エニエスロビーの長官室で、俺は一枚の報告書を見ながら考え込んでいた。コレはいったいどういう状況だと、頭に湧き上がってくるのは疑問が多い。
まず前提としてシャボンディ諸島にて、ルフィによる天竜人殴打事件は発生した。それは問題ない。原作通りの展開だし、くまが現れて麦わらの一味を逃がしたという報告もあるので、原作通りに進んでいたはずだ。
しかし、黒ひげを始末したことによりエースは海軍に捕らえられてはいない。そしてエースが捕らえられていないのであれば、インペルダウン編も発生しない。
なので、予想として海賊連合のような補填となるイベントが発生するのではないかと予想はしていたが……まさか、ルフィが黄猿と再び戦うことになるとは思わなかった。
場所的にはアマゾンリリーからシャボンディ諸島の間にある場所なので、ルフィが飛ばされたのは原作と同じようにアマゾンリリーだろう。だが、その後の流れが大きく違う。
場所的に考えて、エースの件がないため真っ直ぐシャボンディ諸島に向かおうとしていたのだろうが、その途中で天竜人にも通じていると思われる闇のブローカーと戦ったらしい。ボア・ハンコックが居たという情報はないので、はぐれた先で戦いに発展したと考えるべきか……。
しかも、その戦闘においてルフィの援護としてエースとジンベエが加わった。タマの集めた情報によると、どうもそのブローカーは過去にフィッシャータイガーが天竜人の奴隷となった件に関わっていたようで、ジンベエにも戦う理由が存在した。
だが天竜人に通じているブローカーであるなら、当然海軍にも伝手があり、更にルフィは天竜人を殴り飛ばす事件を起こしているため、その場に黄猿が現れた。シャボンディに続いて、黄猿も忙しいことだ。
ルフィ、エース、ジンベエの3人と黄猿の戦いとなったが、少なくともそのメンバーの中では覇気が使えないルフィは一歩劣ると言ってよく、劣勢に追い込まれたようだ。
そこへ、くまより情報を得ていたレイリーが現れたことで形勢は逆転、闇ブローカーは壊滅し、黄猿は撤退することとなった。
この件でおそらくジンベエは七武海の地位を追われることとなるだろうが、本人も覚悟の上だろう。
まぁ、その流れはいいとして……問題は、これがインペルダウンや頂上戦争の代わりになっているかといえば……なっていない。
ただ、要点は抑えている印象だ。ジンベエが七武海を抜けること、ルフィが己の力不足を実感することによる修行フラグ、師匠となるレイリー到着……2年後に向けての準備という意味では、最低限必要なものは揃っている。
この報告を見て、俺が思ったのは……いよいよ運命の修正力をもってしても、修正が不可能になってきたかというものだった。
エニエスロビー編はまだなんとかなった。ロビンとの絆、フランキーの加入、サウザンドサニー号の入手……ここさえどうにかなれば、敵はCP9である必要は無かった。
だが、俺がティーチを始末したことでインペルダウン編と頂上戦争編の条件は消失した。さらに、俺はエースにトットムジカの力で作った監視を付けており、もしエースが海軍に捕らえられるような展開になりそうであれば介入するつもりだった。
結果として運命でも修正することは不可能であり、最低限必要な条件だけを満たす形になったわけか……この感じであれば、頂上戦争が発生することは無く白ひげも生存したままだ。
おそらくここからは、原作と大きく展開が変わってくる可能性が高い。なぜなら、ここで原作通りに2年間の修業期間ができたとしても、魚人島編はともかく、パンクハザード編は発生しない。
「……隊長、クザンさんが隊長に相談したいことがあるみたいで、明日時間があるか尋ねてきました」
「クザンが? 分かった。明日の午後に時間を作る」
「了解です。詳細な時刻は後ほど連絡すると伝えておきます」
「ああ、頼む」
コーヒーを用意しながら告げるポチの言葉に返答する。話の感じから正式な依頼とかではなく個人的な相談である可能性が高い。
そんなことを考えながら新聞を広げると、そこにはルフィの写真が載っていた。とある国の大規模慰霊式の会場に現れて、会場を荒らしたりするわけでもなくただ黙祷をして去っていったと、その際の写真が掲載されている。
その場に死んだと思われていた冥王レイリーや白ひげ海賊団2番隊隊長のエース、そして海侠のジンベエがいたことで、大きなニュースとして取り上げられており一面になっている。
ルフィの腕には原作と同じ、3Dにバツが入った3D2Yの文字が書かれており、予想通り2年間の修業は挟むようだ。
「……見た顔ですね」
「なかなか、世間を騒がせているらしい。まぁ、そもそも天竜人を殴った件で一躍有名人にはなっていたがな」
「天竜人も危機感が足りませんね。相手が大将や海軍を恐れないなら、海軍大将を脅しに使っても効果は無いと思いますが……」
「そもそも仮に銃を突きつけられたとして、死ぬか抵抗するかであれば抵抗する奴もいるだろう」
むしろ自棄になった市民や海賊、奴隷などが天竜人を害した過去が無いというのが意外ではある。奴隷にしても首輪が爆発するにしても、命を捨てる覚悟なら自爆特攻くらいは出来そうではある。
いっそ革命軍が天竜人を消すのなら、ワザと奴隷を送り込んで巻き込み自爆とか特攻という手段の方がよさそうではある。
そんなことを考えつつ、長官室にやってきたCP9メンバーたちに任務の割り振りを行う。世間は騒ぎになっていても、こちらとしては割と暇なものである。
