闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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海軍とCPの合同訓練 後編

 

 

 海軍とCPによる大規模合同訓練。その終盤に行われた代表者による模擬戦……その最後を締めくくるのは、海軍の誇る最高戦力の一角である大将のひとり青雉クザン。

 対するは、CP9司令長官補佐、不夜の怪物の腹心中の腹心と呼ばれる魔犬(ヘルハウンド)ポーラ・チェルシー。

 特設された訓練場の中央で向かい合う両者。150㎝ほどの小柄なチェルシーと3m近いクザンでは身長は倍近く違い。向かい合えばまるで大人と子供のようだった。

 だが、その身長差でチェルシーを見くびるほど、観戦している者たちは愚かではない。海軍側は最低でも大佐以上の地位を持つ者であり、チェルシーの放つただならぬ気配を感じていた。

 

「CP9司令長官補佐ポーラ・チェルシーです。今回は、よろしくお願いします」

「あ~アレだ。海軍本部大将クザンだ。こちらこそ、まぁ、なんだ? えっと、アレだ……お手柔らかに頼むわ」

 

 軽く挨拶を交わしたあと、距離を取って立つ両者。しばらくして、模擬戦開始が告げられた瞬間……クザンの体が斜めに切り裂かれて砕けた。

 なにが起こったか分からず驚愕するものが多い観客の視線の先で、崩れた体が氷に変わり、冷気と共にクザンの体を再構築する。

 

「嵐脚・春風……なるほど、さすが大将です。覇気と身体のコントロールで対応しましたか」

「おいおい、なんて早い斬撃だよ。あ~言っとくと、完璧に対応できてなんかねぇよ」

 

 高度な見聞色と自然(ロギア)系の身体コントロールで超速の嵐脚に対応してみせたかのように見えたが、クザンの肩には微かな切り傷があり、若干ではあるがダメージを受けたことを示していた。

 それでも、ダメージは僅かなものであり、クザンは今度はこちらの番とばかりに地面に手を付ける。

 

氷河時代(アイス・エイジ)

 

 ヒエヒエの実の力による氷結。全力で放てば見渡す限りを凍てつかせる技。凍りついていく大地に対して、チェルシーは素早く拳を握って叩きつける。

 するとその凄まじい力の拳によりクレーターを作りながら大地が砕け、大きな土煙を巻き上げる。そして土煙の中から赤く燃える斬撃が飛来した。

 

「嵐脚・夏風」

「アイス(ブロック)暴雉嘴(フェザントベック)!」

 

 迫る燃える斬撃に対し、クザンも巨大な氷の雉を作り出してぶつける。炎と氷がぶつかり合い、大量の水蒸気を発生させる中、クザンは素早く見聞色を用いてチェルシーを捕捉し両手を体の前で組むように構え、膨大な冷気を放つ。

 

「アイスBALL(ボール)

 

 それは本来巨大な球状の氷塊となり相手を閉じ込める技ではあるが、チェルシーの体から黒い稲光が放たれ、直後になにごともなかったかのようにチェルシーはクザンに向かって駆ける。

 

(覇気強すぎだろ!? まったく能力が通らねぇぞ……こりゃ、まずは覇気を削らねぇと話にならねぇな)

 

 チェルシーの凄まじい覇気に驚愕しつつもクザンは冷静に己の前に巨大な氷壁を出現させる。

 

氷壁(アイスウォール)

 

 その氷壁はチェルシーの腕の一振りで砕け散るが、その一瞬の動作の隙にクザンは剃を用いて距離を取りつつ、構える。

 

「アイス(ブロック)両棘矛(パルチザン)

「嵐脚・冬風」

 

 氷で作り出した槍と極小の嵐脚がぶつかり合って相殺し、空中にキラキラと氷の結晶が煌めく中で、一旦両者は手を止めた。

 

「……剃を使えるんですね。しかも、相当の練度です」

「あ~まぁ、六式はCPの専売特許じゃねぇからな。特に移動に便利な剃や月歩は習得してるやつも多い。俺の教官をしてくれた人も六式を使えてたしな」

「なるほど……」

 

