入学後2ヶ月でAクラスに来ましたけど何か?【1年生編1学期終了】 作:かりん糖さん
久しぶりにこの作品の続きを書いたので、拙い部分が多いかと思いますが、ご了承ください。
綾小路書くの難しい。
side:綾小路
それぞれの人間は直接に得た確かな知識に基づいてではなくて、自分が作り上げたイメージ、もしくは与えられたイメージに基づいて物事を行っていると想定しなければならない。
by ウォルター・リップマン
用事を済ませて個室に戻る途中、エレベーター付近の曲がり角で俺は一人の女子生徒とぶつかった。
「っと、悪い。大丈夫か?曲がり角に気をつけるべきだったな。すまない。」
「私は大丈夫だよ。綾小路君こそ怪我はない?」
「…ああ、問題ない。だが、よく俺の名前を知っていたな?どこかで話した事があったか?」
彼女は学年で有名なCクラスからAクラスに入学後2ヶ月で移動した優秀な生徒だった。
こんな事はこの学校史上初だろう。
「…一学期の中間テスト前、君達Dクラスは図書室で勉強していたよね?そこにCクラスの生徒が絡んで騒ぎになっていた。だから、一方的に知っていたってだけだよ。私は元Cクラスの人間だからね。」
確かに一学期の中間テストの前、図書室で勉強をした。
そしてその時、Cクラスの生徒に絡まれたが一之瀬や小代によってその場は丸く収まった。
彼女の発言通りだな。
「改めて、挨拶をさせて貰おうかな。私の名前は小代瑠奈。元Cクラスで、現Aクラスの一生徒だよ。宜しくね!」
彼女は笑顔で明るく挨拶の言葉を述べ、俺にに手を差し出す。
初めての握手に感動と少しの嬉しさを覚えた。
「俺は綾小路清隆だ。Dクラスに所属している。部活は特にしていないが…仲良くしてくれると嬉しい。」
「勿論だよ!宜しくね!」
彼女は明るい性格の様だが、平田や櫛田、一之瀬とは違って思慮深い人間だった。
初めに話題となったのは、山内についてだった。
山内とは俺の友人であり、巫山戯はするがアイツのおかげで世間一般的な普通の人間に近づけている気がする。
「ああ。山内は俺の親友だ。アイツとこの学校で出会ってから、色々な事(ゲーム&下世話)を教えてくれた。」
正直言って時々理解出来ない行動を起こす事もあるが、アイツのおかげで色々な事を知る事が出来た。
特にホワイトルームにいたら一生知る事の出来無かった娯楽に関する知識は有難い。
適当に山内を褒めると、どうやら干支試験が同じグループだった様で、堀北を宥めた山内に対して感心しているみたいだ。
確かに山内のキャラで堀北が大人しくなる訳が無い。
だからこそ、山内に対しての見方を変えたらしい。
しかしアイツは最低な男として学年内で有名だ。
彼女はAクラスの有名な生徒だ。
ならば、その噂くらい知っているはず。
なぜ山内を褒めるんだ?
山内は信頼されてもいないし、ウザ力MAXでただの変態だ。
だが、ここで敢えて褒めておけばコイツの考えが読めるかもしれない。
俺は山内を褒めた。
「…あ、ああ。山内はクラスメイト達から(変態&馬鹿&ホラ吹きとして)信頼されているぞ。コミュニケーション能力(ウザさ)が高くて、羨ましいよ。俺には永遠に彼奴の様な真似は出来ないからな。」
さぁどんな反応を見せてくれるんだ?
