入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】   作:かりん糖さん

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干支試験1回目の話し合いが行われます。
この事件の結末を悩んでいて、なかなか筆が進みません!


22話 干支試験②

 

成功の秘訣とは、目標を設定し続ける行為の繰り返しであり、成功者とは、成功への目標を見つめ、その実現に日々努力を続けている人のことだ。

by オリソン・マーデン

 

 

 

クラス全員が第1会議室に集まり、坂柳の言葉を皮切りに話し合いが始まった。

 

 

「それで坂柳はAクラスの優待者は全員確認したのか?」

 

 

「ええ。Aクラスの全員にチャットでも予めお伝えしていますが、優待者であるかどうかについてクラスメイトに対しても明かさないようお願いします。」

 

 

坂柳の言葉に葛城、石田も頷いた。

そして葛城も続けて口を開く。

 

 

「この事については、俺からも改めてお願いしたい。優待者がバレる事があってはならない。」

 

 

葛城の言葉をクラスメイト達も真剣に聞いているようだ。

これは昨日の話し合いで決まった事だ。

 

 

Aクラスに他クラスの生徒が近づいて優待者情報を聞き出そうとしてくるかもしれない。

情報を万が一売られた場合、その被害を最小限に留める為の策だ。

 

 

クラス全員に契約書を書かせれば良いのだが、今回は裏切り者が本当に出るかどうか、裏切り者になりそうな人物が誰かを確認する為に契約書は敢えて用意していない。

裏切り者が出ないならそれで良いし、裏切り者が出るようなら今後対策を行う必要がある。

 

 

「では、今回の試験についてAクラスの皆さんにお願いしたい事が4つあります。この事についてはグループチャットにも送っておきますので、必ず全員守って下さい。」

 

 

坂柳がホワイトボードに守るべきルールを書いていく。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

①初日の自己紹介以外話し合いに参加しない。

②交渉を持ちかけられた場合、Aクラスの坂柳有栖・葛城康平・石田優介に交渉するよう伝える。

③坂柳有栖から解答指示が来た者は試験終了後迅速に指示に従う。

④坂柳有栖の指示無しに解答や交渉を行うことを禁止する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

特におかしなところは無いな。

このルールを提示してきたのだから、坂柳は何らかの交渉を行おうとしているのだろう。

 

 

恐らく交渉が決裂した時、他クラスに一斉に攻撃を仕掛ける為のルールが③を入れた理由なのだろうな。

 

 

「坂柳、今回の方針について説明して貰いたい。」

 

 

「そうですね…私達の目的は結果1を目指す事です。」

 

 

「け、結果1?!」

 

 

弥彦が無理だと叫び出したので、葛城が黙らせてくれた。

しかし弥彦の言う事が正しいのだと、Aクラスの全員が理解しており、坂柳を訝し気な顔で見つめていた。

 

 

結果1の場合、グループの全員が50万プライベートポイントを受け取る事が出来る。

また優待者には結果1に導いた事への褒賞として、倍の100万プライベートポイントが支給されるらしい。

 

 

この提案はクラスポイントに余裕のあるAクラスだからこそ目指せる結果であり、他クラスからしたらクラスポイントの差を縮めたい筈だ。

その事に坂柳が気付かない訳が無いので、恐らく狙いは別なのだろう。

 

 

「戸塚君の言う事も分かりますが、皆さんには私のルールの元指示に従っていただきます。」

 

 

「なあ、坂柳。話し合いに参加しろと強引に脅されたり、携帯のメールを見せろと言われた場合はどうする?」

 

 

的場が心配そうな顔で尋ねる。

 

 

「そうですね…」

 

 

坂柳は腕を組み対処法を考えているようだ。

10秒ほど黙り込んだ後坂柳は口を開いた。

 

 

「万が一全員の携帯のメールを見せろと言われたり、話し合い参加するよう脅された場合、証拠があれば恐喝として訴える事が出来ます。話し合いが始まったら、皆さんの携帯で音声の録音をお願いします。」

 

 

「分かった。」

 

 

的場は納得したように頷いた。

 

 

「皆さん色々言いたい事もあるかと思いますが、私を信じてついて来て下さい。」

 

 

坂柳の言葉に表面上全員が頷いたが、彼らの表情には不安の色が見て取れた。

特に坂柳派の生徒は今回の試験に成功出来るかどうかが重要である為か、どの派閥の生徒よりも顔が強張っていた。

 

