入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】   作:かりん糖さん

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ついに干支試験が始まります。
どこか不穏な空気を醸し出しながら始まる試験。
一体どうなるのか…




20話 干支試験①

 

交渉において相手を思い通りに動かし、説得していくには、はっきり言って3とおりの方法しかない。

「合法的に脅す」「利益を与える」「ひたすらお願いする」の3つだ。

その中でも、もっとも有効なのが「利益を与える」である。

by 橋下徹

 

 

 

ついに干支試験が始まる。

私は坂柳と葛城と一緒に第3会議室に向かった。

 

 

扉を開けるとそこには既に多くの生徒が集まっていた。

 

 

「あ、瑠奈ちゃん達もこのグループだったんだね!」

 

 

「坂柳さん達も同じグループなんだね。宜しくね。」

 

 

「ウヒョー!可愛い子がいっぱい!俺は山内春樹!!中学ではインターハイで「ちょっと静かにしてちょうだい。」…ちえっ。」

 

 

櫛田が入ってきた私達に笑顔で話しかけるが、恐らく内心堀北と同じグループになった事に相当腹を立てているんだろうなぁ。

平田は各クラスのリーダーの中に居ても臆する事なく話すことが出来る事を考えると、やっぱり優秀な生徒みたい。

 

 

堀北が壁に向かって話しかけてるけど気にしたら負けだ。

私は何も見ていない、聞こえてない。

 

 

なんかやばそうな声が聞こえた気がするけど多分気のせい。

 

 

「にゃはは、改めてすごいメンツが揃ってるね。」

 

 

「ああ、油断ならないメンバーが集められている。」

 

 

神崎と一之瀬はこの状況により一層気を引き締めるように笑みを消した。

意外と冷静に対応出来ている事から、無人島試験の敗北を糧に2人も………いや、Bクラスも成長を遂げたのかもしれないな。

 

 

「ハッ、何をやるか知らねぇがこれなら退屈しなくて済みそうだ。」

 

 

龍園は舐め回す様に、この場に揃った生徒を一瞥し不敵に笑う。

隣でアルベルトが龍園を守る様に控えている。

 

 

「作為的なものを感じますね。」

 

 

「面白そうな組み合わせですね。」

 

 

ウチの女王様はやっぱりアリスなんて柄じゃない、悪趣味な赤の女王様だと思う。

 

 

Bクラスからは、一之瀬帆波、神崎隆二、紫田颯の3人。

 

 

Cクラスからは、龍園翔、椎名ひより、園田正志、山田アルベルトの4人。

 

 

Dクラスからは、平田洋介、櫛田桔梗、堀北鈴音、山内春樹の4人………山内春樹?

 

 

まさか、さっき聞こえたやばそうな声は幻覚では無くリアルのもの………?

 

 

私は思わずDクラスの方を二度見してしまった。

山内と目が合いそうになり慌ててAクラスの方へ向き直る。

 

 

何故この錚々たるメンバーの中に山内春樹が混ざっているんだよ。

異物混入どころの騒ぎじゃないぞ、作為的なグループに何でモブAが混ざってるんだよ。

 

 

「私達で最後、の様ですね。」

 

 

「そうみたいだね。」

 

 

私は坂柳の言葉に頷く。

坂柳がそう言ったと同時に会議室の扉が開き、外から真嶋先生がやって来た。

 

 

「全員揃っているな?今から点呼を行う。名前を呼ばれた生徒は返事をしてくれ。」

 

 

Aクラスから順番に名前を呼ばれ、最後に山内が呼ばれた。

なんかカッコつけて「いえーい」とか言ってたが、全員にドン引きされてるぞお前。

 

 

「では今から、特別試験の説明を行う。今回の特別試験では1年全員を干支になぞらえた12のグループに分け、そのグループ内で試験を行ってもらう。試験で問われるのは『シンキング能力』だ。」

 

 

「干支?シンキングって何だ?」

 

 

「干支は十干と十二支を組み合わせたものであり、甲子から始まり癸亥で終わります。シンキングとは、thinkのing形で、考えや思考という意味ですよ。」

 

 

