入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】   作:かりん糖さん

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ついに無人島試験の作戦会議が始まります。
クラス内での小代ちゃんの立ち位置、両派閥の話し合い、モブの強化。
書いていて楽しいですが結構集中力を使いますね。




14話 作戦会議①

 

 

議題が何であれ、進むべき方向と反対に議論は進み、本当に有益な意見を述べる者ではなく、うわべを取り繕った意見を述べる者が会議を支配する。

by ニッコロ・マキャベリ~

 

 

 

放課後カラオケルームに向かうと、中には坂柳と葛城、石田と小春の他に橋本と町田が既に集まっていた。

 

 

「やあ、小代。待ってたぜ。」

 

 

私の姿を見るなり爽やかな笑顔で手を振る橋本に軽く会釈を返しながら部屋に入り、空いている席に腰掛ける。

 

 

「お待ちしていました、小代さん。」

 

 

「お待たせしちゃったみたいだね。皆今日は宜しくね。」

 

 

今から無人島試験の具体的な作戦会議が始まる。

私達Aクラスが勝つための作戦だ。

橋本が冷戦のような雰囲気を和らげるように口を開いた。

 

 

「それじゃ早速始めようか。まずは全員分の飲み物を用意してこようと思うんだが、誰か手伝ってくれないか?となりのスーパーで買うつもりだ。」

 

 

「なら俺が行こう。申し出に感謝するよ橋本。」

 

 

そう言って立ち上がったのは葛城派の町田だった。

 

 

「お、ありがとう町田。じゃあちょっと出てきます。先に始めてもらって大丈夫だからな。」

 

 

こうして町田は橋本と共にスーパーと向かい、部屋の中は私を含めた4人だけになった。

この面子だと必然的に私が話を切り出すことになる。

 

 

「さて、それじゃ早速だけど始めようか。まず無人島試験を行う上で大切な事は何だと思う?」

 

 

「それは勿論情報です。」

 

 

真っ先に答えたのは坂柳だった。

その言葉を受けて私は深く首肯する。

 

 

「うん。今回の試験ではそれが特に重要になるだろうね。けど他にも必要な事があると思うな。何かわかる?葛城君」

 

 

私の問いかけに対し、葛城は少し考える素振りを見せた後、自信無さげに口を開く。

 

 

「…………食料の確保だろうか?」

 

 

「惜しい!でも半分正解って感じかな。無人島生活には当然食べ物も必要だし、何より水が必要なんだよね。」

 

 

葛城の回答を聞いて坂柳は納得したように呟く。

 

 

「確かにそれも重要なポイントですね。水の有無で生死に関わる事態に陥る可能性もありますから」

 

 

「ああ、そうだな。ポイントで買う他にも、蒸留装置を作って置いた方が良さそうだ。」

 

 

「うん、確かにね。後は水源の近くをベースキャンプにするのもいいかもね。」

 

 

生命線となるのはやはり食料だ。

試験は真夏に行われるし、水分不足で熱中症に陥る可能性もあるので楽観視する事は出来ないだろう。

 

 

そんな風に意見を交わしていると、橋本と町田が飲み物の入ったボトルを持って戻ってきた。

 

 

「ただいまー。ごめんね、遅くなって。」

 

 

「おかえりなさい橋本くん。それでどうでしょうか、上手くいきましたか?」

 

 

坂柳の問いに対して橋本は肩を縮こませながら苦笑した。

 

 

「残念ながら、町田の勧誘は出来ませんでした。流石葛城派の参謀様だな。」

 

 

その言葉を聞いた瞬間、葛城が僅かに反応を示した。

 

 

「ほう。町田は俺を信じてくれた事、感謝するぞ。」

 

 

「ああ、俺は坂柳よりはお前の方がAクラスのリーダーに相応しいと思っているからな。」

 

 

町田の発言に葛城は再度礼を言った。

 

 

そして坂柳は立ち上がり、自分のグラスを手に取りオレンジジュースを注ぎ始め、私はアイスティーをグラスに注いだ。

石田と橋本はアイスコーヒーを選び、小春はアイスココアを注いだ。

 

