闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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新世界のレベルを教える特別教官

 

 

 ウォーターセブンのガレーラカンパニーの社長室では、秘書であるカリファがアイスバーグに深く頭を下げていた。

 

「アイスバーグさん……いままで、大変お世話になりました」

「ンマー。それはこっちの台詞だ。お前は優秀で頼りになる秘書だった。いままでよく仕えてくれた。礼を言う」

「いえ、アイスバーグさんこそ仕えがいのある優秀な社長でした」

 

 アイスバーグの秘書を務めていたカリファだったが、一身上の都合により退職することになり、今日が最後の勤務日となっていた。

 すでに後任の秘書の選定は終わっており、引継ぎもすべて完了している。

 

「まぁ、まだ今日いっぱいは秘書ですので、お飲み物でもいかがですか?」

「そうだな……ではせっかくだし、紅茶でも」

「用意しております」

「ンマー! さすがだな、カリファ」

「恐れ入ります」

 

 テキパキと紅茶を用意してアイスバーグの前に置くカリファを見て、アイスバーグは感心したように頷く。そのあとで、なにかを思いついたような表情を浮かべ、自分の向かいの席を指しながら告げる。

 

「せっかくだ。今日はもう仕事も大してねぇんだろうし、一緒に紅茶でも飲みながら思い出話でもしねぇか?」

「なるほど、アイスバーグさん……セクハラです」

「ンマー!? あれ? そうなっちまうか?」

「ふふ、冗談です。そうですね。せっかくの機会ですし、ご一緒させていただきます」

 

 アイスバーグの反応を見て楽しそうに笑みを浮かべたあとで、カリファは自分用の紅茶を用意して、アイスバーグの向かいの席に座った。

 そのままふたりは、しばしこれまでの思い出話を交えながら雑談に花を咲かせた。

 

 

****

 

 

「うおおお!! カク、寂しくなるぜぇ!!」

「タイルストン、声がデカいぞ……」

 

 大きな声で叫ぶタイルストンに呆れたように告げるカク。彼もまた近々退職することになっており、仲間たちとの別れを惜しんでいた。

 そんなふたりの会話を腕を組みながら見ていたルルも、惜しむように口を開く。

 

「しかし、惜しいな。カクならすぐに職長にも成れただろうに……まぁ、家庭の事情では仕方ないが」

「ああ、わしもまだ勤めていたかったのが本音じゃが、こればかりはどうしようもない。じゃが、故郷に戻ってもガレーラで学んだことは生かしていくつもりじゃ」

 

 人当たりがよく船好きなカクは交友も広く、多くの職人たちから別れを惜しまれていた。カク自身も、ガレーラでの日々は非常に充実していたこともあり、惜しむ気持ちも心の中にあった。

 ワイワイと話す三人の下に、他の職人たちもあつまり、口々にカクに話しかける。

 

「……しかし、ルッチに続いてカクもか、残念だな」

「泣くんじゃないぞ、パウリー」

「誰が泣いてんだよ! 適当なこと言ってんじゃねぇぞ、ルル!!」

 

 からかうようなルルの言葉に食って掛かるパウリーだが、その人情が厚い性格を考えると、ルルの指摘はあながち間違いでもなさそうだった。

 そんな空気を割るように、タイルストンが大声で叫ぶ。

 

「カクっ!! また、遊びに来いよ!!」

「わはは、そうじゃな……パウリーに貸してる金も回収しなければならんし、また遊びに来るとしよう」

「うぐっ、カ、カク……別にそれは忘れてくれても、いいんだぜ……」

「駄目じゃ、1ベリーも忘れんわい。利子を付けんだけ、ありがたく思うんじゃな」

「うぐぐぐ……」

「よかったな、パウリー。また会えるぞ、取り立てで……」

 

 借金の多いパウリーを揶揄う者、カクとの別れを惜しむ者……多くの職人たちが集まり、しばしの間1番ドックの作業が止まっていたが、それはそれだけカクが職人たちに愛されている証明でもあった。

 

 

****

 

 

 エニエスロビーにある司法の塔の長官室には、久々にCP9メンバーが勢ぞろいしていた。先に戻ったルッチとブルーノに続き、カクとカリファも先日帰還して、これで完全にウォーターセブンの潜伏任務は終了したことになる。

 整列するメンバーに姿勢を楽にしていいと指示を出したあとで、俺は椅子に座って口を開く。

 

「ルッチ、ブルーノ、カク、カリファの四名は長期の潜伏任務ご苦労だった。さて、こうして全員が再集結したところで、今後の予定について通達しておく。これからしばらくの間は、任務の割り当てを減らしてそれぞれ研鑽を積んでもらうことになる。具体的に言うと……お前たち全員に覇気を習得してもらうつもりだ。ああ、ポチは既に習得しているのでそれ以外だな」

 

 おそらく、俺がいままでCPメンバーに覇気を教えていなかったのは、エニエスロビー編でルフィたちが勝てる状態になるために、運命によって無意識にそうしていたのだろう。

 だが、もういまとなってはその辺りの影響はないので、コイツ等は徹底的に鍛えるつもりだ。

 

