闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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閑話・リトルガーデンでの一幕

 

 

 グランドライン前半の海にある島。恐竜などの太古の生物がそのままの姿で生きるリトルガーデン。その島はかつて世界を震撼させた巨人海賊団のふたりの船長、赤鬼のブロギーと青鬼のドリーが100年以上に渡り7万戦を超える決闘を続けている島だった。

 だがその誇り高き巨人族の決闘は、賞金を目当てとしたMr.3の策略によって汚され、それに憤った麦わらの一味とMr.3一行の戦いが繰り広げられていた。

 

 ゾロ、ナミ、ビビの三人が捕らえられMr.3のドルドルの実の能力による巨大キャンドルサービスセットによって、倒れ伏すふたりの巨人もろとも生きたまま蝋人形にされようとする中、ルフィとウソップ、そしてカルーとMr.3とミス・ゴールデンウィークのペア、Mr.5とミス・バレンタインのペアが戦いを繰り広げていたが、人数差もありルフィとウソップは劣勢だった。

 Mr.3こそ能力を逆手にとって一時遠距離まで吹き飛ばしたものの、ルフィがミス・ゴールデンウィークのカラーズトラップに嵌りゾロたちを助けることが出来ず、ウソップとカルーもMr.5ペアから必死に逃げるのが精一杯の状況だった。

 

 そして本来の原作より早く戦場にMr.3が復帰し、ルフィは未だカラーズトラップで動けない。ゾロたちもいよいよ全身が蝋に包まれるという絶体絶命の状況で、突如横なぎに振るわれた巨大こん棒によってキャンドルサービスセットが破壊され、Mr.3の表情は驚愕に染まることとなった。

 

「……ば、馬鹿な!? あ、新たな巨人だと!?」

 

 現れたのは、ウソップとカルーを掌に乗せ、怒りに染まった表情を浮かべるふたりの巨人族……オイモとカーシーだった。

 

「……この人間から話は聞いた」

「よくも、誇り高き頭たちの決闘を汚してくれたな……」

「……お前たち……ま、まさか……オイモとカーシーか……」

 

 現れたふたりの巨人を見て、ブロギーもまた驚愕したような表情を浮かべる。

 そう、スパンダムによって船とエターナルポースを与えられ、ドリーとブロギーの元を訪ねてきたオイモとカーシーは、たまたまMr.5ペアから逃げていたウソップとカルーと出会い簡単に事情を聴いた。

 そして、敬愛するふたりの頭の神聖な決闘を汚したMr.3に凄まじい怒りを抱き、ウソップとカルーと共にこの場にやってきたのだった。

 

「ああ、ブロギーの頭! オイたちだ!!」

「少し待っててくれ、ブロギーの頭、ドリーの頭……アンタたちの決闘を汚した愚か者には、俺たちが罰を与える!」

 

 ウソップとカルーを掌から降ろし、仲間たちを助けるように告げたあとでオイモとカーシーはそれぞれ武器を構えて怒りの籠った叫びを上げる。

 その威圧感に気圧されながらもMr.3もまた必死の形相で叫ぶ。

 

「み、Mr.5たちは、なにをしているだガネ!」

 

 その叫びに呼応するかのようにオイモとカーシーの後方で爆発が起こり、カーシーの頭上にフワリとミス・バレンタインが悪魔の実の能力で浮かび上がる。

 

「喰らいなさい! 一万キロプレス!!」

「……」

 

 キロキロの実の力により自身の体重を10000㎏に変化させた一撃。死角を突いた完璧な一撃だったが……カーシーは、その巨体からは想像もできないほど流麗な動きでその一撃を回避する。

 

「え? ……ぁっ……」

 

 そのまま地面に落下し、必殺の一撃が回避されたことに驚愕しながら上を見たミス・バレンタインの目に映ったのは、天から降り注ぐかのようなカーシーの巨大な拳であり、叫ぶ間もなくすさまじい一撃を喰らって意識を手放した。

 

「……『死角からの攻撃は常に警戒しておけ』」

「ミス・バレンタイン! この、巨人野郎が!! 鼻空想(ノーズファンシー)――なっ!?」

 

 一瞬でミス・バレンタインがやられたことに驚愕しつつ、Mr.5がボムボムの実の能力を用いてカーシーを攻撃しようとしたが、ソレよりも早くオイモが投擲したこん棒がMr.5に向かって飛んできた。

 巨人族の使うこん棒は、Mr.5から見ればあまりにも巨大であり、鼻空想砲(ノーズファンシーキャノン)では破壊は不可能。他の技を使う時間もない。

 完全に不意を突かれた形になったが、Mr.5とてバロックワークスのオフィサーエージェントであり、戦闘経験は豊富だ。状況を素早く判断して即座に回避行動を行い、飛来する巨大こん棒をかわす。

