闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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閑話・スカイピアでの一幕

 

 

 グランドラインを旅する麦わらの一味は、アラバスタにて王下七武海の一角であるクロコダイルを打ち破り、アラバスタでの内乱を解決に導いた。

 そしてアラバスタにてビビと別れ、次に辿り着いたジャヤにてモンブラン・クリケットと猿山連合軍の協力を経て伝説の空島スカイピアへとやってきた。

 その際に通りがかった天国の門にて入国料として、ひとり10億エクストルを求められたが、麦わらの一行は空島の通貨を有しておらず払うことができなかった。

 実際はベリーでの支払いも出来るのだが、監視官であるアマゾンが聞かれていないのにそれを教えることは無い。

 

 結果支払わないままでも通っていいということで、天国の門を通過することになった一行だが、その際にアマゾンが一言尋ねた。

 

「……お前たちの中に……『パンダ』はいるかい?」

「パンダ? いや、いねぇぞ」

「そうかい」

「う、うん?」

 

 謎の質問であり、ルフィたちは首を傾げることになったが、それ以上アマゾンがなにかを教えることは無く、麦わらの一味は特急エビにてスカイピアへ向かうこととなった。

 その後スカイピアにて偶然知り合ったコニスとパガヤに連れられて、ふたりの住む家に招待されることとなった。

 親切なコニスとパガヤに、麦わらの一味は空島の特産である(ダイアル)に関して説明を受ける。

 

「……うん? 俺これ持ってるぞ? 不思議貝だろ?」

「おや? 音貝(トーンダイアル)をご存知で?」

 

 コニスの説明を受けてルフィがポケットからTDを取り出し、コニスが不思議そうに首を傾げる。すると、他の麦わらの面々も反応した。

 

「TDか……ここ数年で広まったものだが、元は空島のものだったのか」

「なんだそりゃ?」

 

 TDについて知るウソップが納得した様子で頷き、知らないゾロは首を傾げる。

 

「音を保存しておける貝だ。俺としては、むしろルフィがTDを持っていたことに驚きだけどな」

「ああ、貰ったんだ……」

「でもこれがダイアルなら、これでウェイバーが動くとは思えないけど」

 

 ウソップの言葉に、ルフィがどこか懐かし気に呟いたあと、ロビンがコニスに尋ねて話は他のダイアルについてのものへ移り変わっていった。

 その後、神の大地。絶対に足を踏み入れてはいけないと言われるアッパーヤードについて警告を受けた際、コニスがチョッパーを見て真剣な表情で尋ねた。

 

「……あの、貴方は他の方と姿が違いますが……もしかして、パンダというのでは?」

「いや、俺はトナカイだぞ!?」

「そ、そうでしたか、すみません」

「……なんだ、あの門でもそんな話を聞いたが、なんでパンダなんだ?」

 

 天国の門に続き、ここでもなぜかパンダという言葉を聞くことになって首を傾げるゾロに対し、お茶を一口飲んだあとでパガヤが説明するために口を開く。

 

「……アッパーヤードの神兵から伝わったと言われていますが、正確には分かりません。神の大地であるアッパーヤードには、ある伝説が存在すると……青海に住み、神すら滅ぼす伝説の魔獣パンダ。パンダの怒りに触れた時、このスカイピアは滅びを迎えると……そう言われています」

『いや、なんでだよ!!』

 

 パガヤの説明に一斉に突っ込む麦わらの一味。彼らにしてみれば、なぜパンダが伝説の魔獣と呼ばれているのか意味不明だった。

 ただそこに居たメンバーの中でひとり、ロビンだけはなにか腑に落ちないような……なにかが引っかかる様子の表情を浮かべていた。

 

 

****

 

 

 天国の門で入国料を支払わなかったことで不法入国者の扱いとなり、神の島アッパーヤードにて四神官の試練を受けることになる。

 その際に、アッパーヤードがかつてのジャヤの一部であり黄金郷が存在することを確信し、黄金を目指す麦わらの一味。それを察知したエネルと四神官率いる軍団。その混乱に乗じてアッパーヤード奪還を目論む先住民シャンディアの戦士たち……三つ巴のサバイバルが始まった。

 

 壮絶な戦いに多くの者たちが倒れる中、アッパーヤードの中枢にてゾロ、ロビン、ナミの麦わらの一味。シャンディアの戦士であるワイパー。そして先代の神でもあるガン・フォール。

 戦場に立つ5人の前についに神であるエネルが姿を現した。神らしく余裕な態度のエネルに対し、ワイパーは武器である燃焼砲(バーンバズーカ)を構えながら宣言する。

 

「ようやく、ここに……シャンドラにたどり着いた。シャンディアの誇りを胸に……覚悟しろ神エネル。俺が、俺たちシャンディアの戦士が、貴様にとっての『パンダ』だ!」

「……いや、なに言ってんだお前!?」

 

 勇ましく宣言するワイパーに思わずといった様子でゾロがツッコミを入れる。それに対し、エネルは心底楽し気な様子で笑みを浮かべた。

 

「ヤハハハ、お前がパンダだと? 愚かな……貴様らはパンダというものが、どのような存在かまるで理解しておらんとみえる。貴様ら程度の力でパンダを名乗るなど、呆れを通り越して笑えてくるわ」

「いや、こっちもこっちで、なんであたり前みたいに普通に返してんだ!?」

 

 ワイパーのパンダ宣言だけでも驚愕だったのに、さらには神であるエネルも神妙な表情を浮かべており、ガン・フォールもまた何か思い至るかのような表情……ゾロ、ナミ、ロビンの3人は、なんとも言えない気持ちを感じていた。