 

「皆んな、今回の試験をAクラスとして良い結果で終わらせる為にも力を貸して欲しい。」

 

 

「不安もあるだろうが、葛城と坂柳で話し合った結果だ。」

 

 

葛城、石田と今回の試験への不安を和らげようと諭す発言をする。

AクラスTOP3の3人が言えば流石に全員認めざるを得ない。

 

 

にしても、原作モブの石田優介がこの世界ではリーダー格となっている事には違和感を感じるな。

もう石田がリーダーになったとしても、Aクラス相当強いと思う。

 

 

クラスの雰囲気が和らいだところで質問タイムを設け、質問が出尽くしたところで話し合いはお開きとなった。

 

 

私は携帯を取り出し櫛田にメッセージを送る。

 

 

『Dクラスの優待者情報を教えて。さもなくば、あの映像を学校中にばら撒くからね。」

 

 

あの映像とは普段の櫛田からは想像も出来ない、ブラック櫛田の暴言映像の事だ。

現状私は全グループの優待者をグループチャットの情報から確認して知っているため、今回の脅しは櫛田の忠誠心を試すためのものだ。

 

 

暫くすると櫛田から返信が返って来た。

 

 

『今私が知っているのは1人だけ。未グループの東咲菜さんが優待者だよ。彼女は数学が得意な生徒だよ。』

 

 

未グループのメンバーを確認し、あいうえお順に数えて行くと優待者は櫛田の言う通り東咲菜だった。

どうやら嘘はついて無さそうだ。

 

 

『分かった。ありがとうね。』

 

 

櫛田のメッセージに返信し携帯を置いて紅茶に口をつける。

その後カフェで優雅にランチを食べ百恵達とお喋りを楽しんだ。

 

 

そして午後1時、第1回目のグループでの話し合いが始まった。

場所は2階の第1会議室で、全員会議室に置かれた椅子に座っている。

 

 

「全員揃ってるな。とっとと始めようぜ。」

 

 

龍園の言葉にアルベルトが頷き、一之瀬が口を開いた。

 

 

「そうだね。大体の人の顔と名前は分かっているけど、始めましての人もいるし、学校側からの指示に逆らってペナルティを受けるのも嫌だしね。自己紹介をしたほうが良いと思うんだけど、どうかな?」

 

 

一之瀬が集められた生徒の顔をぐるりと見渡して全員の顔色を伺っている。

 

 

「うん!一之瀬さんに賛成かな!」

 

 

「おう!俺も賛成だ!」

 

 

一番に櫛田が賛同し、釣られて盛り上げ役の柴田も賛成の意を示した。

暫くして反対意見も無いため、一之瀬から時計回りに自己紹介が行われる事になった。

 

 

「じゃあ、まずは私から。私はBクラスの一之瀬帆波です。初めましての人も宜しくね。頑張って試験を乗り越えていこう!」

 

 

「おう!宜しくな一之瀬ちゃ〜ん!」

 

 

人の良さそうな笑みを携えた一之瀬に山内はメロメロのようだ。

一之瀬も苦笑いを浮かべながら「宜しく」と返しており、彼女の人の良さが垣間見えた気がした。

 

 

山内にドン引きしながらも自己紹介は続き、ようやくAクラスの番がやって来た。

ちなみに山内の自己紹介は出鱈目で笑えなかった。

 

 

「じゃあAクラスの人達も自己紹介をお願い出来るかな?」

 

 

「俺の名前は葛城康平だ。宜しく頼む。」

 

 

「坂柳有栖と申します。皆さん、宜しくお願いします。」

 

 

「小代瑠奈です。宜しくね。」

 

 

Aクラスの素っ気ない自己紹介に全員が訝し気な顔をして怪しんでいたが、自己紹介が終わり場に沈黙が流れる。

 

 

 

「…取り敢えず、1時間を無駄にするのは勿体無いし、試験についての話をしていかない?皆ルールや結果について疑問があるなら確認しておいた方がいいと思うんだ。」

 

 

「そうだね。ルール説明の時に解消できなかった疑問を持つ人もいるかもしれないし、僕は一之瀬さんの提案に賛成するよ。」

 

 

「私も気になっている事があったんだ!!みんなで色々確認したいかな。」

 

 

「そうね。優待者に関する事もそうだけど、ルールの確認は大事だわ。」

 

 

