麦わらの一味との遭遇は当たり前ではあるが、無事に終わった。そもそも、俺の方に敵対する気がないので敵対する結果にはなり得ない。
麦わらの一味は基本善人であるし、そもそも世界政府に積極的に喧嘩を売るような者たちでもない。
ウタの手紙も無事に渡したし、ついでに欲しいと思っていたランブルボールも手に入れた。原作においてはコミカルな面や可愛らしさが強調されているが、チョッパーは掛け値なしに天才だと思っている。
唯一6段階の変身を可能とするランブルボールを自力で作り出したのもそうだが、2年後に至ってはランブルボール無しで6段階に変身するどころか、それぞれ目的に合わせてカスタマイズまでしてのけている。
それだけではなく、スリラーバークでアレだけ血をまき散らしていたゾロを一日で酒が飲めるほどに回復させる。未知のウィルスにその場に持ち合わせたものでワクチンを作る。カイドウにやられて瀕死だったゾロを、短時間でキングと戦えるまでに回復させると……言い出したらキリがないレベルだ。
まぁ、ランブルボールを譲ってもらう代わりにチョッパーの懸賞金についてどうにかすることになったが、これも問題はない。
チョッパーの懸賞金が低い理由は諸説あるし、俺は手配書の発行は部署が完全に違うので細かい理由までは知らないが、俺としては一番有力なのはただの動物を偽って差し出してくる可能性を危惧して、低くしているというものだ。
実際ベポも500ベリーという懸賞金だったので、信憑性は高いとは思うが……チョッパーに関しては大丈夫だ。
ベポはまだ分かる。アレは見た目も体躯もほぼ白熊と言っていいし、高額な懸賞金を付けたらベポと偽って白熊の死体を持ってくる可能性もありええるだろう。
だが、チョッパーの手配書に関して、あの写真を見てトナカイかタヌキを狩って持ってくる奴がいたら、俺はソイツの目と頭を疑う。写真がトナカイの形態ならともかく、あの形態ではただ「奇妙な見た目の生物」としか思わない。
初見でアレをトナカイと判断できる奴はまぁ居ないだろうし、たぬき呼ばわりされることもあるが……たぬきとも別に似ていない。
なので懸賞金を高くしても、似た動物を連れてくるというのはほぼ不可能だろうし、問題ない筈だ。どうしても問題なら、人間サイズの形態や後のモンスターポイントの形態の写真を使えばいい……あと立場的に、ごり押したとしても懸賞金ぐらい変更できるとは思う。
そんなことを考えつつ、目の前に鎮座する巨大な物体を見てため息を吐いた。
「……それで、これはなんだ?」
「新型パシフィスタ。『PX-PE』じゃ!」
「PE?」
「パンダエディションじゃ――あだだだだ!?」
リリスにアイアンクローをかましつつ、バーソロミューくまにそっくりなパシフィスタ……の、カラーリングがパンダっぽくなっているものを見る。
くまなのにパンダとは……呆れて言葉もないが、それ以上に気になることがひとつ。
「それで、そのPX-PEとやらが、俺の家の地下に置いてある理由は?」
「えぇぇ、その前に手を離してほし――いだだ。分かった! このまま言う! いや……別に大した理由じゃないぞ、エッグヘッドに帰らずにここで研究をしていたら、
「……どうしようもないほどの正論じゃないか」
「まぁ、それであんまりにうるさいから、戻りはせんが研究はちゃんと進めるから、わしが進めていた研究の品をこっちに送れと言って、届いたから作ってた感じじゃな!」
俺に頭を掴まれたままドヤ顔を浮かべるリリスを見てため息を吐く。そう、コイツは以前の肉体改造の方法を教え、俺とポチの細胞を少し提供したあと、一度もエッグヘッドには帰らずここに居続けている。
ベガパンクの
なのでコイツはずっと他の
「それで、その研究がこのPX-PEというわけか……」
「その通り! このPX-PEは、従来のパシフィスタを強化改良したもので、その戦闘力は通常のパシフィスタの5倍以上! まぁ、製作費は7倍かかるから、パシフィスタで対処できない強敵用という感じじゃな」
「……なるほど、コンセプト的には納得できる」
「徹底的に強度とパワーを上げて、レーザー兵器なんかを搭載せずに近接戦に特化させた。まぁ、遠距離攻撃は他のパシフィスタに援護させればいいからな」
たしかに、通常のパシフィスタを破壊できるレベルの相手に対して、強化型を当てて通常機で援護するというのはコンセプトとして正しいし、実際に有効だろう。
カラーリングがパンダなのだけ、納得はできないが……まぁ、いいだろう。
「それをここで作っていたのか?」
「いや、元々ほぼ完成はしていたんじゃが、最後の仕上げに時間がかかっててな」
「仕上げ?」
「……黒と白の配色の割合に悩んでいてな」
「相変わらず訳の分からん完璧主義だな。まぁ、それはいいとして、コレを見せるためだけにわざわざ呼んだのか?」
リリスが妙なところで完璧主義なのは知っているので、パンダカラーの配色を悩んでいたと聞いても納得できる。だが、それはそれとして、今回俺にコレを見せた理由はなんだろうか?
