whiter than white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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ハイヒールの少女と猟犬たち

 

 

 

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翌日 午後18時―――

―――東京グランデュールホテル ロビー

 

 

 

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「((…久しぶりにハイヒールなんて履くから…既に脚が痛い…))」

 

定時に仕事を終わらせ、少しばかり須郷と呑気にトレーニングをしていたのが仇となった(須郷さん、ごめんなさい…)

 

「…時間は間に合ったけど、肝心な相手がまさか渋滞にハマるなんて…」

 

広いロビーの端のソファ席に腰掛け、呼吸を落ち着かせる。腕にかけていたジャケット、そして小さな鞄を傍らに置くと、着慣れない服の裾に触れ、汚れがないか?など確認をしていた。

 

 

「((この日のために新調した、ちょっと高めのワンピース…というか、ドレス?それに合わせて店員さんに勧められてヘアアクセサリーとハイヒールも買ったけど……やっぱ慣れない…、赤いハイヒールなんて履いたことないし…))」

 

黒いシックな細身のドレス。

胸元が深くV字に開いているデザインで、デコルテは露出され、白い肌が映えるドレス。髪の毛は綺麗に編み込みまとめられている為、背中が大きくパックリと開いたドレスからははっきりと鍛えられた筋のある背中が丸見えだった。

 

もはや宜野座に怒られるのではないか?という心配を抱えるほどだった。

 

「((…右腕も、今日だけはホログラムで誤魔化して…。初めてやってみたけど、本物の腕と見分けがつかないくらい自然…))」

 

いつもは服でいくらでも隠せられる"義手"。さすがにドレスを着こなすためにもと、特殊なホログラムによって自然な腕が再現されていた。

 

「ハイヒールに、この丈の長いAラインの裾…転ばないようにしないと…」

 

緊張気味に小さく息を吐くと、舞白はカバンに入れていたデバイスを取り出すと、宜野座にメッセージを送る。

 

 

"先に着いてるよ。気をつけて来てね?それと、ホテルのロビースタッフの人に"法斑さん"の話は伝えてる―――"

 

今日の結婚記念日のディナー、実はあの"法斑"から誘われたようなものだった。過去に宜野座のコートを愛犬が汚してしまったから詫びをさせて欲しいと言われ続け、今日この日が実現したのだった。

 

たまたま数日後には互いに長期の潜入捜査に入るし、ゆっくり2人で過ごすことが出来るのはしばらく難しいだろう。

 

「((それにしても、法斑さんが"できればこの日が良い"って言われたのが今日だけど…。たまたま伸元さんは休みだし、私も特に何も無い日だったし…よかった…))」

 

ふぅー、と息を吐くと背もたれに寄りかかる。

さすが高級ホテル、ソファひとつにしても肌触りも良くてふかふか…

 

「((あまり人の姿もないし、…もしかして、外務省職員だからって気を使ってくれたのかな?法斑さん…))」

 

 

平日のこの時間帯ということもあるのか、ロビーには人の姿があまり見られない。それとも意図して人が少ない日を選んでくれたのか…

 

 

 

慣れない場所に舞白はキョロキョロと辺りを見回す。

 

すると、出入口からスーツ姿の4人組が現れると、舞白は目を見開いては、思わず頭を手で覆い、姿を隠す仕草を見せる。

 

 

 

 

「((待って…あの人たちって…刑事課一係の…))」

 

 

慎導、イグナトフ、入江、廿六木―――

 

4人はロビーで人を探す様子を見せると、目的の人物を見つけたのか一直線にその人物への元へと向かう。

 

どうやら、舞白には気づいていないらしい。寧ろ、ここで見つかれば、あの"入江"という男に絡まれてもおかしくない。数日前、ふざけて挑発的な視線を向けたことを後悔していた―――

 

 

「こんな所で…絡まれたら大恥…」

 

とりあえず無視無視、関わらないでおこう…と視線を外すも、やはり気になるのは舞白の性…

 

 

舞白はそっと立ち上がると物陰に隠れながら、密かに様子を伺う事に…

 

 

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「土谷博士が居たとは知らなかった」

 

唐之杜が用意した、リーが映し出された防犯カメラ画像。男は特に動揺した様子もなく、自分が写っている画像を見据える。

 

「偶然だし、後ろめたいことは何も無い。」

 

 

例の人物、リー・アキ

昨日アポイントを取り、この場所を指定されていた。

 

