whiter than white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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闇夜に堕ちる

 

 

 

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「はっ…はっ…はっ!!」

「オッサン!あと少しだから堪えてくれよ……」

 

慎導と入江はぐったりとした征陸の体を支え、炎に覆われた長い廊下を駆け抜け、階段を下って行く。

 

『階段を降りたら右手の廊下を突っ切ってください!その先の裏口に僕が待機してますし、傍に救急隊員が征陸さんを保護する準備も整ってます。』

 

息を合わせて階段を駆け下りる。しかし、雛河の指示通り右手の廊下に足を踏み入れようとした瞬間、思わず2人の足が止まる。

 

「……ハハッ……この火の中を突っ切るってか。無茶言うぜ先輩よお――」

 

勢いよく燃え盛る真っ赤な炎。微かに中央部分に人ひとりがようやく通れそうな空間が続くのみ。

 

そして反対側の廊下は既に火の海。征陸の状況を見る限り、スプリンクラー稼働を待つ時間は無さそうだ。

 

『距離は約30mです。……もう、そこしか出口はありません。』

「……行くしかないです、入江さん。」

「仕方ねえな――――ッ……」

 

2人は視線を合わせ、一気に駆け抜ける。たかが30mの距離なのに異様に長く感じていた。

幸いにも障害物はなく、燃え盛る炎のみが邪魔をする。

ここで引き下がって諦める訳にはいかない。舞白が作り出したこのチャンスを、無駄にする訳にはいかない――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「監視官!!入江執行官!!こっちです!!」

 

雛河の声が2人の耳にしっかりと届く。必死に足を動かし炎のトンネルを駆け抜けた2人はそのまま開かれた扉に突っ込む形で外に飛び込めば冷たい空気に包まれる。

 

征陸の体にダメージを与えないように、ゆっくりと人工芝が生い茂った地面に下ろすと、煙を吸い込んだ慎導は苦しげに傍に倒れ込み激しく咳き込む。

 

 

「おい!監視官!!」

「はぁ……はぁ……ッ……僕のことは……大丈夫……。それより、すぐにこの人を診てください!!」

 

控えていた救急隊員により担架に乗せられる征陸。微かに呼吸をしているように見えるが意識は手放している模様。運ばれている姿を目で追い、ゆっくりとふらつきながらも立ち上がる。

 

「慎導監視官、すぐに手当を……」

「大丈夫です。ただのかすり傷程度ですよ。……入江さん、雛河さん、ありがとうございました……」

 

心配する2人の執行官をよそに、慎導は微かに笑みを見せ頭を下げるも、その視線は再び炎に包まれる建物へと向けられる。

 

 

「舞白さんは?」

「あの女なら、銃撃犯を相手にまだ中にいる。」

「……狙撃手は2人。やっぱり読みは間違ってなかった。」

 

慎導に続き、雛河と入江も建物へと視線を向ける。

 

「監視官の想定通りでした。――久利須と共に、僕たちを銃撃するはずだった1人がこの場所に移動していたんです。先程の駐車場付近のビルに残されていた痕跡と、この施設に現れた男の痕跡が合ってましたから。」

 

「……てことは、狙いはやっぱり」

 

「間違いなく"舞白さんと征陸さん"

――とくに舞白さんに対して、明らかに何かが仕組まれていたとしか思えない。」

 

しかし、その手がかりはゼロと言っても過言では無い。この施設で起こっ数十分間の出来事は恐らく内部のカメラにも何も残されていないだろう。

 

「とにかく、今は征陸さんの回復が最優先です。もしかしたら、舞白さんの"何か"を知っているかもしれない。」

「確かにそれを待った方が良さそうだ。……あの女が簡単に殺られるとも思わねぇし――――」

 

 

 

 

刹那、地盤が揺れるほどの衝撃が走る。

 

 

「「!?」」

 

 

激しい爆発音。

ガスか何かが引火したのか、もしくは意図的に爆発物により爆発したのかは不明。自分たちが先程まで居たであろう北棟の一部が崩れ落ちていく――

 

 

「巻き込まれるぞ!!下がれ!」

 

 

倒壊していく施設。

入江は咄嗟に慎導と雛河を庇うように2人に飛び込むと、傍らの茂みに3人の体は投げ出される。

 

