闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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皆で楽しく休暇

 

 

 適度な大きさの岩に腰を掛け、釣りをする。すぐ近くには退屈そうな顔をしているルッチがおり、俺と同じように釣竿を手に持っている。

 少し離れた場所では、釣りに興味のない者が遊んでおり、ポチはバーベキューの用意をしている。料理に関してはポチに任せておけば問題ないので、俺はのんびりと休暇を満喫することにする。

 

「……ルッチ」

「うん?」

「退屈な時間を退屈という言葉で思考停止をするのは無駄だ。こういったのんびりした時間も、有効に使えるものだぞ」

「ふむ……例えば?」

「俺とお前の釣果がかなり違うのはなぜだと思う? 腕はほぼ変わらない、では要因となるのはなにか……答えは気配だ」

 

 ルッチは原作でそういう部分はあったが、退屈な時間を嫌う傾向にある。ただ、普段を見ているとハットリの世話をしていたりする時などは、割とのんびりリラックスしていたりもするので、少し心の持ち方をアドバイスしておこう。

 そうすれば、ガレーラカンパニーに潜入する際にもある程度退屈をコントロールできるだろう。

 

「自然界の生物というのは、人以上に気配に敏感だ。人間相手であれば問題なくとも、動物には気づかれるというのはよくあることだ」

「……どうすればいい?」

「気配の消し方はそれぞれだが、なにかしらのイメージを持つのがコツだな。俺の場合は皮膚の上に薄い膜を作り、気配を外に出さないようなイメージで抑える」

「こんな感じか?」

 

 ルッチは天才と呼ばれるだけあって類まれなるセンスがある。故に、簡単なアドバイスであってもすぐに自分のものにすることができる。

 さっそく俺のアドバイスを聞いて実行したルッチから僅かに漏れていた気配が消え、直後に竿にかかった魚を釣り上げ、俺の方を見て軽く笑みを浮かべた。

 

「悪くない。あとはそれを、意識せず自然に行えるようになれば合格だ」

「なるほど、遊びのように見えることの中からも学べることはあるか……」

「その辺りは思考の持ちよう次第だ。学べるものが何もなかったとしても、後の楽しみ……お前の場合だと殺しだな。それを楽しむための前菜と思えばいい。退屈の一言で切り捨てて思考停止するよりは、有益だろう?」

「ふっ、確かに……前菜は、少し物足りないぐらいがちょうどいいか……なるほど、そう考えてみると、次の任務が楽しみになるな」

 

 原作とは違いルッチと俺の関係が良好ということも影響してか、ルッチは基本的に俺の言葉は素直に聞く。今回も、アドバイスを自分なりに納得する形で消化できたみたいで、先程までよりはリラックスした表情を浮かべていた。

 

「……まぁ、フクロウとクマドリはこちらに近づくな。お前らは気配以前にうるさくて魚が逃げる」

「チャパ!?」

「あぁ~突然のぉ~流れ弾ぁ~」

「く、ふふふ……なるほど、たまにはこういう時間も、悪くは無いか……」

 

 楽しげに笑うルッチを見て、この分ならガレーラへの潜入も原作よりは退屈を感じずに済みそうな、そんな予感がした。

 

 

****

 

 

 スパンダムたちが釣りをしている際、釣りに興味がないジャブラとフィズは持って来たボードゲームを挟んで真剣な表情を浮かべていた。

 

「というかよ、ジャブラ……テメェ、結果が分かり切ってるとはいえ、いつになったらギャサリンに告白するんだよ」

「ば、馬鹿お前、そういうのはいろいろタイミングとか、雰囲気ってもんがだな……」

「はっ、何年言ってやがる。どうせ振られるんだから、さっさと言えばいいものを」

「あ? テメェが振られたからって、勝手なこと言いやがって、俺はお前と違って可能性ありに決まってんだろ! な、カクもそう思うだろ?」

「知らん。わしに話を振るな、興味ない」

「かぁ、これだからお子様は……」

「……なんじゃと?」

 

