入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】   作:かりん糖さん

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今回は二本立てでお送りします。
ついに無人島試験が始まりました。
Aクラスはどうなって行くのか?!
果たして勝てるのか、どうか…




16話 変化/ようこそ無人島へ

 

 

強い者が勝つのではない。勝った者が強いのだ。

by フランツ・ベッケンバウワー

 

 

 

いつもと同じように振る舞う彼女はどこかぎこちなかった。

 

 

「じゃあ、この季節のフルーツパフェと紅茶のセットにしようかな。」

 

 

「あら、私も同じものを頼んだんですよ。私達似ているかもしれませんね。」

 

 

注文を終えるとひよりが真剣な顔つきになった。

彼女の雰囲気が変わったことで、これから真面目な話をされることが分かった。

 

 

何も言わずにAクラスへ移動した事を謝ろう。

 

 

「ひより、黙ってAクラスに移動してごめんなさい。許してくれなんて言えないけどこれだけは言わせて欲しい。私にとってひよりは初めて出来た対等な友達で、大切な親友だと思ってる。だから、良かったこれからも仲良くして欲しいんだ。」

 

 

私は深く頭を下げた。

 

 

「……瑠奈ちゃん、私こそ何か言いたそうにしていた瑠奈ちゃんに気づいていたのに何も言えずにいました。だから謝る事は無いんです。少し寂しく感じましたが、これからまた仲良くしてくれたらそれだけで嬉しいです。」

 

 

優しい声色で告げられた言葉を聞き、私は泣きそうになった。

 

 

「そういえば、上地の名作星屑が映画化されたのは知ってる?この前特番も見たんだけど、上地の作った代本を使ったショートドラマが凄くてね!」

 

 

「それでしたら私も見ましたよ!俳優の──」

 

 

その後、お互いの近況を話し合ったり他愛のない会話を楽しんだ。

私達共通の趣味である読書は会話を弾ませてくれた。

 

 

ひよりの最近読んだ面白い小説の話、映画化された原作の作家に関する話、最近のクラス内の様子、Aクラスの雰囲気。

 

 

様々な話題でおしゃべりに花を咲かせ楽しんだ。

そして明日映画を見に行く約束をした。

 

会計を済ませて外に出ると強い日差しが照りつけてきた。

冷房が効いていた店内との気温差に汗が滲む。その時、一際大きな蝉の鳴き声が響いた。

 

 

ジワリと背中に嫌な汗が流れた気がしたが気づかないふりをして足を進めた。

寮に戻るとポストに手紙が入っていた。

 

 

中には二通の封筒が入っていた。

 

 

一つは⚪︎×塾と書かれた封筒。

もう一つは差出人不明の封筒。

 

 

一つは先月受けた全統マーク模試の結果だ。

どうやら私の全国順位は7位のようだ。

 

 

真嶋に見せればクラスポイントに加算されるはずだ。

プライベートポイントも入るはず。

 

 

私はすぐさま試験結果のPDFをメールに貼り付け、真嶋に送信した。

もう一つの封を開けるとそこには怪文書が書かれていた。

 

 

「は?」

 

 

思わず声が出た。

その文面にはこう記されていた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ちあじょえびかもでなえ。

ひつがてしあじゅえうつぬつぬしきゆにぎるじつょえきりかひにすがうけだわえ。

ししゆきにかけるやはんらえうすち。

なうっとやいぬがみおやっとおりだうちやはだが。

ちはすむぬすとうとけろ。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

つまりこれは暗号文だ。

そこまで難易度の高いものでは無い。

 

 

内容を訳すと…

 

 

『誕生日おめでとう。8月31日に坂柳理事長からお話が行くだろう。ささやかな贈り物を用意した。

楽しみにしていてくれ。』

 

 

といった感じだ。

暗号なんて何年ぶりだろう。

 

 

ちなみにこれはシーザー暗号だ。

これは最もシンプルであり広く知られている暗号だ。

 

 

ちなみに今回は1文字ずらされているだけだ。

 

 

シーザー暗号は単一換字式暗号の一種であり、平文の各文字を辞書順で3文字分シフトして暗号文とする暗号である。

文字のシフト数は固定であるが、3に限る必要はない。たとえば左に3文字分シフトさせる場合、「D」は「A」に置き換わり、同様に「E」は「B」に置換される。

 

 

以上Wiki先生でした。

 

 

 