小代瑠奈。
「そんなに凄い山内君がいるなんて、Dクラスは強敵だなあ。」
小代の反応や表情は変わらず、彼女は山内を表面上では強敵として認識しているらしい。
もちろん、これらは全て偽りだと認識しているが、櫛田のように裏表が激しいタイプには見えない。
俺は別の切り口から彼女の反応をうかがう事にした。
小代は確かにAクラスに上がったが、彼女自身がリーダーシップを発揮しているわけでは無さそうだ。
ならば、もし自分が優秀だと言われたらどんな反応をするのか。
一般的な人間はまず自分が褒められると謙遜する。
そしてAクラスには坂柳、葛城、石田という優秀な生徒がおり、彼等と同列扱いを受ければ、必ず否定から入るはず。
「…それはどうだろな。Aクラスこそ、葛城、坂柳、小代、石田の様な強者が揃っている。とても勝てるとは思えないな。」
彼女がここで自分が優秀だと認識しているか、していないかによって、今後の見方が変わってくる。
「それを言うなら、Dクラスには桔梗ちゃん、平田君、高円寺君、堀北さんと優秀な人が揃ってる。彼らならAクラスにいてもおかしくないし、ちょっとズルいなって思っちゃうよ。」
「…確かにそうだな」
彼女は自分自身が優秀である事を理解している。
今の会話からすれば、俺が彼女をAクラス内のリーダー格、あるいはそれに準ずる地位を築いている人間として認識しているという事になる。
そして彼女は俺のその予想を受け入れ、否定も謙遜もしなかった。
そして逆に、Dクラスの優秀な生徒を挙げてみせた。
つまり彼女はクラス内で何らかのポストに就いているという事だ。
そしてその事実を隠しもしない時点で、バレても構わないという強い意志を感じる。
彼女の現状のレベルを把握する為にも、この質問はしておいた方が良さそうだ。
俺は彼女のレベルを知る為にこんな質問を投げ掛けた。
「そういえば小代、お前はどうやってAクラスに上がったんだ?入学して2ヶ月、この間で2000万プライベートポイントを獲得するのは容易では無いはずだ。」
「あはは、やっぱり気になっちゃう?龍園君や帆波ちゃん、坂柳さんや葛城君、石田君達を集めてAクラスに来た手段について講演会をしたんだけど、その時に話したんだよね。」
「龍園達と、か。Dクラスの生徒は参加しなかったのか?」
彼女は隠す素振りもなく話し続ける。
「そうだね。Dクラスで仲の良い桔梗ちゃんなら知っていると思うけど、あの時Dクラスの生徒は誰もいなかったからね。」
「そうだったのか。なら是非とも聞いてみたいものだ。」
「良いよ。私がやった事は、家から持ってきた宝石やアクセサリーを、モール内の宝石店でプライベートポイントに換金して貰ったの。次に、生徒会の放送で流れた銀行アプリ、これの手数料の一部が私のプライベートポイントとして入っているんだけど、これは私が考案者だからなの。他にもちまちまとお小遣い稼ぎをして、2000万プライベートポイントを貯めたの。」
櫛田と親しいという点から、特別試験で情報を交換し合っている可能性は高い。
しかし、前回の無人島試験でおそらくAクラスはDクラスのリーダーを当てていない。
この情報は平田から得たものなのでほぼ確実だ。
なら、無人島試験では2人は交流をしていないのだろうか。
しかし、今回の船上試験においてAクラスはどのクラスよりも先に法則に気付いている。
今回の試験に関しては櫛田は優待者の情報を渡していると考えるのが自然だ。
もちろん、確証は無いが。
彼女の話した内容に俺は表情を変えず「そうか」と返した。
物を売ってポイントを得た事については十分予想出来る範疇だが、銀行アプリの考案者だという事には驚いた。
「綾小路君は驚かないんだね?」
「何をだ?」
驚くべきところだったのだろうか。
俺の世間知らずがここで足を引っ張ってしまったらしい。
山内、ゲームではなくもう少しまともな常識を教えてくれ。
「普通なら、家から宝石を持ってくる事を疑問に思うはずだよ。だって、たかが高校生が宝石を学校に持ってくるっておかしいよね?盗難の被害に合えば、問題にもなるし、警察沙汰になってしまう。そして、普通の高校生は高価な宝石やアクセサリーを持っている事は珍しい。疑問には思わなかったのかな?」
「…」
ホワイトルーム育ちの俺は世間知らずの非常識な人間だ。
"世間一般の常識"を知らないのだから仕方ないが、"普通"である事を望む俺は、彼女の発言を上手く躱さなくてはならない。
仕方ないな一芝居打つか。
「…悪い、俺はここに来るまで世間の事はあまり知らなかったんだ。俺の親は、勉学に厳しい人だったからな。」
「へぇ?俗世を知らないなんて、どこかのお坊ちゃんなのかな?だとしたら、失礼な事を言ってしまったね。でも、綾小路君が成績優秀者なら有名なはずだけど、そんな話は聞いた事ないよ?」