 思いを寄せるギャサリンの話になりヒートアップするジャブラと、たまたま近くに居たという理由で話に巻き込まれつつ挑発に乗ってジャブラを睨むカク。フィズは、すでに告白して振られているためか、どこか楽し気に睨み合うジャブラとカクを眺めていた。

 そんな三人を眺めつつ、バーベキューの準備をしていたチェルシーは、カリファに小声で問いかける。

 

「……でも、たしかギャサリンさんって、ルッチさんが好きって言ってませんでしたっけ?」

「あの子は面食いだからね。なんにせよ、確かにジャブラに可能性はなさそうね」

「ですねぇ……ああ、カリファさん。この食材の下処理はこうして……」

「なるほど、貴女は相変わらず料理が上手いわね。せっかくの機会だし、いろいろ教えてちょうだい」

「もちろんです。まぁ、今回はバーベキューなのであまり教えることもないですが……あっ、ホイル焼きでも作りますか? 基本的な作り方を教えたあとで、隊長好みの調整の仕方をみっちり教えますね!」

「……基本的な作り方だけにしてもらえるかしら……いや、ほら、初心者だから、まずは基本からね」

 

 カリファにとってチェルシーは親友と呼んでいい間柄の存在である。年下のカリファに対しても敬語を崩さない礼儀正しくも明るく人当たりのいい性格であり、少ない女性メンバー同士ということもあって話す機会は非常に多い。

 ただ、基本的には本当にいい子だと思っているし、最高の親友だとも感じているが……唯一の欠点として、ともかく隊長と呼ぶスパンダムへの忠誠心と愛が凄すぎるのが問題だった。

 今回のようにたびたびスパンダムの話に移行しかける時があり、そこで曖昧な返事をしたら最後、テンションの上がったチェルシーは数時間に渡りスパンダムの話を続ける。

 なのでスパンダム関連の話を迂闊に拾ってはいけない。やんわりと、しかしてハッキリと「また今度」という風に伝えなければならない。

 

「……そろそろいいですね。隊長たちを呼びましょうか」

「ええ、火は私が見ておくわ」

「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね」

 

 犬の尻尾のように後ろ髪を揺らしつつ、笑顔でスパンダムの下にむかうチェルシーを見て、カリファはふっと笑みを浮かべた。

 年上のはずなのだが、見た目が幼げなこともあって妙に年下っぽく見えてしまうなぁとそんな風に考えながら……。

 

 

****

 

 

 準備が完了し、スパンダムとルッチが釣ってきた魚をチェルシーが手早く下処理したあとで、予定通りバーベキューは開始され、皆思い思いに楽しむ。

 美味しい肉を食べ美味い酒を飲むというシンプルながら素晴らしい娯楽により、テンションの上がったメンバーたちはワイワイと楽しげに騒いでいる。

 

「……よっしゃっ! 参ったか、ブルーノ!」

「ぐっ……」

 

 切っ掛けが何だったかは分からないが、いつの間にか腕相撲勝負のようなことが始まり、激戦の末にブルーノを下したジャブラがガッツポーズを取る。

 現在ジャブラは、フクロウ、クマドリ、ブルーノ、と三連勝中でありどこか余裕ある表情で笑う。

 

「さぁ、次はどいつだ? 誰でもかかってこい!」

「じゃあ、次は私が……」

「おいおい、カリファかよ。お前が、腕相撲で俺に勝てると思ってんのか?」

「難しいでしょうね。だから、代理を立てるわ」

「……代理?」

 

 不敵な笑みを浮かべながら現れたカリファに、ジャブラが挑発的な発言をするが……その直後にジャブラの表情から笑みは消え、顔は青ざめることになる。

 

「じゃ、よろしく、チェルシー」

「はい! というわけで、次の相手は私ですよ、ジャブラさん!」

「おいおいおい! やめろ馬鹿、ふざけんな!? カリファ、お前、それはやっちゃ駄目なやつだろうが!! 俺の腕をへし折る気か!」

 

 ニコニコと笑顔を浮かべで腕まくりをするチェルシーを見て、ジャブラは明らかに動揺している。それもそのはずだろう、チェルシーはスパンダムに教わった肉体改造により常人を遥かに上回る力を持っており、その中でも筋力に関しては桁違いである。

