家の地下にリリスが研究所を作る際に、ついでに一緒に作らせた部屋……軽い訓練と肉体改造を行う際に使うための部屋で、現在俺はポチの肉体改造を見ていた。
普通の物であれば、注視する必要はないのだが……今回は少し勝手が違った。というのも、今回ポチには筋肉の圧縮による肉体改造ではなく、俺が行っているものに近い細胞単位での改造を行わせている。
いままでであれば、いかにポチであってもこちらの改造には耐えられない。あるいは魂に影響があるのではと行わせてなかったものだ。
俺がトットムジカの力を手に入れたことと、魂の輪郭とでもいうべきものを認識できるようになったことで、魔力を用いた魂の保護が可能になり、細胞単位の肉体改造の負荷をある程度軽減できるようになった。
そのため必要な材料を集めて秘薬を作り、いままで教えていなかった気功等も習得させて、ポチに俺と同じ肉体改造を行わせていた。
材料に関しては、すでに俺のコネは親父を上回るレベルまで広がっているので問題は無く、改造の負荷もポチならば耐えられるだろう。
だが、魔力での保護を行うのはまだ慣れていないので、ある程度集中して行っている。くだらない油断で失うには、ポチはあまりにも惜しすぎるので、その辺りは細心の注意を払っている。
しばらくして、無事に肉体改造を終えたポチに問いかける。
「……気分はどうだ?」
「凄いです! なんというか、ほんの少しだけですが隊長に近付けた気がするというか……いままでよりももっとずっと強くなれた気がします!!」
「そうか……問題はなさそうだな。この改造は特殊だから、必ず俺がいる時にだけ行う」
「はい!」
まぁ、秘薬の材料が希少過ぎるので、自力で行うのは難しいだろうが……。
しかし、さすが細胞単位の肉体改造の効果はすさまじく、ポチは明らかに改造前より一つ上の次元に上がったと言っていい。
ポチの能力が上がることはそのまま俺の利益に繋がるし、希少な秘薬を使うのも惜しくはない。
それになにより、この細胞単位の肉体改造には極めて大きなメリットがある。それは細胞単位で一新することによる疑似的な若返りとでもいうべきものだ。
老化は生物に等しく仕掛けられた時限爆弾のようなもので、白ひげを始めとした強者も老いには抗えず弱体化した。だが、細胞を新しく作り変えることで、常に全盛期と言えるような肉体を維持できる。
ポチにはこれから先も役に立ってもらうつもりなので、事実上の不老となることは極めて大きいメリットだ。
実際こうして見てみると分かりやすいが、ポチも若返……。
「どうしました? 隊長?」
そういえば、コイツ……最初に会った時から一切見た目が変わってない気がする。元々童顔で幼く見えるとはいえ、コイツは俺の1歳下だぞ? 既に30代も折り返している。
だが、細胞単位の改造前から10代と言われても納得するような見た目だったし、なんならカリファの方が年上に見えるレベルだ。
改造前の段階から、小皺すら見た覚えもなく肌も瑞々しかった……コイツ、なんか不老系の悪魔の実の能力者じゃないのか?
「??」
顔を覗き込んだまま沈黙する俺に対し、ポチは首を傾げつつも尻尾……もとい髪を振る。まぁ、いいか、ポチはポチだし……。
そう思った俺は苦笑しつつ、ポチの頭をポンポンと軽く撫でる。
「いや、なんでもない。食事にするか」
「はい!!」
嬉しかったのか、後ろ髪をぶんぶんと振りながら俺に続くポチを見て、再び苦笑を浮かべた。
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ウォーターセブンの一角にある酒場では、荒くれ者たちをまとめるフランキー一家の棟梁であるフランキーが、モズとキウイを連れてカウンターに座り、店主であるブルーノと話していた。
「……そうか、辞めちまうのか」
「へへへ……両親がもう年だからね。故郷に帰って店をやるつもりだ。この店自体は引き継ぐ相手が見つかったから、そっちに任せることに決まったよ」
「残念だわいな」
「寂しくなるわいな」
フランキーたちはこの酒場の常連と言っていい存在であり、ブルーノとの関わりも多かった。グラスを拭きながら告げるブルーノの言葉に、モズとキウイも残念そうに呟く。
そんな三人に向けて、穏やかに笑みを浮かべたあとでブルーノはフランキーの好物であるコーラと、モズとキウイの好むドリンクを持ってくる。
「そんなわけだから、常連だったアンタらには一杯ずつサービスだ」