暗号よりも問題なのは差出人が不明な事、何故か坂柳理事長が関わっているという事の二点だ。

ここは外部との交流が遮断された学校だ。

 

 

この手紙をポストに直接投函できる者は校内に居る者と一部の外部業者くらいだ。

そして誕生日と書かれている事から私の誕生日を知っている人物に限定される。

 

 

だが私は誕生日を誰にも話していない。

それにもう誕生日が過ぎているのにこうして送られて来た怪文書。

 

 

普通に考えればイタズラだと思うだろう。

しかし、私はこの文章を書いた人間が誰なのか知っている気がすした。

 

 

あの時聞いた声の主が関係しているのだと直感が言っている。

 

 

思い出せ、もっと集中しろ。

集中して耳を傾けるんだ。

 

 

 

記憶の底にある蓋をこじ開けようと、思い出そうとするが何も分からない。

記憶の一部は霞がかったように真っ白なのだ。

 

 

必死に記憶を呼び起こそうと試みるが無駄だった。

仕方がない。

 

今は考えても何も浮かんでは来ないだろう。

時間がある時にもう一度挑戦しよう。

 

 

今日はゆっくり休んで明日に備えよう。

 

 

 

翌日、目が覚めてからずっと昨日の事が頭から離れなかった。

どうしても知りたい、でも何も思い出せない。

 

 

 

知りたいような、知りたく無いような、そんな葛藤を抱えながら眠りについた。

 

 

 

次の日、登校中葛城に声をかけられた。

 

 

「おはよう小代。一人か?複数で通学した方が良いぞ。」

 

 

「あ、そういえば不審者がいるんだったね。すっかり忘れていたよ。」

 

 

私がそう言うと彼は少し困った表情を浮かべた。

そうして葛城と話しながら歩いていると教室に着いた。

 

 

「おはよう瑠奈!」

 

 

「おはよう瑠奈ちゃん!」

 

 

 

小春と百恵に挨拶を返し談笑しているとチャイムが鳴り真嶋が教室へやってきた。

彼の手には答案用紙の他に二つのポスターを抱えていた。

 

 

「先週の期末テストの結果を発表するぞ。」

 

 

各教科の結果が書かれたポスターを貼っていく。

今回の期末テストは国語総合、英語、数IA、日本史B or 世界史B、生物基礎 or 化学基礎 or 物理基礎から2科目、保健体育の6科目7教科だ。

 

 

まともに勉強しても余裕で赤点ラインを越えられるが、過去問を使った事により Aクラスの平均はCクラスにいた頃よりも遥かに高くなっている。

流石は優等生の多いAクラスだ。

 

 

国語総合は最高98点。

他の科目は最高点が全て100点だ。

 

 

ちなみに弥彦の名前を探すと下の方にあるが、点数は全て70点台である。

Aクラスに選ばれるだけのスペックは持っている様だ。

 

 

「今回のテストは赤点者無しだ。平均点も全科目90点を超えている。君達は優秀だ。今後も励んでくれ。」

 

 

この結果にAクラスからは歓喜の声が上がった。

普段騒いだりしないAクラスからは想像もつかない程の喜び様だった。

 

 

真嶋は次にクラスポイントの書かれたポスターを貼った。

 

 

ーーーーーーー

Aクラス 1194

Bクラス 720

Cクラス 620

Dクラス 87

ーーーーーーー

 

 

クラスポイントが増加していた。

 

 

「小代が全国模試で全国7位となったため、その努力を讃えて140クラスポイントが加えられた。小代には300万プライベートポイントが贈呈される。」

 

 

「すごい!瑠奈ちゃん頭良いんだね!!!」

 

 

「小代スゲェな!」

 

 

その言葉を聞きクラスメイトは驚きを隠せずにいた。

葛城や戸塚は勿論、石田や坂柳も驚いている様だ。

 

 

ホームルームが終わると、今日から短縮授業となるので急いで体育の準備をしに向かった。

 

 

 

残金 657万2007ポイント

 

 

※角川の利益と手数料、龍園との契約が足された額です。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

そして月日は経ち、豪華客船の旅が始まった。

 

 

今回の試験には坂柳も参加するため、念のため数人の医者が同伴している。

船の屋上には救助用のヘリも用意されており、万が一にも対応できるようになっている。無人島に着くまでの数日間、私はひよりと一緒に船旅を楽しんだ。

 

 

船内には映画館やプールなどの施設があり退屈する事は無かった。

ひよりとは映画を見たり買い物をしたりして楽しく過ごした。

 

