闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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ルフィと共にバーベキュー

 

 

 偶然の遭遇、そして当たり前のように名前を呼んだ俺に対し、ルフィは首を傾げる。

 

「……誰だお前? なんで俺の名前を知ってるんだ?」

「ああ、知り合いから聞いてな。それ以上にお前は手配書が回ってるお尋ね者なんだから、知っていても不思議じゃないだろう。まぁ、その辺りは食べながら話そう。座るといい。ほら、この辺りの肉なんか食べごろだぞ」

「食っていいのか!? お前、いいやつだな!」

 

 基本的に肉が大好きなルフィは俺の言葉に従って対面の席に座る。そんなルフィの前に金網の上から、焼き加減のいい肉を取って皿に載せた上で渡してやる。

 もちろんルフィが大食いなのも分かった上で多めに載せ、新しい肉を金網の上に載せるのも忘れない。

 ルフィがその肉を美味そうに食べ始めると、そのタイミングでポチが大量の肉を持って戻ってきた。流石に仕事が早い。

 

「ああ、紹介しておく。彼女はチェルシー、俺の補佐だ」

「そうか、よろしくな」

「ええ、こちらこそ」

「追加の肉を買ってこさせたからな、好きなだけ食べるといい」

「なに!? 腹一杯食ってもいいのか?」

「ああ、もちろんだ」

「お前、本当にいいやつだな! ありがとう!!」

 

 微笑みを浮かべつつポチに目配せをして、ポチが肉を焼き始めるのを横目に見ながら、肉を食べるルフィに声をかける。

 

「それで、話を戻すが、お前のことを聞いた知り合いというのが複数いてな。まずは、海軍のガープ中将」

「げっ!? じ、じーちゃんの知り合い……海兵なのか?」

「いや、同じ世界政府所属ではあるが海兵じゃない。ガープ中将とも以前少し話した程度で、それほどよく会うわけでもないしな」

 

 やはりガープに対する恐れはあるようで、一瞬表情を硬くしたルフィだったがすぐに安心した様子で肉を食べ始めた。

 まぁ、別に祖父を嫌っているとかではないのだろうが、なんだかんだで苦手意識があるのだろう。

 

「次に、赤髪のシャンクスだな」

「シャンクス? お前、シャンクスのこと知ってんのか?」

「ああ、とはいえシャンクスともそれほど頻繁に会うわけでは無い。お前の話をよく聞くのはもうひとり……ウタからだな」

「……ウタ」

 

 おや? これは少し想像とは違った反応だ。ガープやシャンクスと違い、ウタの名前を聞いた時の反応に若干ではあるが「会いたい」という気持ちが見え隠れしていた。

 本人から聞いた話だが、ウタはフーシャ村のルフィ宛に手紙とTDを送ったらしく、それが影響しているのかもしれないがFILMREDで描かれていたよりも、少しウタに対して関心が強いように思える。

 

「ウタの方はたまに会う知り合いだが、お前の手配書が出た時なんかは嬉しそうに話してたよ。幼馴染であることとか、自分が183連勝していることとかな」

「違う! 俺が183連勝中だ!」

「それを俺に言っても仕方ないだろう……まぁ、ウタは現在エレジアという国がある島で歌手活動をしている。もし航海の途中で立ち寄ることがあれば会いに行くといい。きっと喜ぶ」

「ああ」

 

 しかし、ウタのこともそうではあるが、それ以上に少しルフィの様子で気になる部分があった。だが、それにツッコむのはいまではない。何事もタイミングというのは重要だ。

 そのまましばらく、肉を食べながらルフィと雑談をした。シャンクスやウタの話も含めて、会話はそれなりに弾み、場の空気がよくなってきたタイミングで後回しにしておいた話題に触れることにした。

 

「ところで、肉は美味いか?」

「ああ、すげぇうめぇ! この水水肉ってのも滅茶苦茶うめぇな!」

「そうか、気に入ったならなによりだ。だが、その美味い肉を食べている割に……時々なにか浮かない顔をしているが?」

「……」

 

 ルフィは基本的に前向きで切り替えも早い人物であり、ひとつのことに深く思い悩むということは少ない。だがもちろん例外も存在する。

 原作においても兄であるエースが死んだときにはすぐには立ち直れないほどの精神的なダメージを受けていたし、それ以外でも少ないとはいえ思い悩む場面はあった。

 そして、このウォーターセブンにおいても、珍しく深く悩み、仲間との絆に亀裂が入るほどの事態に発展した出来事があった。おそらくそれが関係しているのだろう。

 

「……話してみるといい。そういう悩みというのは、時にまったくの第三者に話すと解決の糸口が見つかったりするものだ」

 

