大海を進む船の上……普段は剃刀での移動が多いので、何気にこうして船に乗って移動するのは新鮮な気分である。
それにしても、メンバーが長期潜伏で減っているせいか、現場に出ることが増えてきた気がするな。まぁ、今回の件に関しては、ルッチたちが居たとしても俺が出向くことになっただろうが……。
「……そもそも、新世界は俺の管轄じゃなくて、お前たちの管轄のはずなんだが……」
「ははは、五老星から直々の指名ですし仕方がないですよ」
「それにスパンダム殿は、実質的にCPの長みたいな感じだと、うちの総監も言ってましたしね」
俺の呟きにCP0のマハとゲルニカが答える。そう、俺は現在ポチを連れて新世界のとある島に向かっていた。理由はマハが語った通り、五老星からの直々の指名任務だ。
どうも場合によっては広範囲での破壊活動が必要になるため、俺が呼ばれたらしい……俺は司令官であって、解体業者ではないんだが……。
「それにしても、わざわざパドルシップで行くということは、特殊な場所なのか?」
「ええ、複数の強い海流に囲まれている関係で普通の帆船ではたどり着けない島です。元々は小さな国のある普通の島だったみたいですが、地殻変動の影響で一種の結界状態となり、そのまま衰退して無人島になったとのことです」
「なるほどな……こうしてCP0と俺が駆り出される辺り、空白の100年に関わる島ということか」
いま乗っているパドルシップもそうだが、様々な技術の発展でいままで見つからなかった島が見つかることにもなり、政府が毛嫌いする空白の100年に関わる島もたまに発見される。
それを調査して、報告……五老星の判断如何によっては、情報になりえるものを処分……つまるところ徹底的に破壊というわけだ。
「まぁ、判断は五老星が行うんだろ? 破壊が決定するまで、俺にはさほど出番はなさそうだな」
「スパンダム殿なら、その辺の決定権持っててもおかしくない気がしますがね」
「空白の100年に関しては、資料なんかもないから判断のしようがない。資料室にある資料はすべて記憶しているが、その辺は意図的に綺麗に消されているからな。無いものは知りようがないし、興味もない」
冗談っぽく告げるゲルニカに淡々と返答する。俺が空白の100年に関して独自判断出来たら、それはそれで問題だと思うが……。
「……スパンダム殿? 聞き間違いだと思いたいんですが、いま、資料室の資料をすべて記憶してるって言いませんでしたか?」
「しているが? わざわざ調べものをしに資料室に行くのも面倒なのでな。エニエスロビーに存在するものは全て記憶しているし、追加する情報に関しても一度すべて目を通して記憶している」
「……だから、毎日あんな山のような書類があるんですね」
「書類が多いのは、お前たちほかのCPがいろいろ回しまくってくるせいでもあるんだがな……」
「ちなみに今日の書類仕事は?」
「終わらせてから来たが?」
「……やっぱりなぁ、この人に新しい役職作ってCPのトップに据えるべきだと思うんだよなぁ……」
そう呟き遠い目をするマハを横目に見つつ、海風が心地いいのか尻尾もとい髪を揺らしているポチに声をかける。
「ポチ、コーヒーを頼む」
「はい!」
まぁ、島に到着するまでしばらく時間はあるし、のんびりするとしよう。
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たどり着いた島は、なるほどかつては小国があったという通り、それなりの規模の廃墟があった。それに戦争にでも使われたのか、大き目の砦もあり、コレを全て調査というのは中々骨が折れそうだ。
「スパンダム殿、どうしますか?」
「……なぜ俺に振る?」
「スパンダム殿は司令官ですからね」
「CP9のな……とりあえず、廃墟を全て見る必要はない。重要なものがありそうなのは古城と砦……人員を分けて調査だな。文献なども含め古代文字が書かれているものを発見したら連絡。ある程度の情報が集まったら五老星に映像電伝虫で報告して判断を仰ぐ」
「了解!」
どちらかと言えば、協力者として来ているはずの俺がなぜ指揮を執っているのかという疑問はあるが、CP0に不満は無いようで指示通りに素早く動き始めた。
今回は空白の100年に関わる調査かつ、場合によっては処分が必要ということもあり下級役人を大量に導入して調査は難しい。
情報を得る人員も絞らなければならないので、船員も最低限で、殆どの船員は船の中で待機である。
