闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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司令長官の仕事は多い

 

 

 当たり前ではあるが、CP9長官としての俺の仕事は多い。朝出勤するとまず出迎えてくれるのはデスクの上の紙のタワーだ。

 なにせエニエスロビーだけで1万人を超える者が居て、俺がトップなわけで、報告書などだけでも相当の数に上るし、他のもろもろも含めれば毎日タワーが出来るのも頷ける。

 

 それに最近というか、マリージョア襲撃以降各地で革命軍の動きが活発であり、世界政府に属するCPの仕事は当然増加傾向にある。

 しかし、革命軍か……正直、仮に思惑通り世界政府を倒せたとして、その後はどうするつもりなのだろうか? 待つのは世界規模での大混乱だと思うが、それを治められるだけの人材や能力が革命軍にあるのだろうか?

 

 ワンピースの世界においては、世界政府および海軍の影響は極めて広範囲かつ巨大だ。それが消えるとなると、本当に待つのは世紀末のような光景だろう。

 国単位ならともかく、世界という規模で革命は成り立たないと思うのだが……まぁ、俺が気にすることでもないか。

 

 それにしても、相変わらず他のCPの尻拭いのような指令も多い。任務の割り当てを考えて、それぞれの休暇と被らないように調整。潜入などで予定より長引いた場合にも調整が必要だ。

 CP9の構成員の経費申請などもすべて一度は俺に回ってくるし、司令長官の仕事量はかなりのものだ。原作のスパンダムや前任の親父はよくこなせていたものだ。

 無能だとばかり思っていたが、アレでなかなか事務能力は優秀だったのかもしれない。

 

「チャパパパ! 長官、今日も凄い量の書類だな~」

「あぁ~そびえる白き塔にはぁ~威圧! 威圧感さえ~感~じぃ~るぅ!」

「丁度いい。フクロウ、クマドリ、次の任務の割り当てと予定だ。確認しておけ」

「「了解」」

 

 長官室に入ってきたのは、フクロウとクマドリ……現在は任務を受け持っていないふたりだった。というか、CP9のメンバーは何故か手持無沙汰だったり、待機だったりすると長官室に集まってくる。

 まぁ、こちらとしてもすぐに伝達ができる分メリットがあるので放置しているが、休憩室と勘違いしてないかコイツ等。

 

「それにしても長官、そんなに書類があって大丈夫なのかぁ?」

「今日はいつもより少ないぐらいだぞ、2時間もあれば終わる」

「チャパッ!?」

「んん~アァ、さすが~長官~!!」

 

 しばし、ふたりと雑談しつつ、書類を処理していく。報告書の確認と、返答が必要なものは返答を書き込んで別に分ける。

 他にも要望や備品支給の申請なども、可否を判断してハンコを押して処理、任務関連はエージェントに割り振るか、地域的に他のCPが動いた方が効率がいいものは、他のCPに回す。

 

 そんな風に処理しつつ、途中で鳴った電伝虫の受話器を取る。

 

「スパンダムだ」

『バスカビルです。先日の件ですが……』

「通達した通りだ。死刑囚の陪審員など意味があるか、まともな陪審員を選定しなおせ。人材の紹介が必要なら申請書類を書いて提出しろ」

『りょ、了解』

 

 原作を読んだ時にも馬鹿かと思ったが、死刑囚で罪人の巻き添えを望んでいる公正な陪審員とは笑わせる。無駄にもほどがある。

 だいたい死刑囚を覆面つけて鉄球振り回せるような状態にしているのがそもそもの間違いだ。

 

「スパンダムだ」

『すみません、スパンダムさん。実は……』

「その件なら、対象の地域にCP3の管轄が含まれるから、事前に連絡を入れて共同で当たれ……あと、CP5の主官は俺じゃなくてお前なんだが?」

『いやいや、私にスパンダムさんと同じ仕事量をこなせるわけがないじゃないですか……』

「はぁ……とりあえず手が回らない分に関しては正規手順でこちらに回せ、以上だ」

 

 俺の後任であるCP5の主官は、まだ慣れていないのかこうして頻繁に意見を求めて連絡を取ってくる。アドバイスくらいは構わないが、いい加減ある程度自身で判断できるようになってほしいものだ。

 さて次の書類は……あ~割り当てられるメンバーが居ないな。場所は前半の海の三つの島で、内容は全て暗殺か……仕方ない、この仕事は午後に俺が片付けるとしよう。

 次が、他のCPの尻拭い……またCP7か、最近連続してないか?

