入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
なかなか時間が取れず、更新も不安定です。
「存在するとは、行動することである。」
「どういうこと?」
「ふふ。ドイツの哲学者、イマヌエル・カントの名言の一つだよ。」
午後20時を回る頃、自室には一人の客人が居た。
Aクラス坂柳派の一員で、私の手駒の一人である神室真澄だ。
私が今日何の報告もせずAクラスへ移籍した事について、随分と驚いている様に見えたので、説明責任を果たすため自室に呼び出したのだ。
勿論、他にも今後の方針について指示を出すためという理由もある。
「例えば、話し合いの場で一言も発さない人間は参加者とは言えない。今日幾つかの授業でディベートがあったけど、Aクラスは自分の考えを伝えることは出来ても、擦り合わせや歩み寄りが出来る生徒が少なかった。」
「つまり、アンタはディベートをしている生徒が参加者として認められていないって事を言いたいの?」
「そうよ。今のAクラスは、学力がちょっと高くて優等生がちょっと多いBクラスってところ。差異は、基礎スペックの平均が高いことかな。」
Aクラスに集められた生徒は他クラスと比較すると、学力が高い優等生だという評価に落ち着く。
中学では委員会や生徒会の役員を務めていたという話もよく耳にする。
ただどれだけ優秀でも、討論が成立しなければ戦力として認められない。
この学校では個々の学力や身体能力以外にもコミュニケーション力が必要だ。
コミュニケーションの中でも交渉が出来るかどうかが特に重要となってくる。
一之瀬のような善性を持つ人間はカモにされやすく、佐倉のように会話が苦手では交渉をする間もなく敗北する可能性が高い。
警戒心を持ち、会話を続けてデメリットやメリットを理解し、相手の目的を加味して言葉を選択する。
デメリットやメリットの理解までは出来ても、相手の目線で何故この選択をしたのかという事まで思考できる人はなかなかいない。
勿体無いことにAクラスは地頭が良いからか、交渉に置いて大切なことは大半が守れている。
各々思考し、解決策や代案を考えられる程優秀だ。
しかしそれを他者に伝えようとしないのだ。
個々で話せば面白い案や意見を出してくれるが、集団で行うディベートでは、クラスの中心人物の意見に従う奴隷の様だった。
ややだから龍園に甘く見られるのだ。
"Aクラスは坂柳や葛城が居なければ何も出来ない無能の集まりか?"
みたいなことを龍園に言われて弥彦がキレるみたいな二次創作を見た事がある。
でも実際葛城や坂柳以外の生徒は他クラスに比べると対抗する術を持っていない。
橋本や神室、鬼頭に山村は優秀だが他クラスのリーダーを相手取るには荷が重い。
Aクラスには、Bクラスの神崎やCクラスの金田に椎名といった参謀、Dクラスの堀北や綾小路、高円寺あたりに対抗出来そうな生徒が居ないのだ。
その上で平田や櫛田といった表向きのリーダーが居て、身体能力の高い須藤がいるのだからDクラスは粒揃い。
葛城と坂柳が互いに協力すればDクラスにも対抗できるのだが、リーダーとしての指針が違うのでこれは不可能だ。
だが、今回転生した"ようこそ実力至上主義の教室へ"の世界は中立派の石田優介や矢野小春といったモブキャラがかなり強化されている。
それもクラスの主要人物として龍園が同席を認めた程だ。
それにしても、個々の能力が高いだけに真価を発揮出来ない事は勿体無い。
宝の持ち腐れだ。
ちなみに、石崎の知力が原作より強化されているように感じたのだが、これは気のせいなのだろうか。
「まあ、私としてはAクラスの強化に力を入れて行きたいってこと。」
「強化?どういう事?」
「うん。今後Aクラスを賭けた特別試験が始まる。個人技ならまだしも、団体戦の場合ウチのクラスはDクラス以上に不利なの。」
「どうして?」
「理由は簡単。Aクラスは内部分裂しているからだよ。」
「…なるほどね。足の引っ張り合いが起きるかもしれないって事ね。」
Aクラスにはポイントの余裕もあり、派閥が二分している。
派閥同士の争いが起きれば強力は難しくなってくる。
それだけでなく、他クラスの介入がし易くなり裏切りのリスクだって高まる。
私が最も懸念しているのはこれだ。
「加えて裏切り者が出る可能性も高くなる。だからこそ今のままではダメなんだ。全員がリーダー任せの状況は改善しないといけないの。」
「ふうん。」
神室は興味がないといった様子で緑茶を飲み干した。
「まあ、そんなことより今後のことについて話そうか。」
私は神室が頷いたところで一冊のノートを取り出しページを捲った。
ノートには昨年のクラスポイントの推移を示すグラフを貼ってある。
「まずこれを見て。」
「ふうん。結構クラスポイントが増える特別試験が多いのね。直近だと8月にでも試験とやらがあるのかな?」
神室の分析力は並といったところか。