 ここまでのやり取りで俺をある程度信用していたこともあって、俺の言葉を聞いたルフィはポツポツと話し始めた。

 ゴーイングメリー号が限界であること、船をどうするかを明日仲間たちと話し合うこと、自分が船長としてしっかり決断をしなければならないことなどを……そしてなにより、深く悲しむウソップにどう接していいかという悩み。

 一通りの話を聞き終えた俺は、一度頷いてから口を開く。

 

「……なるほどな。船長として責任をもって決断する。仲間を気遣う……それ自体は立派なことだ。だが、時にそういう気遣いが逆効果になる場合もある」

「……そうなのか?」

「ああ、もちろんそのウソップという仲間も辛いだろうが、お前だって最初からその船と一緒に旅をしてきたんだろ? 同じぐらい辛い筈だし、いろいろと後悔もあるだろう。あの時ああしていれば、もっと丁重に扱っていればと……」

 

 俺の言葉に思うところがあるのか、ルフィは少し顔を俯かせる。俺は軽くドリンクで喉を潤わせてから、言葉を続ける。

 

「……船のことは全て決め、強引にでも仲間を引っ張っていく、なにもかも己のコントロール下に置こうとする船長も確かに存在するし、別にそれが間違いとは言わない。だが、お前はひとりでアレコレするタイプの船長ではないだろう?」

「ああ、俺は仲間が居ねぇとなんもできねぇ」

「なら、お前がすべきことは単純だ。お前がするべきなのは、そのウソップを気遣って気丈に振舞うことじゃなくて……『一緒に泣いてやる』ことだ」

「一緒に……泣く?」

「ああ、そのウソップはいま不安なんだろう。こんな気持ちなのは自分だけじゃないのかとか、仲間たちは既に新しい船に乗り換えることしか考えてないんじゃないかとか、そうではないと頭では理解しつつも感情を制御できていないはずだ」

 

 これもおそらく間違いは無いだろう。原作においてもウソップはゴーイングメリー号の限界に気付いていながら、それでも受け入れることができなかった。

 だがそれ以上に、ルフィが早々に新しい船に乗り換えるという決断をしたことに怒っているような雰囲気だった。もちろんルフィの判断は正しいし、辛いであろうウソップのために努めて明るく振舞おうとしていたのは理解できる。

 だが、ルフィはそこで船長として感情を抑えるべきではなかった。

 

「だからウソップに必要なのは、気遣いではなく共感だ。お前だって本当は船を乗り換えたくない、悲しく悔しいって気持ちを話してやれ。仲間を、ウソップを大切に思うのなら、お前の弱さを見せてやるべきだ。難しく考える必要はない。じっくり仲間たちと思い出話でもすればいい。その船での旅を思い返して、語り合えば……自然と弱さも顔を出すだろう」

「……」

 

 俺の言葉を聞いてルフィは真剣な表情で考え込む。ルフィは単純な思考をしてこそはいるが、決して考えられない人物ではない。考えるべき時はしっかり考え、最善を選ぶことも出来る。

 なによりもルフィは己が間違っているということを受け入れられる人物であり、こうした他者からのアドバイスを認められる強さもある。

 少し考えたあとでルフィはスッと椅子から立ち上がった。その目にはもう迷いの感情は見えなくなっている。

 

「……ありがとな。おかげで、どうすればいいか分かった」

「そうか、それならなによりだ……ポチ、余った肉を渡してやれ」

「はい」

「貰っていいのか?」

「ああ、かなりの量があるし、仲間たちと一緒に食べるといい。海賊が過去を語るなら、宴ぐらいの場は必要だろう。仲間内で宴でも開いて思い出話に花を咲かせるといい」

「ししし、お前、本当にいいやつだな……ありがとう、貰っていく」

 

 ポチが用意した大量の肉……俺が大量と指示を出したせいで、相当の量を買ってきていたので、麦わらの一味全員で食べても余るぐらいの量の肉を大きな袋に入れてルフィに渡す。

 巨大な袋を担ぐように持ちながら、ルフィは明るい表情でお礼を口にしたあとで、ふと思いついたように告げた。

 

「……あっ、そういえばお前の名前をまだ聞いてねぇ」

「そういえば、名乗ってなかったな。俺の名前はスパンダムだ」

「スパンダ……うん? あれ? どっかで聞いたことがあるような……う~ん」

「呼びにくいならパンダでもいいぞ、そう呼ぶ奴もいるからな」

「なんだそれ、面白れぇな! パンダ……うん? あっ、思い出した!?」

「うん?」

 

 突然なにかに気付いたように叫んだルフィの言葉に首を傾げる。パンダという言葉を聞いて思い出す? なにをだ?