 

そしていよいよ無人島へと辿り着いた。

目の前に広がるのは自然豊かな島の風景だ。

 

 

砂浜が広がり、綺麗な海が広がっている。

島の中央付近には鬱蒼とした森が広がっていた。

 

 

「凄い綺麗だね!るーちゃん。」

 

 

「そうだね。見たところ人工物もあるし、無人島とは言えなさそうだなぁ。」

 

 

「そうですね。もしかしたら畑のようなものもあるかもしれませんね。」

 

 

まだ何を行うのか説明されていないのにひよりは鋭い意見を出した。

流石はCクラス一の才女である。

 

 

暫くすると船が停まった。

どうやら今から特別試験が始まるようだ。

 

 

荷物を持って外に出よう指示が出た。

 

 

私は準備を行う前に坂柳へ声を掛けた。

 

 

「坂柳さん、頑張ってくるね。司令塔は任せるよ。」

 

 

「ええ。期待してますよ、小代さん。それと耳を貸してもらえますか?」

 

 

私は素早く彼女に近づいた。

どうやら今回彼女の代理となる生徒は彼女の派閥の女子生徒、中島理子らしい。

 

 

リーダーリタイア作戦を行う上ではうってつけの相手である。

最低限の着替えやタオルを詰め込んだリュックを背負い、荷物検査の列に並んだ。

 

 

無人島での生活に胸を踊らせながら船を降りた。

早速、教師からの説明を受けた。

説明は事前に知っていた内容だった。

 

 

新しい事といえば坂柳が参加した事について新たに制限が設けられた事くらいだろう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

[1]坂柳有栖の身体的事情を考慮し、船内での無人島試験への参加を認める。

 

[2]坂柳有栖は半参加扱いとなり、坂柳有栖がリーダーとなった場合は代理人を立てる事でスポット占有を行う事が出来る。

 

[3]坂柳有栖は半参加扱いにより、試験ポイントから15ポイントが予め引かれる事になる。

 

[4]代理人は試験前に固定され、代理人がリタイアした時点で坂柳もリタイア扱いとなり、45ポイントが引かれる事になる。

 

[5]坂柳有栖には試験中別室での待機が命じられるが、クラスメイトとのやりとりが出来るよう配慮する。

 

[6]貸し出した端末を紛失・破損した場合坂柳有栖はリタイアとなり、15ポイントが引かれる事になる。

 

[7]坂柳有栖がリーダーとなった場合最終日にリーダー指名を行う事が出来る。

 

[8]坂柳有栖は船内の自室から無人島試終了時まで外出を禁ずる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

説明が終わるとボイスレコーダーが二つ手渡された。

Aクラスは事前に決めていた通り洞窟を目指した。

 

 

隠密班と見張り班は途中で抜け、各々目的の場所へと向かっていった。

ちなみにボイスレコーダーの一つは鬼頭に渡してある。

 

 

もう一つはベースキャンプ班代表の石田に渡しておこう。

 

 

「迷う事なく洞窟まで来れたね。」

 

 

「ああ、ここからが大事だ。」

 

 

「ではリーダーはどうするか決まっているな?」

 

 

「はい。真嶋先生、リーダーは私です。」

 

 

真嶋は頷き、リュックから一つのキーカードを取り出した。

百恵と真嶋を囲うようにAクラスの生徒が集まり、百恵はキーカードを受け取った。

 

 

洞窟とその近くの川にあるスポットを占有班で囲む。

これで2ポイント獲得した。

 

 

一度洞窟に戻り、今後の行動を確認する事になった。

 

 

「あ、レコーダー繋がったよ!坂柳さん聞こえる?」

 

 

『ええ、問題ありません。私の方ではサバイバル術や医療対処等を調べておきます。何か分からない事があったら私に聞いてください。PCですぐ調べられるので。』

 

 

無人島試験でPC使える坂柳って、仕方ないとはいえチートだと思う。

 

 

「ああ分かった。マニュアルを買う必要もこれでなさうだな。」

 

 

 

葛城の言葉に頷いた。

 

 

「それで今後だが、計画通りならここからベースキャンプ班は周辺の地形を調査して欲しい。」

 

 

「わかった。」

 

ベースキャンプ班の生徒は山村、石田、町田と見張り役の二人を除いて散策に出た。

石田は彼らを見送り計画の内容を述べていく。

 

 