山内の疑問に律儀にひよりが回答する。

優しすぎる、ひよりは天使の生まれ変わりだね。

 

 

「うーん、よくわかんねぇけどわかった!ありがとな!可愛い子ちゃん!!!」

 

 

流石にその態度は無いだろう。

ひよりも若干引いてるし、龍園なんて鬼のような形相で山内を睨み付けている。

 

 

山内、お前はもう終わりだ。

 

 

「山内、質問は後で受け付けるので今は黙って聞いてくれ。」

 

 

「へーい。」

 

 

真嶋先生ですら不快感を含ませた声で山内に対応しているのに、そんな事気にしないといった強気さは流石としか言いようがない。

まあ鈍感なだけ、もしくは神経が図太いんだろうな。

 

 

「説明を続ける。先の無人島試験においてはチームワークに比重が置かれていたが、今回の試験ではシンキングだ。考え抜く力が必要となる試験となる。12に分けられたグループだが、これは一つのクラスで構成されるわけではない。各クラス3人から5人ほどを集めて作られるものになっている。君たちの配属されるグループは『辰』だ。これがそのメンバーのリストだ。この用紙は退室時に返却させるので必要ならこの場で覚えていけ。」

 

 

真嶋に渡された用紙にはグループ名とメンバーの名前が書かれていた。

その後ルールの書かれた紙も配られた。

 

 

「今回の試験では大前提としてAからDまでのクラスの関係性を一度無視しろ。それが試験をクリアするための鍵になってくる。つまり、君たちにはこれからAクラスとしてではなく辰グループとして行動してもらうことになる。試験の結果もグループ毎に設定されている。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

【干支試験概要】

 

 

《ルール》

 

 

●試験開始当日午前8時に学校側が一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその事実を伝える。

 

●試験の日程は明日から4日後の午後9時まで(1日の完全自由時間含む)。

 

●1日に2度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり1時間の話し合いを行うこと。

 

●話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。

 

●試験の解答は試験終了後、午後9時30分〜午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの答えを受け付ける。なお、解答は1人1回までとする。

 

●解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。

 

 

●『優待者』にはメールにて答えを送る権利がない。

 

●自分が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。

 

●試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 

 

《結果》

 

 

[1]グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合。グループ全員にプライベートポイントを支給する。(優待者の所属するクラスメイトもそれぞれ同様のポイントを得る)

 

[2]優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合。優待者には50万プライベートポイントを支給する。

 

[3]優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。

答えた生徒の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に正解者にプライベートポイントを50万ポイント支給する。また優待者を見抜かれたクラスは逆にマイナス50クラスポイントのペナルティを受ける。及びこの時点でグループの試験は終了となる。

なお優待者と同じクラスメイトが正解した場合、答えを無効とし試験は続行となる。

 

[4]優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。

答えを間違えた生徒が所属するクラスはクラスポイントを50ポイント失うペナルティを受け、優待者はプライベートポイントを50万ポイント得ると同時に優待者の所属クラスはクラスポイントを50ポイント得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。

なお優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、答えを無効とし受け付けない。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

ややこしいが、原作知識を使えば難なくクリア出来る。

とりあえず空いてる時間にでもルールをもう一度読み込んでおいた方が良さそうだ。

 

 

「今回学校側は匿名性についても考慮している。試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。つまり優待者や解答者の名前は公表しない。また、望めばポイントを振り込んだ仮IDを一時的に発行することや分割して受け取ることも可能だ。本人さえ黙っていれば試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々とポイントを受け取っても構わない。判断は各々に委ねられているからな。」

 

 

匿名性については騙し合いを誘発させる意図があるのだろう。

疑心暗鬼にさせる為としか思えないな。

 

 

「それから、グループ内の優待者は学校側が公平性を期し、厳正に調整している。優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったに拘らず変更の要望などは一切受け付けない。また、学校から送られてくるメールのコピー、削除、転送、改変などの行為は一切禁止とする。この点をしっかり認識しておくように。」

 

 

これらは禁止事項のところにも書いてあった内容だ。

学校から送られてくるメールが100%信用できるものだという事を誇示しているかのようなルールだ。

 

