入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
今後は本編沿いに進んでいきます。
また更新まで間が開いてしまう可能性が高いです。
楽しんでいただければ幸いです。
10話 商人の空誓文
商人の言葉を真に受けてはいけない。
何故なら彼らの言葉は取引きを繕うための装飾と嘘で塗りつぶされているからだ。
耳障りの良い言葉は時に人を惑わし破壊する。
真実がもたらしたのは幸か不幸か。
ホームルームが終わったタイミング坂柳が話しかけて来た。
クラスの視線の先は小代瑠奈ただ一人に注がれている。
「まさか、こんなに早くAクラスに上がって来る方がいるとは思いもしませんでしたよ。小代さん。」
「あはは、そうかなぁ。」
笑って話を流そうとするも、なかなか彼女は厄介だった。
私を逃さんとばかりに私を見つめてくる。
次の授業の支度もあるため長話は出来ない。
「どのようにしてAクラスへ移動したのでしょう?」
ポイントを使っただけだよ!といった答えを求めている訳でもないだろう。
うまくこの場を繕う言葉が見つからない。
「とりあえず時間もないし、その話は放課後でもいいかな?」
「ええ、わかりました。」
会話を終えほっとしたのも束の間、聞き慣れた低い声が背後からした。
「邪魔するぜ?よぉ、逃亡者。その話オレも混ぜろ。」
Cクラスの王、龍園翔が配下のアルベルトと石崎を引き連れて教室内へ足を踏み入れた。
「ふむ、俺もAクラスへ上がる手腕については、尋ねたいと思っていた。よければ参加させて貰えないだろうか?」
龍園の発言に傍観に徹していた葛城も同調する。
困ったように視線を彷徨わせた時、明るい声が教室に響いた。
「失礼します。Aクラスに移動できた経緯について気になっちゃって。良かったら、そのお話私も混ぜて貰えないかな?」
振り返ると、Bクラスの中心である一之瀬帆波が、教室の扉の前に立っていた。
「ふふふ、皆さん小代さんの事が気になるようでようですね。放課後に気になる方はAクラスへお越しください。」
勝手に決めつけられてしまったが、放課後までにどこまで話すかを考えなくてはならない。
その日の授業はぼんやりと考えごとをして受けた。
頭の片隅でひよりに申し訳なく思いながら、この二ヶ月間の出来事に想いを馳せる。
放課後、龍園、一之瀬、葛城、坂柳、といった各クラスのリーダー格がAクラスに集まった。
教室の入り口には鬼頭がたっており、他生徒の介入にも対応できるようになっている。
簡単にいってしまうと鬼頭の役割は邪魔を入れさせないための見張りだ。
錚々たるメンバーが集まっている。
他にも中立派の石田や小春、一之瀬の側近の神崎、龍園の部下である石崎とアルベルト、坂柳の側近である橋本と神室、葛城派の町田も教室内に集まっている。
各クラスのNo.2や補佐だって成績優秀者だったり、身体能力が高いことで有名な生徒ばかりだ。
決して油断してはならない。
私は教卓の前へ移動し、教室内を一瞥してから口を開いた。
「さて、皆集まってくれたみたいだし本題に入るね。皆が共通して知りたいことは私がどのような事をして、Aクラスに移動出来るポイントを稼いだのか。これだよね?」
「ええ、その通りです。」
坂柳の発言に葛城や一之瀬、矢野は頷き、龍園はニヤリと口元を歪ませた。
その他の生徒は私の次の言葉を待つ様に私を見つめている。
「うん、じゃあ私がしたことを説明するね。まず私はモール内の宝石店で自宅から持ち込んだ価値のある宝石を売り払ったの。」
「価値のある宝石?んなもんなんで持ってるんだよ?」
石崎が不思議そうに尋ねる。
「それについては自宅から持ってきた、だけじゃダメかな?」
石崎は考えるように間を置いてから口を開いた。
「でもよ、ただの高校生がこの学校に高価な宝石を持ってくる必要があるか?まるで、この学校のシステムを知ってたからのように思えるが?」
石崎の疑問は的を得ている。
誰かが質問する可能性はあると思っていたが、まさか石崎が尋ねてくるとは思ってもいなかっか。
龍園は目を丸くして固まっているし、坂柳も面白そうに「そうですね」と笑った。
一之瀬もうんうんと頷いている。
石崎だからと甘く見るのはなしだ。
ちなみにアルベルトの表情はサングラスをかけているため、反応が分からない。