平田と櫛田が賛成し、それに追従する形で堀北やBクラスの生徒も賛同を示した。

一之瀬が龍園とAクラスの生徒を見て口を開いた。

 

 

「Dクラスの皆は賛成してくれたんだけど、CクラスとAクラスはどうかな?」

 

 

龍園や坂柳、葛城の顔色を窺いながら一之瀬が尋ねると、面倒臭そうに龍園が口を開いた。

 

 

「ハッ、そんなもんに俺達は参加しねぇよ。勝手にやってろ。」

 

 

「どうしてかな?」

 

 

「ちょっと、和を乱すような発言をしないでちょうだい。龍園君!!」

 

 

櫛田が困ったように眉を下げて尋ねる。

堀北は今にでも龍園に詰め寄りそうな程苛立った声音で彼の発言を叱責した。

 

 

「俺達は全グループの優待者を探す事で忙しいんだよ。」

 

 

「だからそうやって「ふふふふふ」………何がおかしいのかしら?坂柳さん。」

 

 

龍園の発言に苛立った堀北の言葉を遮るように坂柳の笑い声が室内に響いた。

この場にそぐわない坂柳の笑い声に全員が警戒し、彼女を見つめる。

 

 

「いえ、まさかこんな所で龍園君と意見が合うとは思いませんでしたので。」

 

 

坂柳は何てことのない様に楽しそうに笑いながら話す。

 

 

「今回の試験でAクラスの生徒は話し合いに参加しません。」

 

 

「なっ、どういう事だ!!」

 

 

「どうしてなの?坂柳さん!!」

 

 

「話し合いに参加しないって、どういう事なの?まさか優待者を探す気がないのかしら?」

 

 

「ふふふ、優待者をこれ以上探す気はありませんよ。」

 

 

坂柳の発言にAクラス以外の全ての生徒が驚いていたが、龍園、一之瀬、神崎、平田はすぐに冷静さを取り戻して坂柳に向き直った。

 

 

「坂柳、お前まさか優待者が誰か分かっているのか?」

 

 

神崎が全員が気になっているであろう事について坂柳に尋ねる。

神崎の現状を冷静に分析する力はこの場において大きな効果を発揮した。

 

 

彼の言葉に慌てふためいていた他の生徒達も表面上とは言え、落ち着きを取り戻していた。

全員が坂柳の言葉を待っている。

 

 

「ふふふ、神崎君の言う通り私は全グループの優待者を把握しておりますよ。」

 

 

「なっ!」

 

 

「ま、マジかよ!」

 

 

「そんな!あり得ないわ!」

 

 

「この短時間で見つけてしまうなんて………。」

 

 

上から神崎、山内、堀北、ひよりが坂柳の言葉に反応する。

ひよりは『見つけてしまうなんて』と発言している為、もしかしたら法則に気づいている可能性があるな。

 

 

そうでなくとも法則を探そうと躍起になっている事は目に見えている。

自己紹介の時以外、何やら携帯とメモ帳を交互に見て考え事をしているようだった。

 

 

そして龍園の『優待者を探す事で忙しい』と言う発言、話し合いに参加しないという態度から何らかの方法を使い、自力で優待者を見つけようとしている事は明白だ。

そしてそれをひよりが手伝っているとすれば、この仮説の裏付けにもなる。

 

 

「ククク、ハッタリかどうか試してやるよ。このグループの優待者は誰だ?」

 

 

龍園は恐らく冗談だろう。

Aクラスや坂柳の反応から推理する事はあっても、本当に優待者を教えて貰えるとは思っていない筈だ。

 

 

「龍園君、もしこのグループの優待者がAクラスの生徒だった場合、坂柳さんが知っていても何らおかしくはない。その方法じゃ彼女が本当に優待者を知っているかどうかは分からないよ。」

 

 

平田の指摘は最もである。

 

 

いくら龍園が本気にしていないとは言え、初期の平田が他クラスのリーダー格の発言を真っ向から否定できたとは思えない。

やはり、この平田は侮ってはいけないな。

 

 

「ハッ、そんなの分かってるんだよ。俺は坂柳を試しただけだぜ?」

 

 

「成程ね。」

 

 

平田は納得したのか、龍園から視線を外し坂柳の方に向き直った。

坂柳はニコリと微笑み口を開いた。

 

 