 

「君たちは明日から、午後1時、午後8時に指示された部屋に向かって貰う。当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートが掛けられている。初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行ってくれ。また、室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。トイレなどは先に済ませてから行け。万が一我慢できなかったり体調不良の場合にはすぐに担任に連絡し申し出るように。」

 

 

柔軟性のある考え方を持つ者程この試験はドツボに嵌りやすい。

坂柳やひより、高円寺なんかの優秀な頭脳を持つ生徒ならすぐに法則に気づくだろう。

 

 

「何か質問はあるか?…………では解散とする。」

 

 

しかしこの試験の本質はどの結果を目指すか、だ。

法則性を見つけておしまいではない、寧ろそこから交渉、コミュニケーション能力が求められているのだ。

 

 

クラスの関係性を無視して試験に挑め、という発言は法則性を見つけるためだけのヒントではない。

法則性を見つけた後の結果について他クラスと交渉するための言葉でもある。

 

 

この交渉という部分において秀でているのは坂柳と龍園の2人だろう。

龍園なら法則性を見つけていなくとも交渉を行なってくる筈だ。

 

 

私は葛城と坂柳と共に会議室を後にし、船内にある私の部屋で作戦会議を行う事になった。

何故私の部屋なのかといえば、単純に私の部屋が個室だからだ。

 

 

同時刻第一会議室で説明を受けていた石田も合流し、4人での話し合いが行われた。

話し合いが行われている中、私はクラスのグループチャットにルール概要を纏めて送信した。

 

 

「今回の試験、約束通り私が指揮を執ります。」

 

 

「ああ、お前の指示に従おう。」

 

 

葛城は嫌な顔をする事無く坂柳の言葉に頷いた。

 

 

7月に結んだ契約のせいで試験毎に坂柳と葛城が交互に試験を指揮する事になっており、無人島試験に力を貸す代わりに、次の特別試験では坂柳が指揮を取るという契約も交わされている。

だから坂柳の指示にクラス全員が従わなければならないのだ。

 

 

「早速だが、今回の試験で気になる事がある。優待者は公平を期し、という発言が説明時にされた。12グループにいる優待者は各1人ずつの12人。公平性を考えた場合各クラス3人の優待者がいると考えるのが自然だ。君達はどう思う?」

 

 

石田の予想は正解だ。

ルールを説明されてから10分も経っていないのに、情報の取り捨て選択は完璧なようだ。

 

 

「ええ、私も石田君の意見に賛成です。そして厳正な調整が行われているという点から、何か法則がある筈です。」

 

 

「なるほど。俺には考えつかなかった。法則となると干支が関係していそうだな。グループ名を十二支からとっている点が気になる。」

 

 

「法則に関してはいくつか思い付いついていますが、優待者の発表がまだなので何とも言えません。」

 

 

坂柳と葛城は石田の発言に頷き各々試験に関する情報を整理していく。

 

 

「法則をまず見つける事が重要だが、俺は見つけてからどの結果を目指すかを考えたい。」

 

 

石田の意見に坂柳は「ほぉ」と感心したように声を溢す。

葛城も少し考えてから「なるほどな」と頷いた。

 

 

私は結果内容をちらりと見てから口を開く。

 

 

「とりあえず結果3と結果4は避け方が良さそうだね。特に結果4は最悪だよ。指名するなら法則性を見つけてからが良さそう。」

 

 

「そうですね。そこは改めて明日優待者情報が出てから全体で話し合いを行いましょう。話し合いは午前9時から、場所は2階の第1会議室でいかがですか?」

 

 

「ああ、それで良いと思う。」

 

 

坂柳の言葉に全員が頷き明日改めて戦略会議が行われる事になった。

彼女の発言に石田が付け加える。

 

 

「優待者は坂柳にメールを送るよう指示も出しておいた方が良い。機密性を上げるためにも、クラスメイト内での優待者情報の共有は最小限に留めておくべきだ。」

 

 

「それが良い。」

不明の文のため要修正

 

「…ええ、そうですね。」

 

 

「確かにその方が裏切り者も出にくいかもね。」

 

 