 

「ポチ、CP7の主官に連絡を入れておけ、最近の任務失敗が多い件に関して話があるから、夕方に時間を作れと」

「了解です。こちらの処理済みの書類は、担当部署に送っておきますね」

「頼む。あと、戻るころには終わっているから、コーヒーを入れてきてくれ」

「はい!」

 

 意外と、厄介な内容の書類も少なかったし、今回はかなり早く終わりそうだな。

 

「チャパ……いつ見ても、圧巻だぞ」

「よよいっ! あ~速過ぎてぇ、手元がぁ、見えんん~!!」

 

 予定より早く終わるだろうし、昼食までに時間も余る。エニエスロビーで修繕申請があった個所の確認も今日中に行えそうだな……。

 

 

****

 

 

 

 書類仕事が終わると、ポチが淹れてくれたコーヒーを飲みながら新聞を読む。情報というのは非常に有益なものだ。諜報機関の長官ということもあって情報は多く集まる立場にあるが、性質上得やすい情報と得にくい情報というのがあるので、新聞も重要だ。

 たとえば、フィッシャータイガーが死亡したり、アーロンが逮捕されたりという一般にはあまり公開されない情報などはすぐに手に入るが、この新聞に書かれている女優のビクトリア・シンドリーが舞台から転落死などという情報は、新聞等からのほうが効率よく収集できる。

 

「長官、なんの記事を読んでいるのですか?」

「ビクトリア・シンドリーの死亡記事」

「なるほど、セクハラです」

「お前の中で、俺は死亡記事を読んで興奮する変態という認識か? いい度胸だ、次の訓練はきつくする」

「……パワハラです」

「……まぁ、いい。それで?」

 

 長官室に居たカリファが呆れるようなことを言ってくるが、彼女にとってのセクハラ指摘は一種の口癖のようなものなので、適当に相手をしつつ続きを促す。

 

「化粧品は経費で落ちますか?」

「潜入用備品と書いて申請しておけ、衣類もそれで通る。ただ、量や金額に限度はあるからな」

「了解……あっ、チェルシー、私にもコーヒー貰えるかしら?」

「はーい」

 

 本当にコイツらは、ここを休憩室と勘違いしていないか? あんまりにも頻繁に来るので、長官室のソファーも一回り大きいものに換えたぐらいだ。

 そう思いつつ視線を向けると、カリファの向かいの席ではカクがなにやら難しそうな表情を浮かべていた。

 

「カク、どうした?」

「うん? ああ、実は刀を新調しようと思うとるんじゃが、なかなかいいものが見つからん」

「ウチの親父が、象になる剣を持ってるが?」

「……いや、それはいらん」

「なら、いくつかの伝手を紹介してやるから、一度見に行ってみろ……それと全額ではないが、購入費用の一部は補助金の申請ができるから、購入したら一度経理部に足を運んで聞いてみろ」

「ほう、分かった。助かる」

 

 当たり前だが、エニエスロビーのトップをやっていれば武器商人等の伝手も山ほどできるし、売り込みのような話が来ることも多い。

 しかし、法番隊のあの変な手甲剣は本当に必要なのか? 頭ごなしに否定してやる気の低下に繋がっても問題だし、予算が過剰に必要というわけでもないので見逃しているが……あの戦闘手段なら、別に鉤爪でも同じだと思う。

 

 

****

 

 

 昼食を食べたあと、食後の運動を兼ねて回す相手が居なかった暗殺指令を三つこなし、完了書類を上に送付する。

 さて、残っている仕事は修繕箇所の確認と、CP7の主官を注意するぐらいか……CP7本部には25分ほどの移動で着くので、時間はかなり余り気味だ。

 鍛錬でもするか……。

 

「……で、なぜ、お前たちがここに居る? CP0」

「ああ、いえ、我々も以前の一件で力不足を実感しまして……」

「スパンダム殿にご指導いただけたらなぁと……」

「まぁ、いいだろう。翌日に任務がある者は事前に言っておけよ」

 

 前に五老星のところでやり合ってから、CP0の連中がちょくちょくやってくることになった。なんなら、あの時に居なかったCP0までもくる始末だ。

 まぁ、覇気使いかつ実力者の訓練相手というのは便利なので、俺としてはまったく問題ないが……。

 

「そういえば、スパンダム殿。部下に覇気は教えないのですか?」

「教えてもいいが、覇気の指導となるとある程度の期間を取る必要があるし、それだけ長期かつ継続した訓練を行えるほど余裕はない。CP9のメンバーはまだ体も出来上がってない連中が多いし、とりあえずは保留だな。そういえば、CP0のメンバーはどのタイミングで覇気を習得するんだ?」

