入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
綾小路との会話が意外と難しくて、ちょっとぎこちないかもしれません。
全ての人間は道具でしかない。過程は関係ない。どんな犠牲を払おうと構わない。この世は勝つことが全てだ。最後に俺が勝ってさえいればそれでいい。
by綾小路清隆
「っと、悪い。大丈夫か?曲がり角に気をつけるべきだったな。すまない。」
個室付近の曲がり角で小代は綾小路清隆とぶつかった。
まるで少女漫画の場面を再現しているかの様じゃないか。
「私は大丈夫だよ。綾小路君こそ怪我はない?」
「…ああ、問題ない。だが、よく俺の名前を知っていたな?どこかで話した事があったか?」
確かに、綾小路清隆と話した事は無い。
原作知識を持っている転生者だからこそ、彼の名前や姿、行動の全てを知っているだけなのだ。
彼は目立たない様に行動しているし、一之瀬や櫛田の様に社交的ではない私が彼の事を知っているのは不自然だ。
警戒されてもおかしくはない。
「…一学期の中間テスト前、君達Dクラスは図書室で勉強していたよね?そこにCクラスの生徒が絡んで騒ぎになっていた。だから、一方的に知っていたってだけだよ。私は元Cクラスの人間だからね。」
綾小路は少し考える素振りを見せる。
しかしすぐに納得したのか、「そうか」と言って頷いた。
「改めて、挨拶をさせて貰おうかな。私の名前は小代瑠奈。元Cクラスで、現Aクラスの一生徒だよ。宜しくね!」
笑顔で明るく挨拶の言葉を述べ、綾小路に手を差し出す。
綾小路は「ああ」と呟き、私の手を握った。
「俺は綾小路清隆だ。Dクラスに所属している。部活は特にしていないが…仲良くしてくれると嬉しい。」
「勿論だよ!宜しくね!」
綾小路はやはり人と関わる事が苦手なのか、つまらない挨拶を返してくれた。
原作主人公に出会った時はどうしようかと思い悩んだが、この世界線では彼も一人の人間という事なのだろう。
原作程の凄みや威圧感は一切感じない。
まあ、能ある鷹は爪を隠すという言葉も存在するのだから、彼が凡人として振舞っているだけの可能性の方が高いが。
そういえば、干支試験の最後で山内春樹が何者かの通話によって堀北鈴音を落ち着かせ、Dクラスに契約を結ばせていたな。
山内が親しそうに会話をしていた事、堀北が山内に見せられた携帯の内容を見て瞬時に契約を結ぶ事に対して納得していた事、という2点から彼等と親しい人物が糸を引いていたと考えられる。
該当者としては、綾小路、須藤、池くらいだろう。
だが、池の可能性はほぼ切れるはずだ。
池はこの世界でも成績底辺、バカ騒ぎをして女子に冷たい視線を送られていると聞いている。
学年の女子のグループチャットでも、要注意人物として名前が上がっているので、彼が馬鹿を演じている強者の可能性は低いはずだ。
次に須藤だが、原作同様堀北を尊敬し、綾小路と友好関係を築いていると櫛田が話していた。
つまり、彼が綾小路に操られて山内を動かす様誘導した可能性はある。
それを言ってしまえば、池も該当するが、池の言う事を素直に堀北が聞くとは思えない。
そしてその他の第三者の可能性だが、これについては考えるだけ無駄だろう。
素直に綾小路清隆が関係している、と考えるのが自然だな。
少し探ってみるか。
「綾小路君は、Dクラスだから山内君とも仲が良いのかな?」
山内と一緒にいる姿は見た事ないが、山内、池、須藤の3人と話している姿は見た事がある。
「ああ。山内は俺の親友だ。アイツとこの学校で出会ってから、色々な事(ゲーム&下世話)を教えてくれた。」
綾小路は親友であると言いながら、原作以上に遠い目をしていた。
表面上友達ではあるのだろうが、実際は疎ましく思っているのかもしれないな。
「そうなんだ!山内君、干支試験の時間に喚いていた堀北さんを落ち着かせて、契約を結ばせちゃったんだよ。凄いよね、人の扱いが上手いし、Dクラスの中でも皆に信頼されているんだろうね。」
少し大袈裟かもしれないが山内を褒めておけば、綾小路は何かしらのアクションを起こしてくれるはずだ。
「…あ、ああ。山内はクラスメイト達から(変態&馬鹿&ホラ吹きとして)信頼されているぞ。コミュニケーション能力(ウザさ)が高くて、羨ましいよ。俺には永遠に彼奴の様な真似は出来ないからな。」
死んだ目が更に死んだ。
綾小路は山内を信頼してなさそうだ。
流石に山内が優秀で、クラスメイト達から信頼されていれば他クラスにも情報が回ってくるはずだ。
しかし、山内の情報は変態でどうしうもない馬鹿、最低な嘘つきというものしか回って来ていない。