「そうだね。まあそれよりもここを見て。」
赤ペンで囲われた箇所を指差した。
そこにはクラスポイントが大幅に下がり、他クラスに抜かされているAクラスのポイントが記されていた。
「これって…」
神室の声は微かに震えていた。
このままでは私達Aクラスは下剋上されてしまう可能性が高い。
「これは現二年生が一年生の時のクラスポイントの推移なの。」
「ってことは今の二年Aクラスは元一年Bクラスだったってこと?」
「そうだよ。今の生徒会副会長南雲雅が二年Aクラスのリーダー。そして学年の支配者。」
南雲雅の例を出す事でAクラスの危機感を煽り、団結力を高める。
私がAクラスを維持するために第一にやるべき事だ。
葛城はまだしも、坂柳を説得する事こそが最終目標である。
「これから神室にして欲しい事は坂柳派の情報を流す事とCクラス石崎の尾行。橋本に関する情報収集。これらをお願いしたいの。」
「石崎って龍園に従ってたガラの悪そうな奴よね?」
「そうだよ。もし彼がDクラスの須藤という生徒に煽り始めたらこのカメラですぐ撮影して。映像は私へメールで送って。」
「わかった。」
須藤暴力事件の時に小遣い稼ぎをする事が目的だが、石崎がどれ程強化されているかを確認するためでもある。
この世界ではまだ龍園は動いていないようなので、クラス間の抗争と言われてもイマイチピンと来ない。
だが、いつ事件が起きるか分からないので、神室に尾行をお願いする事になってしまった。
一応櫛田という手駒もいるが、龍園側のスパイになっていないので使えない。
「でも、なんで橋本について調べなきゃいけないの?」
神室は橋本という男の本質を理解していないようだ。
まあ入学してまだ二ヶ月しか経っていないから仕方ない。
「彼が裏切る可能性があるから。」
「へぇ。坂柳も橋本の行動をたまに気にしてた。まあ、出来るだけやってみる。」
流石は坂柳だ。
橋本正義の本質を理解した上で駒として完璧に扱える自信があるのだろう。
橋本は原作で坂柳の側近でありながら、龍園に情報を渡していたり、他クラスとパイプを作ったりと蝙蝠外交が得意な生徒だった。
この世界での実力は未知数だが、彼に裏切られる事はクラスにとって不利になる。
橋本が裏切る前になんらかの交渉をする事で一時的に防ぐ事は出来るだろう。
完全に制御する事は彼の利点を潰す行為になるため控えたい。
全く面倒な男だ。
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一月が経過した。
この間で私が行った事はAクラスに馴染む事だ。
中立派の小春や石田を中心に交流を深め、中立派の一員となった。
中立派の勉強会に参加しながらも、坂柳や葛城に誘われて両派閥の勉強会に参加した。
学力面で秀でているのは坂柳だが、教えるのが上手いのは葛城だ。
後、弥彦が意外にもすんなり私をAクラスに受け入れた事は予想外だった。
どうやらこの世界は、原作と丸っ切り同じという訳ではないようだ。
「おはよう。」
「おはよう瑠奈!」
「瑠奈ちゃんおはよう!」
小春と百恵に挨拶を交わし席に着くとピコンっと端末にメールが送られてきた。
相手は神室だ。
『石崎が須藤を挑発して殴りかかった。須藤はそれを避けて、殴りかかったの。場所は特別棟で監視カメラは無い場所だよ。他にも小宮や近藤もいた。石崎以外の3人はバスケ部みたいで、次期レギュラーの須藤を妬んでいたみたい。レギュラーを辞退するよう訴えてたよ。』
一番下にはファイルが添付されており、5分程の映像が入っていた。
「おはよう、小代。」
急に後ろから声を掛けられた。
振り返ると橋本が御機嫌そうに笑っていた。
あのメールを見られていたら厄介だ、ここは慎重に行こう。
端末を急いで仕舞い挨拶を返した。
「おはよう、橋本君。」
「今日は天気が悪いな。ウチの学校は室内プールで良かったぜ。」
「そうだね。温水だから寒くないしね。今週は金曜日まで雨みたいだよ?」
「マジか。部活も中練習かなぁ。」
橋本はいつも通り変わらなかった。
特に怪しまれている訳では無さそうだ。
情報の取り扱いには細心の注意を払う必要があるな。
ホームルームが終わり次第、人気のないところで映像を確認しよう。
「皆席に着け。」
クラス担任の真嶋が険しい顔で教室へと入って来た。
Cクラスが、龍園が動いたのだろう。
「今日は大切な話がある。学年内でトラブルが発生したためポイントの配布が遅れている。トラブルが解消され次第ポイントは振り込まれるので安心して欲しい。」
真嶋はそう言ってポスターを黒板に貼った。
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Aクラス 1054
Bクラス 720
Cクラス 620
Dクラス 87
ーーーーーーー
Dクラスは0ポイントから脱したようだ。