なのでマハとゲルニカが古城を、俺とポチが砦を調べることにして調査を開始した。
「……砦の位置を考えるに、島内での戦争を想定というよりは、外部から来る敵を迎え撃つためと思えるな」
「他の島と戦争していたのかもしれませんね。ただ、砦自体に戦いによるものと思えるような傷はほぼ見当たりませんね」
「造りはしたが、使う機会は無かったのかもしれないな……紙などは流石に残ってはいないだろうし、石碑あるいは壁画のようなものがあるかどうかだな」
ポチと軽く言葉を交わしつつ、草木に覆われた砦に向かって歩き出した。
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2時間ほど調査をして、いくつかの古代文字が書かれた品を発見し持ち帰り、CP0のふたりと合流地点で落ち合う。
古城は砦に比べて怪しげなものが複数あったみたいで、俺たちよりもマハたちの集めた品の方が明らかに多い。さらに運び出すのが困難な石碑や壁画も城にはあったみたいだ。
『……ご苦労だった』
映像電伝虫により確認をした五老星の声が聞こえる。五老星が古代文字を読むことができるかどうかはわからないが、文字が読めなくとも壁画などでも判断できる。
そして、やや重々しい声色……これは処分だな。
『どうやらその島の文明は、存在すべきではないもの……我々はそう判断した。よって可能な限り古城や砦を含め抹消しろ』
やはり処分に決めたらしい言葉を聞きつつ、俺は近くに居たゲルニカに声をかける。
「ゲルニカ、処分の方法は決まっているのか?」
「はい。あの船には爆薬や弾薬を大量に積んでいますので、それを用いて……さすがにすべては無理でしょうし、古城と砦を破壊する形ですね」
「……なるほどな」
ゲルニカの返答を聞いて、俺はチラリとポチに視線を向ける。理由は単純だ。数年前にポチと交わした会話を思い出したから……。
まぁ、ポチは日頃からよく俺に仕えてくれているし、機会が巡ってきたなら要望に応えてやるのもいいか……。
「マハ、少し通信を代わってくれ」
「え? あ、はい。どうぞ」
マハに一声かけて電伝虫の受話器を受け取る。
「スパンダムです」
『どうした?』
「城や砦以外も可能な限りすべて処分、という認識で構わないのでしょうか?」
『構わんが?』
「では……島ごと消してもかまいませんか?」
『…………は?』
元々海流の関係でパドルシップなどでなければたどり着けない島。見聞色で探ってみても人間が住んでいる気配はない。
大量に用意しているとはいえ、所詮船に積める程度の爆薬などでは、破壊できる範囲にも限界がある。そしてなにより、時間もかかる……なら、島ごと消してしまったほうが手っ取り早いだろう。
「爆薬などでは破壊できる範囲にも限界がある。この島が政府にとって重要な島ならともかく、そうでないなら島ごと消してしまったほうが、予想外の場所になにかが残っていたなどという事態も防げていいでしょう」
『それは、その通りだが……か、可能なのか?』
「ええ、このぐらいの大きさの島であれば問題なく」
『そ、そそ、そうか……では、お前に一任する』
「了解」
五老星の許可も得たので、俺は受話器をマハに返したあとでポチの方を向いて指示を出す。
「ポチ……アレをやる。だが、お前も知っている通りアレは細かな調整がし辛い。船を出航させ、お前の判断で問題ないと思える位置まで離れたら通信を入れろ」
「はい! 了解です!」
ポチは俺がなにをしようとしているのか理解しており、ひどく嬉しそうに尻尾……髪の毛を振りながら、戸惑っているマハとゲルニカを連れて船の方に移動していった。
さて……しかし、本当に久しぶりに使うな。くれぐれも力加減を間違えないように気を付けなければ……。
スパンダム:古代兵器パンダstandby。ウォーターセブンに行った時のポチとの会話を覚えていた。まぁ、愛犬のおねだりなのでたまには聞いてやるかと、そんな心境。あと、全部消し飛ばしたほうが早く帰れそうだから……。
ポチ:狂パンダが十二真衝を使おうとしているのを察してとても嬉しそう。偉大なるパンダの力を目を焼きつけようと、一番よく見える場所を確保する気でいる。
CP0&五老星:スーパー宇宙猫タイム。……なんか、島消すとか言い始めたんだけどこのパンダ……え? 消せるの?
砦ちゃん:おいやめろ馬鹿、その砦絶対消し飛ばすマンをこっちに近付けるな。というか、古城だけでよかったじゃん! 砦必要? 要らないよね!!