「我々はCP9からCP0に上がる際に、一度専用の訓練施設に行って、そこで覇気を習得した者からCP0に正式所属という形ですね」

「……なるほど」

 

 覇気の指導というのは、実際かなり難しい。個人差が大きいので、コレが正解という指導方法が無いのも原因のひとつだ。

 俺の言葉を全面的に信じるが故に、図らずも覇気習得のコツを実践していたポチの習得は早かったが、それでもそれなりに時間はかかった。

 CP9のメンバーに習得させるとなると、さらに膨大な時間が必要だが……そんなに暇でもない。それに、覇気以外にも教えるべきことは多い。

 のちに専用の施設で、専門の教官から教わるのであればそれを待ってもいいと思う。前半の海で覇気が必要になる場面はほぼ無い上、仮に相手が覇気使いでも暗殺するならほぼ関係ない。自然系を相手にする状況なら、俺かポチが出れば済む話……そもそも自然系なんてそうそう居るわけじゃない。

 となると、やはり急ぐ必要はないな。

 

「そもそも俺は基本的に独学だからな。あまり指導には向かない気もする」

「そうですか? むしろ指導は分かりやすく、我々としても勉強になりますが……」

「……そうか、ならひとつアドバイスしてやる。マハ、お前は無意識下でも弾丸ぐらい弾けるようにしておけ」

「……いきなりハードルが高いような」

 

 のちに、ワノ国でイゾウと相打ちになる可能性が少しでも減らせるかもしれないからな。

 

「……というか、スパンダム殿。CP0に来ません? いまなら総監のポジションだって用意できると思いますよ?」

「行かんし、上もおそらく俺をCP0にはしないだろう。五老星はなんだかんだで、俺の性質はよく分かっているだろう」

「と、いいますと?」

「俺が天竜人を殺す可能性が高いと思ってるんだろう。相性が最悪だしな」

「あ~」

 

 考えるまでもなく天竜人と俺の相性は最悪だ。そもそも、同族嫌悪というべきか自分さえよければいいという性質も似ていて不快感があるし……何の罪もない市民を衝動的に殺す場面を見たら、前世を思い出して殺してしまいそうだ。

 五老星も、俺が天竜人と相性が悪いことは察しているだろうし、上げることはないだろう。そもそも、いまでさえ地位が高すぎるのに、これ以上上に行く気も無い。

 

「……それより、今日はマハとゲルニカだけか?」

「ええ、他の者は任務中です。来たがっていましたがね」

「なら、ポチも呼ぶか……2対1では、相手にならんだろうしな」

「……3対1でも相手になる気がしないんですが……」

 

 その言葉に軽く苦笑しつつ、訓練が終わった後の確認作業の巡回ルートを頭に思い浮かべる。遠い場所から確認するのがいいが、西にある居住区は夕方を過ぎれば帰宅の者たちで込み合うし、そちらを先に……。

 

 やっぱり、CP9長官の仕事は多いな。やっぱりもっと、下の地位の方が時間的な余裕がありそうだし、マジで四方の海の支部長とかにしてくれないかなぁ。

 

 

 




スパンダム:脳なども強化しまくっているので、仕事もできる狂パンダ。原作スパンダムやスパンダインはそんなに仕事していないが、本人のスペックが高すぎて大量に割り振られても割と余裕をもって仕事が終わるため、結果ドンドン回される仕事が増えているのに気付いていない。

ポチ:相変わらず忠犬で狂犬。狂パンダがコーヒーを好むため、一流のバリスタレベルの腕前になっている。カリファとは仲良くしている。

CP5現主官:狂パンダの後任だが、最初に狂パンダがこなしていた仕事量を見て悲鳴を上げて倒れた。その後は頻繁に狂パンダに泣きついている。

フクロウ:毎日デスクに 積み上げられている書類にドン引きだが、それ以上にそれを平然と午前中にこなして新聞読みながらコーヒー飲んでる狂パンダによりドン引き。

クマドリ:フクロウとコンビでやかましさ2倍だが、狂パンダはさほど気にしない。任務はちゃんと真面目にこなす。

カリファ:セクハラは一種の挨拶なので……ガチのパワハラは止めてください、本当に……ポチとは仲が良いか、ポチに迂闊に狂パンダの話を振ると数時間コースが確定するので、ポチと話すときは絶対に狂パンダの話題は口にしない。

CP0:なんかたびたび訓練しに来る。狂パンダ的には優秀な訓練相手なので、まったく問題なし。

五老星:……アイツ戦闘能力だけじゃなくて事務能力もバケモンだわ。もっと上の地位にしたいけどなぁ……でもアイツ天竜人殺すよなぁ、大将とか恐れないよなぁ……。
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