闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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CP9新司令長官

 

 

 グランドライン前半の海に位置する世界政府の直轄地。司法の島エニエス・ロビー。

 1年中夜にならない不夜島としても有名なこの島は、世界政府三大機関のひとつとして創設以来800年間に渡り、侵入も脱走も許していないという鉄壁の島。

 

 この島は政府直轄暗躍諜報機関サイファーポールの中でも特殊であり、非協力的な市民の殺害すら闇の正義の名の下に世界政府より許可されているCP9の拠点でもある。

 エニエスロビーには、常駐する海兵・法番兵を含め1万人以上の兵力が存在するが、その頂点に君臨するCP9の構成員は全体の数からみれば極めて少数である。

 しかし、基本的に構成員の全員が六式を修めた超人であり、不敗神話すら語られる極めて強力な組織である。

 

 そして現在、エニエスロビーの中心に位置する司法の塔の一室には、CP9の構成員たちが集まっていた。理由は単純で、本日CP9の新司令長官……実質的なエニエスロビーの新しい最高権力者が就任するということで、挨拶のために集まっていた。

 ただし、任務等で出ている者もいるため、全員集合というわけでは無く、現在室内に居るのはカク、ジャブラ、ブルーノ、カリファの四人だった。

 

「新しい長官ねぇ、どんな奴なんだか……前長官の息子って話だが、前の長官よりはマシだといいがな」

「さあのぅ。というか、わしに至っては前長官とすらほぼ話しておらんぞ。正式配属されてすぐに司令長官の交代か……やれやれ」

 

 ソファーに座り、どこか気だるげに話すジャブラの言葉を聞き、CP9内でも最年少でありつい最近正式に配属されたばかりであるカクが呟くように告げる。

 

「誰であろうとさほど変わらんだろう。最低限長官としての役割さえこなしてくれれば問題はない」

「そうね……あら? そういえば、ルッチは?」

 

 腕を組んだ状態でどっしりとソファーに座りながら呟いたブルーノの言葉に同意しつつ、カリファは周囲を見渡し、本来ならこの場に居るはずのもうひとり……ルッチが居ないことに首を傾げた。

 

「ああ、ルッチなら、少し用があると言って出ていった。すぐ戻るとも言っておったがな」

「……用?」

「分からんが、どうも今朝から妙に上機嫌じゃったぞ」

 

 カクの答えにカリファは首を傾げるが、カクとしてもそれ以上の情報は得ていない。むしろカクとしても不思議だった。

 ルッチは普段クールであり、共にグアンハオで育った彼らの前では笑ったり穏やかな顔も見せることはあるが、それでもあれほどまでに感情を表に出すのは珍しい。

 とにかく上機嫌というのが分かる雰囲気で、時々なにかを思い出したように笑みを浮かべていたのが印象的だった。

 

 そのまま少しの時間が流れると、鍛えられた彼らの耳に足音が聞こえ、入り口のドアが開くと紙袋を手に持ったルッチが入ってきた。

 

「おいおい、ずいぶん遅いじゃねぇか。天才様は重役出勤か、ルッチ?」

「ちょっと買い物に行っていただけだ」

「買い物?」

「ふっ、そのうち分かる」

 

 ルッチに対抗心があり、普段から積極的に絡んでくるジャブラの言葉に対しても、ルッチは煽り返すわけでもなく小さく笑みを浮かべるだけで、酷く楽しげだった。

 その反応は予想外だったのか、ジャブラも一瞬キョトンとした表情を浮かべたあと、不思議そうにルッチを見ていた。上機嫌の理由を尋ねても「そのうち分かる」としか返答しない。

 

 そんなルッチの様子を不思議そうに見ていると、部屋のドアが開きルッチを除く面々は驚愕したような表情でドアの方を向いた。

 理由は単純だ『ドアが開くまで気づかなかった』から……そう、超人として鍛え上げられた彼らの耳が、入ってきた人物の足音を捉えることができなかったのだ。

 

 入ってきたのは黒いスーツをキッチリ着て、白いネクタイを巻いたオールバックにした薄紫の髪と目元と鼻が黒い顔が特徴の男……スパンダムと、首の後ろで細く一本に纏めた尻尾のように見える薄い茶髪の小柄な女性……チェルシーだった。

 ふたりの入室を見て、ソファーに座っていた面々は起立して司令長官用のデスクの前に一列に並ぶ。彼らも政府のエージェントだけあって、しっかりと統率の取れた動きである。

 

 整列した五人とデスクを挟むような位置まで歩いたあとでスパンダムは停止し、チェルシーはその少し後方に立つ。

 ゆっくりとひとりひとりの顔を確認するように視線を動かしたあとで、スパンダムは静かに口を開いた。

 

「本日付けで司令長官に就任したスパンダムだ。よろしく頼む。後ろに控えているのは、長官補佐の役職に就くポーラ・チェルシーだ。ああ、楽な姿勢で構わない。順に簡潔な自己紹介を頼む」

 

 スパンダムの言葉を受けて少し足を開いて休めの姿勢になりながら、最年長であるジャブラから順に簡潔な自己紹介を行いつつも、ルッチを除いた四人はスパンダムを品定めするような目で見ていた。

 若干の不気味さを感じる相手の実力を慎重に探ろうとしているようなその視線に対し、スパンダムは小さく口元に笑みを浮かべた。

 そして、自己紹介がひと段落したタイミングで口を開く。

 