 その小柄な体からは想像もできないほどの怪力の持ち主であるということは、CP9メンバー全員が知っている。

 

「よかったな、ジャブラ。歯ごたえのある相手だぞ」

「おいこら、フィズ、テメェ馬鹿か! 岩山を片手で持ち上げるような怪力女と腕相撲なんてできるか! 俺はおり――なっ!?」

 

 負けが濃厚というか、下手すれば腕が折れかねないチェルシーとはとても勝負できないと、ジャブラが逃げるために座っていた椅子から立ち上がろうとするが、それより早くその肩に手が置かれ、ジャブラを囲むようにブルーノ、フクロウ、クマドリの三人が立つ。

 

「ジャブラ、ここで逃げては男が廃る。当然受けるのだろう?」

「チャパパパ、連勝中だもんな~」

「あぁ~男なぁらぁ~男ならぁ~勝負に、背を向けては~逃げられぬぅ」

「て、テメェら、や、やめろ、お前らだってこの女がどれだけ馬鹿げた腕力してるか知ってるだろ! そしておい! ルッチ! テメェはなに笑ってやがる! って……やめろ! 俺はまだ死にたくない!! 死にたくないぃぃぃぃ!!」

 

 三人によって強制的に勝負の場……死地へと放り込まれたジャブラの悲鳴が無人島へと木霊した。

 

 

****

 

 

 チェルシーによって象に踏みつぶされるアリの如く敗北を叩きつけられ、腕を抑えて蹲っていたジャブラの下に酒瓶をふたつ持ったフィズが近づいてきた。

 

「よう、腕はちゃんとついててよかったな」

「……くそっ、あの怪力女……マジで千切れたかと思ったぜ。なんかそういう悪魔の実の能力者じゃねぇのか、アイツ……」

 

 ジャブラはフィズが差し出してきた酒瓶を受け取り、蓋を開けて一口飲みながら告げる。それを見て苦笑しつつ隣に座り、フィズは指でとある方向を指し示す。

 

「だが、ほら、そんな怪力女が、両手で全力で力を込めてもピクリとも動かず、余裕過ぎて空いた手で本を読み始めているのが我らが長官だ」

「あの光景だけ見てると、チェルシーが非力に見えちまうから異常だよな」

 

 ふたりの視線の先には、腕相撲勝負の決勝戦……という名目のじゃれ合いが行われており、顔を赤くして全力で力を籠めるチェルシー……さらに周囲に居る者たちも、どんどん加わってチェルシーと共に力を籠めるが、微動だにせず、暇なのか空いた手で本を読んでいるスパンダムの姿があった。

 なんとも平和なその光景を見て、ジャブラとフィズが顔を見合わせて笑みを浮かべ、ほぼ同時に持っていた酒を飲み干した。

 

「よしっ、じゃあ俺たちも加わるか!」

「おうっ、せめて長官の手を少しぐらいは動かしてやろうぜ!」

 

 そうしてふたりも加わり、CP9メンバー全員対スパンダムでの腕相撲勝負の形になった。そんな、なんともノリがいい面々を見て、スパンダムは苦笑を浮かべるが……その表情は普段より少し優しく見えた。

 

 ……なお、結局腕は1ミリも動くことは無かった。

 

 

 




スパンダム:今日は穏やか狂パンダ。休暇をのんびり満喫中。全員で協力して腕相撲に挑んでくる姿を見て、コイツら仲良いなぁと苦笑していた。

ポチ:パワー系ワンコ。初見のやつにはリキリキの実の能力者では? と疑われるぐらいには怪力。

ルッチ:基本的に狂パンダを慕っていることもあって「まぁ、アンタほどの実力者が言うなら……」という感じで、アドバイスもよく聞く。
腕相撲にも参加していたりと、なんだかんだで他メンバーとも仲が良い。

ジャブラ:こういった日常回で輝くキャラ。出番も多いしやはりヒロインでは?

CP9メンバーたち:原作より仲が良く、こういった際にワイワイ楽しんだり、自然と協力したりする。狂パンダという全員でかかっても勝てない相手が居るのも、要因の一つかもしれない。
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