しが穏やかな、小鳥が鳴く道を歩く、ぼけっと歩いていたら社長のことを思い出した。
「あ、なんか差し入れして帰ろ」
ふと思い立ってコンビニへ立ち寄る。適当に美味そうなものを買って社長の家へ向かう。向かう道中にこれからのことを考える。正直なところ、お金が厳しいのである。
私一人分くらいならぎりぎり貯金で賄えていたが、紫苑の分を考えると稼ぐ必要がある。
どうやって稼ごうか…今更Vtuber以外で稼ぐのも違うなぁとつらつら思う。気づけば社長のアパートに着いていた。ぼろい階段を上って扉に手を掛けるが、鍵が掛かっている。中を探るが誰も居ない。昨日は夜勤だったはず…
「まだ帰ってないのか…流石にそれはまずいでしょ…」
同じ女性として、彼女の肌と健康が心配だ。取りあえず鍵を振動で開けて中へ入る。案の定汚れていた部屋を軽く片付けて、ご飯を作って帰ることにする。
自宅へたどり着く頃には既に午後2時を過ぎていた。紫苑の昼食を作らなければと慌てて家に入る。ドアを開けると部屋の奥からぱたぱたと足音が聞こえる。紫苑が嬉しそうに顔を出した。
「おかえりなさいっ!」
「…ただいま」
久しぶりに言った言葉に少し恥じらう。紫苑の笑顔は眩しいな。
部屋は少しだけ片付いていて、紫苑は昼食の用意を終わらせていた。トーストにベーコン、ゆで卵のサラダ…美味しそう。
「これ作ったの?」
「はい!…あ、でもやちるさん程上手くは、ないです」
「ふふ、明日は一緒に作ろうか?教えてあげる」
「え!?良いんですか!お願いします!」
「はい、お願いされました」
思わず笑みが浮かぶ、二人で昼食を食べて明日の献立を話す。
食器を紫苑が洗ってくれるというので、私は配信の準備を始めた。
「紫苑、私配信するから。少し静かにね」
「あ、お仕事…Youtuberなんですか?」
「あー、近いけど…Vtuberって知ってる?」
「はい、あ、顔隠して仕事してるんですね」
納得と言わんばかりに頷いた紫苑は、私にチャンネル名を訊いたあとリビングへと去っていった。私はPCを起動させて、今日の分の配信を始める。
こんにちわ姐さん
休みかと思った
おはよー
「こんにちは、遅れてごめんね。ちょっと外出てたわ」
外?
え?聞き間違えた?
姐さん外出れたの?
草
こいつら失礼だな。私を何だと思ってんだよ。予定がなくても買い出しで、二週間に一回は外に出ている。つまり月に2回も出ているわけで、それだけ出ていれば最早引き籠りともいえまい。
「やかましいわ。偶には外で活動したくなるんだよ。で、今日は何しようかな」
決めてから枠を取ってもろて
あれしようよあれ、あれあれ
壺耐久して♡
大乱闘
「壺はもう散々やったでしょ。…ま、大乱闘するか」
別にやりたいゲームがあるわけでは無かったので、コメントを採用してやり始める。部屋を作り、マッチングしたプレイヤーと戦って、ダメージを一度も喰らわずに勝っていく。
うっま
反応早すぎぃ!
相変わらず動きおかしい…
強すぎるでしょ、何か使ってんじゃないの?
残念ながら素でチートなのは過去の放送で明らかなんだよな
姐さん反射神経いかれてるから、サイボーグ説あるし
能力はできるだけ使わないようにしているが、如何せん素の身体能力が高いので、動きを見てから反応できてしまう。こればっかりは仕方がない、せめてランキングには載らないように、個人的に遊ぶだけにしている。
しばらくプレイしていると、見覚えのある名前の人が入ってくる。コメントで「一撃入れる!」と宣言しているのが印象的な人物だ。
相手これプロっぽくない?