 

「さて皆さん。そろそろ話し合いを始めましょうか。」

 

 

「そうだね。それじゃ早速本題に入ろうか。今回Aクラスの私達が勝ち抜くためにはリーダー指名が大きな鍵になると思うな。他クラスをどこまで出し抜けるか、これに尽きると思うな。」

 

 

「だが小代。リーダーを指名したところで、こちらがバレてしまっては元も子もない。どのようにウチのリーダーを隠すか策はあるか?」

 

 

葛城の疑問は尤もだ。

中立派の石田がその疑問に頷き口を開いた。

 

 

「確かにそうだな。CクラスやDクラスならばまだしも、Bクラスが相手となると話は別だからな。」

 

 

「うん、もちろん対策は考えてあるよ。スポットの更新を大人数で行えばいいの。誰がリーダーか分からなくする為に、カードキーをリーダ以外の人に持たせるのもいいね。」

 

 

私の提案に対し葛城が考え込むような仕草を見せる。

 

 

「ふむ。確かに有効な手段ではあるが、その場合、他の場所でも更新を行う必要があるな。それに、もし敵に見つかればそれだけリスクが増す事になるだろう。」

 

 

「その通りだよ。だからあくまで最終手段として考えた方がいいと思うな。」

 

 

「成程な。では次に、どうやって敵を欺き続けるかだが──」

 

 

それから私達は様々な意見を出し合い、作戦を練り上げていった。

 

 

「よしっ、これで大まかな方針は決まったね。。後は細かな修正していこう。戦略についてはまた明日にしよう。」

 

 

黙り続けていた坂柳が私に向き直り、真っ直ぐ視線を向ける。

 

 

「小代さん、貴方には期待しています。どうかAクラスの為に力を尽くして下さい。」

 

 

「任せておいて。必ず皆でAクラスを勝たせよう!」

 

 

坂柳の言葉を受けた私は力強く宣言した。

 

 

「瑠奈の言う通り、最後に笑うのは私達よ。」

 

 

小春もノリノリと言った様子で高らかに決め台詞を吐いた。

 

 

「ひとついいか?先程小代に見せて貰ったマップを見て思ったのだが、この洞窟のあたりをベースキャンプにするのはどうだ?」

 

 

石田の言葉を聞いて全員がマップを確認する。

洞窟の前には川が流れており水の確保も出来る。

 

 

近くには人口の畑らしきものもあり、生活はしやすそうだ。

 

 

「確かにここは良さそうですね。無人島試験が始まったらひとまずここの近くのスポットを占有しては如何ですか?葛城君。」

 

 

「ああ、坂柳の意見に賛成だ。」

 

 

「それじゃここに決定だね。リーダーのリタイア作戦を使うなら、身体能力の高い男子生徒をリーダーにして先にここを占有させても良さそう。第二候補、第三候補も探しておいた方が良さそうだね。」

 

 

私の言葉に全員が頷き、話し合いは明日に持ち越しとなった。

話し合いを終えて部屋を出ると、背後から橋本に声を掛けられた。

 

 

「あー、小代。ちょっといいか?」

 

 

「どうしたの?橋本君。」

 

 

普段のおちゃらけた雰囲気とは打って変わって、真面目な表情をしていた。

 

 

「いや、葛城のことなんだけどさ。あいつって本当にAクラスのリーダーに相応しいと思うか?」

 

 

「えっと……それはどういう意味かな?」

 

 

「そのままの意味だよ。確かに学力だけ見れば葛城はトップクラスだと思う。それに最近は柔軟な思考をするようになった。だがそれでも姫さんの下位互換に過ぎないと思うんだ。」

 

 

「確かに葛城君は優秀なリーダーだと思うけど、坂柳さんの方が頭脳面では優れているかもしれないね。でも彼の保守的な思考は必ずAクラスにとって必要なものだと思うよ。それがどうかしたの?」

 

 

私が首を傾げると、橋本は真剣な表情で語り始める。

 

 

