聖地マリージョアにあるパンゲア城、そこの権力の間に居るのは、世界貴族の最高位にして世界政府の頂点たる5人の老人。
まぁ、原作知識のある俺はさらに上がいることも知っているが、それは普通は知り得ないことなので、世間一般の認識としては彼らが世界の頂点である。
「急な訪問、失礼いたします」
「まったくだ。ロクなアポもなく会えるほど、ワシらも暇ではない」
「さよう。今回特別に時間を用意したのは、日ごろの貴様の仕事ぶりを評価してのことだ」
「それで、用件は?」
相手は上司に当たる存在なので、しっかりと敬語は使う。現在腹の内で煮えたぎっている怒りが表に出た場合は、分からないが……。
用件を言うように促す五老星たちに対し、俺は手に持っていた書類を軽く掲げる。
「このふざけた報告書についてお聞かせ願いたい。ウチの構成員であるフィズが赤髪海賊団と内通し、護送中の悪魔の実の強奪を手引きした……子供にやらせても、もう少しマシな事後報告書を書くかと思いますがね。しかも、こんな状況証拠すらまともに揃ってもない杜撰な理由で即捕縛、裁判等も一切なく即日投獄……これを納得しろという方が難しいかと思いますが?」
「ずいぶんな物言いだな。それで、結局なにが言いたい?」
「こんな言いがかりを付けるようなら最低限直属の上司である俺を通せと言っているんですよ。もちろん、こんな馬鹿な通達が来たら突っ撥ねてやりますが……ともかく、このような内容は認めない。フィズは無理やりにでも連れ帰らせてもらいます」
そう宣言するとピリッと空気が張り詰めるのを感じた。おそらく五老星の認識としては、俺は政府内でもそれなりの権力者であるスパンダインの息子で、そこそこ仕事はできると評価はしているのだろう。
最初に向こうが言った通り、だからこそ急な訪問でもこうして会ってはくれている。だが、俺の要求を許すか否かは別の話だ……さて、どうでる?
「……お前は、少し勘違いをしているようだ」
「ほぅ?」
五老星が呟くのと共に、『部屋の中に隠れ潜んでいた4人』のうちの3人が俺の方に動くのを感じた。深く探らず常時垂れ流してる程度の見聞色に引っかかるレベルではあるが、身のこなしは中々……CP0か?
その予想は当たりだったようで、俺を取り囲むように白いスーツを着て仮面を付けた3人のエージェントが姿を現す。
原作で見たような仮面もいるが、見覚えのないのも居るな……残る1人は、五老星の後方で、いざという時の護衛というところか……。
「海軍などでもそうだが、我を通しそれを我らが見逃している者も存在する」
「だが、それは誰に対してもというわけでは無い」
「さよう。ある程度のワガママや身勝手を見逃してやるだけの価値があるとみなせる存在だからこそ、そういった振る舞いを許している」
「貴様はたしかに優秀で、貴様の親も政府の重職だ」
「しかし、所詮はその程度ということを忘れるな」
なんともまぁ、五人順番に息の合ったことだ。さて、理解していないのは……いったいどちらなんだか……。
「CP0か……わざわざ、このために呼んだわけじゃないだろう?」
「無論、別件で任務を与えるために呼んだ。だが、勘違いした者に灸を据えるには丁度よかろう」
「ふ、ふふふ……」
怒りと哀れみでつい敬語が崩れてしまったが、まぁいいだろう。本当に……この場に居合わせたCP0の面々は、哀れなものだと同情する。
笑い出した俺に怪訝そうな表情を浮かべる五老星と、仮面で顔はわからないが微かに警戒を強めるように体に力を入れるCP0たち。
「……CP0。俺はお前たちに思うところは無いし、恨みもない……あぁ、だから……安心しろ、任務に支障が無いように……『優しく撫でてやる』」
瞬間、抑えていた気配を解放する。さすがは特級のエージェントということもあって、CP9の面々より遥かに早い速度で反応して俺から距離を取ろうとバックステップをするが……悪手だ。そこは自身の反撃の目を捨てて剃で大きく距離を取るか、耐える覚悟を決めて防御を固めるべきだった。そうすれば一手ぐらいは凌げたかもしれない。
俺は3人がバックステップで着地するまでにそれぞれの後方に回り込み、首に一撃ずつ入れて意識を刈り取った。
3人のCP0が床に倒れる音と共に、俺は驚愕の表情を浮かべている五老星たちに向き直る。