 

 だが、その回避した先にはすでに、拳を振りかぶっているオイモの姿があった。

 

「ば、馬鹿な――ッ!?」

「……『攻撃は常に対応されることを想定して次の手を用意して動け』……長官の教えだ」

 

 巨人族とは思えぬほど俊敏かつ効率的な動きで振るわれた拳は、Mr.5を捉えて吹き飛ばした。

 そう、実はオイモもカーシーもここ数年で大きく実力を上げており、原作におけるふたりよりかなり強くなっていた。

 理由は単純で、彼らが門番を務めていたエニエスロビーの長官であるスパンダムが、「たまには体を動かさないと鈍るだろう」と、時折オイモとカーシーを指導してくれていたからだ。

 数多の武術の知識も持つスパンダムにより、ふたりはそれぞれに合った効率的な体の動かし方も学んでおり、暇な時や休暇にはふたりで自己鍛錬も行っていたため、大きく実力を伸ばしていた。

 

「……な、なな……なんだガネ、コイツらの強さは……こ、このままでは……」

「さぁ、次はお前だ。覚悟は――」

「待て!」

「――うん?」

 

 Mr.5ペアを瞬殺したオイモとカーシーがMr.3に迫ろうとしたタイミングで、ウソップの手によりカラーズトラップから解放されたルフィが制止の声を上げた。

 

「ソイツは、俺がぶっ飛ばすって決めてるんだ。邪魔すんな」

「……なるほど、戦士の目だ。既に戦士が戦っている最中なら、オイたちが横槍を入れるわけには行かねぇな」

「分かった。俺たちは頭たちの治療をする。だから、頭たちの決闘を汚した愚か者たちには、必ず相応しい罰を与えろ」

「……ああ! 決闘(たたかい)を汚すやつは、許さねぇ!!」

 

 一瞬怪訝そうな表情を浮かべたオイモとカーシーだったが、ルフィの覚悟の籠った目を見たふたりは、Mr.3に関してはルフィに任せることを決め、倒れているドリーと両手両足を蝋の剣で貫かれて怪我を負っているブロギーの治療を行うことにした。

 

 

****

 

 

 Mr.3はルフィによって倒され、ブロギーに切られて死んだかと思っていたドリーも、100年戦い続けて武器が劣化していたことにより一命を取り留めた。

 喜びに涙を零しながら、ブロギーはドリーに抱き着く。

 

「よくぞ生きてくれていた親友よ! ガババババ」

「ゲギャギャギャ……」

 

 100年決闘を続けていても、親友同士であることには違いは無く、互いに涙を流して喜び合うのも一瞬、再び喧嘩を始めかけるふたりをオイモとカーシーが止める。

 

「落ち着いてくれ頭たち」

「あん? 邪魔を……お前たち、まさか、オイモとカーシーか?」

 

 気絶していたためにオイモとカーシーの存在に気付いていなかったドリーが驚きを浮かべ、その後オイモとカーシーはふたりの治療をしながらことの経緯を説明した。

 その後ルフィたちの下に合流したサンジが、アラバスタへのエターナルポースを手に入れており、アラバスタへ急ぐ旅ということもあって、すぐに出航しようとした。

 その際に、ふとオイモとカーシーがルフィたちに話しかけた。

 

「……お前たちには頭の誇りを守るために戦ってくれたことへの恩がある。だから、ひとつ忠告をしておく」

「これからの航海の途中で、司法の島エニエスロビーの長官に出会うことがあれば絶対に戦うんじゃねぇ」

「エニエスロビー? 長官? なんだそれ?」

「詳細は言えねぇ。オイたちはあの人にも恩があるからな、みだりに情報は教えられねぇ……だが、決して戦ってはならないことだけは覚えておけ」

 

 真剣な表情で話すオイモとカーシーの言葉に、自然と麦わらの一味の表情にも力が籠る。

 

「別にお前たちが弱いと思っているわけじゃねぇ。むしろオイたちより、強いとすら思ってる。だが、それでも……あの人だけは、格が違い過ぎる」

「仮にお前らが、全員で挑んだとしても1秒かからず皆殺しにされる。あの人は、俺たちが知る誰よりも圧倒的に強い」

「……我らよりも、か?」

 

 重々しく話すオイモとカーシーにドリーが問いかける。すると、ふたりは真剣な表情を浮かべたままで首を縦に振った。

 