名前変えてプロが来ることはあるよ
前は結構来てたよ
このコメントは削除されました
それ、エリ姐さん関係ないから
反応しないように
昔は結構プロの人が来ていたが、騒動があってからはパタリと消えた。もらい火を恐れたのだろう。ただそれでも偶にこうしてゲームをすると、明らかにその手の人がやってくる。そういう時は相手の練習の為に全力で相手をすることにしている。
ひぇ…
え、それジャスガできる技でしたっけ?
げーむ壊れちゃった……
一撃、入れられませんでしたね…
「ふぃーいやぁ強いなぁ」
実際、かなり強くなっていた。もう少ししたら一撃貰うかもしれない。
ふぃー(完勝)
煽っていくぅ!
いやぁ強いなぁ…()
あーこれはいけませんね…
私は次から次にやってくるプレイヤーを只管倒していった。
また止まってる
姐さん、動いてないよ
口開いたまま固まってる
「あん?あーまたかぁ…」
3時間ほど遊んだ辺りで機材トラブルが発生した。いい加減変えたいが、どうしようもないからなぁ。その場しのぎで再起動を試す。椅子から離れて接続を確認して画面を開きなおす。
「ほい、動いた?」
動いた
おつかれ
やっぱ最近調子悪いね
500円
これで直してもろて
いよいよ寿命か…
今日のノルマ達成
ノルマフリーズ。
フリーズありがとう
「お、スパチャどうも。でも機材は高いんだよねぇ…」
残念ながら、機材を買い替える余裕は無い。古い機材をちゃんぽんして騙し騙し何とか動かしているのが現状である。
そのままゲームをしているとプチっと何かが切れる音がした。気になったが丁度試合中だったため、一瞬だけ画面に目を向けるにとどまった。画面は正常に動いているように見える。私は良くあることだと思い、試合に没頭する。
「うわ、今までで一番強いなこの人」
対戦相手は間違いなくプロ。しかもトッププレイヤーだった、反応速度ではこちらが上回っているが、ゲームに対する知識量で完敗している。こちらの攻撃は仕様を理解した相手にいなされ、相手の攻撃は反射神経で躱す。
通常では考えられないほどの接戦になり、私もダメージを受けてしまう。
「…ふふ…面白いじゃあないか」
口角があがってくるのが分かった。昨日からなんだかこう、面白いことが立て続けに起こるなと思う。きっとコメント欄では私がダメージを貰ったことで盛り上がっているだろう。その光景を見れないことを残念に思いながら私はプレイに集中した。
………あれは、人ですか?天使じゃなくて?
顔出てるぅ!!!
姐さーん!気づいてぇ!
めっちゃ美人で草
おっぱいでっか
おっぱい!おっぱい!
立ち絵より綺麗とかありますかそれ?
顔バレしてて草
お祭りじゃぁ!
姐さん綺麗すぎて女でも惚れそうなんですけど
胸デカすぎてTシャツはちきれそう…すげぇ
なんていうか……その…下品なんですが…フフ……
あれ本物のおっぱい?
金髪地毛かな?めっちゃ綺麗だけど
染めてんじゃないの?
彼氏いますか?僕は彼女いないんですけど…
結婚してください
……
…
「ちょ、やち…エリーさん!」
「ふぁ!?ど、どしたの?」
突然ドアを叩いて声を掛けてきた紫苑に驚く。慌てたせいでコントローラーを取り落として、試合に負けてしまった。
「か、顔!画面に映ってます!見えちゃってますよ!」
「え?…」
モニターの方を見ると、画面がフリーズしていた。急いでスマホで画面を開く。そこにはスマホを覗く私の顔がしっかりと映りこんでいた。
「あ、あー……あー……よし、一回寝まーす」
私は枠を終わらせて最速でPCを落とす。
ドアの前で狼狽えていた紫苑を捕まえ、抱き枕にしてベッドでふて寝した。
「まじかよ………1000人いってなかったんだぞ…」
夜、夢であってくれと願いながらスマホを手に取る。チャンネルの登録者数が、50万を超えていた。
突然、画面が切り替わって着信が入る。