入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
1話 金の成る木
処女作です。
拙い文ですが楽しんでくれれば幸いです。
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私、小代瑠奈は転生者である。
"東京都高度育成高等学校"
東京の埋立地にある日本政府が作り上げた、未来を支える人材を育成する全国屈指の名門校。希望する進学、就職先にほぼ100%応える学校。 3年間外部との連絡は断たれる上、学校の敷地内から出るのは禁止された寮生活になるが、60万平米を超える敷地内は小さな街になっており、何1つ不自由なく過ごす事のできる楽園のような学校。
その謳い文句は一部事実であり、一部偽りである。
私は前世、どこにでもいるような普通の女の子だった。
家族構成は父と母と妹の梢。
中学受験をし、中高一貫校に入学してのんびりと暮らし、高校に入ると勉強に追われながらもオタ活をしながら生きてきた。
大学受験に成功し、第1志望に合格し、一人暮らしの準備や入学準備に明け暮れる毎日。
忙しい日々を駆け抜け、入学式当日。
学校前の横断歩道を渡ろうとした時、トラックが目の前に突っ込んできた。
私は避けることも出来ずに死んでしまった。
と思ったら、オギャーオギャーと鳴き声がする。
その鳴き声は私から発せられていた。
「オギャーオギャー」
(え、私死んだはずじゃ?!なんで生きてるの!!)
そして私は新しい家族と共に生活し、またもや中学受験を経て私立中学に通う。
前世と違うのは高度受験することだろうか。
担任に面談で勧められた高校は"高度育成高等学校"だった。
そう、ここは小説"ようこそ実力至上主義の教室へ"の世界だったのだ。
基本的にこの学校は入学者が決まっており、教師の推薦があれば確実に入学できるのだ。
形ばかりの勉強はしたが、元々学力は高いため苦戦することは無かった。
そして一週間後、合格通知が届きあれよあれよと第二のスクールライフが始まることになる。
小代瑠奈という名前は原作では出てこなかったため、おそらくモブキャラだろう。
原作知識を持つ身としては、BクラスかAクラスが望ましいけど、万が一DクラスやCクラスになったらどうしよう。
ポイントを貯めてクラス移動が出来ればいいんだけどな。
学校までかなり距離があるため、家の車で送って貰った。
実は今世ではそこそこ裕福な家に生まれ育っているため、使用人が雇われている。
昇降口に貼られたクラス名簿によると私は…
"Cクラス"
だった。
よし決めた、2000万ポイント貯めてAクラスに行こう。
クラスに向かうと、クラス内には既に人が溢れていた。
隣の席に座る生徒が中村上地の『孤独』という販売停止になった問題作の小説を読んでいた。
原作キャラの椎名ひよりである。
読む様を観察していると彼女は驚いた顔でひあっと声を上げた。
「な、何見てるんですか!」
本で顔の半分を覆ってひょっこり私を見ている様はあざとく可愛らしい。や
「ごめんね!販売停止の問題作と呼ばれた『孤独』を持っている人がいるからついつい見ちゃった。」
「こ、この小説をご存知なんですか?」
「うん、中村上地のファンなんだよね。『星屑』や『正夢』なんかの有名どころはもちろん、問題作と言われる『孤独』や『待ち人』なんかも差別がテーマで、かなり残酷な表現が多かったな。」
「そうですよね!辛さ、悲しさ、切なさでは無く如何に非道で残酷で劣悪なのかといったマイナス的な表現が多く使用されています。」
興奮しながら話す彼女はとても可愛らしい。
しばらくすると担任と思しき男性が教室にやってきた。
「皆さん、席に着いてください。」
全員が席に着くまでの時間はおよそ47秒。
この学校に通う生徒は何故こんなにも幼稚なのだろうか。
「まず、皆さん入学おめでとうございます。Cクラスの担任になった坂上です。数学を担当しています。我が校は3年間クラス替えが無いため、このメンバーで卒業まで過ごす事になります。今から1時間後に入学式が執り行われますので、その前に我が校について幾つか説明します。まず一点目ですが…」
坂上先生の説明は原作同様だった。
①まず10万プライベートポイントが支給され、敷地内の施切や物品の購入に使用できる。
②プライベートポイントは毎月一日に電子生徒手帳に振り込まれる。
③電子生徒手帳は学生証と携帯機能が着いており、チャットや電話、ゲームやブラウザ等利用出来るスマホのようなもの。
④プライベートポイントで買えないものは無い。
⑤外部との連絡は一切禁止。
⑥卒業後はポイントはなんの価値も持たない。
こんなところかな?
おそらくプライベートポイントの譲渡も出来るだろう。
私はひよりと連絡先を交換し、入学式を終えてからか敷地内の散策をはじめた。
ショッピングモールには有名ブランドからプチプラブランドまで様々な店が入っていた。
ラウン○ワンのようなアミューズメント施設にはボウリング場やカラオケルーム、ゲームセンターにスケート場といった娯楽がそろっている。
他にもスーパーやカフェ、寿司屋に家電屋、ホームセンターと様々な店が敷地内にはある。
この学校は生徒の自主性を重んじるため、もしかしたら近いところにポイントを稼ぐヒントがあるのでは無いか?
