世界政府の所有するとある島では、本日海軍とサイファーポールによる大規模合同訓練が執り行われる予定となっており、会場となる島には多くの海兵や役人の姿があった。
海軍とCPはそれぞれある程度固まって待機しており、海軍側で2本の葉巻を咥えて不機嫌そうな表情を浮かべる男……海軍本部大佐スモーカーに同じく海軍本部大佐のヒナが近づき声をかける。
「……スモーカーくんが来てるなんて驚いたわ。ヒナ驚愕。こういう訓練とか興味なさそうなのにね」
「あぁ、興味ねえよ。だが、クザン大将から参加しろと言われてな……わざわざ東の海から出向いてきたわけだ」
「そうやって、素直に上の言うことを聞いておけば、東の海に行かされることもなかったのに……」
「知るか、俺は俺だ」
同期でもあり腐れ縁のふたりは、共に愛煙家ということもありなんだかんだで気が合う部分も多い。素行の悪いスモーカーが海軍をクビになりかけた際に、ヒナが庇ったという話もあり、なんだかんだで仲のいいふたりは、そのまま他愛のない雑談を行いつつ、訓練の時間を待つ。
そのふたりから少し離れた場所には大将青雉ことクザンが……なんとも言えない呆れたような表情で、目の前の人物に声をかけていた。
「……あ~その、アレだ。ガープさん? アンタたしか、センゴクさんに不参加って言われてなかったですか?」
「わっはっは! 言われたな! じゃから、訓練には参加せんぞ、見にきただけじゃ! ぶわっはっはっはっ!!」
「あぁ……ほら、向こうでセンゴクさんがものすげぇ顔で睨んでるじゃないっすか。勘弁してくださいよぉ、俺まで怒られるじゃないですか~」
「げぇっ! なぜバレた!?」
「そりゃ、そんな大声で笑ってりゃバレるでしょうよ」
センゴクに合同訓練に参加しないようにと言われたガープだったが、訓練には参加しないが見学ならいいだろうと勝手にこの場に来ており、その自由奔放っぷりにクザンも頭を抱える。
センゴクもガープが来ていることには気づいており、後で説教が行われるのはほぼ確定と言っていい状態になっていた。
開始時間まではまだそれなりに時間があり、どこか緩さを感じる空気が流れていた会場だったが、直後に会場に居る者たちは……空が黒く塗りつぶされたかのような錯覚を覚え、一斉に振り返った。
視線の先CPたちが集まっている場所では、役人たちが綺麗に整列して道を開けており、その開いた道を歩いてくる者たちがいた。
先頭を歩くのは紫色の髪をオールバックに纏めた目の周りと鼻の黒い男……CP9司令長官スパンダム。そして、後方に続くCP9のメンバーたち。
「……あ、あれが……不夜の怪物……」
「なんて存在感だ。見てるだけで、体が押しつぶされそうだっ……」
スパンダムの圧倒的な存在感にヒナが青ざめた表情で呟き、スモーカーも冷や汗を流す。CPの面々に緊張感を持たせる意味もあり、普段は抑えている気配を表に出して歩くスパンダムの存在感は凄まじく、本能で感じる桁外れの力を初体験した海兵たちは大きく動揺していた。
「おいおいおい……冗談キツイぜ、なんだあのバケモノ……怖すぎだろ」
「……センゴクの言葉に偽りはなかったか、覇気も使わず気配だけでこれほどの重圧……ありゃもう、人の枠組みを踏み越えておるじゃろ」
大将であり相当の実力者であるクザンでさえ、震える体を止めることができないほど圧倒的な存在。その姿を見て、ガープは以前にセンゴクが言っていた言葉に一切の偽りが無かったことを察した。
そのまま少し歩いたあとで、スパンダムは気配を抑え周囲に居た者たちは重圧から解放されて、一息つく。そのままスパンダムは海軍側の代表であるセンゴクの下に挨拶に向かいCP9メンバーたちはその場にとどまる。
「……アイツらが、政府最強の暗殺集団CP9か……確かにどいつも強そうだな」
「そうね。パッと見た印象でしかないけど、全員最低でも中将レベルはありそうね。ヒナ戦慄」
「……特にあの背の低い女はヤベェな」
「おそらく彼女が不夜の怪物の腹心中の腹心と言われる
スパンダムのインパクトが凄まじく、そちらに視線が集中していたがCP9メンバーも、それぞれが相当の実力者であると感じる佇まいであり、その姿にはどこか余裕すら感じられた。
「ほれ、クザン。たぶんあの女じゃぞ、お前の相手は」
「おいおい、勘弁してくださいよ。可愛らしい顔して、すっげぇ強そうなんですけど……」
「アレも相当じゃな。全盛期のわしでも厳しいかもしれん」
