闇の正義スパンダム   作:ぬこノ尻尾

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CP5所属と初任務

 

 

 十七歳となり茶色いスーツを黒色に変え、俺は予定通りサイファーポールへと就職した。最初に一月ほどの研修があったが、本当に基礎的なことを学ぶ座学中心なので、なかなかに退屈だった。

 親父は長期任務がどうとか不満そうに言っていたので、このタイミングでオハラの一件が起こったのだろうと思われる。

 そういえば研修に入る前に親父が手配してくれた教官に六式を見せてもらったが、俺の我流の物との差はなかったので、俺は問題なく六式を扱えているということで安心した。

 ずいぶんと面倒見のいい教官だったようで時間があるなら鍛錬を見てくれると言ってくれたが、正式に就職するまでは六式が使えることは黙っておいた方がいいだろうと、断らせてもらった。

 

 研修を終えて俺が配属されたのはCP5……与えられたのは、数人の部下を率いる部隊長だとか小隊長だとかそんな感じのポジションだった。

 いきなり部下を持つ立場だが、元々幹部候補というか指揮官側での採用なので、納得できるポジションではある。

 資料を見る限り、部下には四式使いの男性と三式使いの女性がいて、他三人も諜報員としてはかなり腕に覚えがありそうな印象でなかなか優秀な部下を付けられた印象だ。

 

 そして初めに与えられた仕事が、とある海賊の殲滅……なるほど、意図はある程度理解できた。この人事は明らかにコネ……親父の息がかかっているな。

 基本的にサイファーポールは諜報機関であり、情報収集や潜入あるいは暗殺などならありがちだが、指定した海賊の殲滅などという仕事は、絶対にないとは言わないもののほぼありえない指示だ。

 よほどのことでもない限り、そういった仕事は通常サイファーポールではなく海軍が行う。おそらくこの仕事は他の部署ないし海軍からあえて回してもらったものであり、その意図は……『実績作り』だろうな。

 

 親父の話ではCP5の主官がそう遠くないうちに退職する。そして親父は俺をその後釜に据え、いずれは現在自分が就いているCP9指令長官の地位を俺に継がせる気でいる。

 おそらく内々ではすでに俺がCP5主官になることは決定しているのだろうが、対外的にある程度の実績は必要だ。

 情報収集や潜入は長期の仕事になる場合も多く、短時間で手柄を上げにくいというわけで、手っ取り早く分かりやすい実績を作れる殲滅任務を与え、優秀な部下を付ける方法を取ったのだろう。

 優秀な部下が仕事をこなし、見ているだけの俺に実績が入るという……まぁ、そういう図式だろう。

 

 そんなことを考えつつ、俺はポケットから棒付きのキャンディーを取り出し、包装紙を取ってから咥える。この棒付きキャンディーは最近よく食べている。煙草は匂いが付くので、今後潜入などを行う際に不利になる可能性もあるし、そもそも好きではない。

 ただ、漠然とした思考する時などの口寂しさを解消するために飴を舐めるようになった。別に普通の飴玉でもいいのだが、なんとなく棒付きの方が好きだ。

 棒付きキャンディーを咥えつつ、俺は先日顔合わせを終えた部下のことを思い返していた。

 

 四式使いの男はこちらに対して嫌悪感が隠しきれていなかった。まぁ、俺は明らかなコネ採用だし、そんな相手が上につくというのが面白くないのは分かるが、諜報機関のエージェントがあれほど分かりやすく感情を露わにしているようでは駄目だ。

 見た印象としては自尊心が高いタイプで、四式が使える自分は部隊内で一番上だと思い込んでいる……いや、自分を安心させている感じだな。格下にだけ威張り散らかすような典型的な小物タイプとでもいうべきか、原作の俺とは相性がよさそうな気がする。

 

 三式使いの女は、コネ採用に不快感こそあるが「そういうものだ」と割り切っている印象だった。四式使いの男よりは優秀だと思うが、少し気になる目をしていた。

 どこか劣等感と狂気が合わさっているような、不安定さのある目。資料を見る限り、孤児として世界政府に拾われ訓練施設で鍛錬を積んだ……六式を完全に習得する前に配属されているということは、ある程度の才能はあるが突出しているほどではないといったところだろうか?