「ひとまず俺は予定通りの買い物をする。20ポイントの仮設トイレと一食分の食事(40人分)5ポイント、紙コップと紙皿のセット(各200個[枚]ずつ)を二つ4ポイント、割り箸(200本入り)1ポイント、包丁とまな板のセット2ポイント釣竿5本セットは3ポイント。計35ポイントを使用する。」

 

 

山村はメモを走らせ買い物歴をメモに記録していく。

どうやら荷物検査に引っかからなかったらしい。

 

 

まあ他クラスと契約を結ぶ事もあるだろうし、禁止されてはいないのだろう。

 

 

「そうすると残り250ポイントになる。つまり、調達班は死ぬ気で食料を集めて欲しい。この川沿いにまっすぐ進んだところには何らかの畑があるはずだ。ある分だけ持って来て欲しい。」

 

 

石田の言葉を皮切りに調達班の5人は川沿いに歩き出した。

 

 

リュックの中身を空にして女子の物は無償で渡された8人用のテントに纏めて仕舞う事になった。

その他の男子や女子の荷物は洞窟の奥に仕舞うらしい。

 

 

「調達の釣り組はは釣竿セットが届いたら川釣りを始めてくれ。餌とバケツもついているらしい。大切に使うように。」

 

 

釣り組みは釣りの準備を始めた。

 

 

「最後にスポット占有組はスポットの占有を進めて欲しい。今の段階なら他クラスはまだ話し合いかベースキャンプを決める段階だろう。スポットを占有したらこの地図に印をつけてくれ。目安としては残り5つくらい見つけて欲しいな。」

 

 

とりあえず12時頃には一度戻る事が決まっている。

 

 

「分かった。じゃあ行ってくるぜ。」

 

 

私たちは森の中を歩いている。

ミンミンとセミの鳴き声がうるさい。

 

 

「いつも学校にいるから新鮮だよね。」

 

 

百恵はどこか楽しそうに周りの様子を観察しながら歩いている。

全員で移動しているためスポット占有数が少なくなってしまうのが難点だな。

 

 

暫く歩いていると小さな小屋を見つけた。

 

 

 

「ここ入れるかな?」

 

 

「どれどれ…」

 

 

橋本が扉に手をかけるとキィッと音を立てて開いた。

中に入ってみるとどうやらスポットのようだった。

 

 

10人が我慢すれば生活出来なくは無い程度の小屋だ。

物置には清掃用の箒や雑巾が入っており、この小屋を掃除すれば使えそうだ。

 

 

「とりあえずここは占有しておこう。後で石田達と相談する事にしよう。」

 

 

葛城の言葉に全員が頷く。

占有を終えてまた歩き出した。

 

 

「あ、あれって畑かな?あれトマトじゃない?」

 

 

小春が指差す方を見るとトマト畑らしき物が見つかった。

葛城の指示により全員で畑を確認する。

 

 

「本当にトマト畑だね。それに此処はスポットでもあるみたい。少し貰ってこうか。」

 

 

百恵を囲みスポットを占有する。

さっきの小屋と合わせて地図に記していく。

 

 

 

全員でトマトを慎重にリュックに詰めた。

ざっと40個程詰めて次のスポットを探す。

 

 

「うーん、この辺りはないのか?」

 

 

橋本の言葉に雰囲気が少し重くなった。

今は真夏なので少し動くだけで汗が噴き出る。

 

 

皆心身ともに疲弊しているようだ。

その時微かに水の音が聞こえて来た。

 

 

「ねぇ、この音水場が近くにあるんじゃ無いかな?」

 

 

「そうみたいだね。多分もう少し奥かな?」

 

 

希望の光が見えて来た。

奥まで進むと小さな滝があり、その下には川が流れている。

 

 

川の位置的に川沿いを進めばベースキャンプの近くの川に辿り着く可能性が高い。

 

 

「スポットはあるかな?」

 

 

「あれじゃないか?滝のすぐ近くにある。」

 

 

全員でスポットに向かい、百恵を囲んで占有する。

現状占有したスポットは洞窟とその近くの川、洞窟から少し歩いたところにある小屋、その近くのトマト畑、そしてこの滝だ。

全部で5つのスポットを占有している。

 

 

「どうする?そろそろ12時になるよ?」

 

 

中島が不安そうな顔で橋本を見る。

そういえば中島は坂柳派の人間だったな。

 

 

「この滝の向こうを確認してこの川沿いに戻ろう。この辺の地理を把握しておきたいんだ。葛城もそれでいいか?」

 