「今この場で誰が優待者か当てれば、無闇矢鱈に今夜解答する生徒が出て来るかもしれません。ですから、今日の16時、優待者宛てにメールを送ります。そして、改めて私と交渉を行なって頂きたいのです。」

 

 

「交渉?」

 

 

「ええ。」

 

 

成程。

よく練られた戦略だ。

 

どうやら彼女が黙り作戦を行った理由は、この状況を作り出す為らしい。

Aクラスが各クラスの優待者を知っていると脅し、望む結果にする為に他クラスの協力を得ようとしていたみたいだ。

 

 

坂柳有栖の掌の上で他クラスは踊るしかない。

彼女は、この舞台において最高の演出家であり脚本家だったのだ。

 

 

監督という言葉はこの舞台を提供した教師、翻弄されている他クラスの生徒は役者、私と葛城は仕込み役、山内はデスゲームが始まったら真っ先に見せしめにされそうなエキストラA。

観客は多分この会話に入る事ができないCクラスの園田正志だ。

 

 

「私の言葉を今すぐ信じて頂かなくても結構です。交渉に乗るかどうかについては、今夜の話し合いでお聞きします。」

 

 

坂柳は言いたいことを言うと、持ち込んでいた本を開く。

タイトルは『物理学基礎』と書かれており、物理の参考書の様だ。

 

 

「坂柳さん達は話し合いには参加しないのかな?」

 

 

櫛田が遠慮がちに尋ねると、私達3人は無言で頷いた。

櫛田は「そっか………」と力なく笑って私たち3人を視界から消す様に一之瀬達の方を向いた。

 

 

Aクラスの生徒にはただ黙って1時間を過ごすのではなく、余裕を見せる為に勉強道具やゲーム道具の持ち込みを呼びかけている。

坂柳は勉強用の参考書、葛城は英語で書かれた洋書、私は上地のミステリー小説を持ち込み暇を潰す事になっている。

 

 

上地の新作が出たので無人島試験前に図書室で借りたのだが、バタバタしていて読む時間がとれなかった。

この騒音の中で読むのはなかなかきついが、暇を潰す為にもページを捲り続けるしか無さそうだ。

 

 

このAクラスの異様な光景に他クラス入る眉を顰めていたが、どうにもならないと分かったからか、ルールの確認や疑問点について話し合いを始めたみたいだ。

その後、16時にAクラスを除いた3クラス全ての優待者にメールを送ったと坂柳から連絡があった。

 

 

その後葛城と坂柳、石田が私の部屋にて報告会を行った。

そして坂柳が他クラスにした牽制や交渉の話について内容を詰めてゆき、契約書を作成した。

 

 

「………そろそろ時間ですね。」

 

 

「もうそんな時間か。」

 

 

「3人とも、宜しく頼む。」

 

 

「ええ。任せて下さい。話し合いの結果については、話し合い後に3人のグループチャットへ送ります。」

 

 

3人のグループチャットとは、坂柳と葛城と石田のリーダー格を集めたグループチャットの事だ。

一応この3人がAクラスの代表なので、この3人のチャット内容に関して彼ら以外の生徒は知る事が出来ない。

 

 

それが例え自派閥の参謀であっても、だ。

 

 

報告会を終えて石田と別れ、葛城と坂柳と共に会議室へと向かった。

会議室に着くと、そこには訝しげな顔をしたグループメンバーが全員集まっていた。

 

 

さあ、役者は揃った。

第2幕といこうか。





【中高生行方不明事件】

3月に全国有数の進学校に合格した新入生が行方不明になる事件が発生した。


その中には高度育成高等学校に入学予定だった者もいたが、合格発表の二週間前に失踪しており、入学は取り消しになった。
その者は高野累と言うイギリスからの帰国子女で非常に優秀な生徒だった。
新たに学校側は推薦を行なっていない受験者からAクラスへの合格者を補填した。
その枠に選ばれたのが六角百恵だ。

その後も新学校に通う新入生が全国各地で失踪する事件が多発している。
7月に行方不明となっていた高野累が、高度育成高等学校前の公園で遺体となって発見された。

8月に行方不明となっていた名古屋市に住む女子校生、九重花子が漁船の中で生きた状態発見された。
簡単な事情聴取でゲームをしたと話した。
彼女の体力が回復次第、詳しい事情聴取を行う事となった。

行方不明事件について触れる回が増えてきましたが、頻度を減らした方が良いですか?

  • 減らして欲しい
  • このままで!
  • それより眠い
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