 納得したように頷くチェルシーの前で、クザンは気持ちを整えるように長めに息を吐く。そして両者は示し合わせたように戦闘を再開し、いくつもの技がぶつかり合う。そのあまりの激しい戦闘に観戦者たちが唖然とした表情を浮かべる。

 激しい攻防を繰り広げながら、クザンは真剣な表情で思考を巡らせていた。

 

(分かってはいたが、やっぱり完全に格上か……圧倒的な身体能力に、異常なパワー、化け物じみた覇気……ヤベェぐらいに強い。僅かでも気を抜いたら、一瞬で形勢が決まる……だが、付け入る隙が無いわけじゃねぇ)

 

 チェルシーはたしかに凄まじい強さであり、事前にクザンが予想していた通り確実に戦闘能力ではクザンを上回っている。

 だが、クザンもこれまで多くの修羅場を潜り抜けてきた歴戦の強者であり、戦いながらも分析を進めていた。

 

(恐ろしいほどの練度の武装色に比べて、見聞色はそこまでじゃねぇ。見聞色が苦手なタイプ……見聞色に関しては確実に俺の方が上……じゃなきゃ、もうとっくに捉えられて負けてる。厄介なのはあの出が異常に早くて読みづらい春風とかって嵐脚だが、あれは速度の分威力は低めだ。あの技に関しちゃ仕方ねぇ、多少のダメージは必要経費と見る。他の嵐脚に関しては、見聞色で察知してから十分身体のコントロールが間に合う)

 

 超速の斬撃である春風に関しては、完全に回避することはクザンをもってしても不可能ではあるが、ある程度は対応が間に合うことと、春風自体が威力が低いこともあって負ってもかすり傷程度。

 他の危険な嵐脚は、防御に専念して集中しておけば、見聞色で察知してから十分に対応できるレベルといえた。

 

 そんなクザンに向けチェルシーが剃で迫るが、クザンは即座に己とチェルシーの間に氷壁を出現させて剃で大きく距離を取る。

 

(ヤバいのは、あの覇気とパワーを用いた近接戦だ。地面を砕いたパンチ……アレに関しちゃ、一撃でも受けたら即アウト。少しでも接近して来たら全力で逃げて距離を開ける。ここまでの戦闘を見る限り、中遠距離の攻撃で対応が間に合わず一撃アウトになるような攻撃はねぇ)

 

 クザンは非常に冷静に戦いを展開していた。チェルシーの攻撃の中で、絶対に受けてはいけない攻撃と許容できる攻撃を分析し、場合によっては全力で逃げを打ってでも、とにかく近接戦には持ち込まないように立ち回っていた。

 

(中遠距離を維持しつつ回避と防御主体で戦って、隙を突いて攻撃……いくら化け物じみてるって言っても、覇気は無限じゃねぇ。とにかくまずは覇気を消耗させねぇと勝ち筋がない。物理的な攻撃は最小限にして、冷気をぶつけて覇気で防御させることで消耗させる。時間をかけてでも最低限のダメージが通るレベルまで覇気を削らねぇとな……あらら、なんとも泥くせぇ戦いだが……仕方ねぇさ。根競べといこう)

 

 最終戦でもあるこの戦いに制限時間は無い。故にクザンは長期戦の覚悟を決めた。極限までの集中と見聞色を維持したままで、チェルシーの攻撃を凌ぎ続けるのはかなり困難だが、それでもその先にある細い勝利の可能性に賭ける。

 だが、そんな僅かな希望は……激戦の繰り広げられる訓練場に静かに響いた声によって粉砕されることになった。

 

「……ポチ、使っていいぞ」

「はい!」

 

 それは決して大きな声ではなかったが、極限まで集中していたクザンの耳には確かに届いた。そして、スパンダムの言葉にチェルシーは嬉しそうな表情を浮かべて足を止め、グッと右拳を握って構えた。

 

(なんだ? なにをしてくる!? 使っていい……悪魔の実の能力? それとも特殊な技か? 分からんが、集中力を極限まで研ぎ澄ませろ……)

 

 クザンも動きを止めて、極限まで見聞色を研ぎ澄ませる。どんな攻撃が来ても対応してみせると……そのまま少しの静寂が訪れたあと、チェルシーの体から威圧感を伴う強大な覇気が放たれる。