「特に理由は無いよ。宝石をもっている理由は知人に頂いたから。宝石を持ち込んだのは装飾品として。」
石崎は納得いってないようだが、龍園に黙らさせられていた。
「ええっと、価値の高いものばかりだからかなり高額のポイントを手にしたの。ただまあ、放送で説明され通り自宅から持ち込んだ物の売却が規制されてしまった。だから私はポイントを稼ぐためのアプローチを変えたの。」
「ほう?興味深いな。」
葛城が感心したように頷いた。
「一般的な高校生はバイトをしていない限り消費者に分類される。でもこの高校は私達に対する評価として、毎月ポイントが支給される。つまり、私達の評価=日々の態度や功績ってこと。」
言い方を変えれば、日々の功績によって収益を得られるという訳だ。
つまり学業や部活が仕事と同義だということである。
「規制されたということは、世間一般的な商業施設では無いということ。そもそも生徒一人一人に毎月10万ポイントが配られた場合、一年で5億円を軽く超えてしまう。授業料、衣服料、旅費、研修費が無償なだけで無く、卒後の保証や最新設備を備えた校舎。各施設に設置された監視カメラに無料商品。この学校の異常性を考えた時、生徒間でのポイントの取引が行われることは容易に想像がつくでしょ?」
「確かにそうですね。入学してすぐこの学校の本質に近づくとは。流石ですね、小代さん。」
坂柳に褒められた。
天才様に褒められるというのは、少しむず痒く感じる。
「ありがとう。話が少し逸れちゃったね。何が言いたいかというと、消費者から事業者になったってこと。」
「事業者?どういうことかな?」
一之瀬が顎に手を当てて考え込んでいる。
一之瀬の動きはあざとらしさを感じさせることのない、可愛らしいものだった。
「5月の初めにネットバンクのアプリが導入されたでしょう?実は私が企画立案者なんだよね。」
「え、ええ?!す、凄いね?」
「ほぉ?ならお前には手数料が利益として入るという訳か。」
やっぱりあいつは嫌なヤツだ。
そこを突いてくるとは、やっぱり龍園は手厳しい男だ。
これで利用者が減っては困るので、ネットバンクのPRと利益に関する訂正を入れた。
「まあそういうこと。手数料も一般的なATMと同じだし、貯金もしやすくなるでしょ?ちなみに手数料は生徒会の費用に回されるから、私の利益はほんの一部なの。」
「どうだかな。」
龍園は信じていないようだが、一之瀬や葛木は納得したようだ。
「生徒会が一生徒の利益のためだけに宣伝をしたとは考えにくいです。わざわざホームルーム中に全校生に対して放送をしたのですから、生徒会にも何らかのメリットがあったと考えるのが自然です。」
「なるほど!そう考えると手数料の一部が生徒会に入るというのは納得できるな。」
坂柳のフォローに石田が納得し、龍園は舌打ちをしてそっぽを向いた。
恐らく、私に入るプライベートポイントから不和に導こうとしたのだろう。
ネットバンクは強制ではない為、利用者が減れば利益が減る。
一生徒にポイントが支払われるという観点から見られると、どうしても否定的な考えを持たれやすい。
各クラスのリーダーが利用を控えるよう呼びかける可能性もある。
坂柳のフォローにより、なんとかこの場は凌ぐ事が出来た。
「続けるね。」
全員が黙ったことを確認して口を開いた。
「今言ったこと以外にも、私の特技であるピアノでちょっと稼いだりもしたの。」
「ピアノ?」
石崎が首を傾げても全く可愛くない。
誰得だよとツッコミそうになったが、何とか堪えた。
「学外の小さなピアノコンクールに参加したの。大した額じゃないけど賞金はポイントに換金して貰えるんだよ。」
「そういえば部活の大会でも功績に応じてポイントが支給されるって、説明会で聞いたな。」
橋本の発言に石崎が「マジかよ!」と騒いでいた。
「石崎黙れ」
即座に龍園が石崎を黙らせた。
原作の弥彦に少し似ている気がする。
「まあ他にも細々とした取引をしてポイントを稼いだりもしたんだよ。まあそうやってAクラスへ移動するための資金を集めたって訳なの。」
「フンッ、なるほどな。帰るぞ、お前ら。」
「え?もういいんですか?龍園さん。」
「ああ。聞きたいことは聞けた。小代、いつまでも逃げられらと思うなよ。Aクラス共々潰してやるから精々覚悟しておけ。」
物騒な言葉を残して龍ら園達3人は教室を去っていった。
「私達も負けてられないなあ。」
