闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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やはり、ここから更新速度は落ちます……


前提が違う以上変化は起こりうる

 

 ロブ・ルッチの短期所属はどうなるかと思ったが、問題は無かった。いや、ある意味では問題はあった。

 ルッチと原作のスパンダムの仲はとてもいいとは言えず、ルッチはスパンダムを見下していたし、スパンダムもルッチにエニエスロビー陥落の罪を押し付けたりしていた。

 少なくとも良好な関係ではなかったはずだ。

 

 だが、まぁ、俺が原作のスパンダムと違う以上変化はあって当然だが、ルッチとは短期所属期間中にかなり親しくなった。

 というか、ルッチが非常によく笑みを溢していた。ルッチはなんだかんだで、カクたち仲間と認めた者の前では気楽な姿を見せたりしていたし、カクたちも海軍に追われながらルッチの治療費を稼ぐためにサーカスまがいのことをしたりと、仲間への情も存在する。

 原作とは違い、ルッチにとっては俺もその枠に近い認識となったのだろう。まぁ、今後CP9で上司部下の関係になる以上良好で悪いことは無いか……。

 

 そんなことを考えつつ、机に積まれた書類の束を見てため息を吐く。ルッチの短期所属から1年ほど経ち、最近はかなり仕事が忙しい。原因はハッキリしており、1年前にあったフィッシャータイガーによるマリージョア襲撃事件で、世界政府自体が大騒ぎだからだ。

 CP5の管轄ではないので直接的にフィッシャータイガーやタイヨウの海賊団に関わることは無いが、他の部署のしわ寄せも来ている感じでかなり忙しい。

 

 まぁ、定時には帰れるし休みも通常通り取れるし、部下にも絶対に休みは取らせる。休日出勤とかサービス残業とかは断固として認めない。というか、そうしなければ仕事が片付かない状態になったら上司である俺の責任なので、そうならないようにしている。

 

 マリージョア襲撃事件が起こったということは、いまは原作の14~15年前、原作開始時期で考えるなら12~13年前といったところか……。

 この後にある大きな出来事と言えば、海列車が完成するぐらいか? プルトン関係がどうなるか気になる部分ではあるが、とりあえずいまは書類仕事だな……。

 

 

****

 

 

 司令長官という高給のポジションに居ながら、基本的にあまり金を使わない俺が、唯一惜しみなく金をつぎ込むのがウィスキーだ。

 原作のスパンダムの好物がウィスキーだったように、俺もウィスキーを好んでおり、晩酌の時間というのは至福のひと時と言っていい。

 

 気分によって飲み方は変えるが、一番多いのはロックだ。氷にもかなり拘っているつもりだ。コレクションの中から今日の気分でウィスキーを選び、氷と共にグラスに注ぐ。

 俺は少量をじっくり楽しむ飲み方が好きだ。グラスに注がれた美しいウィスキーの色合いや芳醇な香り、微かに鳴る氷とグラスが当たる音、目と鼻と耳、そして舌で楽しみ、つまみと共に一杯のウィスキーを時間をかけてゆっくりと飲む。

 

 日頃の忙しさを忘れ、心穏やかに時間が過ぎていく最高の癒し……。

 

「ぷるぷるぷるぷる」

「……」

 

 電伝虫の着信が聞こえる。誰だ? 俺の至福のひと時を邪魔したやつは……内容によっては殺す。

 微かな殺意を抱きつつ、受話器をとると……親父の声が聞こえてきた。

 

『スパンダムか?』

「親父……くだらない用件だったら殺すぞ」

『待て待て!? なぜ、いきなりキレている!?』

「うるさい、さっさと用件を言え」

 

 なんてタイミングの悪い奴だ。そんなんだから、オハラで醜態を晒すことになったんだぞ。

 

『……お前の今後に関して、重要な話がある。だが、電伝虫で話すような内容ではないので、実家に来られるか?』

「分かった。15分ほどで着く、高級なウィスキーを用意しておけ」

『15分? いや、別に後日でも……というか、島違うんだが……』

「15分以内に着く、準備をしておけ」

 

 そう言って受話器を置くと、俺はかけてあったジャケットを羽織って一階に降りる。当たり前ではあるが、CP5に所属する時点で本部の近くに家は借りている。

 購入ではなく賃貸なのは、いずれCP9に異動することを見越してだ。ただそれでも、一戸建ての家なのでなかなかの広さではある。

 

 そして、一階に降りた俺はキッチンに向かって声をかける。

 

「ポチ、しばらく出てくる」

「あ、はい。つまみはどうしますか?」

「冷蔵庫に入れておいてくれ、それほど時間はかからないから戻ったら食う」

「了解しました」

 

 一階のキッチンで料理していたポチに声をかけて玄関に向かう。ちなみにポチもこの家に住んでいるというか『勝手に引っ越してきた』。

 ある朝起きて一階に降りたら、大荷物を持って来ており、聞いたところによると私生活でも俺の役に立つために引っ越してきたとのことだった。

 

 鍵はどうしたのかと聞いたらピッキングで入ってきたとの返答だったので、鍵穴が傷つくから止めるように言って合鍵を渡し、空いている部屋を好きに使っていいと伝えておいた。

 まぁ、世間一般的に考えればポチの行動はストーカーでヤンデレなのだが、俺は別に気にしない。家事も積極的に行うし、よほど練習したのか料理も上手い。

 俺にとって利益の方が大きいのであれば、その程度の嗜好など好きにすればいい。

 あと単純にポチの狂気は信仰心なので、己の欲望云々ではなく俺に尽くしたいという感じでこちらに不利益は皆無と言っていい。

 家事関連も有能だし、家にいるなら仕事上の伝達もしやすいので便利である。まぁ、ポチに関しては『座敷童の一種』だと認識して好きにさせている。

 