 

目を開けることが出来ないほどに濃い煙に覆われる3人。慎導は中に残された舞白の身を案じていた。

 

 

「((――どうか…………舞白さん。……無事でいてください――))」

 

 

 

 

 

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「――ふーー……」

 

目の前の防火扉を真っ直ぐと見据え、深呼吸する。ガクガクと震えていた左手は落ち着きを取り戻し、平常心を取り戻す。

 

2つ先の扉の先に"奴ら"が居る。

真っ向勝負をするのは久しぶりの事だ。

 

今までの経験を踏まえて大体の行動パターンを脳内で想像する。

 

 

素早い動き、そして近接戦に長けた老婆のヴィクスン。

 

銃火器の扱いに慣れ、誰よりも私たち"兄妹"に恨みを持つ老爺のジャックドー。

 

 

「((2分経ったけどスプリンクラーは未だに作動しない。外部からのハッキングがまだ続いているなら、変に手出しはできない……だけど――))」

 

 

「――ッ!ゲホッ、ゲホッ……」

 

毒物の煙の効果が徐々に体を蝕む。

鼻からの出血は止まらず、息苦しさも増していく。

 

 

 

「((……奴らもそこまで私に構ってる時間は無いはず。――そもそも今回の目的はお義父さんの殺害だとするなら…それが出来なくなった以上、ここに長居する必要はない。))」

 

 

ふと、舞白は窓の外に視線を向ける。

火の海に変わりは無いが不意を打つにはこの方法しか無さそうだ。

 

 

「――やってやるわよ……」

 

 

 

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『残念ながら今回の作戦は失敗だ。逃げて。』

「……3分くれ。」

 

退避しろという言葉に耳を貸さないジャックドー。隣のヴィクスンは何も言わずとも、通信機先の梓澤は呆れたようにため息を漏らす。

 

『――スプリンクラーが再稼働するまで。それまでなら構わない。徐々に外に人が集まってきてる、痕跡を残さないようにしてくれよ?』

「問題ない。あの女を殺すには十分な時間――」

 

 

突如、炎の海に染った窓の外から現れる人物。

不幸にも窓側に立っていたジャックドーの頭部に足蹴りが命中すれば、体が壁に強く打ち付けられ、頭に食らった衝撃のせいかその場で気を失い倒れ込む。

 

 

「――ッ!狡噛舞白!!」

「さっきの続きをしようじゃないの?」

 

先程教団内部で奇襲攻撃を行った老婆のヴィクスン。

舞白は恐れることなく、真っ向から立ち向かう。

 

 

「おい!ジャックドー!」

「…………」

「くそっ―――」

 

倒れこむ相方に声をかけるもまだ起きる気配は無い。ヴィクスンは目の前に真っ直ぐと佇む舞白に視線を向けるも、相手の気迫に恐れを見せていた。

 

瞳は怒りに燃え、その顔に表情はなかった。

だらりと落とされた肩に、若干右に倒れる首、ぽたぽたと鼻から滴る鮮血を、ペロッと舌ですくいとる。

 

 

「――まるで獣だ」

「褒め言葉だよ――っ!」

 

 

言葉を放つと一気に間合いを詰める。

ヴィクスンは銃を構えるもあまりにも速い相手の動きについていけず、勢いよく銃を蹴り飛ばされると舞白の硬い右拳が腹部に命中する。

 

 

 

「グハッ――!!」

 

次々と放たれる拳のスピードに全く追いつかない。

以前よりも圧倒的に"速い"

それに、一つ一つの打撃がとにかく"重い"

 

舞白を強化したもの。それは報復心だった。

先程の攻撃は征陸が自分を庇う事を狙っての事だったのだろう。はなから狙いは自分では無かった。

 

指示を出した者が別に居たとしても、怒りの矛先はそれを実行したこの2人組に向けるには十分の事だった。

 

 

「…殺す…ッ!あんた達を殺して――」

 

倒れ込むヴィクスンに向けて大きく腕を振りかぶるも邪魔が入ってしまう。一瞬気を失っていたジャックドーが立ち上がる姿が見えると、危険を察知した舞白は後退していく。

 

 

 

「…ジャックドー…」

「すまないヴィクスン。…下手をした。」

 

