闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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最強との出会い

 

 

 小舟の上で深くフードを被って顔を隠しながら、遠方で行われている海賊同士の戦いを眺める。

 当たり前のことではあるが、バイオフィードバックにより目に関しても改造してあるので、十数キロ先の戦闘であっても鮮明に見える。

 というよりほかに比べて目はかなり力を入れて改造した。どれだけ超速戦闘が出来る肉体を得たとしても、目がついていかなければ意味がないからだ。

 原作のクロの杓死などは、俺に言わせれば欠陥品もいいところだ。自分にも見えず狙いも絞れない攻撃なんて危なっかしくて使えたものではない。

 

 少し逸れていた思考を視線の先の海戦に戻す。見つけたのは偶然だったが、それなりの規模の海戦の中でも一際強烈な存在感を放つ大男が見える。

 金色のウェーブがかった髪に、三日月のような白い髭……そう、かの『白ひげ』エドワード・ニューゲートである。なんで髪が金髪なのに、髭は白いんだ?

 まぁともかく、現在俺の視線の先では白ひげ海賊団が別の海賊と戦闘を行っていた。白ひげは部下たちに経験を積ませるためか、あまり手を出していないようだが、それでもただ立っているだけで戦場を支配しているかのような風格がある。

 確か、白ひげは原作では七十歳前後だった覚えがあるので、いまは四十代後半、ロジャーと渡り合った経験もあり……肉体も精神も全盛期と言っていい時期だ。

 

 ロジャー亡きいま、間違いなく世界最強と言っていい白ひげをこの目で見れたのは得難い経験だ。戦闘に参加していないのは残念ではあるが……。

 そんなことを考えていると、視線の先の白ひげが『こちらを見た』。おいおい、冗談だろ? 何キロ離れてると思ってやがる。俺のように肉体改造をしているわけでもないのに、この距離でこちらに気付いたのか?

 驚く俺の視線の先で、白ひげが大きく右手を振りかぶるのが見えた。

 

 空間にヒビが入るような光景が見え、白ひげの右手からグラグラの実の衝撃波が放たれる。ホントにふざけるなよ、グラグラの実。この距離まで攻撃可能とか、射程が長すぎる。

 しかも、地震人間とか言いながら、実質振動を自在に操ってるし、それどころか空気を掴むような真似までしやがるし、他と比べて応用幅が広すぎるぞ。

 心の中で悪態をつきながら、俺は迫りくる衝撃波にタイミングを合わせて右腕を振るう。

 

「六王銃」

 

 グラグラの実の衝撃波と六王銃の衝撃波がぶつかり合い、まるで海面が爆発したかのように巨大な水飛沫があがる。こちらの衝撃波の射程はそれほどでもないので、少々水を被ることになるが、それで済むなら安いものだ。フードが脱げないようにだけ注意する。

 そしてそのまま臨戦態勢に移行しつつ水飛沫の先……白ひげを見る。追撃を仕掛けてくる気配はない。だが、覇王色の覇気を放っており、それがこちらに伝わってくる。

 ……挑発してやがるな。かかってこいと、原作より二十歳以上若いせいか、ずいぶんと血の気が多いじゃないか。

 

 俺も覇王色の覇気を放ち、ふたつの覇王色がぶつかり合い海面に波が立つ。互いに牽制をしている状態といったところか……さて、どうする? 明らかに白ひげの方は、こちらとやり合う気でいるが、応じるか、逃げるか……。

 離脱は可能だ。白ひげが気付いたとは言え、十数キロ離れているし、こちらには月歩がある。

 圧倒的強者で、なおかつ覇気使い……鍛錬として考えてもこれ以上ない極上の相手ではあるが、それ相応のリスクがある。

 

「……まだ、勝てないか」

 

 少し迷ったが、放っていた覇王色の覇気を引っ込めながら呟く。残念ながら、やり合うにはリスクが大きすぎる。

 覇気をぶつけ合った感じ、いまの俺より白ひげの方が強い。それでもそこまで圧倒的な差ではない。

 やり合えば腕の一本ぐらいは取れる可能性が高いし、運がよければ相打ちに持っていける可能性もある……そう、『最高の結果で相打ち』だ。

 さらにそれはあくまで白ひげと一対一で戦う場合の話だ。他の白ひげ海賊団の横槍も考えれば、待つ結果はほぼ確実に俺の敗北だろう。

 

 ある程度戦って、痛み分けの形で撤退するという手段もあるにはあるが、顔を隠したまま戦い抜くのは不可能な上、今後を考えれば白ひげに顔が割れてマークされるのは悪手以外のなにものでもない。

 俺はプライドよりも我が身が大事だ。勝ち目の薄い戦いなんてする理由がない。

 

 そう結論付けた俺は荷物を手に持ち、少し強めに小舟を踏みつける。その衝撃によって小舟が粉々に砕け、同時に大きな水飛沫が上がる。

 その水飛沫に身を隠すようにして、月歩と剃の合わせ技……剃刀により高速でその場を離脱した。

 気づかれたのは誤算だったが、白ひげの覇気とグラグラの一撃を体験できたのは大きな収穫だ。現時点では勝てないが、思ったほど世界最強という頂は遠くないことを確認できた。

 

 ……まぁ、最終的には四皇全員が同時に襲い掛かってきても跳ね除けられる強さを身に着けるつもりなので、アレ四人分と戦える力が必要だが……さすがにそれは、かなり遠いな。

 

 

****

 

 

「グラララ、引きやがったか……」

「オヤジ? いったいなにがあったんだよい」

 

 遠方を見て笑う白ひげに、彼をオヤジと慕うマルコが声をかける。周囲の部下……白ひげの息子たちも、怪訝そうな表情を浮かべている。

 それもそのはずだろう、彼らから見れば突如白ひげが海に向かってグラグラの衝撃波を放ち、それだけではなく覇気までも放って臨戦態勢に移行した……と思えば、突如覇気を収めて笑い出したのだ。

 

「なに、ちょっとばかし覗き見てるアホンダラにちょっかい出しただけだ。ネズミというには、ちとデカすぎたが……」

「……追うかよい?」

 

 白ひげの発言、そして先ほどの『引きやがった』という台詞から察し、悪魔の実により飛行能力を持つマルコが尋ねる。

 

「放っておけ。それより、さっさとこの海戦を終わらせるぞ」

「わかったよい。さっきのオヤジの覇気で相手はかなりの数が気を失ったから、すぐ終わるよい」

 

 白ひげの追う必要ないという言葉を受けて頷き、海戦を終わらせるために不死鳥となって敵船に向かっていくマルコを横目に見たあと、白ひげは先ほどと同じ方向を見つめる。

 

(何者だ? あのレベルの奴なんざ、世界に数えるほどしかいねえ筈だが、思い当たる相手がいねぇな)

 

 先ほどぶつけ合った覇気から、相手が凄まじい強者であることを察してはいたが……思い当たる相手がいない。少なくとも過去に戦ったことがあれば、あのレベルの覇気を忘れる筈がない。

 となると導き出されるのは、白ひげが知らない未知の強者であり、その存在は白ひげに警戒を抱かせるには十分だった。

 

(挑発に乗ってこなかった上に、引く判断も早い。引くときには、躊躇なく船を捨てて沈めやがった。僅かでもこっちには情報を与えないってことか? だいぶ慎重な相手だな……やり合って負ける気はしねぇが、それでもこっちも無事じゃすまなかった可能性が高い。本当に何者だ?)

 

 なんとも言えない不気味さを感じつつ、世界最強の男はしばらくの間静かに海を見つめ続けていた。

 

 

 

 

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