 

****

 

 

 剃刀での高速移動により、実家へは12分ほどで到着した。降りる際など、出来るだけ人目に付かないように注意したりといった行動をとらなければ、もっと早くついていただろう。

 勝手知ったる家の中に入り、親父の元を目指す。見聞色の覇気を使えば容易に場所は分かるので、真っ直ぐに親父の部屋に向かった。

 

「親父、来たぞ」

「……本当に15分以内に来たな。どうなってるんだお前……」

「そんなことはどうでもいい。ウィスキーは?」

「ほらっ……」

「ふむ、悪くない。好みの銘柄だ……話を聞こう」

 

 まぁ、この辺りは腐っても俺の親というわけか、俺の酒の好みはしっかりと把握しているらしい。実の親を抹殺することにならなくてホッとした。

 用意されていたショットグラスにウィスキーを注ぎ、一口飲んでから親父に話を促す。

 

「お前にCP9の司令長官の座を譲るという話を覚えているか?」

「ああ、もちろん」

「本来はまだ5年以上はかけて譲るつもりだったのだが、その時期を早めようと考えている」

「……ふむ。理由は?」

 

 これは少々意外な展開だ。別に俺としてはどの時期にCP9所属になったとしても構わないが、気になるのは原作とのズレだ。

 とはいえ、それはいまさらか……俺自身やルッチの件も含めて、原作とのズレなどいくらでも起こっている。いまさらひとつ増えたところで、問題は無い。

 

「まずひとつ目は、俺が想定していた以上にお前が優秀だったということだ。いまのCP5はかなり上の覚えもよく、上もお前の昇進に乗り気でやりやすいということ。そしてもうひとつ、最近CP9に加わったロブ・ルッチを知っているか?」

「もちろん知っている。なんなら、少し前まで短期所属でウチに居た」

「そのルッチがな……三日置きぐらいに『いつ息子に地位を譲るつもりだ?』とか『そろそろ他のポストに就くべきじゃないか?』などと催促するように聞いてくるんだ」

 

 ……おい、なにやってるんだルッチ、お前そんなキャラだったか?

 

「一体どうやって手懐けた?」

「手懐けたつもりは無いんだがなぁ」

 

 強いていうなら気が合ったとでもいうべきか? なんにせよ、俺が思っていた以上にルッチの中での俺の評価は高いみたいだ。

 

「ともかく、将来のCP0総監候補と言われる天才だけあって、圧が凄くてな……いつか暗殺でもされないかと冷や冷やしている」

「そうか、墓の場所の希望があれば早めに言っておけよ」

「やめろ! 暗殺される方向で話を進めるんじゃない」

 

 まぁ、つまり要約すると……予定ではもう少し俺に実績を積ませてから譲るつもりだったが、現状でもそれなりに上からの評価は高く、CP9の司令長官を譲ることに文句も出にくい。そして、ルッチが三日置きに遠回しに脅しをかけてくるから、予定より早めに俺をCP9長官にしたいと、そう言うことか……。

 

「親父はどうする?」

「他部署ではあるが、いいポストが空いていてな。そこに就かせてもらえることになっている」

「ふむ……時期は?」

「スムーズにいけば1年ほどで譲る予定だが、構わないか?」

「好きにすればいい。俺はさほど地位に興味は無い。なんなら、CP5長官の地位でも高すぎるぐらいだ」

 

 とりあえず、CP9長官になる時期が早まることに関しては、別にどうでもいい。いずれはそうなる予定だったのだから、早まろうが遅くなろうがさして問題は無い。

 ただ、俺としてはもう少しほどほどの地位がいいのだが……四方の海あたりの支部長みたいなポジションが理想だが、難しいな。

 

 ……エニエスロビーが落ちたら、左遷されていい感じの場所に行けるんじゃないか? 原作で問題だったのは、ルッチたちに罪を擦り付けようとしたからであって、そうじゃなければ責任者の俺が順当に責任を取る形になるだろう。

 悪くないな。正直、悪くない……10年ほどCP9長官を務めてれば、親父への義理も立つし、一考の余地はあるな。

 

「……お前は相変わらず、地位にも金にも興味は無しか?」

「ないわけでは無い。必要以上にはいらないというだけだ。ほどほどでいい……山のような金や、高すぎる地位があったところで、俺にとっては邪魔なだけだ」

「我が倅ながら、変わったやつだな」

「いまさらだ……さて、これで話は終わりだな。なら、俺は戻るぞ……このウィスキーは、出張費としてもらっていく」

 

 ショットグラス内の残りのウィスキーを飲み干し、溜息を吐く親父に背を向け、軽く手を振ってから部屋をでる。

 まぁ、至福の時間を邪魔されたのは腹が立ったが……結果としていいウィスキーも手に入ったし、戻って晩酌のやり直しといくか。

 

 

 




スパンダム:狂パンダ。基本的には寛容だが、至福のひと時を邪魔するやつはギルティ。ポチの狂信はまったく気にしていないし、己の役に立つならヤンデレでも普通に許容する。
ポチがピッキングして入ってきた時には見聞色で気付いていたが、ポチだったので別にいいかと気にしなかった。
ただ、賃貸住宅は綺麗に返すつもりなので鍵穴に傷がついてないかだけは、少し心配していた。

ポチ:なんだかんだでしっかり狂ってる狂犬。寝ているパンダを起こしてはいけないと、ピッキングで侵入してリビングでパンダが起きて降りてくるのを待っていた。
滅茶苦茶努力したので家事は万能、日々パンダの役に立てて喜んでいる。

スパンダイン:なんか唐突に死亡フラグが建って、ギリギリで回避した可哀そうな人。ルッチからの圧が凄くて、いつか闇討ちされそうでビクビクしてる。
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