トムの一件も終わり、これで原作通りに進むとしても数年。潜入調査が始まるまではこれと言って大きな事件はなさそうだ。
もちろん世界的にという意味では事件はある、ドフラミンゴの七武海入りの際の天上金の輸送船襲撃事件。シッケアール王国が内乱で滅ぶのもこの時期だったかな? ミホークがいつ住み着いたかまではわからないが……。
あとはゼファー関連の演習船襲撃事件もこの辺りだったはずだが……正確な時期が分かれば劇場版関連の動きの参考になるが……犯人は自称白ひげの息子エドワード・ウィーブルではないかと予想されていたが、劇場版はパラレル要素が強いため実際のところは分からない。
俺に関係のある内容は少ないな。天上金事件は、ドフラミンゴがなにかマリージョアの秘密を握っており、政府も手が出しにくい相手ということもあり、話が回ってくる可能性は低い。
いよいよ我慢しかねるようなことになれば、五老星から俺にドフラミンゴを消すようにと指令が来るかもしれないが、良くも悪くも慎重な五老星が初手でそんな手段に出るとも思えない。
天竜人関連は基本的にCP0の管轄だし、対処に動くとしてもCP0だろう。
シッケアール王国に関しては、「国が亡ぶほどの内乱とはなんだ?」という思いはある。止まりどころを見失った結果なのかもしれないが……まぁ、あと1年ほどで滅ぶレベルであればすでに末期だろうし、ここから介入という事態は考えにくい。
となるとやはり、大きく俺に関わる事態はないな。というか、ここから原作開始までは小さな事件こそいくつか起こるが、大きな事件は少ない。
問題は、原作が始まってからだ。そこからほんの1年の間に事件が大量に発生する。
東の海関連は置いておくとして、ドラム王国が新しくサクラ王国に変わり、アラバスタ王国の反乱が収まり、バロックワークスが崩壊、七武海のクロコダイルの称号剥奪。こちらには関係ないが空の上ではエネルの体制が崩壊。
そして俺が大きく関わるであろうウォーターセブンの一件。原作通りなら、エニエスロビー崩壊。エースが黒ひげによって捕まり、黒ひげが七武海入り。モリアのスリラーバークが壊滅。
そして、シャボンディ諸島で天竜人への暴行、インペルダウンでの暴動及び大量脱獄、マリンフォードでの頂上決戦に白ひげの死。
これが1年以内という短い期間で発生するんだから、悪夢のようである。そりゃ、原作の五老星もさぞ頭を抱えたことだろう。
まぁ、とりあえず俺に大きく関わるのはウォーターセブン及びエニエスロビーで、あとは書類仕事とかが爆増しそうではあるが、直接的な関わりはない……と思いたい。
エニエスロビー崩壊で左遷されれば、その後のインペルダウン、マリンフォードの一件で忙殺されることはないのだから……本当にありかもしれない。
「隊長、島が見えましたよ」
「そうか、近場とは言ってもやはり時間がかかるな……帰りは全員剃刀で帰るか?」
「いや、さすがにこの距離を剃刀で移動するのは体力がもたん気がする」
俺の呟きにカクが首を横に振りながら告げる。視線を動かしてみると、他のメンバーも一部は青ざめているので、現実的ではないか……。
ポチ、ルッチ、フィズ、ジャブラ辺りは大丈夫だろうが、他はたしかにスタミナが足りないかもしれない。
「しかし、小さい島だなぁ」
「まっ、なにもねぇ無人島だしな。目的は慰労を兼ねたバーベキューなんだし問題ねぇだろ」
ジャブラとフィズが話しながら見る先には、ポツンと小さな島があり、そこが今回の目的地だった。
以前にポチと話した通り、CP9全員で休みを取り慰労を兼ねて近場の島に出かけてきたわけだ。申請は思った以上にアッサリ通った。
いや、それどころか……。
「まぁ、酒も肉も山ほどあるから、好きなだけ飲んで食え」
「……しかし、長官。高級食材や高級酒をあれほど大量に用意して、金銭面は問題ないのか?」
「いや、アレは俺が用意したわけじゃなくて上が送ってきたんだよ」
「うん?」
ブルーノの質問に答えつつ、ポケットから飴を取り出して咥える。するとそのタイミングで、事情を知っていてお喋り好きなフクロウが口を開いた。
「チャパパパ、日ごろの仕事ぶりに対する褒美らしいぞ。というか、普段から長官には定期的に臨時ボーナスとして、大金が支払われているらしいが、長官が拒否してるとか~」
「初めは受け取っていたんだが……本当に頻度が多くて、いちいち受け取るのも面倒で最近は必要ないと拒否してたな」
「なんでだ? 別に金なんざあって困るもんでもねぇだろ?」
「いいか、ジャブラ、俺にとって使いもしない大金なんぞ邪魔なだけだ。通常の給料だけでも多すぎるぐらいなのに、なんでああもことあるごとに金を渡そうとするのか……」
「いや、それ長官が仕事し過ぎなだけじゃねぇのか……」
CP9司令長官というだけで、月々の給料は凄まじい額だ。それもそうだろう、世界政府という名実ともに世界最大の組織で高い役職についていれば、相応に給料は凄まじい額になる。
その時点でまず俺の普段の生活で使い切るような額ではない。なんならCP5主官の頃から金はかなり余っていた。
その上なにかと理由を付けて大金を渡して来ようとするのは正直鬱陶しい。前世のようにATMなどがあって全国どこでも金を出し入れできるというわけでもないのだから、大金は物理的に邪魔にさえなることもある。
「まぁ、それで突っ撥ねていたんだが、今回の休暇を申請した際に、バーベキューに対し特別ボーナスの代わりに食材や酒を提供すると言ってきたので、それぐらいならいいかと思って了承したら……呆れるほどの量を送ってきやがったというわけだ。だから、各自今日の余った食材や酒は好きに持って帰れ」
「ふふ、まぁ、上の苦労が伺えるな。働きに対する正当な報酬を支払いたいのに、本人が望まないのだからな」
そう呟きながら私服姿のルッチが苦笑しながら肩のハットリに豆をやる。今日は休暇ともあってハットリもリラックスムード……ネクタイの色が普段と違うな? 休暇だから付け替えたのか?