「今回の無人島試験、契約のせいで俺達は葛城派を潰せなくなった。そして今後も小代はクラスのために邪魔をする気だろ?本当にリーダーを交互に行う事で派閥の評価をする事が出来るのか?俺に言わせれば、正直小代の作った流れはぬるい。」

 

 

なるほど、どうやら彼は現状に対して不満を抱いているようだ。

坂柳の手前渋々契約を受け入れているといったところか。

 

 

「つまり橋本君は、私のやり方に不満があるという事なのかな?」

 

 

「ああ、そうだ。派閥同士のいざこざは隙を作る。だから契約書を使って同盟を結ばせ、試験の勝利を優先する。確かにそれで今回は丸く収まった。だがこの提案はその場凌ぎでしかないぜ?」

 

 

橋本は葛城や葛城派とは違い、好戦的な坂柳派の人間だ。

彼は元々器用な人間で、Aクラス卒業という目的のためならば何だってする男。

 

 

彼曰く、葛城は他クラスとの争いにおいて攻撃力が弱いらしい。

まあそれは事実だが、一之瀬の上位互換として考えればリーダーとしての素質は十分だろう。

 

 

確かに龍園のような搦手を得意とするリーダーとの相性は悪い。

だがいまの葛城は以前とは違い、正攻法以外の戦略も考えられるようになっている。

 

 

今後覚醒するDクラスを相手するには守備の強い葛城は必ず役に立つ。

とりあえず龍園に渡したくないと言う事で、現状維持という選択を選んだ訳だ。

 

 

「へぇ、意外だなぁ。まさか橋本君がそこまで考えていたなんて思わなかったよ。」

 

 

「ああ、そうだな。俺は葛城より知恵は回るからな。」

 

 

「うんうん。確かに葛城君の苦手分野が君の得意分野だもんね。でもごめん、私はAクラスを勝たせたいから。今回は、クラスに協力して欲しいな。契約書もある事だし、さ?」

 

 

橋本の言う事は理解できる。

どこかで不安を持つクラスメイトのメンタルケアをした方が良さそうだ。

 

 

無人島試験では坂柳が参加するとはいえ、葛城を中心に動く事になる。

無人島試験では葛城が成果を出し、船上試験では坂柳が成果を出す。

 

 

これが理想であり、両派閥の生徒を含めたクラス全員のメンタル回復につながるはずだ。

 

 

 

「ははは、まあそりゃ無理な話か。」

 

 

「うん、ごめんね。じゃあ、また明日ね。」

 

 

「おう!よろしく頼むわ。」

 

 

ひとまず橋本が引いてくれたおかげでこの場は凌げた。

そして私は橋本と別れ、自分の部屋に戻った。

 

 

翌日、朝早くから起きて支度を整えていると、部屋のドアがノックされた。

扉を開けると、そこには葛城派の町田浩司が立っていた。

 

「おはよう町田くん。どうしたの?」

 

 

「おはよう小代。朝早くに申し訳ないが少し話がしたいんだ。今時間はあるか?」

 

 

「うん。大丈夫だよ。」

 

 

町田を部屋に招き入れると、彼は椅子に座り口を開いた。

 

 

「昨日の話し合いではあまり小代の意見を聞けなかった。だからこうして話に来たんだ。君はリーダーについてどう思う?」

 

 

彼は葛城派の参謀として成績優秀者の多い葛城派で一定の地位を得ていた。

ここで彼の言うリーダーについてとは、遠回しにどちらの派閥を支持しているかと言う事を表していると推測出来る。

 

 

「うーん。別に私としてはどっちがリーダーでも構わないんだよね。ただ、葛城君がリーダーだとクラスの皆が安心すると思うな。彼は坂柳さんと比べると仲間思いだからね。でも坂柳さんの発想もクラスの大きな戦力になる。悩ましいね。」

 

 

私はあくまで中立であるとアピールし明言を避けた。

 

 

「確かにそうだな。だが最近の俺は、リーダーには葛城や坂柳よりもお前が相応しいと思っているんだ。」

 

 

