エニエスロビーにある訓練施設で、俺は地面に倒れて荒い息を吐く三人のCP9メンバーに告げる。
「水分はしっかり補給しろ……さて、まずはジャブラ」
「お、おう」
「鉄塊拳法はお前の長所だしそれを伸ばすのはいいが、基本的にその戦術は相手がお前の鉄塊を貫ける場合には使いにくい。相手の攻撃によって防御と回避を使い分けられるように、見聞色を集中して磨くことだ。ただ、過信はするなよ。いまやって見せたように見聞殺しという、見聞色を欺く技術も存在するからな」
「了解」
ジャブラは覇気の習得速度はなかなか早く、武装色と見聞色を共に使えるようにはなっている。ただ、見聞色を覚えてからその感覚に頼りがちになっている部分があったので、矯正するために見聞殺しというものがあることを体験させた。
攻撃察知能力や判断力を磨いて、鉄塊と紙絵を的確に切り替えて戦えるようになれば、さらに成長が期待できるだろう。
「次にカク。全体的に練度は高くなってはいるが、お前は決定力に欠けるな。勝負を決められるような強いカードが不足している」
「ぬぅ、確かに同格以上が相手となると、短期で勝負を決めれるような札が無いのぅ」
「技をいくつか教えるのもいいが……いっそ悪魔の実でも食べるか? 上に申請すればいくつか回してもらえると思うしな」
カクは現時点では悪魔の実の能力者ではない。原作においてはウシウシの実「モデル:
まぁ、そもそもまだ原作の時期にはなっていないが……。
ともかく、原作と同じ実が来るかどうかはわからないが、悪魔の実を用意してやるのはそれほど難しくはない。そのぐらい手配できる権力は持っている。
「悪魔の実か……ふと疑問なんじゃが、長官は悪魔の実を食べんのか?」
「なぜわざわざ付け入る隙を作ってやらないといけない?」
「ははは、悪魔の実が隙か……確かに、長官レベルになるとむしろ海という弱点ができるのはデメリットでしかないか……」
「まぁ、食べたところで必ずしも戦闘向きの能力が手に入るとは限らんが、一考しておけ」
急かすことでもないので、カクに考えさせることにする。現状でカクと抜きつ抜かれつなジャブラが、原作のように説得をしているが、あの感じだと食べることを希望しそうだ。
後は、ポチは何度か聞いたが俺が指示するなら食べるが、そうじゃないなら食べないというスタンスなので除外。
カリファにもカクと同じことを聞くとして……フクロウとクマドリにも聞くことにするかな。原作のスパンダムと現在の俺の権力は比較にならないレベルなので、悪魔の実を4つであっても手配できるので、ポチと俺以外全員能力者というのも面白いかもしれない。
「さて話を戻して、フィズ……いい成長だ。武装色と見聞色共に基本は問題ない。今後は武装色の内部破壊等も含めた応用技を習得してもらう。お前は戦闘技術などの基礎よりも、今後は覇気の練度の向上に集中しろ。強力な覇気は多くの悪魔の実に対する対策にもなるからな」
「了解だ。応用技も結構種類があるんだな、覇気ってのは奥が深いぜ……だが、
フィズは非常に伸びがいい。武装色も見聞色もしっかり習得しているし、戦闘技術なども及第点。やや練度の甘い部分はあるが、コイツに関してはもう新世界でも十分に戦えるレベルに到達している。
悪魔の実も身体能力が上がる
「お前たち三人は、かなり伸びがいいからな。近く覇気が使える訓練相手を手配して、経験を積んだあとは新世界の任務も回すようにするから、そのつもりでいろ」
「「「了解!」」」
「それでは、各自クールダウンはしっかりしておけよ」
今回の訓練はジャブラ、カク、フィズの三人が新世界での任務をこなせるだけの実力が身に付いたかの確認でもあったが、かなりいい感じだ。
これなら原作開始時期になるころには、それなりに新世界での任務経験も積ませて特級と呼んで問題ないレベルのエージェントに成長出来ているだろう。
そう考えつつ、俺はもうひとりを待たせてある別の特別訓練場に向かった。
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特別訓練場に辿り着くと、そこではルッチが静かに目を閉じて瞑想をしていた。俺が教えた気功術のひとつを実践しているみたいだ。
「待たせたな」
「いや、アイツらは?」
「及第点といったところだ。あのレベルなら、新世界でもそうそう死ぬことはないだろう」
「それはなによりだ」
ルッチは飛びぬけて伸びがいい。元々ルッチが稀代の天才と称される才能の持ち主であることもそうだが、それ以上にルッチに力への渇望が生まれていることが大きかった。
ルッチは元々強い狂気は宿していたし、いまもそれは消えていない。静かに待つことを覚えただけで、殺人衝動とでもいうべき狂気も強く持ち合わせたままだ。
「……事前には説明したが、場合によっては命を落とす可能性もあるが、どうする?」