「……相手を見極めようとするのはいいことだ。まず最初に情報を得ようとする姿勢はいい。だが、想像で相手を小さく見ないことだ。六式使いである自分たちよりは下だろうと考えるのは……短絡的だぞ」

「「「「ッ!?」」」」

 

 瞬間、ルッチを残し四人は部屋の端まで飛び退いた。スパンダムから感じた凄まじい重圧を受け、ほぼ反射的にといった感じだ。

 素早い反応ではあるが、四人の表情は驚愕一色に染まっており、その体は小刻みに震えていた。そう、四人も理解したのだ。目の前の存在が、あまりにも他を隔絶した強者であるという事実を……。

 

「くっ……はははは!」

 

 緊張した空気の中で楽し気な笑い声が響き、視線がそちらに向く。視線の先では、ルッチが心底楽しそうな表情で笑っていた。

 

「そうイジメてやらないでくれ、主官……いや、これからは長官だな。そいつらも十分に優秀だ。すぐに実力に気付けなかったのは、アンタの気配を抑える技術が高すぎるだけだ。まったく、気配だけで気の弱い人間なら殺せそうな癖に、いったいどんな分厚い羊の皮を被ったら、ああも気配を消せるものなのやら」

「俺たちは諜報機関の人間だ。当然潜入なども任務としてこなすだろう。お前も、一般人にも紛れられるように気配を抑える術は日頃から磨いておけ」

「くく、相変わらずで安心した」

 

 スパンダムの返答に上機嫌に笑いながら、ルッチはテーブルの上に置いていた紙袋を手に取り、中から一本の瓶……ウィスキーを取り出した。

 

「確か、ウィスキーが好きだっただろう? 就任祝いだ」

「なんだ、わざわざ買ってきたのか?」

「またアンタが上司になるのが楽しみでつい、な。昨日は寝付くのに苦労したほどだ……さて、提案がある。コイツらも新長官のことをもっと知りたいだろうし、長官も部下の能力は把握しておきたいだろう? どうだ、親睦を兼ねて少し共に汗を流すというのは?」

「なるほどな……確かに、今日は顔合わせがメインで他の仕事はほぼ無い。互いの理解を深めるのも重要か……いいだろう」

 

 戸惑う四人を置いてけぼりにして話は進み、あれよあれよという間に訓練所にて互いの実力を確認し合うということに決定した。

 

 

****

 

 

 司法の塔の地下に用意されたCP9専用の訓練場。床に倒れ伏す五人に対し、スパンダムは静かに告げる。

 

「……ここまでにしておこう。これから俺は引継ぎの書類等の確認作業を行う。お前たちはシャワーを浴びたのちは各々待機でかまわない。ただ、緊急の任務が入る可能性もあるから、連絡だけは付くようにしておけ」

 

 それだけ告げると、スパンダムはチェルシーを伴って訓練場を出ていった。

 

「……なんちゅぅ……強さじゃ……」

「しかも、まったく……本気の一割も出していない感じだったわ……」

 

 仰向けに倒れた状態で呟くカクに、壁にもたれ掛かってぐったりとしながらカリファも同意する。

 

「……信じられん……なんだアレは……理不尽の化身かなにかか?」

「ああ、くそっ、駄目だ……立てねぇ……化け物じゃねぇか……」

「くくく、ははは……」

 

 同様に満身創痍といった様子でブルーノとジャブラが呟き、少し離れた場所で同様に倒れていたルッチは心底楽しげな様子で笑っていた。

 

「これだっ、この圧倒的な力……これでこそ、長官だ」

 

 満身創痍ながらもルッチは非常に満足げであり、己より上であると認めた相手の実力を再確認できて、心から喜んでいた。

 いやむしろ、ルッチがCP5に短期所属した時よりさらに強くなっているような感じもあり、「この怪物はまだ進化するのか」と、心の中に歓喜の思いが溢れていた。

 そのままひとしきり楽しそうに笑ったあとで、ルッチは上半身を起こし、他の四人に話しかけた。

 

「……どうだ? まさに、俺たちのトップに立つに相応しい男だろう?」

 

 その言葉に、否定は返ってこなかった。

 

 

 




スパンダム:CP9長官となった狂パンダ。原作よりかなり若いメンバーを見て、新鮮な気分だった。優秀さを感じられるメンバーに対しては高評価。

チェルシー:忠犬で狂犬。今日も今日とて狂パンダのお供……ちなみに訓練には、CP9メンバー側として参加し6対1の形で狂パンダの指導を受け、他のメンバー同様に叩き伏せられてはいるが、普段からボコられている経験からか他の5人のように倒れ伏してはいなかった。

ルッチ:朝から……むしろ前日の夜からウッキウキで待ってたし、就任祝いを買いに行くぐらい狂パンダを気に入っている。さらに強くなっていた狂パンダの実力をみて嬉しそうに笑っていた。

カク:最年少。時系列考えるとまだ10代前半。

ジャブラ:狂パンダを除けばCP9最年長、フーズフーと同期らしい?

ブルーノ:実はジャブラより5歳若く、クマドリより年下。アクセルシンクロとかはしない。

カリファ:何気に女性の原作キャラとして一番最初に登場。男所帯なCP9なので、ポチが来て内心嬉しい……でもソイツ狂犬だぞ。
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