敷地内の散策を終えてスーパーへ向かおうとした時、敷地内の隅に小さな店があった。
古びた屋根、看板になにか書かれているがくすんでいて読むことは不可能だ。
小さな個人商店のようだ。
扉も手動で、かなり古い作りのようだった。
「すみません」
声をかけつつ中に入ると、そこには老婆がレジ前の椅子に腰掛けていた。
「あ?なんか用かい?」
老婆は目を細めじっと見つめやってきた。
「ここは何のお店なんですか?」
「ここはリサイクルショップさ。不要なものを買い取り、中古品やリメイク品をここで販売している。それにしても驚いたねぇ」
「驚いたというのはどうしてですか?」
「ここは創設時からあるが、利用者はほんの数人さ。この店も売り上げが見込めず、今月末には店じまいする予定だったんだ。」
今の子達はほとんどがショッピングモールで買い物をするし、私もここに来るまでリサイクルショップというワードは頭から抜けていた。
不要なものを買い取り…
もしかしたらポイントを軽く稼ぐことが出来るのではないだろうか?
品物を見ると装飾品やポーチやティッシュケース等の雑貨類、非常食等の飲料水や缶詰がかなり安い値段で売られている。
「すみません、こちらの食品は新しいものに見えますが?」
「それはスーパーやモールに入ってる店で印刷ミスで売れないものを格安で此処に仕入れて販売してるのさ。」
最近発売されたばかりのグミが売っているのはおかしいと思ったが、なるほど納得した。
「こちらの家電は?ゲームもありますが随分綺麗に見えますね。」
「それは入学してそうそうゲームに金をつぎ込んだバカがゲームをすぐ売りに来たのさ。ちなみにこれは最近販売されたゲームだが、パッケージに傷があったため安く販売してるんだよ。」
発想力も販売する物も完璧だった。
売られた洋服をアレンジしてポーチにしていたり、巾着を作ったり、手先も器用なようだった。
今の社会状況や学園内の経済状況的にも成功する可能性は高いのにしなかったのには幾つか問題点があるからだろう。
立地も隅にあるため、メインストリートにある店に比べると目立たず利益も増えにくい。
穴場スポットが好きな学生でもなかなか見つけることが難かしい。
学校から離れた場所にある訳では無いが、職員寮寄りの場所なためなかなか生徒がちかよれないと言える。
だがこの店を必要とする人間は多いだろうに、閉店とはとても勿体無い。
「あの、この店を仕舞うの待ってもらえませんか?」
「なんでだい?誰も利用しないなら無い方が余計な支出を押えられるんだがね。」
「いえ、この店には利用価値があります。私と取り引きをしませんか?必ずこの店に客を入れてみせます。」
「どうするって言うんだい?」
睨みを利かせながら問うが、平常心を保ちながら答えた。
「まず、この立地により宣伝効果が消えてしまっていますし、外の看板も作り直すべきです。店の舗装と装飾、あとは宣伝ですね。」
「確かにあの看板はかなり古い、文字も禿げちまった。だがどこに工事費用があるってんだい?」
「工事費用なら私が出します。私の提案ですからね。」
ショッピングモールには宝石店もあったため、アクセサリーを売却に行こうと思っていた所だ。
私の幼馴染は名門中の名門、花園家の一人娘でよく装飾品をプレゼントしてくれる。
それだけでなく、2、3回使ったアクセサリーを要らないからと押付けてくるのだ。
塵も積もれば山となる、時間が経つにつれて私のジュエリーBOXの数が増えていき、たまに質に出したりしている。
宝石店がもしあればそこでポイントと交換してくれないかなと思いながら数箱詰めて学園に送っている。
引越し費用が無料とは、本当に良心的な学校だ。
「とても払えるとは思えないが、まあいいだろう。ならどうやって客を増やす?宣伝はどうする?チラシでも配る気かい?」
チラシなんかよりもっと効果的なものがある。
そして、この学校で皆が欲しいものが…
「いいえ、掲示板を利用します。様々なスレッドが出ていますが、ポイントの無い生徒を対象にしているスレッドを立て、そこにここの情報を小出しで書き込みます。噂好きな生徒をまず対象にしましょう。」
「なるほど、その考えは無かった。面白い、続けな。それだけじゃあ利益は得られないだろ?」
よくわかっていらっしゃる。
腐っても経営者という訳か。
「はい。まずこの学校で最も価値のあるものは情報です。プライベートポイントの譲渡が可能なので、情報の取引にポイントが使われます。なのでまずは1年生を対象とした一学期中間の過去問を販売したいと考えています。それ以外にも音声や動画等の情報の取引を契約書を用いて買い取り販売できるようにしたいと考えています。」
誰が誰を殴った、誰が誰を脅した、誰々の裏の顔、誰々と誰々が付き合い始めた、こんな情報が高く売れるから面白いのだ。
「あっははは」
「?!…なにかおかしなことを言いました?」
「いやいや、悪いね。こんなこと考える生徒は初めてだ。それにあんた見るからに1年生だろ?」
「はい、1年Cクラス所属です。」
「Cクラスか、てっきりAクラスの子かとばかり思っていたよ。ここまで言うんなら、この店をもう2ヶ月残してみるとしよう。さて、利益が出たとして、あんたの望むものはなんだい?この学校の本質に気づいているんだろう?」
「私が望むものは…利益の20%を私に譲渡して欲しいんです。できる限りこちらの店に貢献します。」
「なるほど。まずひと月経過を見させてもらう。その間に客足が増えたなら、契約書にサインしようじゃないか。収益からいくら譲渡するかはその時に考えよう。いいね?」
「わかりました!ありがとうございます!」
リサイクルショップを後にし、1度部屋に戻ってからジュエリーボックスを鞄に入れ、アタッシュケースを空いた手に持ち宝石店へ向かった。
店内には生徒はおらず高級感が漂っていた。
来店目的を伝えると鑑定士の方に会わせてもらう事になった。
「すみません、ここにあるアクセサリーと宝石全て鑑定お願いできますか?」
鑑定には2日程かかるそうだ。
店を後にし、スーパーで買い物をし家に帰った。