「お前たちも、情報を扱う諜報機関の人間だ。覇気という言葉は多少なりとも聞いたことはあるだろう。これについてはまた、実際に指導する際に詳しく説明を受ける形になる。そして、指導に関してだが……覇気というのは習得に個人差が大きく、確実に正解という教え方もない。ただ、政府には覇気を専門に指導する訓練施設が存在するので、ローテーションを組んでそこに行ってもらうことになる」

 

 CP0のメンバーたちが覇気の習得を行う施設に関しては既に押さえてある。だが、さすがに全員まとめてというほど仕事に余裕はないので、2~3人単位でローテーションする形を想定している。

 

「イメージとしては、1ヶ月訓練施設で学び交代という形だな。覇気を習得した時点でローテーションから外す。また、訓練施設に行ってないメンバーについては任務の合間に俺が指導も行う。それ以外にも体術などを含め、多くの部分を教えるつもりだが……とりあえずその前にやることがある。いまから全員訓練場へ移動しろ」

 

 大まかな予定は伝え終えたので、もうひとつ大事な工程をこなす必要があるので、全員に指示を出して訓練場に移動する。

 不思議そうな表情を浮かべるメンバーたちを連れて訓練場に辿り着くと、そこにはマハとゲルニカの姿があった。

 

「ふたりとも、呼び出して悪かったな」

「いえいえ、スパンダム殿の要請とあればいつでも参りますよ」

 

 今回の件のために出向いてもらったふたりに軽く声をかけたあと、ルッチたちの方を振り返って告げる。

 

「このふたりは、CP0に所属するエージェントで、お前たちの先輩にあたる。今回ある目的のために来てもらった」

「ある目的?」

「ああ、そもそも何故大々的にお前たちを鍛えるのかというと……お前たちが現時点では弱いからだ」

『ッ!?』

 

 ハッキリと告げた俺の言葉を聞き、CP9のメンバーたちの表情に驚きが浮かぶ。唯一フィズだけは納得するような表情を浮かべていた。

 

「お前たちはグランドライン前半の基準で言えばそれなりに上位だが、後半の海……新世界の基準で言えば、中の下にも届かないレベルだ」

 

 覇気を習得していないということもあるが、それを抜きにしても甘さが目立つ部分が多い。特に原作に於いて道力2000を下回っていた連中に関しては、現時点では新世界ではまるで通用しないだろう。

 いちおうCP9にも新世界の任務が来ることもあるが、それらは現在俺かポチが担当している。コイツ等のうち何人がCP0に上がるかは分からないが、それを抜きにしても今後を考えて新世界の任務もこなせるレベルにはなってもらう必要がある。

 

「……だが、まぁ、お前たちにも六式使いとしての矜持などがあり、素直に受け入れるのも難しいだろう。だから、マハとゲルニカを呼んだ。このふたりは政府の誇る特級のエージェントで、新世界でも通用する実力がある。そうだな……中の上ぐらいの実力と思えばいい。今回はこのふたりに特別に時間を作ってもらった……しっかり、未熟さと敗北の味というのを教えてもらえ」

「おいおい、長官……俺たちがそんなに簡単にやられるってのか?」

「チャパパ、ジャブラと同じく、俺たちもそう簡単にやられるとは思ってないぞぉ」

 

 強さにプライドを持つのはいいことだ。だが井の中の蛙でいてもらっては困るので、早い段階で上の次元の戦闘を言うのを体験してもらうことにした。

 マハとゲルニカは原作の時間軸になれば上の下から中ぐらいの実力は有するだろうが、現時点では四皇幹部相手だと分が悪いレベルだ。それでも十分に優秀な戦闘力を持っているのだが……。

 

「ハッキリ言ってしまえば、多少なりとも戦いになるのはルッチとフィズぐらいだ。それ以外は、全員でかかっても相手にならないだろう。まぁ、試してみればわかる……では、マハ、ゲルニカ、頼んだぞ」

「ええ、可愛い後輩のためですからね」

「……しっかりと、敗北という経験を積ませてあげますよ」

 

 マハとゲルニカに任せて、俺はポチと共に壁際に移動する。CP9メンバーが躍進するために驕りを消すのは必須だ。

 時間をかけて諭すよりも、手っ取り早く新世界レベルの相手と戦わせた方が効率がいい。これで、それぞれが向上心に火を付けてくれれば、今後の指導もやりやすくなる。

 

 あまり参考にはならない数値ではあるが、道力という数値で表すなら……とりあえず原作開始までの2年半ほどで、全員最低でも5000以上にはなってほしいものだ。

 

 

 




スパンダム:狂パンダ。道力:測定不能。CP9メンバーの魔改造を開始、とりあえず道力の下限5000という化け物軍団を作り上げようとしている。

ポチ:狂犬にして忠犬。道力:推定48000。覇気も習得済みなので、強化プログラムからは除外。それとは別にパンダによって魔改造されており、現在は勝てるかは別として、四皇ともタイマンで渡り合えるレベルに到達している。

マハ&ゲルニカ:CP0メンバーでは一番出番の多いふたり。道力:9000前後。狂パンダの要請を受け、特別教官としてCP9メンバーたちに敗北を教えに来た。

ルッチ:道力:3800。実は潜伏中にコツコツと狂パンダに聞いたコツを実践しており、見聞色の覇気を独学で掴みかけている。その辺は流石天才である。

CP9メンバー:魔改造開始。
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