「ああ、Aクラスに強力なカードが渡ってしまった。」
一之瀬の言葉に神崎が真剣な表情で頷く。
「私なんて大したことないよ。」
謙遜するなと神崎に睨まれが、本当に大したことないのだ。
「じゃあ私達もそろそろ行こうか!神崎君。」
「わかった。邪魔をしたな。」
「うん、またね。帆波ちゃん、神崎君。」
他クラスの生徒が消えた教室に鬼頭が戻って来た。
「鬼頭君ご苦労様でした。」
「…いえ」
しばらくの沈黙を得て坂柳が立ち上がり私の元へやって来た。
それに合わせ坂柳派の神室、橋本、鬼頭も彼女の側へやって来る。
中立派の石田と矢野、葛城派の町田と葛城は何が起こるのか注意深く観察しているようだ。
「さて、小代さん。お話を聞いて、私は貴方とならAクラスで卒業出来ると確信しました。私に着いて来て頂けませんか?勿論タダでとは言いません。貴方のお望みのものを差し上げますよ。」
坂柳派に入れ、ということだろう。
「坂柳さん、私は「待ってくれ。」え」
葛城は私の言葉を遮り、目の前へとやって来た。
「俺としても、小代の洞察力や行動力は素晴らしいと感じている。是非、我が葛木派の一員となってこの学校の頂を目指していきたい。如何だろうか。加入後の待遇や希望は保証しよう。」
つまり、葛城派に入れと。
両者とも何かしらの施しを用意していることから本気が伝わってくる。
二つの派閥の板挟みになることも、どちらかに肩入れすることもしたくはない。
出来るだけ平和に学校生活を送りたい。
なら、答えはこうだ。
「申し訳ないけど、Aクラスに来たばかりで内部情報に疎いんだ。暫くは中立派の小春や百恵と行動したいと思ってるよ。今すぐに、どちらの派閥に入るかを決めることは出来ないよ。」
「それもそうですね。ですが、気が変わったらいつでもお声掛けを。小代さんならいつでも歓迎しますからね。」
「ありがとう、坂柳さん。」
ふわりと微笑んだ坂柳に釣られて、私も彼女に微笑んだ。
「ならば、何方がより優れているのかを知って貰わなくてはいけないな。」
挑発的な言葉を葛城から掛けるのは想定外で驚いた。
だが、原作で龍園の側近になっていることを考えれば、ただの真面目な優等生という訳ではないのだろう。
「そうですね。といっても葛城君に劣るとは一ミリも思えませんが。」
「挑発には乗らんぞ。坂柳には負けん。」
両派閥共にバチバチと火花を散らし、静かに牽制し合っている。
そんな二人を他所に私は小春と石田に話しかけた。
「小春、石田君。これから色々教えてね。」
「ああ、力になろう。何でも聞いてくれ。」
「ええ、慣れるまで大変だと思うけど、頑張ってきましょう。」
二人と改めて挨拶を交わす。
中立派、坂柳派、葛城派、龍園、一之瀬、綾小路、堀北、高円寺。
曲者揃いの彼等との全面戦争だ。
戸締りのため、窓に近づくと爽やかな夏の匂いが鼻腔を掠めた。
微かに聞こえた蝉の声が妙にうるさく感じた。
残金 146万6907ポイント
小代瑠奈
所属 1年Cクラス
学籍番号 S01T004708
誕生日 7月1日
【学力】 A+
【知力】 B
【判断能力】 A
【身体能力】 B
【協調性】 C
【面接官からのコメント】
学力が非常に優秀で、入学試験では4科目満点で2位という輝かしい成績を残している。
小学生の時から全国模試では50位以内をキープしており、中学時代の模試では11位まで成績を上げたようだ。
全体評価は高くAクラスに配属したいところだが、周囲より私欲を優先することが多く、又ある事件に関わっていることから、Cクラスへの配属とする。
【担任からの一言】
今後も学力に力を入れ、クラス全体を引っ張って欲しいと思います。
協調性に関しては向上を望みます。
干支試験でどのグループに入る小代ちゃんを見たいですか?
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リーダーグル
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美少女グル
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リーダーと山内グル
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参謀グル