「…それは、俺の出来が悪いから親が教育に力を入れていたんだ。今では平均的な成績を収められる様になっている。だから俺の学力は高くは無いんだ。」
俺の成績は常に平均だ。
親に厳しく躾られ、勉強をいくら努力しても平均以上を望めない人間だっている。
人にはそれぞれ限界があり、ホワイトルームを脱落していった人間のほとんどは限界に達していた。
ならば俺が限界に達していたって何ら不思議ではない。
いくら俺が常識がないからといって、この認識は世界共通なはずだ。
「うーん、そうだったんだね。じゃあせめてこの学校にいる間は、色々な経験を積んで青春を謳歌出来ると良いね。」
小代は俺の言葉を疑う事無く軽く流した。
しかしその自然なほどの流し方が俺に一抹の疑問を抱かせた。
「ああ。だから、山内や池達にはよく世間知らずだと言われるんだ。いろいろ教えて貰う事にするよ。」
「そっか〜!良いね!」
暫しの沈黙が気まずい。
今度は俺から話題を振る事にした。
「小代はこの学校についてどう思っているんだ?」
「どう、かぁ。」
望む進路が保証され、衣食住もポイントを使って得ることができ、食堂やスーパーには無料商品が置かれている。
まさに楽園と言える学校だが、この学校には闇も多い。
例えば赤点を取れば即退学。
この学校を卒業すれば望む進路が保証されるという謳い文句も実際は、Aクラスで卒業した生徒のみが対象であり、卒業生が訴える可能性もある。
しかし、今まで学校が存続している事を考えれば、Aクラス以外の卒業生にも何らかの配慮がされている可能性はある。
しかしそれを抜きにしても、この学校は詐欺行為をしている。
彼女はこの学校についてどう思っているのだろつか。
純粋に興味がある。
「私としては、この学校のシステムは面白いと思うよ。でも赤点で退学とか、ポイントでクラス替えとか流行りすぎな気がする。」
「弱肉強食という言葉そのものがこの学校を表す四字熟語だと思っているから、そこまで不自然でもないだろう?」
実力主義を掲げる学校だ。
着いて行けなくなればすぐに取り残されてしまう。
お前はどう思うんだ?小代瑠奈。
「弱肉強食ねぇ…私的には本来学生に必要な進路の為の努力がこの学校には欠けていると思うんだよね。」
どういう事だ?
社会に必要とされる人材を輩出する名門校であれば、この学校の特別試験も必ず重要な意味を持っている。
そう考えるのが自然なはずだ。
「…どういう事だ?説明してくれないか。」
「一般的な高校生って、自分の進路決定の為に勉強や部活動を頑張るんだよ。でもこの学校は進路決定の為に知略や謀略を巡らせ、相手を陥れ、非情になってAクラスを目指す努力をする。この学校は実力主義だから仕方ないけど、人間性に問題のある人間を製造している様にしか思えないんだよね。」
つまり、世間一般の高校生は努力を重ねて進路実現を目指すが、この学校の生徒には努力が足りていない。
そしてその努力をしてこなかった経験が、世間に悪影響を及ぼす可能性があると、彼女はそう思っているらしい。
「…この学校は社会にとってマイナスな人材を排出する、最悪な学校だと思うよ。」
「…最悪な学校か。確かにその通りかもしれないな。」
彼女の考えは理解出来ないが、今まで俺が持つ事の出来なかった視点、考え方であり非常に面白い。
「あはは、共感して欲しいとは思ってないよ。」
小代苦笑交じりに話すが、瞳には仄暗い色を宿していた。
これが彼女の本心らしい。
「そうか。」
話が続かず気まずい時間が流れる。
俺も小代もそこまでコミュニケーション能力が高い訳では無いからか、沈黙が流れる。
「…」
「…」
約40秒が経過した頃、小代が気まずそうに笑いながら口を開いた。
「私そろそろ部屋に戻るよ。また会ったら宜しくね。」
「ああ、分かった。またな。」
彼女と別れ自室に戻る。
小代瑠奈…
成績優秀で、高額ポイントを所持したAクラスの優秀な生徒。
一見人が良さそうに見えるが、実際は何を考えているか分からない。
元Cクラスで、2ヶ月でAクラスに来たという偉業を成し遂げた生徒。
生徒会公認アプリの考案者という点から考えれば、堀北会長含む生徒会とも面識があるという事になる。
今後、DクラスがAクラスを目指すにあたって、彼女は大きな障害物となる。
特に彼女の持つ高額のポイントは他クラスとの取引を有利に進める材料になる。
CクラスやBクラスが手中に入ってしまえば、Dクラスではどうする事も出来ない。
その可能性が限りなく低いとはいえ、2クラスの心を折ってしまえば可能な範疇だ。
二学期、俺達は熾烈なクラス争いを行う事になるだろう。
その未来が少しでも面白くなれば良い。
俺はそう思い、個室の扉を開けた。
「ただいま。遅くなって済まないな。」
今後の展開として欲しいものを選んで下さい。
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