ワンピースの世界において神の名が付いている能力は、考えるまでもなく重要な要素だと思う。ルフィの太陽神ニカの他に、黒ひげの能力やバギーの能力がそうなんじゃないかと考察されていたりもした。
バギーの能力に関しては諸説あるが、大きな要因はインペルダウン編でのモノローグだ。インペルダウン編では、一部の能力者に関してモノローグで能力説明を行っていた。
その説明において、ボン・クレーやクロコダイルはそれぞれ「マネマネの実」「スナスナの実」の能力解説と書かれていたが、バギーの能力解説の部分だけは「バラバラ」の能力解説と「実」の一文字が入っておらず、ルフィのゴムゴムの実と同じくフェイクネームではないかと考察されていたりした。
まぁ、気になりはするがバギーとの接点は本当にないし、インペルダウン編が発生しなければ檻の中にいたままだろうし、機会があれば秘密裏に面会でもして能力をコピーするのもいいかもしれない。
そんなことをぼんやりと考えつつ、とある建物の屋根の上で棒付きキャンディーを咥えながら見聞色の覇気を広げる。
俺と話したあとでルフィはアドバイスを実行し、仲間と涙ながらにゴーイングメリー号の思い出について語り合った様子で、ウソップが一時離脱するようなことは無かった。
だが、運命の補填となり得る戦いはやはり発生する様子で、翌日チョッパーとロビンが街に出ている際に海賊連合の襲撃を受けた。
応戦するチョッパーとロビンではあったが、なんの能力かはわからないが、相手をキューブ状にして捕らえる悪魔の実の能力によってロビンが捕らえられてしまう。
チョッパーが必死に救出しようとするも逃げられ、ロビンを連れ去られてしまう。チョッパーはすぐに麦わらの一味の元に戻って涙ながらにロビンが攫われたことを伝えた。
もちろんルフィたちが動かないわけがなく、ロビンを救出に向かうことになるのだが……相手がどこにいるか分からない。そこで、フランキーを頼ることになり、フランキーの案内で街の情報屋を当たった結果、海賊連合という存在について聞かされることになった。
海賊連合はウォーターセブンからカーニバルの町サン・ファルドに向かう途中にある島を拠点としている情報を掴み、そこに乗り込むことになった。
だが今晩はアクアラグナにより出航が禁じられており、海賊連合の面々は海列車の最終便でウォーターセブンを出ている。サン・ファルドに向かうためのログもなく、追う方法が無いという状況だったが、フランキーの子分より話を聞いたトムが線路試験走行用の海列車を貸してくれることになり、その海列車によって後を追うことになった。
ルフィたちを気に入っていたフランキーも協力を申し出て、フランキーを慕う子分たちも参戦することになって、先行する海列車を追って試験走行用車両が出発したという状況だ。
流石運命の補填だけあって、原作の状況に似通っている部分も多い。だが、差となる部分も多い。ウソップが離脱せずに一味と共に居ること、サンジやフランキーもルフィたちと同じ車両で追っていること、使う車両がロケットマンではなくここ2年で作られた試験走行用の車両であることなど、違いはある。
「……さて、ポチ。とりあえずアクアラグナの対応に行くか」
「はい。了解しました。じゃあ、私は小型船を持っていきますね」
「ああ、では、先に行っておく」
ポチと軽く打ち合わせをしたあとで、俺は剃刀で空を駆けて海列車を追い越して、予め予定していた地点に到着する。
海列車の線路からは十分に距離があるため、巻き込まれるようなことは無いだろう。風の強さや空気の状態を肌で感じ、目的となる場所まで海水を飛ばすための角度と力加減を頭の中で計算してから海の中に入る。
軽く覇気を放つことで周囲の海洋生物などを逃げさせたあとで、水心を用いて海水を掴み、海流一本背負いの要領で海水を空に放り投げる。
周囲の海水が空に飛んでいったことで、一時海に巨大な穴が開く。飛んでいく海水の角度が問題ないことを確認して、次の地点に向かう。
それを何度か繰り返せば、今年のアクアラグナへの対策は終了だ。丁度そのタイミングでポチが小型船を担いで持ってきたので、そこに降りる。
「隊長、お疲れ様です。タオルを……着替えも用意してあります」
「ああ、悪いな。海流などの動きは問題ないか?」
「はい。問題ないです。海水の流れ込みも安定してます」
今回はアクアラグナの規模が大きめだったので、例年より少し穴の数を増やした。事前にちゃんと計算して行っているが念のため少し様子を確認してから、着替えるために船室に入る。
着替えを終えて甲板に出る。空は曇っているが雨は降ったりしていない。あと、一部の雲は吹き飛んだので多少晴れ間もある。未来視でもしばらくは雨が降る様子はないので、このまま甲板に居てもいいだろう。
そう思っているとポチがコーヒーを用意してくれたのでそれを受け取り、同じくポチが用意した椅子に座る。例年ならこのままエニエスロビーに戻るところではあるが、今回は海賊連合との戦いを見届けて帰るつもりだ。
ある程度拠点となる島が近づいたら、月歩で上空から見るつもりではあるが……麦わらの一味が敵の拠点に着くまではのんびりしておこう。
そんなことを考えていると、不意に遠方からこちらに向かってくる気配を感じた。
「……ポチ、コーヒーをもうひとつ用意してやれ、タマが来てる」
「タマさんが? 分かりました」
ちなみにではあるがタマに関しても、なかなかの狂気だったこともあってルッチと同じタイプの改造を施しており、剃刀で島から島への移動もお手の物だ。
