闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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潜伏任務の始まりと新たなる狂人の影

 

 

 ウォーターセブンでの1件から3年ほどが経過したある日の午後。エニエスロビーの司法の塔にある長官室、座り慣れた椅子で俺は一枚の指令書を眺めていた。そして俺の前にはCP9のメンバーが綺麗に整列している。

 届いてから何度も見た指令書の内容に軽くため息を吐きつつ、俺は集まったメンバーに告げる。

 

「3年前にあった古代兵器プルトンの設計図の捜索を覚えているか? 一時保留とはなっていたが、その後の調査でやはりウォーターセブンの職人に代々引き継がれている可能性が高いと判明したことで、正式にウチが引き継いで調査することになった。そして今回の任務は長期潜伏調査任務となる」

「長期潜伏……どこかに潜入する形か?」

「ああ、トムの弟子であり、プルトンの設計図を所持している可能性が最も高いアイスバーグが、ウォーターセブンの7大造船会社を統合し、ガレーラカンパニーという会社にした。今後の仕事規模の拡大を考えているようで、発足と同時に大々的に人を雇おうという動きがあり、そこに潜入してもらうことになる」

 

 まぁ、予想していたことではあるがやはり古代兵器の設計図という要素を放置することはできないみたいで、原作とほぼ同じと言っていいタイミングで指令が回ってきた。

 そして潜伏するメンバーに関しては、ある程度上の希望もあるが選定は俺に一任されている。ただ、いろいろ考えてみてもやはり、原作のメンバーが適切といえた。

 

「先にメンバーを伝えておく。潜入任務のリーダーとしてルッチ。指揮下で動く者としてカク、カリファ、ブルーノの三人だ。ルッチ、カク、カリファにはガレーラカンパニーの募集に応募する形で潜入してもらう。ブルーノはウォーターセブンの街……現在は酒場を考えているが、概ねガレーラカンパニーの外の情報収集がメインになるだろう」

 

 そう告げながらメンバーを見るが、特に異論があるような雰囲気ではなかった。まぁ、上からの正式な指令なわけだし、異論を言うやつも居ないだろうが……ただまぁ、潜伏期間に関してルッチたちは長くても1年ぐらいだろうと予想しているのではないかと思うが、原作通りなら5年かかる。

 

「ちなみにメンバー選定の理由だが、ルッチ、カク、カリファに関しては上の意向が大きい。現在は世界的な規模でいえば情勢がある程度安定していて平和といえる。まぁ、細かい事件は起きてるが……上としては、いまのうちに若いメンバーに長期潜伏を経験してもらいたいとのことだ。CP0などになれば諜報員としての顔以外に表の顔を持つ場合もあるからな」

「……俺は?」

「ブルーノに関しては、伝達要員としての意味合いが大きい。こちらからの指示を潜伏メンバーに、潜伏メンバーの報告をこちらにといった中継の役割をこなす上で、お前の能力は有用だからな」

 

 まぁ、ブルーノは年齢という意味でもフクロウを除外すれば、下から4番目なので若い中でも候補に入るのだが……ドアドアの実での中継及びサポートとしての役割を期待しての選定だ。

 

「この役割はフィズでもいいんだが、フィズには別の任務を任せたい。なにせ一時的とはいえメンバーが4人減るわけだしな。少々忙しくなるが、指揮能力の高いお前には下級役人などを連れての規模の大きい任務を中心に任せたい」

「ああ、任せてくれ。アンタの期待を裏切らない働きを約束するぜ」

「頼む。そして、フクロウ、クマドリ、ジャブラ……お前たちは致命的に潜伏任務には向かない。だから外した……以上だ」

「おぉぉい!? ちょっと待て、長官!!」

 

 丁寧にメンバー選定の理由を説明すると、ジャブラが猛然と食って掛かってきた。

 

「メンバーの選定はいい。そこは長官の意向に従う……だけど、俺がこのふたりと同じ枠ってのは、納得いかねぇ!!」

「ふっ、どうみても同じ枠だろうが」

「あぁ、こら、ルッチてめぇ……」

 

 嘲笑うルッチに例によって噛み付くジャブラだが、その両肩にフクロウとクマドリの手が置かれる。

 

「チャパ、仕方ないぞ、ジャブラ……」

「よよいっ! 日頃の~行いぃ~」

「おいこら、なに『俺たちは仲間だよ』みたいな顔してやがる。俺は認めねぇからな!!」

 

 そのまましばらくワイワイと言い争いをしていたが、俺が軽く咳ばらいをすると全員喋るのを止めて再び綺麗な姿勢で立つ。

 

「それぞれの生い立ちなどを含めた設定を渡しておくから、任務開始までに完璧に記憶しておくように……ああ、あと、ルッチ。お前は、別の島に家族がいる設定にしてある。定期的に家族からという体で手紙を送るが、返事の手紙等にはくれぐれも任務に関わることは書かないように」

「なぜ、わざわざそんな設定に?」

「最低でも年に1度程度は里帰りという名目で、外に出させてやるためだ。今回の任務、俺はそれなりの長期になると踏んでいる。その間殺しができないのはストレスだろう? 帰郷という名目でそういった息抜きができる任務を回してやる」

「ふむ、長官は短期では終わらないと見ているのか……」

 

 確かにこの任務はプルトンの設計図を発見できた時点で終了となるため、それこそ1月で発見できたならそこで終了だ。

 だがまぁ、間違いなくそうはならないだろう。

 

「アイスバーグは相当の切れ者だ。そうそう隙は見せない。そして、この短期間で競争していた7つの会社をまとめ上げる手腕も大したものだ。そしておそらく、ここからアイスバーグは政府にとってさらに手を出しにくい相手になるだろう」