 おそらく『ふるい落としによって落ちた側』なのだろう、見え隠れする劣等感と力を渇望するような、昔の俺に少し似た狂気の色はそれが原因だろう。

 

 まぁ、よくも悪くもどちらもCP5内で見れば優秀であることは間違いない。せいぜい任務では楽をさせてもらうことにしよう。

 

 

 ****

 

 

 世の中というものは得てして想定通りにはいかないものだ。俺の目の前で海賊の船長の一撃を受けて、四式使いの男が崩れ落ちる。

 死んではいないようだが、気を失ったみたいだ。これで、四人やられて残りは三式使いの女だけだが、そちらも肩で息をしており完全に押されている。

 

「はーはっはは! どうした政府の犬ども! この程度か!!」

 

 序盤は順調だった。さすがはコネ採用のお守を振られるだけあって部下たちは優秀で、目標の海賊を発見するのも早かったし、戦闘でも圧倒していた。

 事実として相手の海賊団は、船長以外は壊滅状態であり、あとは船長さえ始末すれば任務完了となるわけだが……この船長が部下とはまるでレベルが違っていた。

 というか、正直俺も少し驚いた。まさかグランドライン前半の海を拠点にしており、懸賞金も二千万そこそこのレベルの海賊が『覇気使い』であり、それも武装硬化まで習得したレベルだとは思わなかった。

 

 別に覇気はグランドライン後半……新世界限定の技術ではないし、使えたとしてもおかしいわけではない。実際、世界の武術の中には覇気を覇気とは知らぬまま奥義としている流派もあったりするし、独学で覇気を使えるようになる者も居ないわけではない。

 しかし、珍しいのは事実だ。武装硬化まで出来るのなら、前半の海ではさぞ無双できていただろう。だが、あまり大きな事件は起こしていなかったのか、懸賞金は低いと……なんとも不運な偶然だ。

 楽できると思っていたんだが、残念なことだ。まぁ、初任務でいきなり部下を失うなんて失態を犯すわけにもいかないし仕方ない。

 

 一度溜息を吐いてから、俺は三式使いの女に向かって振り下ろされた剣を指で砕きながら船長の前に立つ。

 

「――なっ!?」

「た、隊長?」

「……下がっていろ、あとは俺がやる」

 

 手短に告げて砕かれた剣を信じられないといった表情で見ている船長に視線を向けると、船長は青ざめた顔で一歩後退した。

 さて、サイファーポールとしての初陣なわけだし、ここはせっかくだから原作のルッチにあやかってそれっぽいことでも言ってみるとするか。

 

「闇の正義を、執行する」

「ッ!?!?」

 

 俺の言葉にビクッと肩を大きく動かした船長は、慌てた様子で体の前で腕を交差させ覇気を纏う。なるほど、たしかに前半の海において覇気は極めて強力だ。

 能力者への対抗策としてだけではなく、剣も弾丸も武装硬化で防御することができたのだろう。

 だが、新世界の基準で見れば目の前の船長の練度は中の下にも満たない……本当に、話にならない。

 

「指銃」

 

 武装硬化した腕ごと指銃で心臓を貫いた。

 綺麗に円状の穴が貫通して絶命した船長が倒れるのを確認したあとで、三式使いの女の方を振り返って告げる。

 

「任務完了だ。遺体は船長のものだけあればいいだろう、それ以外は船ごと沈めて帰るぞ」

「……は、はい」

 

 そう言いながら近くに倒れていた四式使いの男を含めた四人の部下を重ねて持ち上げると、不意にそのタイミングで三式使いの女と目が合った。

 ……『狂った目』をしてやがるな。というか、『いま狂った』のか? なんか少し、面倒なことになりそうな気がするな。

 

 そんなことを考えながら部下と船長の遺体を積んで、CP5の本部への帰路についた。

 

 かくして初任務を終えた俺だが、なんとなく感じた嫌な予感は翌日現実のものとなり……出勤した直後、なぜか三式使いの女が俺の前で、相手に与える社会的ダメージという点においては極めて強力な……土下座の姿勢で待機していた。

 

 ……まだ就職して一月も経ってないけど、有給とれねぇかな……。

 

 

 

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