14話ほどは書いてあるので、そこまでは高頻度投稿、その後は不定期になるかと思います。
生まれ変わったと、そう認識したのは唐突だった。劇的な切っ掛けがあったわけではなく、いつも通りの朝にいつも通り朝食を食べている最中に唐突に思い出した。
少し混乱したが、前世で見たネット小説のように高熱を出したりするわけでもなく、スッと溶け込むように前世の記憶が己の頭に馴染んだ感覚だった。
奇妙な感覚だった。前世での経験分一気に精神が成熟したようで混乱しながらも、頭は冷静に必要な情報を処理して現在の己の状況を正確に認識していく。
そしてある程度の情報の整理を終えると……正直頭を抱えたくなった。
現在の俺の状況は転生したと言って差し支えないだろう。一口に転生といっても、いくつかパターンが存在するものだ。
元居た世界への転生、異世界への転生、創作物の世界への転生……様々ではあるが、俺の場合はどうやら『創作物の世界への転生』に該当する。
さらに言えば、その創作物の世界への転生の中でも、俺は『原作キャラに転生』という形だ。なんとも二次創作的な展開ではある。
生まれ変わった世界は大人気少年漫画『ワンピース』の世界で、俺の名前は『スパンダム』……原作においては世界政府付属機関である諜報機関サイファーポールのひとつ『CP9』の司令長官を務め、いちおうエニエスロビー編での敵の組織のトップといえる立場の存在だった。
まぁ、本当に立場だけで実際にエニエスロビー編のボスはロブ・ルッチで、スパンダムは終始無能な小悪党といっていいポジションだった。
戦闘力は皆無で原作ではフクロウ調べで道力9……一般兵の数値が10とのことなので、一般人よりは強いが訓練した海兵よりは弱いといったレベル。
一応ゾウゾウの実を食べた剣である象剣ファンクフリードを所持しているので、一般海兵よりは武器のおかげで強いのだろうが、それでも雑魚と言っていいだろう。
性格はゲス……抵抗できないニコ・ロビンにさんざん暴力をふるい、職権乱用もしまくり、部下からの信頼はまったく無くルッチにも馬鹿呼ばわりされていた。
無理やり評価するなら、悪知恵は回るみたいで裏工作によってトムを死刑に追いやっているのと、いちおう歴史などの知識はそれなりにあったみたいだ。
まぁ、まとめると、雑魚で無能でゲスな小悪党というわけだ……最悪じゃねぇか。その後の新世界編では、文字通りルッチの腰巾着となり、情けない姿を披露していた。
原作での己の行く末を確認したあとは、現在の状況だ。いまの俺の年齢は7歳……原作でのスパンダムの正確な年齢は覚えていないが40歳前後だったような気がする。となれば、まだ原作まではかなりの時間がある。
若い内に前世の記憶を得られたのは大きい。この年齢ならば原作の展開を回避すること自体は容易だろう。
より深く考えるために、そこで一度思考を打ち切って朝食を食べきり、自分の部屋に戻る。七歳の子供のひとり部屋にしては、かなり広く家自体も世間一般では豪邸と呼べるレベル。
スパンダムの父親であるスパンダインは、スパンダム同様に無能っぽい感じではあったが、原作の22年前のオハラの時点でCP9の長官だったはずなので、30年少し前と考えられる現在もそれなりに高い地位に居ると予想できる。
さすがに世界政府直属の組織の高官ともなれば高給取りなのだろう。ただ思い返してみても、スパンダインは割と放任主義なのか、顔を合わせた機会は少ない。
原作では親子そろって出世欲と権力欲、そして己の保身ばかりの印象だったし、息子の俺に関しても己の出世や保身のための道具ぐらいにしか考えていないのだろう。
ある程度育ったら、コネでポストを与えて出世させ、己が引退したあとは息子の稼ぎで優雅な暮らしといったところか……まぁ、原作での新世界編では病に倒れたとのことだが。
ともかく親子関係が希薄なのは幸いだ、今後動きやすくなるだろう。
さて、問題は今後どうしていくかだ。まずサイファーポールに所属することは、避けられないだろう。
親父は世界政府直属の諜報機関の高官であり、立場上表に出せないような機密に触れる機会も多いはず。その家族がサイファーポールに所属しないとなれば、無視はしてくれないだろう。
いかに無能とはいえ、あの保身ばかりしか頭にない親父が、家で機密情報を話すなどと言うヘマをすることはない。
だが、実際に機密情報を知っているかどうかは関係ない。世界政府は、『知っている可能性がある人物』を野放しにしてくれるような優しい組織ではないというだけだ。
推定無罪と考えてくれるような組織なら、原作でオハラは滅んでいない。
となれば取れる選択肢は大きくふたつ、世界政府に属するか、海賊になるか……海賊は、ないなぁ。いかに原作で主人公たちが陽気に描かれていようと、基本的に海賊は犯罪者である。
原作の麦わら海賊団は稀有な例で、犯罪や略奪を行わずにトレジャーハントでまともに食っていけるとも思えない。
だが犯罪者にならないというなら、選べる職業はサイファーポール一択だ。他に所属したとしても、絶対手を回されて最終的にはサイファーポールに所属することになる。
まぁ、世界政府という超巨大組織の直属で親の立場的にそれなりのポストは約束されているし、生活は安定しているだろう。
後は原作の展開は出来るだけ回避したいが……まぁ、さすがにいまから30年ほど先のことを考えていても仕方がない、もっと直近のことを考えるべきだ。
……力は要るな。このワンピースの世界で生きていくうえで、強さは重要だ。なにより『二度も死にたくない』という思いもある。
体を鍛えるのは当然として、やはりここはサイファーポールらしく六式を覚えることにしよう。覚えるための指導は……仕方ない親父を頼ることにしよう。
親父の立場なら六式の指導者ぐらい手配できるだろうし、親父にしてみても息子が有能であれば有能であるほど、本人の政府での立場も上がるだろうし断られることはないだろう。
いちおう六式も一種の機密みたいなものだとは思うが……まぁ、どうせ将来はサイファーポール所属が内定しているようなものだし、大目に見て欲しい。
見てもらえなかった場合は、独学で頑張るしかなさそうだが……やれやれ、先行きはなんとも不安だが、とりあえず上手く立ち回りたいものだ。