 

「なんだこれ、俺がおかしいのか……」

「安心して、剣士さん。私と航海士さんも付いていけてないわ」

「……いまばっかりは、すげぇ心強い」

 

 なんでこいつらはこんなにも真剣な顔でパンダについて話しているのかと、完全に置いてけぼり状態の3人をよそに、エネルは静かに語り始めた。

 

「私はかつて一度、パンダに会ったことがある。恐ろしかった……心の底から恐怖した。神であるこの私が、必死に媚び諂うことしかできなかった。だが、それを恥だとも感じないほど……パンダとは圧倒的な存在なのだ。人の形をしていてもアレは完全に別種……まさに、全てを滅ぼす魔獣よ」

「……人の形……」

 

 重々しく告げるエネルの言葉……そこに含まれていた「人の形」という一言に、ロビンが考えるような表情を浮かべる。

 そしてエネルは、ゾロたちの方に視線を向け、どこか穏やかな表情で笑みを浮かべた。

 

「……実はな、これでも私は不安だったし、少々恐怖もしていたのだ。青海人が来たと聞いて、あれほどの怪物が住む青海の者は、もしかして私が想像している以上に強大な力を持っているのではないかと……あのパンダが別格としても、その100分の1の力でも持った者が居れば、私は負けてしまうのではないかとな……ああ、だから、本当に安心した」

「……どういう意味だ?」

「貴様たちが弱くて心から安堵したと言っているのだ。やはり、あのパンダが特別凄まじいだけで、他の青海人は、神たる私に抗えるような存在ではないと確信できた。おかげで予定通り計画を進められそうだ」

 

 そう言って笑いながら己の計画、空島を無に帰し己が限りない大地(フェアリーヴァース)に辿り着き、新たな神の国を作り出す計画を語った。

 そしてエネルは、もはや己に障害は無いと余裕な表情で、立ち向かってくる4人をその圧倒的な力で粉砕していった。

 

 

****

 

 

 スカイピアすべてを無に帰そうとする神エネルとの戦いは、麦わらのルフィの活躍により決着した。エネルは倒れ、400年の時を経て黄金の鐘は鳴り響いた。

 その夜は島を上げての盛大な宴が行われ、ルフィたち麦わらの一味は早朝に大蛇の腹の中から黄金を回収して旅立った。

 世話になったコニスとパガヤと共にスカイピアの下層である白海を行くゴーイングメリー号の上で、ゾロは怪訝そうな表情を浮かべて呟いた。

 

「いろいろ謎は解けたが……結局、あのパンダに関する謎だけは残ったな」

「そうね。単なる冗談だと思いたいけど……あの天敵であるルフィ以外には、ほぼ無敵とも言えたエネルが、心底恐れているように見えた。本当にそんなパンダが存在するのかしら?」

 

 ゾロの言葉に、同様にワイパーとエネルの会話を聞いていたナミも釈然としない様子で呟く。そのふたりを見て、ロビンは静かに口を開いた。

 

「ねぇ、剣士さん、航海士さん。あの時、パンダについての話の中で……人の形をしていても別種と言っていたのを覚えている?」

「え? ああ、そういえば、そんなことを言ってたような……」

「うん? なんの話だ? パンダは人の形なんてしてねぇぞ?」

 

 ロビンの呟きにナミもあの時の会話を思い出し、そこにサンジや黄金にはしゃいでいた他の面々も近づいてくる。

 

「これは、あくまで私の推測なんだけど……もしかしてパンダっていうのは、種族のことじゃなくて……名前なんじゃないかしら?」

「……んん? つまりアレか、ロビンちゃん。伝説の魔獣ってのは、俺たちがよく知る動物のパンダじゃなくて、パンダって名前の誰かだってことか?」

「……あくまで推測でしかないし、結局詳細は分からないままだけどね」

 

 そう言って話を締めくくった後、ロビンは再び黄金についての話で盛り上がる面々を横目に、視線を空に向ける。

 

「……パンダ……名前……恐ろしい存在」

 

 そこまで呟いたところで、ロビンの頭にはかつてクロコダイルと交わした言葉が思い浮かんだ。あのクロコダイルが心底恐れている様子だった相手。司法の島エニエスロビーに君臨するCP9司令長官の名……。

 

「……スパンダム?」

「え? どうしたの、ロビン?」

「ああ、いえ、なんでもないわ……」

 

 強張った表情を浮かべていたロビンにナミが不思議そうに問いかけるが、ロビンはなんでもないと苦笑しつつ首を横に振った。

 

(……CP9の司令長官が空島に来る理由があるとも思えないし……考えすぎ、よね)

 

 

 




スパンダム:空島に伝わる伝説の魔獣パンダ。なんか数年ですごい伝説みたいに語られてるのは、神への恐怖の裏返しかもしれない。

麦わらの一味:空島ではたびたび宇宙猫状態だった。パンダ情報+1

ゾロ:……こいつら、真顔でなに言ってやがる? 俺が、俺がおかしいのか?

ロビン:正解に辿り着きかけるも、パンダが空島に来た理由が不明。なぜスパンダムではなくパンダと呼ばれているのかも不明ということで、気付けなかった。まさか、リリスが一緒に居てパンダ呼びしていたせいなどとは、さすがのロビンでも想像できない。

ワイパー:俺が、俺たちが、パンダだ!

エネル:パンダを無礼(なめ)るなよ、若造。
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