「はぁ、こりゃ、本腰入れてやらねぇと、瞬殺されちまうな……怖い怖い」
佇むCP9メンバーの中でも明らかに頭ひとつ以上抜けて強そうなチェルシーを見て、それが己が模擬戦で戦う相手だと理解したクザンは頭に手を当てて天を仰いだ。
****
合同訓練はかなりの規模であり、CPからも役人の参加者は多い。俺は、センゴクに軽く挨拶をしたあと、綺麗に整列した役人たちの前に立つ。島に到着した際には若干緩んだ空気を感じたので、引き締めるために気配を表に出して少し歩いたが、どうやら効果はてきめんだったようだ。
程よい緊張感が見える顔の者が多く、これなら実りある訓練になることだろうと、そう思っているとCP0総監の姿でタマが拡声機のマイクを差し出してきた。
「それでは、スパンダム殿。代表として一言お願いします」
「……」
何度も言うが、正式な立場としてはCP0総監であるタマの方が上のはずである。だがまぁ、いつものことなので軽くため息を吐いてマイクを受け取り、役人たちに向けて告げる。
『CPと海軍は険悪とまではいかないものの、これまでは手を取り合う機会は少なかった。だから、いきなり仲良くしろなどと言うつもりは無い。だが、この貴重な機会になにも得ずに終わるということは無いようにしろ。今後海軍と連携して任務にあたる機会も増えてくる。その際に今日の経験は役に立つはずだ』
CPも海軍も、それぞれ相手を見下すとまではいかないものの、微妙に壁がある状態なのは多くの者が知る事実である。
関係は改善していくべきだとは思うが、だからと言って一朝一夕でどうこうなるものでもない。まずは互いの仕事ぶりや能力を知って、理解するところから始めるべきだろう。
『己の仕事にプライドを持つのはいい。だが、相手の能力を貶め、認めないのは愚かな行為だ。海軍には海軍のCPにはCPの得手不得手というものがある。すぐに仲良くはできずとも、互いの長所を認め協力し合う。ここに集まっている者たちは、それができるだけの度量と能力を持っていると思っている。次の機会はいつになるか分からない、貴重な合同訓練だ。各員しっかりと己の糧にするように……それでは、準備にかかれ』
訓練前に代表の一言なんて、長々と話しても仕方がないので簡潔にまとめて話を切り上げ、それぞれ訓練の準備にかからせる。
中々に統率の取れた動きであり、悪くない。
「お前たちは模擬戦までは自由だが、興味があるなら参加してもいい。お前たちも役人を連れて任務に当たる機会もあるしな……」
「なるほど、じゃあ、俺はちょっと参加してみるかな」
「そうだな、フィズ。お前の指揮能力は高い。ここで海軍とCPが入り混じった状態での指揮も経験しておくのもいいだろう。海軍側には俺から話しておく、参加してみろ」
「了解だ」
フィズの指揮能力は俺も高く評価しており、確かに今回の訓練に参加する意義は十分にあるだろう。それに自分から考えて行動できるのは非常にいい傾向というか、フィズの向上心が感じられる。
「お前たちもいろいろ見学してみろ。情報収集や伝達方法なども、いろいろ種類がある。また、どこで失敗しやすいか、トラブルになり得るのか、そういった部分を見て学んでおけ」
『了解!』
戦闘経験以外にも情報収集能力や指揮能力なども、今回の訓練で向上すれば非常に有益といえる。CPメンバーたちもなかなか意欲がある様子だし、なかなか期待できるな。
そう思って軽く笑みを浮かべつつ、俺はCP代表の立場として訓練全体を見る場である本部テントへ向かった。
スパンダム:狂パンダ。役人たちに喝を入れつつ、海兵たちに軽く絶望を与えた。
ポチ:魔犬ポチ。後方ワンコ面待機中。
フィズ:指揮能力を狂パンダに褒められていることもあり、意欲的に学ぼうとしている。その姿勢も狂パンダにとっては高評価点といえるので、また評価が上がった。
CP9メンバー:狂パンダの指示なので、しっかり学ぶ。皆パンダを慕っているので、パンダの期待に応えようとかなり真面目に取り組むもよう。
スモーカー:のちにインフレに置いて行かれる人。野犬とか呼ばれていた時代もあるみたいなので、パンダ塾入門条件は満たしてる気も?
クザン:……う~ん。あの魔犬とかって子……俺より強くね?
ガープ:参加はしないが見学はOKという自己理論で勝手にきた。後でセンゴクにめっちゃ叱られる。
トットムジカ:(((ꎤ・ω×)و三 ꎤ・ω×)-o≡シュッシュ! 模擬戦でもなんでも、パンダと一緒に頑張るぞ! え? パンダ戦わないの……残念(´・ω×`)