パシフィスタはCPではなく海軍に配備される兵器であり、俺にプレゼンする意味はない。
「いや、ちょっと強度実験に付き合ってほしくてな……あっ、これじゃないぞ!? コレ、マジで高いからな! 壊さないでくれ!!」
頭を掴んでいたリリスの手を離すと、リリスは研究室内にあるモニターに近付きなにかを操作する。すると壁がスライドして、いくつかのプレートのようなものが出てきた。
……本当にコイツ、人の家の地下を好き勝手に改造してやがるな。
「……このプレート……まぁ、新型装甲に使おうと思ってるものなんじゃが、いろいろデータが欲しくてな。まず一枚目は壊してみて欲しい。二枚目はへこませる程度、三枚目は壊れない程度……パンダは力加減も完璧じゃし、できるじゃろ?」
「ふむ……まぁ、いいだろう」
リリスがエニエスロビーに居座っているのをいいことに、いろいろと研究もさせているので、このぐらいの要望は聞いてやっても問題はない。
まず最初に一枚目のプレートの前に立つ。プレートはかなり分厚く、軽く触れてみたがかなりの硬さだ。
「壊し方に指定はあるか?」
「跡形もなくなるとか、そういうのは止めて欲しいな。それ以外は特にない」
「そうか、ならこれでいいか……
俺が呟いて腕を振るった瞬間、目の前のプレートに大きな円状の穴が開いた。
「……パンダ、なんじゃその凄いの? 新技か!?」
「いや、六王覇銃は規模が大きく対単体には向かない。指銃は暗殺には適しているが、急所を正確に撃ち抜かないと決定打になりにくい。これは正面切って、雑にかつ確実に相手を処理する時のための技だ」
「詳しく、説明たのむ!」
「大した原理は無いぞ? 指銃を応用して撃つパンチでジュゴンというものがある。これは、そのジュゴンに回転を加えて貫通力を高めたものだ」
「あ~オチが読めてきたんじゃが、それはつまり……」
「早い話が、ただのコークスクリューパンチだ」
「……お前ただのパンチでこんなことできるの? マジで、全身兵器じゃないか……」
呆れたようなことを言いつつも、嬉しそうにデータを取っているリリスを横目に、ある程度要望に応えつつしばらく実験に付き合った。
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実験が終わり、モニターに向かうリリスを眺めていると、リリスの通信機が着信を知らせ、リリスはデータ入力をしながら通信を始めた。
「なんじゃ、
……どういう会話だ。通信機に怒鳴るリリスに呆れつつ、俺はリリスの手から通信機を取って耳に当てる。
「シャカ、聞こえるか? 俺だ」
『ああ、スパンダムか……
「いや、それは構わないが……同期が必要なら、強制的にそちらに連れて行こうか?」
『……月に1度で構わないので、同期だけしに連れてきてくれると助かる』
「わかった。そうしよう。なかなか、手を焼いているみたいだな」
俺はパンクハザードに足を運んだりもしていたので、シャカとも面識はある。主に話すのはリリスではあるし、他の
『たしかに手は焼いているが、我らの中で一番面白い変化を遂げているのが
「ふむ」
『お前と接することによって、かなり思考に変化が起きているみたいでな。以前より勝手な行動が増えたが、他の
少し小声だったのは、近くにいるリリスに聞こえないようにするためだろう。リリスが聞けば、これ幸いと好き勝手しまくると分かっているのだろう。
なんというか視点が親のような……まぁ、ある意味ではベガパンクはリリスの親と言ってもいいかもしれないが……。
そんなことを考えていると、通信機の先のシャカが、静かな声で告げた。
『……スパンダム。私は願う……君が世界を敵と定める日が来ないことを……』
「願うのは自由だ。好きにしろ」
『ああ、それでは、
そう言って、通信は終了した。世界を敵と定める日か……俺に訪れるであろう二通りの未来のうちのひとつではあるが……さて、どうなることやら。
スパンダム:狂パンダ。なんだかんだでリリスとの付き合いも長いので、ある程度優しく実験にも付き合ってやる。
リリス:今の頭の中はパンダ一色! 何度も脳を焼かれた影響か、他の
シャカ:なんだかんだで子を見守る親のような心境……それはそれとして、ドラゴン……止めとけ、せめて方向を変えろ……パンダはマジヤバいから……。
PX-PE:パシフィスタ・パンダエディション。近接特化型のパシフィスタで、通常のパシフィスタの5倍の戦闘力を誇る。リリスが個人で発展改良させたパシフィスタであり、パンダカラーなのはリリスの趣味。名前もリリスが勝手に付けた。