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翌日クザンとの約束の時間に応接室に行くと、そこにはクザンともうひとり……スモーカーの姿があった。
「待たせたか?」
「いやいや、無理に時間作ってもらったのはこっちなんで……あ~紹介しとく、こいつはアレだ。えっと、まぁ、なんか、部下的なアレでスモーカー、階級は准将」
「知っている。白猟のスモーカーだろ。ローグタウンから本部に移って精力的に活動しているらしいな。知っているかもしれないが、スパンダムだ」
「よろしくお願いします」
「ああ、こういった場であれば敬語はいい。必要な場面では使ってもらうが……それで?」
ふたりの対面の席に座りながら問いかける。なぜここにスモーカーを連れてきたのか、ある程度予想は出来る。クザンは元々スモーカーには目をかけている印象だった。そして、タイミング的に新世界のG1支部に所属を移したいとスモーカーが言ってきた辺りなのだろう。
それらを考えてみると、おのずと理由は分かってくる。
「いやね、コイツは結構将来性のある海兵で、俺も期待してるんだけど……ちょっと因縁の相手が居るらしくて、今後新世界を拠点に活動したいみたいなんだよ。ただ、残念ながら俺の目から見て実力不足なのは否めない……てとこで、スパンダムさんさえよければ鍛えてやってくれないかなぁって思ったわけだ」
「……そちらのスモーカーの意思としてはどうなんだ?」
「アンタが化け物みたいに強ぇのは分かってる。それに最近どんどん強くなってるクザン大将を鍛えてるのもアンタだって話だ。是非、教わりてぇ」
「覚悟は?」
「ある」
真っ直ぐにこちらの目を見て告げるスモーカー。信念の籠ったいい目をしている。原作においては2年後に満を持して登場するもののローに心臓を抜かれたり、ヴェルゴやドフラミンゴ相手にやられたりと、扱いはどうも不遇だった。
そんなことを考えつつ、俺は抑えていた気配を解放する。そして軽く覇気を混ぜてスモーカーに向けてやると、スモーカーは歯を食いしばり必死に堪えるような表情に変わる。
「もう一度聞いておこう……覚悟は?」
「……ある!!」
本当に僅かとはいえ覇王色を込めた俺の気配の中でもしっかりと宣言したスモーカーを見て、俺は軽く笑みを浮かべつつ気配を抑える。
「いいだろう。時間があるときに顔を出せ、こちらも手が空いていれば鍛えてやろう。ただし翌日には休みを取っておくことだ」
「スモーカー、これマジだぞ。絶対、翌日は休み入れとけよ……ボッコボコにされるからな」
まぁ、どのみちパンクハザード編は発生しない可能性が高いので、スモーカーがヴェルゴやドフラミンゴとやり合うかは分からないが……まぁ、この際なので、ドフラミンゴとやりあっても完勝できるぐらいまでは鍛えるか……2年もあるわけだし、覇気の指導もCP9メンバーで慣れたので効率的に行えるだろう。
悪魔の実に関しては、モクモクの実はガスガスの実の下位互換などとも言われるが、ポテンシャル自体は中々に高い。
特にスモーカーの煙は、煙の状態のままで相手を拘束出来たりと物理的な力を発揮しているので、そこに強力な覇気を纏わせられることになれば面白い。
あと、ホワイトブローなど単純に手足を伸ばして攻撃できるものもあるので、身体能力を鍛えればそれだけ強くなれるポテンシャルはあるだろう。
「あ~そういや、スパンダムさんは、センゴクさんが元帥を辞めるつもりって話は聞いたか?」
「ああ、以前からそろそろ世代交代すべきだと考えていたみたいで、1年以内ぐらいを目処に後続に譲るつもりらしいな」
そう、実はセンゴクに関しては以前より元帥を退くことを考えている様子だった。頂上戦争が発生しなくとも、そろそろ次の世代にバトンを渡す気の様子で、己は後進の育成などを考えていると合同訓練の際に話していた。
原作通りに大目付になるかどうかまではわからないが、少なくともそう遠くないうちに元帥を退くとのことだ。
「次の元帥は大将の誰かか?」
「ああ、んでまぁ、現状は俺かサカズキって話になってる。ボルサリーノの奴が早々に柄じゃないって拒否したからな」
「その言い方だと、お前はやる気があるように聞こえるな」
「あ~まぁ、いろいろあって少しだけ昔の情熱とか取り戻したりしたんで……やってみようかなって気持ちはあるな。どう転ぶかは、まだ分かんねぇが」
「なるほどな……まぁ、せいぜい頑張ることだ」
実際どうなるか……原作通りであれば赤犬が次期元帥だが、クザンは珍しくやる気になってるみたいだ。それも、赤犬を元帥にさせる気は無いという感じではなく、自分もやりたいことがあるから元帥になりたいと、意欲的な印象……これは、原作とは結果も変わってくるかもしれない。
……いい加減、俺の原作知識も役に立たなくなる日も近いかもしれないな。
スパンダム:いよいよ原作から大きく乖離し始めたことを感じているパンダ。
ポチ:いつも通りのワンコ、特に時代の変化とかは感じておらず、頭の中はいつでもパンダのことしかない。
クザン:元帥に対してかなり意欲的であり、原作よりも熱意を取り戻している様子。なお現在もパンダ塾によって強化中。
スモーカー:パンダ塾に入塾。
赤犬:……あの……わしも……パンダ塾に……。
運命ちゃん:も、ムリィ……マジムリィ……あのパンダ、魔王と融合して変な存在になったせいで修正力効かないし、もう原作滅茶苦茶……黒ひげまで殺られちゃうと、もうどうしようもないよぉぉぉ! もう、修正ムリィィィィ!! ぴえん……。