「……まぁ、それでも最近はいい消費先ができたから、金は使うようになった」
「意外ですね。長官が大金を使う姿が想像できませんが、なんに使ってるんですか?」
「服だな。特注で作らせてる……いまのこの服もそうだな」
「いくらぐらいですか?」
「この服は6500万ベリーだな。普段のスーツは、8000万ほどだ」
「……は? え?」
カリファの質問に答えてやると、目を白黒させ思考が追い付いていないと言いたげな表情を浮かべる。そして、同様に明らかに驚いた様子のジャブラが会話に入ってきた。
「おいおい、6500万!? なんでだ? 普通の服にしか見えねぇぞ……」
「普通の服だが、お前らが支給されているものの上位版といったところか……簡単に説明しよう。『俺が本気で動いても破れない伸縮性と丈夫さを兼ね備えた服』だから高価なんだ」
「……滅茶苦茶納得できた。というか、すげぇな。長官の動きに耐えられる服なんて……」
実際ワンピース世界の服は異様に丈夫だ。漫画的な表現と言ってしまえばそこまでだが、炎が直撃してもちょっと焦げるぐらいとか、動物系の悪魔の実の能力者が変身してもあわせて伸縮する。
というか、悪魔の実に関しては服も体の一部とかいうガバガバな判定をしている気がするが……自然系とか、服も能力の対象内だしな。
スモーカーが十手を煙にはできていなかったのは武器は対象外なのか、海楼石の影響か……エースの腰の短剣とかは問題なく炎に出来ていたのだから、海楼石が有力か……。
まぁ、そんなわけで悪魔の実は除外するとして、この世界の服というのは異様に丈夫で、さらに政府が支給するスーツとかは最新の技術が使われてるとかでさらに上だ。
しかし、それでも俺が本気で動くとさすがに耐えられなかったので、特注で作らせている。おかげで移動で服が破れたりということはない。
手で少し強めに引っ張れば破れるが……。
すると、ブルーノがなにか疑問に思うことがあったのか不思議そうに首を傾げつつ尋ねてきた。
「金額は納得したが、そんな服を作れる服屋が存在するのか?」
「ああ、まぁ、服屋じゃなくて科学者だがな……『ベガパンク』という」
「……あの有名な天才科学者か? 知り合いだったのか?」
「いや、直接会ったことはない。親父がベガパンクの近いところに伝手を持っていて、それを通じて依頼した。向こうも万年研究資金不足とのことで、喜んで応じてくれたよ」
俺としては使い道のない大金を処分する先として有益だが、人間的には面倒臭そうなので正直直接会いたいとは思わない。
できれば、今後も親父を窓口にして、あくまで服屋としての付き合いに留めておきたいところだ。
スパンダム:休暇中の狂パンダ。ベガパンクとは親父の伝手でやり取りしているだけで、直接会ったりはしていない。面倒そうな相手だし、あまり会いたいとも思っていない。
CP9:休暇でバーベキューに、原作より仲が良いので割とリラックスムード。
五老星:……戦闘能力も事務能力もバケモノで、仕事も滅茶苦茶こなす。クソ有能だし、機嫌取りたいし、働きに見合うだけのものを渡したいんだけど……特別ボーナス出せば、逆に嫌そうな顔するし、昇進とかはもっと嫌がってる感じだし……なにアイツ、どうすればいいの?
え? 休暇でバーベキューに……じゃあ特別ボーナスの変わりてことで酒とか食材とか……え? OK? チャンスだ。早急に最上級のものを用意しろ!
ベガパンク:……偉い奴ってのはどうして見栄を張りたがるのか、こんな耐久力の服なんて作ってもオーバースペック過ぎて持て余すだろうに……本当にこんな耐久力が必要だとしたら、ソイツは人の形したバケモノとしか言えないだろ。まぁ、金払いはいいから気にしないけど……。