 

「ああ、構わん。」

 

 

「私もそれに賛成だよ。」

 

 

全員で滝の奥に続く道を歩くとそこには小さな池があった。

もちろん此処もスポットだ。

 

 

「やった!!!スポットだよ!!!」

 

 

「落ち着いて、百恵。」

 

 

はしゃぐ百恵を小春が宥める。

今までと同じようにスポットの占有を行う。

 

 

「これで6つ目だね。そろそろ戻ろうか。」

 

 

「ああ。全員はぐれないように気をつけてくれ。」

 

 

葛城の言葉に頷き、全員できた道を引き返した。

滝まで戻ると川沿いに歩き出した。

 

 

疲弊しているのか誰も何も話さず黙々と歩き続けた。

身体能力の高い橋本や葛城が疲弊しているのだ、運動能力の低い生徒には地獄だろう。

 

 

15分程歩き続けるとベースキャンプが見えて来た。

 

 

「お疲れ様。」

 

 

ベースキャンプ班の見張り役である西春香と福山しのぶが出迎えてくれた。

そして二人は一人一人に水の入ったコップを手渡していく。

 

 

喉が渇いていた私は一気に飲み干してしまった。

横を見ると他の皆も同じようで、あっという間にコップは空になってしまった。

 

 

そんな私たちを見て春香がクスリと笑った。

 

 

「一食分の食事ってどんなのかな?」

 

 

「カタログ見た時はおにぎりだった気がする。」

 

 

「ああ。ポイントの割にはまともな食事だったぞ。」

 

 

そういえば1日目の昼食は一番やすいカロリンメイトと水のセットにするか、このお弁当タイプのものにするか坂柳と葛城の意見が対立していたな。

結局どれくらい過酷かわからない事、1日目で食料の調達厳しいという推測の元このお食事セットに決まったのだ。

 

 

ちなみに葛城がカロリンメイト派で坂柳がお弁当派だった。

 

 

「えっとね、結構豪華だよ?おにぎり三つと唐揚げ二つ。男子は足りないかもしれないけど、女子は満足できると思う。」

 

 

春香の唐揚げというワードに百恵は瞳を輝かせた。

ダンボールからお弁当を取り洞窟内に腰を下ろす。

 

 

「まあ食べ物があるだけマシだな。」

 

 

橋本の発言に頷いて冷たいおにぎりに齧り付いた。

思っていたよりもお腹が空いていた様で、食べる手が止まらない。

 

 

昼食タイム中にどこへ行っていたのか、洞窟の外から石田がやって来た。

スポットや畑を記したマップと畑で採れたトマトを渡す。

 

 

ベースキャンプ待機班の生徒に指示を出してトマトを川で冷やす。

彼はマップを山村に渡してこちらへ戻って来た。

 

 

「みんな食事を終えたら午後の日程について話がある。今はひとまず休息をとってくれ。そろそろ隠密班の迎えを頼みたい。田宮と谷原に頼みたい。」

 

 

「分かった。行ってくるよ。真緒行こう。」

 

 

「うん。」

 

 

田宮江美と谷原真緒は中立派の人間だ。

ドライな雰囲気を纏っているが、雰囲気通りドライでサバサバしている女子生徒である。

 

 

スポット占有班が全員食事を食べ終えたところで、簡単な体調チェックが行われた。

今の所全員ケガや体調不良に陥っていない様だ。

 

 

暫くすると隠密班の3人が戻って来た。

 

 

「隠密班ご苦労だった。水と弁当だ。ひとまず食べてくれ。」

 

 

的場や竹本は随分疲弊している様だが、鬼頭は問題なさそうだ。

流石身体能力トップクラスなだけはある。

 

 

「午後からについて説明する。午後からはベースキャンプの待機メンバーと占有班から何人か選んでDクラスに交渉に行く予定だ。各派閥の代表者と交渉に秀でた者を連れて行きたいと考えている。」

 

 

そういえばそんな話も出ていたな。

少し考える素振りをしてから山村が口を開いた。

 

 

「代表って誰なの?」

 

 

「中立派の俺、坂柳派の山村、葛城派の葛城。この3人は固定と見ているが?」

 

 

「私なんだ…」

 

 

自信なさげな山村には申し訳ないが、坂柳が坂柳派のリーダー代理に選んでいる以上連れて行かない訳にはいかない。

 

 

「すまないがこれは坂柳の意見でもあるんだ。」

 

 