つまり、綾小路が今嘘をついている可能性が高い。
ブラックルーム山内やホワイトルーム山内の様な、やばい原作改変展開は起こっていないはずだ。
「そんなに凄い山内君がいるなんて、Dクラスは強敵だなあ。」
「…それはどうだろな。Aクラスこそ、葛城、坂柳、小代、石田の様な強者が揃っている。とても勝てるとは思えないな。」
「それを言うなら、Dクラスには桔梗ちゃん、平田君、高円寺君、堀北さんと優秀な人が揃ってる。彼らならAクラスにいてもおかしくないし、ちょっとズルいなって思っちゃうよ。」
実際Dクラスは原作主人公の所属クラスなので、タレント揃いだ。
一癖も二癖もあるクラスメイト達のほとんどが位置芸に秀でた生徒だ。
一概に不良品と呼ぶ事は出来ない。
「…確かにそうだな」
綾小路が遠い目をしていた事は気付かないフリをしておく。
「そういえば小代、お前はどうやってAクラスに上がったんだ?入学して2ヶ月、この間で2000万プライベートポイントを獲得するのは容易では無いはずだ。」
綾小路はあくまでも興味から、といった感じで質問をした。
しかし、山内について話していた時とは打って変わって、表情は能面の様だった。
流石に警戒心を持っておいた方が良さそうだな。
「あはは、やっぱり気になっちゃう?龍園君や帆波ちゃん、坂柳さんや葛城君、石田君達を集めてAクラスに来た手段について講演会をしたんだけど、その時に話したんだよね。」
「龍園達と、か。Dクラスの生徒は参加しなかったのか?」
「そうだね。Dクラスで仲の良い桔梗ちゃんなら知っていると思うけど、あの時Dクラスの生徒は誰もいなかったからね。」
「そうだったのか。なら是非とも聞いてみたいものだ。」
綾小路は、能面の様な顔のまま無表情で会話を続ける。
龍園達に話している、という事実を言った事で多少警戒心も薄れたはずだ。
「良いよ。私がやった事は、家から持ってきた宝石やアクセサリーを、モール内の宝石店でプライベートポイントに換金して貰ったの。次に、生徒会の放送で流れた銀行アプリ、これの手数料の一部が私のプライベートポイントとして入っているんだけど、これは私が考案者だからなの。他にもちまちまとお小遣い稼ぎをして、2000万プライベートポイントを貯めたの。」
細かい手段については語らず、あくまで龍園達に教えたものだけを話した。
私の話した内容に綾小路は顔色ひとつ変えず「そうか」と返した。
彼にとっての想定内を超えていなかった、という事だろう。
「綾小路君は驚かないんだね?」
「何をだ?」
「普通なら、家から宝石を持ってくる事を疑問に思うはずだよ。だって、たかが高校生が宝石を学校に持ってくるっておかしいよね?盗難の被害に合えば、問題にもなるし、警察沙汰になってしまう。そして、普通の高校生は高価な宝石やアクセサリーを持っている事は珍しい。疑問には思わなかったのかな?」
「…」
綾小路は黙ったまま、私の言葉の意味を考えている様だ。
ホワイトルーム育ちの綾小路は世間知らずの非常識な人間だ。
"普通"を知らないのだから仕方ないが、"普通"である事を望む彼は、私の言葉を上手く躱さなくてはならない。
「…悪い、俺はここに来るまで世間の事はあまり知らなかったんだ。俺の親は、勉学に厳しい人だったからな。」
「へぇ?俗世を知らないなんて、どこかのお坊ちゃんなのかな?だとしたら、失礼な事を言ってしまったね。でも、綾小路君が成績優秀者なら有名なはずだけど、そんな話は聞いた事ないよ?」
その返しだと、彼が平均的な成績を取っている事に疑問が残る。
ちょっと失礼な発言ではあるが、作られた天才を追い詰める機会なんて滅多にないのだから遠慮はしない。
「…それは、俺の出来が悪いから親が教育に力を入れていたんだ。今では平均的な成績を収められる様になっている。だから俺の学力は高くは無いんだ。」
綾小路の切り返し方は無難であり、その無難さが彼をより凡人として見せている。
「うーん、そうだったんだね。じゃあせめてこの学校にいる間は、色々な経験を積んで青春を謳歌出来ると良いね。」
「ああ。だから、山内や池達にはよく世間知らずだと言われるんだ。いろいろ教えて貰う事にするよ。」
「そっか〜!良いね!」
暫しの沈黙に気まづさを感じたが、綾小路が口を開いた。
「小代はこの学校についてどう思っているんだ?」
「どう、かぁ。」
綾小路はあくまで、極普通の一般的な人間として聞いている風を装っている。
であれば、ここで不自然にこの学校を評価する訳にはいかないな。
「私としては、この学校のシステムは面白いと思うよ。でも赤点で退学とか、ポイントでクラス替えとかはやりすぎな気がする。」
