ウォーターセブンに潜伏させていた四人に関しては、先にルッチとブルーノを帰還させた。カクとカリファに関しても、もう少し時期を空けてから帰還してもらう予定だ。
そしてCPメンバーが全員揃ったら、覇気に関しての指導を始めようと思い、いろいろと下準備は始めている。覇気は個人差が大きいので確実とは言えないが、今の時点から行えば原作開始までには全員覇気を習得できているだろう。
鍛錬に力を入れる関係上、ある程度任務は絞る必要があるが……まぁ、その辺は最近時間に余裕がある俺が多めに受け持ってもいいわけだし、いくらでも方法はある。
そんなことを考えながら書類仕事をしていると、ふと珍しい任務が目に留まった。海賊の殲滅任務である。通常であれば、海賊への対応は海軍が受け持つことが多くCPに回ってくることは少ない。CPに多いのはやはり革命軍関連だ。
それが回ってくるということは、なにか政府の逆鱗に触れるような……ああ、政府所有の島でいくつかの施設を破壊したのか……なるほど。
海賊団の船長の懸賞金は2億4千万ベリー、ルーキーとしては世代№1であり、天狗になっているのかもしれない。
まぁ、ただ、麦わらの一味のように運命に愛されているわけでもない存在が、世界政府という巨大組織に喧嘩を売るのは、無謀を通り越してただの自殺だ。
「……ポチ、昼までに片付けてこい」
「了解!」
この任務はポチに回すことにした。ポチは基本俺の補佐で任務なども俺に同行していることが多いが、たまにこうして任務を回している。鍛錬は十分に行っているとはいえ、実戦も定期的に経験しておかなければ腕が鈍る。
昼までは3時間ほどあるが……海賊団の現在地を考えるとポチであれば、移動も含めて2時間もかからないだろう。
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グランドラインのとある島で、海賊たちは朝から宴会を行っていた。先日に世界政府所有の島で暴れまわったことで船長の懸賞金が2億を超えたため、その祝いを兼ねてである。
男たちはグランドラインで順調に勝ち続け、成り上がっていた。いまや世代ナンバーワンルーキーとすら呼ばれ、注目を得ている。
船長の男もまた。このまま己が海賊王まで上り詰められると、そう思いながら上機嫌で酒をあおる。
ふとそのタイミングで、パンッと風船の割れるような音が聞こえ、直後に宴会の中心に黒いスーツを身に纏った少女が降り立った。
幼げな顔立ちに小柄な体、首の後ろで細く一本に纏められた茶髪が特徴的な少女……チェルシーは、ぐるりと視線を動かして海賊団の面々を確認したあとで、船長の男を見る。
「……てめぇ、世界政府の犬か?」
「全員揃っているようで安心しました。すぐに戻って隊長のお手伝いが出来そうです」
「おい、嬢ちゃん。俺らが誰か分かってんのか?」
船員たちの言葉など聞いていないとばかりにひとり告げたチェルシーは、ニッコリと穏やかな笑顔を浮かべて言葉を続ける。
「指令は殲滅。では――闇の正義を執行します」
「……殺せ」
あまりにも余裕なその態度に苛立った船長が告げると、複数の船員が剣を抜いて構える。彼らの海賊団もここまでそれなりの場数を踏んできた強者たちだ。
ただ、まぁ、今回に限って言えば……相手が悪すぎた。
「ご存知ですか? 春の風は穏やかなものです。切られたことに気付かないほど――嵐脚・春風」
チェルシーがそう呟いた直後、複数の船員が血を吹き出して倒れ伏した。まるで鋭利な刃物で切り裂かれたような傷……誰がそれを行ったか考えるまでもない。だが、誰の目にもチェルシーはその場から動いていないように見えた。
その得体の知れなさに、何人かの船員が鉄製の盾を持つ、どうやって斬撃を放ったか分からないがこれで防げるはずだと……。
「ご存知ですか? 夏の風は熱いものです。時に身を焼くほど――嵐脚・夏風」
直後チェルシーの片足が黒く染まり、その足で地面を擦るように振るう。凄まじい速度により引き起こされる摩擦によりその足が真紅に染まり、赤く燃える斬撃が放たれ、盾ごと複数の船員を真っ二つに切り裂いた。