Bクラスとの差は334ポイント差と油断は出来ないが、心理的には余裕が持てる程には開いている。
ひとまず神室にはこの映像の口止めをしよう。
真嶋が教室を出たタイミングで、口止め料3万プライベートポイントを送った。
さて、この映像はどうするかな。
選択肢は龍園と契約して50万ポイント程貰うか、Dクラスに恩を売るかの二択。
今のDクラスに恩を売っても利益はほとんどない。
ならばCクラスと交渉しよう。
そういえば、龍園は無人島試験でAクラスと取り引きをしていたな。
物資を譲る代わりに、毎月Aクラス全員がCクラスに対して2万プライベートポイントを支払うといった内容だった気がする。
今回の取引であの契約書を真似るのはアリだ。
休み時間にDクラスの櫛田がやって来た。
「失礼します。Dクラスの櫛田桔梗です。今回トラブルでポイントの供給が遅れているのは、うちのクラスの須藤君とCクラスの石崎君との間でトラブルが起きたからなんです。」
櫛田が事件の概要を話し、情報提供を呼び掛けて去って行った。
「葛城さん、やっぱりDクラスは不良品の集まりみたいですよ。全く馬鹿が移ったらどうしてくれるんですかね。」
「弥彦、口を慎め。」
「は、はい!」
弥彦の言葉に大半の生徒がドン引きしているが、私は知っている。
だが弥彦の言葉は実力主義のこの学校では間違っていない。
クラスの振り分けは基本的に成績順だ。
優秀な者はAクラスへ、欠陥のある者や成績下位者はDクラスへと分かりやすい振り分けがされている。
弥彦は本人を目の前にすぐ吠えるという事が少なくなった。
精神的成長は喜ばしい事であり、それを理解してか葛城も口煩く説教をする事は減ったようだ。
その後Dクラスは、一之瀬に協力を要請したらしく、Aクラスへも一之瀬が情報提供を呼びかけに来た。
他にも掲示板を利用して情報を集めているようだが、集まる情報もめぼしいものはないようだ。
さて、そろそろ頃合いだろう。
端末を操作し電話をかける。
「もしもし、小代瑠奈です。君と会って直接話がしたいんだ。勿論、2人だけで。」
少しずつ原作は乱れてゆく。
たった一人の介入者によって。
数日後、風の噂でCクラスは訴えを取り消したと耳にした。
やはり綾小路は動いた。
時は流れ、冷房の効いた防音の多目的教室。
室内にはAクラスの生徒と真嶋先生のみ。
教卓の前に立つのは私小代瑠奈である。
「みんな」
さあ、始めよう。
「集まってくれてありがとう。」
勝者は一クラスのみ。
「今後Aクラスを死守するために」
過程はいらない、結果を残せ。
「みんなで話し合う時間が必要だと思うんだ。」
「ふふふ、気になりますね。小代さん、あなたはどんなお話をしてくれるのですか?」
「このクラスに関わる事なら話して欲しい。皆で考えよう。」
坂柳と葛城の言葉により空気が重くなった気がする。
前もって計画を立てなさい。雨が降る前に、ノアは箱舟を作ったのです。
by リチャード・C・クッシング
「あのね、その前に全員この契約書に署名して欲しいんだ。」
一番になりたければ、他の人がやらないことをやりなさい。
by 流音弥
「只今から特別試験の戦略と今後のAクラスの動きについての話し合いを始めます。」
全員が署名した事を確認し、ポイントを送金していく。
さあ、語り合おう。
話さなくては、話し合いとは言えない。
『ようこそポイント至上主義の教室へ』
残金 244万3607ポイント
『 契約書
7月10日
16時00分以降Aクラスの話し合いで得た情報を他クラス及び他学年の生徒に渡さない事をここに誓う。(話し合いの度に有効)
〈契約条項〉
[1]話し合いで得た情報及び意見を次の特別試験が終了するまで他クラス他学年の生徒に渡してはいけない。
[2][1]の条項は話し合いの度に有効である。
[3][1]を破った生徒は罰金10万プライベートポイントを小代瑠奈に支払う。
[4]契約が成立した場合、小代瑠奈は契約相手に5000プライベートポイントを支払う。
署名
────────
※立会人
────────
』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『 契約書
小代瑠奈は暴力事件に関するビデオ及び情報を公表しない事を約束する。
〈契約条項〉
[1]Cクラス全員が毎月2万ポイントを小代瑠奈に支払う。
[2]小代瑠奈はこの事件に一切の関与をせず、ビデオ及び情報を公表しない。
[3]小代瑠奈がビデオ及び情報を公開した場合、罰金100万ポイントを龍園翔に支払う。
[4]Cクラスが一人でも滞納した場合このビデオを公開し、罰金100万プライベートポイントを小代瑠奈に支払う。
署名 龍園 翔
─────────
署名 小代 瑠奈
─────────
※立会人 真嶋 智也
─────────
』
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