ロビーの一角に佇む4人と秘書官のリー

ソファ席に座っているのは、慎導とイグナトフ。

その背後で見守るように立っているのは執行官の2人…

 

周辺に人はおらず、話す内容も配慮は必要ないと判断する。

 

 

 

「フン。…ドミネーターで確かめてもいいんだぜ?」

 

「勝手にしろ、無駄な事だ」

 

挑発的な発言をするのは廿六木。それをリーは何食わぬ顔であしらうと、慎導は左手を上げ、廿六木に落ち着くようにと指示を出す。

 

 

「リーさん。あなたは土谷博士と接触しようとした。でも、小宮側がつけたボディガードが邪魔で、それができなかった――」

 

真剣な眼差しで慎導は相手をじっと見据え、様子を伺う。

 

「あなたは対立候補の内部情報を手に入れ、土谷博士こそ、小宮カリナのアキレス腱に違いないと思ったんでしょう?」

 

相手の監視官の言葉に何一つ、眉さえ動かさないリー。

 

「くだらない」

 

その様子に埒が明かないと判断したイグナトフは、ついに次のような台詞を吐く。

 

「本当にドミネーターを抜かせないでください。ホテルにも迷惑がかかりますので」

 

「したいなら、向けろと言っている」

 

 

それでも相手の姿勢は変わらない。

イグナトフは微かに眉を顰めると、強硬手段は諦めるしかないとため息を漏らす。

 

 

「やめておきましょう。…代わりに質問ですが、あなたと土谷博士が同じホテルにいた事を、薬師寺そんはご存知なのですか?」

 

「先生が私ごときの居場所をいちいち確認することはしない。」

 

 

"先生"と薬師寺を慕うリー。

さすがにこちらも時間をかける訳にはいかない…

 

すると慎導がついに行動に出る。

 

 

「じゃあ、本人に尋ねてきます。ここで待っていてください。」

 

 

「ハァー……、2分だ」

 

時間制限を設ける相手に、慎導はクスッと笑みを浮かべるとソファから立ち上がる。

 

「大急ぎで確認しますね?」

 

"ちょっと行ってくる"と呟くと、イグナトフ達に視線を向けるとその場から立ち去る。

 

 

 

イグナトフは強情な相手を睨むように強い視線を向ける。相変わらず、相手は人形のように顔色ひとつ変える様子がない。そして、彼は異常に薬師寺を慕っている様子が見て取れる。

 

 

「薬師寺候補に心酔しているようですね」

 

その言葉に、微かに眉が動く。

 

「…シビュラ適正があるにもかかわらず、挫折したアスリートは数え切れない。…だが、そうした人々を本気で支援してくださるのは、先生だけだ。」

 

まるで"信者"

薬師寺の事になると言葉数もやけに多くなる。

 

その姿勢に、入江は面白がるように相手に言葉を投げる。

 

「ふーーん…

…おたくもそれで救われたと」

 

 

「そうだ。

…あの方こそ、東京のリーダーに相応しい―――」

 

男の瞳がやけに光を放つ

 

「―――トップに立つために生まれた英雄だ」

 

 

 

 

刹那、イグナトフ達の前にマスコットのコミッサが現れる。

 

 

『エリアストレス警報

至急 メンタルケアを行ってください―――繰り返します―――』

 

 

 

「!?…エリアストレス警報?どういうこと―――」

 

 

イグナトフはその警報に驚きを見せる。

すると、ある人物たち数人が彼らに襲いかかる―――

 

 

 

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「…とんだ渋滞だったな―――」

 

ホテルの地下駐車場に自家用車を停める宜野座。時刻は18時をすでに過ぎており、慌てた様子で車にロックをかける。

 

 

「((それにしても、やけに車の数が少ないな。))」

 

やけにガランとした地下駐車場。

キョロキョロと辺りを見回すと、何かに気づいたのか宜野座は一台の車に目を向ける。

 

 

「((…あれは刑事課の車両。覆面状態だが、間違いない―――))」

 

宜野座の車両から目と鼻の先に停められた1台の車。見た目は覆面の普通の一般車両だが、かつて"それ"を運転していた宜野座はひと目で分かる。

 

 

「((何故…この場所に?捜査か?))」

 

嫌な予感を察知した宜野座はすぐにロビーへと向かうのであった―――

 

 

 

 

 

 

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