「やる。長官が言ったように気功術を学びながらいろいろ考えたさ。たしかに、殺しがしたいという俺の欲求を満たすだけなら現状でも十分だと思っていた。いや……言い訳は止めよう。悔しかった。長官やチェルシーがいる場所まで、これほど大きな距離があるとは思っていなかった。なかなかどうして、体感しなければ実感できないものだな」
どうもマハとゲルニカに敗北したことは、ルッチに対して俺の想像以上にいい変化をもたらしたようだ。ルッチは昔からの知り合いで格上だった俺やポチのことは、自分より強いと素直に認めて受け入れていた。
だが、己が想像していた以上に自分より格上が多かった事実を知って、強い屈辱を覚えると同時に力への渇望を手にした。
「そしてなにより……心底その背についていきたいと思えた相手に、これ以上置いて行かれるのは、俺が俺自身を許せなくなりそうだ」
「……なるほどな」
いい目だ。強い狂気が宿り、同時にそれが力への渇望と結びついている。同類と感じた俺とポチにこれ以上、置いて行かれたくないという思いが、元々持ち合わせていた狂気と合わさり強い渇望に変化している。
そもそもルッチは狂気という意味では十分に資質はあった。だが、俺がルッチにポチと同じような肉体改造を施さなかった理由……原作という運命の楔が抜けていなかったが故に、勝手に理屈をつけて止めてしまっていたというのもある。
だが、それ以上にルッチには力への渇望が足りていなかった。天才と呼ばれるだけの才能を持っていたが故に、どこか現状に満足してしまっている節があった。
だがそれは十分に改善されている。いまのルッチなら十分肉体改造に耐えうるだろう……その上、現在の俺にはトットムジカの力もあり、肉体改造の負荷をある程度抑えてやれるのは己やポチで実証済みだ。
「……では、始めるぞ」
「了解」
ルッチには死ぬ危険もあると説明をしたが、この世に絶対はないとしても99%は問題ない。そんなわけで、ルッチにもひとつ上のステージに上がってもらうとしよう。
……まぁ、ある程度負荷を軽減できるとはいえ、それでも想像を絶する痛みではあるし、他のCP9メンバーにこれに耐えられそうな狂気を持つ者はいないので、他には施せないか……リリスに話せば、もっと負荷を落として行う方法が見つかる可能性もあるな……反応が確実に面倒なので、熟考する必要はあるが……。
****
魔力によってルッチの負荷をある程度軽減しつつ、経過を見守ること数十分。本来のものよりはある程度負荷が落ちているとはいえ、相変わらず床は血まみれになっている。
あのクールなルッチが叫んでいたほどに痛みもありはしたが、やはり予想通り問題なく完了した様子で、ゆっくりとルッチが立ち上がる。
「……気分はどうだ?」
「……ズルいじゃないか、そりゃ、チェルシーにも大きく置いて行かれるわけだ。ああ、分かる。実行前の俺とは、明らかに立っている場所が違う。ふふふ、ははは……最高の気分だ」
「そうか、まぁ、ここまでの積み上げが多かった分効果も大きいだろう。だが、短時間で繰り返しても意味がない。概ね1年に1度を目安に行う。そして、俺がいない時に勝手に行うことは禁止だ。いいな?」
「ああ、了解だ。すべてアンタに従う」
大きく成長した己の力に興奮しているのか、深い笑みを浮かべて喋るルッチ。まぁ、気持ちは分かる。俺もポチも初めての肉体改造を終えたときは、なんとも言えない全能感があったものだ。
心底楽しそうな様子のルッチの前で、俺は軽く笑みを浮かべて告げる。
「さて、話はここまでだ。暴れたい気分だろ? 相手をしてやる」
「ああ、やっぱアンタは……最高だ!」
口角を上げたままで叫ぶように告げ、獣人形態に変わって一直線にこちらに向かってくるルッチに対し、俺は自然体で構える。
まぁ、なんにせよ……楽しそうでなによりだと、そんな風に思いながらしばらくルッチの能力確認に付き合った。
スパンダム:狂パンダ先生。CP9メンバーの成長に満足気。己とポチ以外のCP9メンバーを全員能力者にしようかなぁとか、ヤバいことも考えている。しばらく、じゃれてくるルッチと遊んであげてた。
ルッチ:大幅にパワーアップ。狂パンダやポチにこれ以上置いて行かれたくないという思い。現在の己は弱いという悔しさを自覚して認めたことで、強い力への渇望を得ており、覇気も他のメンバーを突き放すスピードで習得し、貪欲に訓練をしていた。パワーアップした己を、子猫のようにあしらう狂パンダの強さを見てまた笑みを浮かべていた……なんだかんだで、コイツもだいぶ脳を焼かれている。
フィズ、ジャブラ、カク:三人とも覇気は二種習得済みで、練度もそこそこなのでパンダから及第点を貰えた。そろそろ新世界の任務につかせる予定。
五老星:……CP9? ああ、世界政府最強(ガチ)の暗殺集団……暗殺……暗殺?
トットムジカ:(っ。•ω×。)っ☆゚.*・。負荷軽減。どう? どう? パンダ! ムジカパワー、凄いでしょ?