「ああ、頭たちには悪いが、俺たちもエルバフの戦士として嘘は言えねぇ」

「頭たちでも、長官に片腕すら使わせることはできねぇと、そう思う」

「ゲギャギャギャ、そりゃ相当だ!」

「ガババババ! 100年のうちにそんな化け物が生まれてたとはな!」

 

 途方もない話ではあったが、エルバフの戦士としてと口にしたオイモとカーシーの言葉に嘘は無いと判断したドリーとブロギーは、どこか楽し気な様子で笑っていた。

 その様子にオイモとカーシーも少し笑みを浮かべたあとで、再びルフィたちに告げる。

 

「……基本的には温厚な人だ。海賊だからという理由で襲ってくるような人じゃねぇ」

「ただ、敵対すれば容赦はしねぇ人だ。絶対に敵に回さねぇことだ」

 

 真剣な表情で語られる言葉は、ルフィたちの心にたしかに刻まれた。そして、彼らが再びその存在の名を聞くのは、これよりも先、考古学者の仲間を加えてからのことだった。

 

 

****

 

 

 島食いと呼ばれる巨大金魚を巨人族最強の槍、覇国にて打ち破り、麦わらの一味を見送ったドリーとブロギーは、オイモとカーシーが持ってきた酒を飲みながら会話を行っていた。

 

「ガバババ、今日は素晴らしき日だ! 新しき友を見送り、古き仲間にも再会できた! エルバフの神に感謝だな!!」

「ゲギャギャギャ、確かに酒が美味い。腹が焼けてなけりゃもっと美味かったが……それで、オイモ、カーシー、お前たちはこれからどうするんだ?」

「ああ、頭たちの決闘が続いているのなら、邪魔するわけには行かねぇ。オイたちはエニエスロビーに帰ることにする」

「世界政府に騙されたのには腹が立つが、長官は俺たちにいろいろよくしてくれたし、今回の件も含めて恩があると思っている。しばらくは門番として恩を返すつもりだ」

 

 ドリーとブロギーの決闘が終わっていたのなら、一度エニエスロビーに顔を出してスパンダムに挨拶をしたあとで共にエルバフに帰るつもりだったが、決闘が終わっていないというのであれば話は別だ。

 エルバフの戦士にとって決闘は神聖な物であり、それを知るオイモとカーシーも両者の戦いに決着が付くまでは一切の邪魔をするつもりは無い。

 スパンダムへの恩もあるので、またしばらくはエニエスロビーで門番をしながら、ふたりの決闘が終わる日を待つつもりである。

 

「そうだな、誇り高きエルバフの戦士は恩を忘れてはならない。世話になった分はしっかりと働きで返せ」

「「おう!」」

 

 ブロギーがそう告げ、オイモとカーシーが返事をしたタイミングで、島の中央の火山が噴火する。それは、ドリーとブロギーの決闘が始まる合図でもある。

 

「おっ、真ん中山、よし決着を付けるぞドリー!」

「ああ、いくぞ、ブロギー!」

「頭たち、俺たちは邪魔にならねぇように帰るとする」

「ふたりとも武器が壊れただろ。俺とオイモの武器を置いていくから使ってくれ」

「オオ! またいずれ!」

「必ず再会しようぞ!」

 

 それぞれの武器を、ドリーとブロギーに手渡し、後の再会を約束してオイモとカーシーは笑顔でエニエスロビーへと戻っていった。

 

 

 

 




オイモとカーシー:だってコイツら、パンダが長勤めるエニエスロビーに10年以上いるんだもん……そりゃ、パンダ塾で鍛えられてるよ。両者ともにパンダに簡単な武術などを教わっており、原作と比べてかなり強くなっている。パンダにも恩があるため、情報は漏らさないようにしつつルフィたちに警告した。

ドリーとブロギー:それぞれブロギーがオイモのこん棒を、ドリーがカーシーの斧を受け取って、決闘を再開した。

麦わらの一味:焼き鬼切りできなかった。パンダ情報+1

Mr.3:……巨人4体とか、聞いてないんすけど……。

ミス・ゴールデンウィーク:あの……台詞のひとつも……。

Mr.5:ひょっとしてこの世界線ではウィスキーピークと続けて、連続でのワンパン敗北なのでは?

ミス・バレンタイン:おっと、トントンの実の下位互換とか言うなよ。いいか、トントンの実はたしかに万トンとか、こちの上限の1000倍以上の威力があるかもしれないけど、トン単位での調整だから、微調整はこっちの方が上だから! あとトントンの実はたぶん、軽くなることはできないはずだから! マッハ・バイスは驚異的な脚力で飛んでるって設定があるし……「ふよふよ」って擬音? 知らねぇな……ズシズシの実? おい、それ以上はやめろ、泣くぞ?
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