石田は、裏切り者が出てしまう場合を想定して、未然に防ぐためこの発言をしたのだろう。

石田の言葉に誰よりも保守的な思考を持つ葛城が真っ先に同意を示した。

 

 

流石保守派のリーダーだな。

坂柳と私も続けて彼の言葉に賛同を示した。

 

 

最後に明日の行動について確認し、解散となった。

私は坂柳が部屋を出る寸前にとある質問をされていた。

 

 

『小代さん、貴方は辰グループで誰が優待者に選ばれると思いますか?』

 

 

『うーん………まだ分からないけど、私とかだったりして。』

 

 

干支の法則が原作通りなら私が優待者になる。

 

 

『?!………まさか、貴方も気づいて………いえ、何でもありません。』

 

 

『そう?なら良いけど。』

 

 

あの時は原作知識を用いた回答をしたが、適当に龍園と答えた方が良かったかもしれない。

坂柳の反応的に法則には気づいているようだし、今の段階で優待者の法則に私が気づいているのはおかしいと思う筈だ。

 

 

今後は迂闊な発言をしないように気を付けていこう。

 

 

その後百恵達と回らない寿司屋でお寿司を食べ、シャワーを浴び、小説の続きを読みながら横になった。

大トロもサーモンもイクラもハマチも新鮮で美味しかった。

 

 

明日に備えて早めに就寝し、翌朝起きるとメールが届いていた。

 

 

『貴方は優待者に選ばれました。』

 

 

他クラスにバレる前に交渉を行う事。

指名されない事。

 

 

後は………坂柳達に託そう。

 

 

私は坂柳に優待者に選ばれたことをメッセージで伝え、朝食を取る事にした。

ルームサービスでサンドイッチとサラダを頼み、優雅な朝を過ごす。

 

 

ずっとこの客船で暮らしたいと思える程には、ここでの暮らしは快適だった。

この学校を卒業したらクルーズで世界一周とかしてみたいな。

 

 

きっと素敵な思い出になるだろう。

 

 

そろそろ9時だ。

私はエレベーターに乗り2階の第1会議室へと向かった。

 

 

「あ、おはよう町田君。」

 

 

「小代か。おはよう。」

 

 

エレベーターを出た時町田と遭遇した。

どうやら今から会議室に向かうところらしい。

 

 

「何だか顔色が悪いけど大丈夫?寝不足?」

 

 

町田はとても青白い顔をしており、寒いのかと思ったがうっすらと首元に汗をかいているため判断が難しい。

 

 

「え、あ、ああ。寝具が違うとどうも眠れなくてな。」

 

 

「そう?辛かったら先生に言った方がいいよ。」

 

 

「ああ、そうするよ。心配をかけて悪いな。そういえば、今回の試験はかなりルールが細かいよな。小代はどう思う?」

 

 

「うーん、優待者の法則を見つけ出す事が重要だと思うよ。結果はその後に考えても良さそうかなぁ。」

 

 

「そうか。」

 

 

何だか、何か隠し事をしているかのように彼は話題をすり替えた。

まるで自分に質問をされたく無いような、そんな態度に見える。

 

 

「町田君、本当に大丈夫なの?困ってる事無い?」

 

 

「いや、大丈夫だ。気にするな。」

 

 

声はいつも通りだが、表情は引き攣っていた。

優待者に選ばれて緊張している、とか?

 

 

言及しようにも会議室に到着したので、そこで話は終わってしまった。

私は小春と石田の間の席に座る。

 

 

「では、今回の試験では私が指揮を執らせていただきます。今から話し合いを行いますが、ここで得た情報は他言無用でお願いします。」





《辰グループ》

Aクラス…葛城康平・坂柳有栖・小代瑠奈
Bクラス…一之瀬帆波・神崎隆二・柴田颯
Cクラス…龍園翔・椎名ひより・園田正志・山田アルベルト
Dクラス…平田洋介・櫛田桔梗・山内春樹・堀北鈴音

優待者…小代瑠奈

行方不明事件について触れる回が増えてきましたが、頻度を減らした方が良いですか?

  • 減らして欲しい
  • このままで!
  • それより眠い
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