 

「アレだ! 空島で噂になってた伝説の魔獣パンダって、お前のことだろ!」

「空島で噂? 伝説の魔獣? なんの話だ?」

「空島で青海に伝説の魔獣パンダが居るって噂があったし、それ以外にもゾロやロビンが言ってたんだ。エネルって奴がいたんだけど、そいつが滅茶苦茶怖がってるつえぇパンダが居るって。それお前のことじゃねぇか?」

「……ふむ。たしかに以前空島には行ったし、エネル……かどうかはわからないが、神と名乗るやつには会ったな。少し話した程度だが」

 

 ……空島で魔獣として伝説になっている? エネルが恐れているというのはまだ分かるとして、魔獣パンダの噂とはいったい。

 そこまで考えたところでふと思い至った。そういえば、空島に行った際に俺はエネルに対して名乗っていなかったが、一緒に居たリリスが俺をパンダと呼んでいた。

 だから、エネルはそのパンダというのが俺の名前だと思ったわけだ。そして配下の神官たちに警戒するように伝えたりした。

 だがパンダと聞いて普通に連想するのは動物の方で、それが変な伝わり方をしたせいで青海にはそういう魔獣が住むってことになったのかもしれない……うん、まぁ……ちゃんと名乗らなかった俺が悪い。リリスを責めたりするのはお門違いだ。

 

「やっぱりなぁ。けど、お前なら伝説になるのも納得だ」

「そう思うか?」

「ああ、お前すっげぇ強そうだし……前に会った海軍大将よりも、じいちゃんよりも、もっとずっとつえぇ……こんな滅茶苦茶につえぇ奴は初めて見た」

 

 そう言って笑うルフィに悪感情は見えず、単純にこちらを賞賛している感じだった。おそらくここまでのやり取りで「いい奴」判定を受けたためだろう。ルフィはあまり海兵だとか役人だとかは関係なく、好きなやつは好き、嫌いなやつは嫌いってスタンスだしな。

 

「それじゃ、いろいろありがとうな、パンダ」

「ああ、気にするな。また縁があればどこかで会おう」

「おう! それじゃ、またな~!」

 

 大きな荷物を担いで人好きのする明るい笑顔で手を振って去っていくルフィを、俺も軽く手を振って見送った。そしてルフィが完全に見えなくなってから、深く笑みを浮かべる。

 

「……隊長、楽しそうですね?」

「ああ、適当に振ったサイコロが、思わぬいい目を出してくれたからな……さて、仕切り直しだ。ポチ、お前も座れ」

「はい!」

 

 ああ、本当に思わぬ収穫だった。ここで、このタイミングでルフィに会えたのはかなり素晴らしい偶然だった。しかも、他の要素も最高と言っていい。

 本当に……魂の情報を見て行う能力再現。直接触れて魔力を込めれば早いのだが、触れずに行うとなると俺からかなり近く、それこそ数メートル以内の距離に長い時間留まっておいてもらわなければできない。

 

 だから、今回の状況は最高だった。バーベキューという肉を焼いて食べるという性質上、ある程度時間がかかる食事方法。さらに共通の知り合いの話題での雑談。ルフィが珍しく悩みを抱えていたことでこちらに相談してアドバイスを受ける。

 あまり落ち着きがあるとは言えないルフィが、至近距離にジッと長時間留まっていてくれるシチュエーションなど、そうそうない。

 

 おかげで直接触れて違和感などを持たれることもなく、能力をコピーすることができた。戦闘面ではそれほど意味はないが、主人公の持つ能力なので今度どこかの場面で、有益に働く可能性は十分にあるし、持っておいて損はない。

 できれば神に関わる類の能力は、一通りコピーしておきたいところではあるが……不明な部分も多いし、とりあえずいまはニカの能力を魔力で再現できるようになったという、棚ぼたともいえる結果に素直に喜んでおこう。

 

 

 

 




スパンダム:狂パンダ。ニカの能力を再現可能になった。思わぬ棚ぼた展開に極めて上機嫌で、ルフィにも大変優しく接した。空島での噂だけは、さすがのパンダでも予想外だった。

ポチ:加減を知らない忠犬。パンダが大量に買ってこいって言ったので、マジでギャグみたいな量を買ってきた。

ルフィ:青雉の忠告はすっかり忘れてたが、変なとこだけ覚えており空島のパンダだけは覚えていた。肉を食べさせてくれて、相談にも乗ってくれて、お土産に肉をくれた……めっちゃいい奴じゃないかと、パンダの評価は爆上がりである。

トットムジカ:(っ・ω×c)ジーッ(能力コピー中)……(●>∀×●)b 完了!

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