最初に施した際には、ポチと同じような狂信的な目を向けてきていたので、もしかしたらいずれは細胞式にも耐えれる可能性もあるが、その辺りは様子見だな。
「……来たな、タマ」
「どもども、貴方のタマですよ~」
「こんにちは、タマさん。コーヒーをどうぞ」
「ありがと~。ん~やっぱり、チェルシーちゃんのコーヒーは美味しいなぁ」
甲板に降り立ったタマはニコニコと笑顔を浮かべながら、ポチが用意したコーヒーを飲む。相変わらずのほほんとしているというか、気楽な感じの奴ではあるが極めて優秀ではある。
「……それで?」
「はい。報告です。海軍本部が海賊連合の動きに感づいて、本部から近いこともあって中将2名と艦隊の派遣を決定しました」
「なるほど、確かに本部から近いな……」
つまり、麦わらの一味、海賊連合、海軍の三つ巴の戦いになる可能性も高い。ただ、タイミング的に考えると海軍側の到着がやや遅くなりそうだ。
原作のバスターコールに比べれば少ない戦力ではあるが、海賊連合も居るので合わせれば原作に近い規模になるかもしれない。
「派遣される中将と船、海賊連合の拠点の情報や周辺の海図、後ついでに海賊連合の情報もこちらに~」
こちらが欲しいと思っている情報を、予めしっかり仕入れてきているあたり相変わらず有能なやつである。しかも、タイミング的に少し前に決定したであろう緊急出動の要因も即把握するほどの情報網。本当にポチやリリスとは別の面で極めて有益な存在である。
「そうか、ご苦労。お前も、時間があるなら見学していくか?」
「はい。楽しそうですし、ご一緒しますよ」
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ロビンを連れ去った海賊連合の下に向かう麦わらの一味とフランキー一家。試験走行用の海列車をフランキーが運転し、目的となる場所まで向かっている最中、周囲を観測していたウソップが叫びを上げる。
「なな、なんじゃありゃぁぁぁ!?」
「……え? なにあれ……海流が空に……ノックアップストリームの亜種? いえ、あんな角度で飛ぶなんてありえない」
遥か遠方で分厚い空の雲を吹き飛ばして天へと昇る海流が見えた。それはまるで天に向けてのぼる龍のようでもあり、ウソップの声で視線を向けたナミも大きく目を見開いて呟く。
他の面々もその凄まじい光景に唖然としていたが、ひとり運転席のフランキーだけはその正体を知っており、説明するように口を開く。
「……アレが街で言われてる青い流星の正体だ。アレはなぁ……あるバケモノが、海水を放り投げてるんだよ」
「放り投げるって……どこに?」
「数百キロは離れた遥か遠方の海域だな。結局のところ、政府の言う新技術ってのは嘘で、アクアラグナに関してはひとりのバケモノがなんとかしてるんだよ。いちおう公言するなって言われてるから、おめぇらも広めねえように気を付けろ」
「嘘でしょ……あの規模の海水を数百キロ以上? ど、どんな力で投げればそんなことが……」
フランキーの説明を受けて、ナミがより驚愕した表情を浮かべる。まるで理解できないと言いたげなその表情に、フランキーも頷きつつ告げる。
「信じられねぇ気持ちは分かるが、考えるだけ無駄だ。エニエスロビーの長官のスパンダムってやつが、やってんだが……アレは理解の外側のバケモノだ」
「え? あれ、パンダがやってんのか! やっぱアイツすげぇなぁ……」
「おい待て、クソ船長……その名前には俺たちも聞き覚えがある。青雉の奴が、さんざん忠告していた相手だ。だけど、なんでテメェが、顔見知りみたいな反応してやがる」
「ああ、昨日会ったからな! アイツすげぇ強そうだったし、空島の伝説のパンダってアイツのことみたいだったぞ」
アッサリとそう告げるルフィの言葉を聞き、麦わらの一味は頭を抱えた。
「アイツいい奴だったぞ。肉食べさせてくれたし、お土産に肉もくれたしな!」
「……お前が貰ったって持って帰ってきた肉の出どころはそこだったのか……どうりで、やたら品質のいい高級肉ばかりだと思った」
「……い、いい奴なのか? すげぇ怖いんじゃないのか?」
「チョッパー無駄だ。ルフィにとって肉をくれる奴はいい奴なんだよ……」
呆れつつも納得するサンジ、不安げに尋ねるチョッパーと呆れた表情でつっこむウソップ。これから大規模な海賊連合と戦おうという状況にはとても見えず、フランキーの子分たちは麦わらの一味に大物の雰囲気を感じていた。
「せっかくだ。目的地に着くまで暇だし、そのバケモノの話を聞かせてくれ。特にすげぇ強そうって辺りを詳しくな……」
ゾロが刀の確認をしながらそう告げると、ルフィが頷き一日前にスパンダムと知り合った時のことを話し始めた。
スパンダム:ペットを二匹連れた狂パンダ。仕事も終わったのでのんびり観戦モードに入った。
ポチ:ペット1号。サラッと船担いで海列車追い越して合流とかやってる。
タマ:ペット2号。改造済み、情報関連に極めて強い。全体的な補佐のポチ、開発面に強いリス、情報に強いタマ、戦闘が強すぎるパンダ……完璧な布陣である。
海賊連合:なんか血塗れの海兵だとか、レッドマリーンだとか……どうせ次話にはダイジェストでやられてるので、覚えておく必要はない。
フォート海賊団:海賊連合を構成する3つの海賊団のひとつ。
砦ちゃん:……待ちたまえ、なぜフォート(砦)海賊団とやらを、唐突に出した? 詳しく、詳しく説明してほしい……私はいま、冷静さを欠こうとしている。