「……それで? 俺はアンタたちの基準で、我が儘を見逃す価値がある相手か? それとも……そこに残っている、もうひとりが続きをやるか?」
そう告げながらもうひとりが隠れ潜んでいる場所に視線を向けると、ビクッと気配が揺れるのを感じた。どうやら怯えさせてしまったらしい。
あまり怯えさせても悪いので気配を再び抑えて返答を待つと、少しして五老星のひとりが深くため息を吐いた。
「……好きにしろ、インペルダウンにはこちらから連絡を入れておく」
「では、そうさせてもらいます」
無事に許可は得た。これでフィズを連れ出しても問題はない。ここからインペルダウンには……10分あれば着くな。フィズも拷問を受けてまいっている可能性もあるし、俺の苛立ちもいい加減限界なのでさっさと回収して帰るとしよう。
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スパンダムが退出したあとで、五老星のひとりが近場の柱へ視線を向けながら呟く。
「……どう見た?」
「バケモノとしか、言いようがありません」
五老星の言葉に反応し、柱の陰に身を隠していた4人目のCP0が姿を現し、先ほど見たスパンダムについての感想を述べる。
いや、ただしくはCP0である彼をもってしても、スパンダムの動きを見ることができなかった。そしてあの押しつぶされそうなほどの重圧。力の差をこれでもかというほどに感じた。
「本当にあの方にとって、優しく撫でただけでしょう。あまりにも次元が違い過ぎる。正直私も、この仕事は長く様々な強者を見てきましたが、私の中で強者という定義が揺らいでしまうほどにあの方は隔絶していました」
「……そうか、確かに凄まじい存在感だった」
「事務能力が高いとは認識していたが、それ以上に飛びぬけた戦闘能力を有していたとは……誤算だったな」
そう、誤算。実のところ、五老星は最終的にスパンダムの要求を通してやるつもりだった。スパンダムが居た際のCP5の優秀さ、CP9への着任から半年での仕事ぶりは五老星も高く評価していた。
真面目で仕事も早く、部下の扱いも上手いと極めて優秀な存在であり、へそを曲げられても面倒なのでフィズの釈放には応じる腹積もりではあった。
ただ、今後を見据えて釘を刺しつつ「今回は特別に~」という形で話を持っていくつもりだった。それがどうだ、いままで指揮官として優秀だと認識していたが、その実戦闘能力の方は掛け値なしのバケモノだったのは、誤算ではあった。
「だが、その力を知ることができたのは今後を考えればプラスだ」
「確かに、アレは絶対に手放してはならん存在だ。それをこのタイミングで知れたのは、幸運だったと思うべきだろう」
スパンダムの能力は完全な誤算ではあったが、それをこのタイミングで知ることができたのは幸運だった。とりあえず今後は、スパンダムが離反したりすることが無いように、ある程度のワガママなどは認めようと、そういう話で決まりかけたタイミングでCP0の男が口を開いた。
「……あの、スパンダム殿なんですが……もしかして、ここを出て即座に月歩あたりでインペルダウンに向かったのでは? あの能力だと、それこそ30分もかからず着きそうですが……そして、気のせいでは無くかなり怒ってましたよね?」
「……至急インペルダウンに連絡を入れろ。世界政府の役人がインペルダウンを半壊させたなんてことになれば大事件どころではない。大至急だ!」
「はっ!」
そうして、いくつもの手順をすっ飛ばしてインペルダウンに電伝虫にて連絡を終えたのが、スパンダム退出から7分後……ギリギリだった。
あと3分遅ければ、最悪インペルダウンの門は破壊されていただろう。
スパンダム:激おこ狂パンダ。表面上は敬語を使ったりして冷静になろうとしているが、実際割とブチギレており、普段なら威嚇ですませるところをCP0を気絶させた。
五老星:元々優秀な人材で評価はしていたし、今回のワガママもまぁ見逃してやろうかなぁ~とか思っていた。しかし、調子に乗られても問題なので釘を刺しておこうと思ったら、釘は全部叩き折られた。なにあのパンダ、ヤバい。
CP0:任務聞きに来たらパンダに襲われた。今回の被害者。