「おぅ、気が利くじゃねぇか……テメェも、なかなかにスーパーなマスターだったぜ。おい、ほかに客は居ねぇんだから、一杯付き合え。世話になったからな、俺の奢りだ」
「へへへ、そいつはどうも……それじゃ、お言葉に甘えて」
グッとサムズアップしながら告げるフランキーを見て笑いつつ、ブルーノは小さめのグラスに酒を注ぎ、カウンター越しに三人と乾杯した。
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ガレーラカンパニーの社長室から出て、ポケットに手を入れて廊下を歩いていたルッチだったが、途中で見知った顔を見かけて足を止めた。
『ポッポー……パウリーか?』
「おう……辞めて故郷に帰るらしいな」
『ああ、丁度いまアイスバーグさんにも挨拶をしてきたところだ』
腹話術で話すルッチに対し、どこか神妙そうな表情を浮かべるパウリー。その表情にはいろいろな感情が見え隠れしており、軽く頭をかきながら告げる。
「そういや、元々出稼ぎとか言ってたな。やっぱりその関係か?」
『そうだ。実際もっと短期間の予定だったが、予想していた以上に長く勤めることになった。クルッポー』
「そうか、定期的に手紙送ったりしてたもんな……」
短いやり取りのあとで、沈黙が流れ……パウリーはゆっくりと、思い返すように喋りだした。
「……お前は腹話術で話す変な奴だし、なに考えてるか分かんねぇことも多くて、意見がぶつかったりで喧嘩になることも多かったな」
『……そうだな』
「だが、職人としての腕は確かで、プライベートでも誘えば飲みにも付き合ってくれたし、俺のくだらねぇ話もなんだかんだ文句言いつつも最後まで聞いてくれた」
そこまで話したところでパウリーは真剣な表情を浮かべ、握手を求めるようにルッチに手を出しながら告げる。
「……お前は、間違いなく頼れる仲間だったし、俺にとって最高のダチだ……達者でやれよ」
様々な思いを込めたパウリーの言葉を聞き、ルッチは小さく笑みを浮かべたあと……握手には応じることなく歩き出した。
そして、すれ違い様にパウリーの肩を軽く叩きながら、腹話術ではなく肉声で告げる。
「……ギャンブルはほどほどにしておけよ、パウリー」
「ッ!?」
ルッチの言葉に驚愕したように目を見開いたあと、パウリーは微かに目を潤ませ、少しうつむき気味になりながら告げる。
「……てめぇ、ちゃんと喋れるじゃねぇかよ……バカにしやがって」
震える声でそう零しながらも、パウリーの口元には小さく笑みが浮かんでおり、少し嬉しそうに見えた。パウリーにとってルッチは、いまいち本心の読めない相手だった。
だが少なくともいまの一言は『友としての自分』に対しての言葉であり、己が感じていた友情が決して一方通行では無かったと確信でき、それが嬉しかった。
パウリーは零れそうになる涙を手で拭きながら振り返り、廊下を歩いていくルッチの背に向けて叫んだ。
「おい、ルッチ! またいつか、ウォーターセブンに来たら声かけろよ! そん時は奢ってやるから、また一緒に飲みに行こうぜ!!」
叫ぶパウリーの言葉に、ルッチは振り返ることは無く……軽く手を振って去っていった。
スパンダム:狂パンダ。ポチの魔改造に着手したが……珍しくポチのあまりにも老けない見た目に若干動揺というか、混乱していた。
ポチ:忠犬にして永遠のワンコ。10代の頃からまったく見た目が変わっておらず、低身長、童顔、なだらかな胸と幼く見えるが、実際の年齢はパンダの1歳年下なのでCP9内でもパンダの次に年長である。しかし、狂パンダが若干戸惑うぐらいにまったく見た目が変わっていない……若さの秘訣? 信仰心、ですかね!
ブルーノ:酒場自体は今後の情報収集にも使えるということで、他のCP役人に引き継ぐ形で辞めることになった。順番的には一番最初にエニエスロビーに帰還。
ルッチ:ブルーノの少し後にガレーラを退社。原作よりある程度丸くなっている影響か、事前の狂パンダのアドバイスで自分なりに潜入の日々と向かい合っていたこともあって、なんだかんだでパウリーにも感じるものがあった様子。もしかしたら何年か先に、ウォーターセブンを訪れてパウリーと飲んでいる姿があるかも?
パウリー:金とギャンブルが関わると屑だが、それ以外は仲間想いで人情派……両さんみたいなタイプ。なんだかんだで、狂パンダによる原作改変の影響を大きく受けており、悲痛な顔で「仲間だと思っていた」などと叫ぶこともなかった。