 

 元々トムズワーカーズの評判などを考えると、3年でそこまで上り詰めるのは並大抵ではない。知力、交渉力、経営手腕、全てにおいて高い次元であることは疑う余地もない。

 原作知識云々を抜きにしても、簡単に行く相手ではない。

 

「これからガレーラは政府の仕事をさらに増やし、無くなっては困る会社に成長するだろう。元々ウォーターセブンの造船技術は最高峰だし、政府にとって欠かせない存在となるのも時間の問題だ。反発するのではなく懐に潜り込む……この選択肢を選べるだけでもアイスバーグの有能さは伝わってくる」

「アンタがそれほど評価する相手というわけか……なるほど、厄介そうだ」

「しかも、今回の大規模な募集……アイスバーグとしても、当然政府の諜報員の存在は警戒するだろう。信用を得るにはそれなりに長い期間が必要だ」

 

 トムの一件があるからこそともいえるが、政府に対する強い警戒と、様々な手段を考えられるだけの頭脳。原作でルッチたちが高く評価していたように、探る側になると厄介さがよく分かる。

 

「まぁ、もちろんこちらもいくつか手は講じる。お前たち以外に他のCPから数名諜報員を派遣するが、こちらの諜報員はお前たちが潜入していることを知らないし、お前たちにも諜報員については教えない。理由は単純、囮だからだ」

「つまり、アイスバーグにワザと気付かせると?」

「わざとしなくても気付くさ……そして、頭の切れる奴ほど相手のハンド……手の内を見てコントロールしたいと考える。まず間違いなく気付いたうえで泳がせてくるだろう。他にもいくつか策は用意しているが、ある程度の目は逸らせるだろう」

 

 そこで説明を打ち切り、俺はルッチ、カク、カリファ、ブルーノにそれぞれ設定となる資料を渡す。名前は偽名を名乗らせようかとも思ったが……まぁ、原作通り進むことを願って同じにすることにした。

 

「任務開始は20日後、それまでに必要な準備は終わらせておけ……先に言った通り、プルトンの設計図が発見できればその時点で終了。そうでない場合は、5年後を目安に打ち切りを検討する」

『了解』

 

 ガレーラカンパニーへの潜伏任務……事態が動くのは5年後、麦わらの一味が訪れてからか……。

 幸いなのは、ソレが発生する時期は比較的読みやすいという点だ。特にアラバスタの一件があったあとは時期が近いと思って備えておけばいい。

 

 他のメンバーたちにも割り振った任務を渡し、CP9メンバーが退出した。さて書類仕事は終わっているし、少しコーヒーでも飲んで休憩を……と、そう思ったタイミングで、狙いすましたかのように電伝虫が着信を知らせた。

 

「……スパンダムだ」

『俺だ』

「死ね。切るぞ……」

『待て待て! なんで、連絡する度に辛辣になっているんだお前は!!』

 

 出ると親父だった。なんでこいつはいつも間が悪いんだ? 即切ろうかと思ったが……まぁ、最低限用件ぐらいは聞いてもいいだろう。

 

「それで、用件はなんだ?」

『あ、ああ……実は、お前が新しいスーツを発注しただろ? 古いものが破れたからと……』

「それがどうした?」

『ベガパンクが、そんな簡単に破れる服ではない。どんな使い方をしているか問い質したいと……というわけで、少し時間を作って会ってやってくれないか?』

 

 ベガパンクに服の作成を依頼して数年。たしかに見事な耐久力の服だが、それでもいまも年々俺の力は上昇していることもあって、たびたび破損するようになった。

 特に腕周りが全力で覇気を纏うと耐えられないことが多い。幸い金は余り過ぎるほどあるので、破れるたびに製作を依頼していたのだが……最近は頻度が高すぎて、ついに生産者の方から使い方に関するクレームが入ったわけだ。

 

「……パンクハザードまで出向けと?」

 

 海軍の特殊科学班、ベガパンクが率いるSSGの拠点はパンクハザードだ。緑豊かで資源豊富な島……まぁ、あと数年でシーザー・クラウンの毒ガス兵器爆発事故が起こって人の住めない島となり、エッグヘッドに拠点を移すのだが……現時点ではパンクハザードが拠点だ。

 どちらにせよ新世界の島なので少々面倒だ。いや、大して時間がかかるわけでもないが、面倒そうな相手に会うために出向くのは気が乗らない。

 

『いや、お前はベガパンクの(サテライト)について知っているか?』

「ああ、知っている」

『そのうちの一体が現在グランドライン前半の海で収集作業をしているらしく、そいつに会えばいいらしい。ソイツもベガパンクには違いないからな』

「……はぁ、仕方ない。場所と日程を連絡しろ……」

 

 まぁ、いいか直接会って交渉ができるなら、もうさらに丈夫な服を作るよう交渉してみるか……しかし(サテライト)ねぇ、6体いるはずだが……どいつなんだか。

 

 

 




スパンダム:狂パンダ。アイスバーグのことは非常に高く評価しており、その手腕も認めている。いまも肉体改造に鍛錬を続けているので、服に関しては割と悩みの種だったりする。

CP9メンバー:狂パンダが警戒しているとあって、アイスバーグのことは潜入前から高めの評価。

スパンダイン:この小説においては、なぜか扱いが雑な苦労人ポジにいるパパン。

ベガパンク:はぁぁ!? 破れたからまた新しい服? いい加減にしろよコイツ、普通の使い方して破れるわけないじゃろ! 槍で突かれても破れんぞ! 金払いはいいとはいえ、人の作品を雑に扱いやがって……一度あって文句言ってやる(来るのはバケモノ)。
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