「弱肉強食という言葉そのものがこの学校を表す四字熟語だと思っているから、そこまで不自然でもないだろう?」
「弱肉強食ねぇ…私的には本来学生に必要な進路の為の努力がこの学校には欠けていると思うんだよね。」
「…どういう事だ?説明してくれないか。」
ホワイトルームという狭い空間にいたからか、彼は余りにも世間一般的な常識を知らなさ過ぎる。
「一般的な高校生って、自分の進路決定の為に勉強や部活動を頑張るんだよ。でもこの学校は進路決定の為に知略や謀略を巡らせ、相手を陥れ、非情になってAクラスを目指す努力をする。この学校は実力主義だから仕方ないけど、人間性に問題のある人間を製造している様にしか思えないんだよね。」
これは私が常々思っている事だ。
この学校は実力ではなく策略を立てさせ、それらを予想・理解して特別試験を乗り越えなければならない。
そしてそれが社会に出て役立つ事はほとんど無い。
この学校にとって、将来を担う人材とはどの様な人物なのか。
それを今一度問いたい。
スパイ養成校の真似事を差せられ、疑心暗鬼に陥り、他者に対する思いやりを捨てさせられるのだ。
この学校を卒業したとして、卒業生は本当に優秀な人材だと言えるのだろうか。
ルールの穴をついて楽をしたり、賄賂を使って物事を有利に進めたりするだけじゃないのか?
そしてそれらがこの学校では評価されていたが、社会に出て本当に評価されると思っているのか?
「…この学校は社会にとってマイナスな人材を排出する、最悪な学校だと思うよ。」
「…最悪な学校か。確かにその通りかもしれないな。」
綾小路はホワイトルームの出身だから、私の様な感覚は理解出来ないだろう。
ホワイトルームも脱落制で、この学校とよく似た実力主義の施設だ。
「あはは、共感して欲しいとは思ってないよ。」
「そうか。」
話が続かず気まずい時間が流れる。
綾小路も私もそこまでコミュニケーション能力が高い訳では無いため、仕方の無い事だ。
とはいえ、この無言の時間はどうしたら良いんだ。
「…」
「…」
本当にどうしたら良いんだ。
このまま無駄な時間を過ごすくらいなら私は部屋に帰らせて貰おう。
「私そろそろ部屋に戻るよ。また会ったら宜しくね。」
「ああ、分かった。またな。」
綾小路と別れ自室に戻る。
無人島試験、干支試験が終了した。
高宮の接触はあったが、港に着くまで何事もなく穏やかな船旅を楽しんだ。
しかし一つだけ気になる事がある。
高円寺は原作で誰よりも先に優待者の回答を行っていたが、今回は大人しくしていた。
山内が高円寺を止められるとは思えないし、綾小路が手を回したと考えるのが自然だが、高円寺はポイントが欲しくないのだろうか。
そして綾小路が手を回していたとしても、Aクラスの動きをここまで予想出来るのはおかしい。
もしかして、クラス内にスパイがいたりするのか?
どちらの試験も平和に終了したが、この先の試験も同じ様にクリア出来るとは思えない。
学校に帰ってからも、試験の背後にいた何者かが気になって仕方なかった。
寮に戻ってからはグダグダゴロゴロしながら、涼しい部屋で読書を楽しんだ。
2冊目の本を読もうと立ち上がった時、ピコンっと着信音が響いた。
『小代さん、明日プールで遊びませんか?神室さんや橋本君、葛城君達も一緒です。』
なんで坂柳派と葛城派が一緒に遊ぶ約束してるの?
そして更に着信音が鳴る。
端末の画面を確認すると小春からチャットが届いている。
『明日一緒にプールに行かない?百恵と石田君達もいるよ。』
次から次へと、この暑い中よく外に出られるね。
仕方ないから水着を買いに行く事にした。
今後の展開として欲しいものを選んで下さい。
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山内との絡み!(ネタ枠)
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綾小路との絡み!(ホワイトルーム)
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堀北との絡み!(堀北と主人公)
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高円寺との絡み!(家や例の事件)
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オリジナル試験(体育祭代わり)
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ひよりとの絡み(移籍について)