そこに来てようやく驕りのあった海賊団たちに焦りの表情が浮かびはじめ、船長の男も慌てて構える。撤退という言葉が頭に浮かぶ中、チェルシーの姿が消え、再び現れたかと思うと膨大な数の船員たちが切り裂かれながら空に舞い上がっていく。
まるで斬撃の竜巻に飲み込まれるかのように……。
「ご存知ですか? 秋の風は荒れやすいものです。時に竜巻が起こるほど――嵐脚・秋風」
それは本当にあっという間の出来事だった。チェルシーがその場に現れてから、まだほんの数分しか経っていない。それで、大勢いたはずの船員は船長を残して、大量の死体へと変わってしまった。
船長である男は青ざめた表情を浮かべながら、愛刀を抜いて構える。
「て、てめぇ……な、なんなんだ……い、いったい……」
「ご存知ですか? 冬の風は美しいものです。日に照らされてキラキラ輝くほど――嵐脚・冬風」
震えながら告げる船長の言葉にもチェルシーはやはり答えず、淡々と告げながら足を振る。直後に船長であった男の目に映ったのは、キラキラと輝く光……ダイヤモンドダストのような美しい光景ではあったが、それは大量に放たれた極小の斬撃。
男は声すら上げる暇は無く、全身を摩り下ろされるように切り刻まれて、その生を終えた。
「ご存知でしたか? 隊長が貴方たちを消すと判断した時点で、貴方達が生存する未来などあり得ないことを……来世では、ちゃんと覚えておいてくださいね」
そう言ってニッコリと笑ったチェルシーは見聞色で島を探り、生存者がいないことを確認してから時計を確認する。
「えっと、いまから戻って隊長のお昼ご飯の支度をして、食後のコーヒーをご用意したあとで……」
もう彼女の頭にいま殺した相手たちのことなど欠片も残っておらず。敬愛するスパンダムのために今日行うことを再確認するので忙しかった。
そのまま跳躍し、海岸にあった海賊団の船に向かって嵐脚を放ち、真っ二つに切り裂いて沈めたあとで、敬愛する主の待つエニエスロビーに向けて帰還した。
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昼食を食べ終えたあと、ポチの淹れてくれたコーヒーを飲みながら一息つく。午前中にポチに回した任務は、既に完了しており報告書も完璧な形で提出されている。
流石というべきか、やっぱり優秀だなコイツは……。
「今日は任務も少ないし、午後からは手持無沙汰だな……エニエスロビーの建て替えの計画書の作成を進めるか……ポチ、お前はなにか要望があるか?」
「要望ですか? う~ん、もう少し店で売っている食材の種類が増えればとは思いますが……」
「なるほどな。居住区にある店舗も簡素なものが多いしな……海列車の本数が増えれば物流もいま以上によくなるし、そういった部分も検討するか……」
後はある程度の娯楽もあった方がいいな。酒場ぐらいはあるが、1万人という町ぐらいの規模があるくせに、それでは少なすぎる。
予算的な面もあるのでいろいろ考える必要はあるが、もう少し広く意見を集めるのもいいだろう。要望書を配って出させるか……。
「ポチ、エニエスロビーの建て替えに関する要望書を配ろうと思う」
「分かりました。今日中には仮のものを用意しておきます」
「ああ、頼む……これを飲み終わったら少し鍛錬でもして体を動かすか」
「はい!」
パタパタと笑顔で後ろ髪を振るポチを見て、その相変わらずな様子に苦笑しつつコーヒーを飲む。こういうのんびりした日もいいものだ。
スパンダム:愛犬家の狂パンダ。ポチのことはなんだかんだでとても可愛がっており、かなり気にかけている様子。
ポチ:忠犬にして狂犬。今回は珍しい戦闘描写……春夏秋冬四種の嵐脚をメインウェポンとして戦う。見えないほどに速い斬撃を放つ春風。悪魔の脚と同じ原理で燃える斬撃を放つ夏風。斬撃の竜巻を放つ秋風。極小の斬撃を大量に放つ冬風。ほかにもパンダがトットムジカに放った天刃も使える。
期待のルーキーだった海賊:狂犬に襲われていなくなった。