渋々といった様子で山村は了承した。

 

 

『山村さん、貴方を信頼してのお願いです。どうか受け入れて下さい。』

 

 

坂柳がレコーダー越しに山村に語りかける。

 

 

「わ、分かりました。」

 

 

それから何時に此処を出るか、リーダー以外に誰を連れていくかを決めた。

ちなみに私も何故かメンバーに入れられた。

 

 

私そんなコミュニケーション力高くないんだけどなあ。

 

 

「なあ、石田。お前達3人と橋本、六角、小代、町田が消えると他クラスのリーダー格が来た時どうするんだ?坂柳がレコーダー越しにいるとはいえ、一人の意見だけで判断するのは得策じゃない。」

 

 

町田の意見は正しい。

龍園の特攻奇襲を警戒して大人数で動くのは良いが、交渉できるレベルの人間が矢野しかいなくなってしまうのだ。

 

 

各派閥の代表者が消えてしまうので、来訪者があればレコーダー越しの坂柳が対処するしかなくなってしまう。

だが大事な契約を持ちかけられた時話し合いをしても即答出来ない。

 

 

坂柳もその場にいる訳ではないので交渉もしにくくなる。

やはりもう少しリーダー格が居たほうが良さそうだ。

 

 

「矢野もいるから大丈夫だと思ったが、意見が偏るのは良くないな。ならば俺の代理である小代と町田を残して行こう。」

 

 

こうして私には待機命令が出たのだった。

暫く私は坂柳の指示に従い話し相手をしていた。

 

 

『小代さんは休日は何をされているのですか?』

 

 

「うーん、読書とか買い物とかかな。たまに友達と出かけたりもするよ?」

 

 

『意外と普通なのですね。では上級生にお知り合いはいらっしゃいますか?』

 

 

「うん、生徒会書記の橘先輩と堀北先輩とは会えば挨拶する仲かな。」

 

 

『流石ですね、生徒会を手中に入れるとは…』

 

 

「はい?なんだって?」

 

 

いや、お喋りの筈が一方的に質問責めをされている。

なんで坂柳はこんな事してるんだろう?

 

 

かれこれ1時間が経過した頃、洞窟の入り口が騒がしくなった。

 

 

「ん?どうしたんだろ?」

 

 

「瑠奈ちゃん、Cクラスの龍園が来たんだけど葛城君を出せって…」

 

 

原作通りの交渉なのか、もっと違った交渉を行うのか。

 

 

『小代さん、状況が分かりませんが龍園君が来たんですね?』

 

 

「そうみたい。とりあえず彼だけ中に通してもいいかな?」

 

 

『はい、大丈夫ですよ。』

 

 

私は洞窟の入り口へと向かった。

 

 

「ハッ、葛城じゃなくて逃亡者が出てくるとはな。」

 

 

「久しぶり、龍園君。葛城君は出払っているよ。リーダー代理として私が話を聞く事になる。後坂柳さんも。」

 

 

「坂柳?まあいい、交渉をしに来たんだ。」

 

 

「じゃあどうぞ。入っていいよ。」

 

 

私は龍園を洞窟内に入れた。

一番奥の坂柳のボイスレコーダーの所まで案内する。

 

 

『さて龍園君、貴方のお話は何でしょうか?ふふふ。』

 

 

「Aクラスの奴は水さえ出せねぇのか?なあ、坂柳。」

 

 

龍園は押しかけて来ただけだから客ではないだろとツッコミそうになった。

面倒な交渉時間がやって来たよ…。




【牧之原事件】
全日本合唱コンクール全国大会の帰りのバスで悲劇が起きた。
サービスエリアに止まっている間に誘拐事件が起こった。

22人が誘拐され、約3週間消息が不明だった。
そして発見された時には生存者は2人、小代瑠奈と高野累だ。
事件後小代瑠奈の性格は暗くなり、2週間学校を休んだという。

2人に事情聴取をした結果、2人とも黙りを貫いていたようだが、2週間後に小代瑠奈だけが事件について述べたところ、デスゲームをしたと話したそうだ。

例の事件後彼女は部活を引退したが、すぐに今まで通りの学生生活を送れるようになったという。
そして2月の学年末テストを終えた頃、警察が事情聴取をしたところ事件の記憶を失っているそうだ。


限局性健忘:限られた期間の出来事が思い出せなくなる

干支試験でどのグループに入る小代ちゃんを見たいですか?

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  • リーダーと山内グル
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