 

「覇王色っ!?」

「最近使えるようになりましたので、練度はまだまだですが……。それでも『コレ』が出来るようになったのは嬉しいです。まぁ、私は隊長と違って、かなり溜めに時間が必要ですが……」

 

 そう呟いた直後チェルシーは月歩を用いて高く跳躍し、拳を構えた。その直後、クザンの直感が最大級の警戒を伝え、クザンはありったけの力で氷の防壁を幾重にも作り出した。

 チェルシーの姿が見えなくなることも気にせず、ドーム状に分厚い氷をいくつも作り出し、さらに己自身も全身を武装硬化して攻撃に備えた。

 

「……六王覇銃!」

 

 そして、そんな全力の防御をあざ笑うかのように、暴虐の衝撃が天から降り落ち、轟音と共に会場が大きく揺れた。

 

 巻き上がった土煙が晴れたあと、訓練場には巨大なクレーターがあり、いまの一撃の威力がいかに凄まじいものであったかを物語っていた。

 センゴクも、ガープも、おつるも……他の観戦者たちも戦慄したような表情で硬直しており、何人かの頭にクザンが死んだのでは? とそんな考えが過る中、着地したチェルシーの前で冷気が渦巻きクザンの姿に変わった。

 

「……ふぅぅぅ……まいった。俺の負けだ」

 

 ボロボロと言っていい様子のクザンは深く息を吐いたあとで、降参すると告げて両手を上げた。

 

「よろしいんですか?」

「……ああ、気合と根性で立ってはいるが、いまにも気を失いそうだ。あんなとんでもねぇ攻撃があったとは……」

「六王覇銃ですか? 隊長は普通のパンチぐらいの感覚で打ちますよ。私と違って溜めが無いので、連打も出来ます」

「え? アレ、連打できるの? 怖すぎだろ……アンタのとこの長官……はぁ、こんなに徹底的にやられたのは新兵の時以来だなぁ。こりゃ、俺も鍛えなおさないといけないかもなぁ~」

 

 アレだけの攻撃をして自身を打倒しても、まだまだ余裕が見えるチェルシーよりもスパンダムはさらに遥かに上と知り、クザンは青ざめたような表情で天を仰いで呟いた。

 

「なるほど、では暇な際にエニエスロビーにどうぞ。隊長は、強者の訓練相手はいつでも歓迎すると仰っていましたので!」

「……あ~考えとく……それとまぁ……アレだ。その……そろそろ……限界」

 

 そう告げたあとで、クザンは仰向けに倒れた。本人が言ったように気合と根性で立っていただけで、ダメージは限界だったため気絶した。

 倒れたクザン……己の倍以上の体を、チェルシーはヒョィッと片手で持ち上げて救護班の下に運んだ。

 

 こうして、海軍とCPにて行われた代表者の模擬戦がCPが4勝1分けという形になり、これがのちに海軍という組織全体の大幅な成長に繋がることになった。

 

 

 




スパンダム:飼い主の狂パンダ。最初はポチにも経験を積ませるため、覇王色の覇気や六王覇銃の使用を禁じていた。「ポチ……待て……待て……よし」で模擬戦を終わらせた。

ポチ:王の資質を持つ飼い犬。パンダ式細胞改造術を2回ぐらい行った際に覇王色に覚醒。王の資質とかはサッパリ興味はないが、パンダと同じ技が使えるようになったのが嬉しくて尻尾をぶんぶん振ってた。パンダとは違って、かなり溜めがいる。小柄な体からは想像もできないが、圧倒的なフィジカルと覇気で粉砕する超パワー型。

クザン:なんだかんだでちゃんと大将の威厳を持って、かなりポチに食らいついた。見聞色が苦手なことなどを分析しつつ、冷静に戦いを運ぼうとしたが……暴力で全部吹き飛ばされた。やはり暴力、暴力は(ry。ニコニコパンダ塾の招待状を獲得したので強化フラグがONに……。

五老星:……なんで……パンダ二号が誕生してるんですか……ねぇ……なんで?

秋風:……あの……だれか大事な技を……お忘れでは……(複数用範囲攻撃)
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