突然の町田の発言に戸惑う。

私はAクラスで勝ちたいだけで、リーダーになりたいなどと一言も言っていないのだ。

 

 

「どうして私なんかを推薦してくれるの?」

 

 

これは純粋な疑問だ。

私はAクラスにやって来て約一月しか経っていない。

 

 

まだ功績も出していない人間なのに、何故私を高く評価してくれるのか疑問に思う。

 

 

「それはお前が坂柳や葛城よりもクラスの事を考えて行動してくれているからだ。」

 

 

「そんなことないよ。私だって2人と同じ考えを持ってるし、Aクラスを勝たせたいと心の底から思ってる。でもそれ以上に私利私欲を満たしたいだけなの。」

 

 

「ああ、そうかもしれないな。だがそれだけじゃない。小代は短期間での行動で多くの生徒の信頼を勝ち取っている。それを今更変えることは出来ないだろう?」

 

 

「確かにそれは否定出来ないかも。」

 

 

確かに特別試験の内容を発表したあの日、クラス全員が契約書にサインしてくれたのは私を多少なりとも信用していないとあり得ない事だった。

知らず知らずの内にクラスの皆から認められていたのかもしれないな。

 

 

「だからこそ、小代にはもっと大きな器を見せて貰いたいんだ。その力を見せてくれれば、きっと皆は小代を認めるだろう。」

 

 

私は少し考える素振りを見せる。

まあ、答えはもとより決まっている。

 

 

「うーん、悪いけど今のところリーダーには興味がないんだ。ごめんね。」

 

 

「そうか」

 

 

町田は仕方ないと残念そうに笑って去っていった。

私も朝食を摂って学校へと向かった。

 

 

クラスチャットを開くと、坂柳と帰った時の不審者の情報が共有されていた。

今後女子生徒は一人での登下校を避けるよう注意喚起がされている。

 

 

私は中立派のグループチャットを開き、百恵と小春と通学する事にした。

寮の外へ向かうと百恵達は先に着いていたようだ。

 

 

「おはよう小春、百恵。」

 

 

「おはよう!瑠奈。」

 

 

「おはよう瑠奈ちゃん!!」

 

 

3人で歩いて学校へと向かう。

不審者は他クラスの生徒だろうが、何をしてくるか分からない。

 

 

「最近色々物騒な事件も多いし気をつけないとね。ほら、この前学校前の公園で遺体が見つかったってニュースもやってたし。」

 

 

「そんなニュースがあったなんて…家に帰ったら確認しないと。」

 

 

「え、瑠奈知らないの?」

 

 

「うん、基本テレビは見ないから。この前映画の特番を見たくらいで、後はここの学校に来てからテレビは見てないかな。」

 

 

「そうなの?今やってる水9のドラマとかめっちゃ面白いよ?」

 

 

二人からおすすめのテレビ番組を教えて貰い、幾つか気になる番組がある。

帰ったら番組表を確認しよう。

 

 

それにしても登下校だけでも一苦労だな。

他クラスに注意する下校なんて、不良校を除いたらうちの学校ぐらいだろう。




葛城康平(成長版)


所属    1年Aクラス

学籍番号  S01T004706

誕生日   8月29日

【学力】   A →A
【知力】   A →A
【判断能力】 B →B+
【身体能力】 C →B
【協調性】  B– →B


【面接官からのコメント】

小、中学校と常にトップの成績を維持し、長年生徒会の一員として生徒をまとめ上げてきた実績を高く評価すると共に、将来的には当校の生徒会役員になることを期待したい。
よってAクラスへの配属を決める。


【担任からの一言】

Aクラスのリーダー候補として坂柳と対立していますが、彼を一言で表すならば盾でしょう。
Aクラスを大きな盾でクラス争いから守ってくれる事を期待します。

[追記]最近は精神的にも成長し、派閥のためではなくクラスのための行動をしており今後への期待が高まっています。

干支試験でどのグループに入る小代ちゃんを見たいですか?

  • リーダーグル
  • 美少女グル
  • リーダーと山内グル
  • 参謀グル
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