小銃を構える老爺。

隣ではナイフを構える老婆。

 

 

「狡噛舞白。…お前だけでもここで――」

 

 

 

 

刹那、スプリンクラーが発動。

満遍なく撒かれる水分のお陰で完全に鎮火はされないものの、炎の力は弱まっていく。

 

 

「――時間切れか」

「仕方ない、ヴィクスン…」

 

 

ボソッと呟かれた言葉を聞き取った舞白。

ここで逃がす訳には…と頭では考えるものの、体は限界を迎えつつあった。

 

 

「…ッ…うぅ!!…ゲホッ……」

 

ついに口からも吐血してしまった。

左手で口元を覆うも、指の隙間から鮮血が床に落ちてゆく。

 

 

冷たい雨に覆われる3人。

互いに見合い、舞白はふと目の前の2人に問いかける。

 

 

「ピースブレイカー、"ヴィクスン、ジャックドー"。

……あなた達、駒として使われてそれで満足なの?」

 

煙の先にぼんやりと浮かび上がるふたつの影。その影に舞白は強く睨みをきかせていた。

 

 

「我々は"パスファインダー"。……ピースブレイカーの名は既に棄てた。」

「目的の為ならば、我々は貴様らと同じく"行動"を起こすのみ。」

 

「――"目的?"」

 

 

彼らの目的とは?

全く理解できない2人の思惑。

しかし、その為にどんな汚い事でもやり遂げると言わんばかりの様子だった。

 

 

「次こそ……"貴様ら"を皆殺しにしてやる。」

「死んだ息子たちの為にも――お前も、その兄も必ず殺す――」

 

 

 

刹那、ジャックドーはポケットから何かを取り出すとボタンのような出っ張りを親指で押し込む。

それと同時に、凄まじい爆発音と衝撃に襲われると足元が大きくぐらつきバランスを崩す舞白。

 

 

そして、視界の先に瓦礫が雪崩落ちる光景を最後に2人の姿を見失う――

 

 

咄嗟に身を庇い、フッと目を閉じる。

 

 

「((また…私は…))」

 

 

 

 

――大切な人たちを哀しませて。

危険な目に――

 

 

 

 

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『俺はお前を信じてる』

 

 

 

 

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『――――舞白』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「((…伸元…さ――))」

 

 

 

 

「――――ッ…はぁ…」

 

 

 

ゆっくりと開かれる瞼。闇に覆われた空間、辺りに宜野座はともかく、人影は全く見られない。

 

「((…あれは幻覚…幻聴…))」

 

 

慌てて体を起こすと視界に映るのは崩れた建物、瓦礫たち。どうやら運良く瓦礫に潰されることは無かったらしい。

炎は弱々しく、薄い灯火を残しつつも完全に鎮火はしていない模様。

 

辺りはスプリンクラー……いや、空から降ってくるこれは本当の雨だった。冷たい雨に徐々に体温を奪われていく感覚。

 

 

「…ゲホッゲホッ……」

 

若干ではあるが呼吸する度に喉が痛む。

どうやら、少しずつ薬物は抜けていっているようだが、体に残したダメージはそこそこあるらしい。

 

 

「((……左指…やっちゃってる…))」

 

左薬指が酷く痛むと思えば痛々しいほどに曲がっていた。結婚指輪が光るその指は腫れ始め、舞白は眉間に皺を寄せ痛みに耐える。

 

 

「…はぁ…はぁ…――ん…ぐ……」

 

右手で左指を強く引き、応急処置として強引に骨の歪みを治す。パキパキと嫌な音が聞こえると同時に酷い鈍痛が体中に響くと、小さく痛みに耐える声を上げる。

 

 

 

「((左手首の橈骨もやっちゃってるかも。…それに、この毒物も…どこかで処置しないとマズイ――))」

 

右手で左腕を押さえ、ゆっくりと立ち上がる。

12月の寒空、大雨――

先程の炎の熱さとは打って変わって、凍えそうな寒さ。

 

ふらふらと瓦礫をかき分け、その場から歩き出すとポケットのデバイスが音を鳴らす。

…恐らく、あの男だろう。

 

 

 

「――ッ…」

 

身体中を襲う痛みや不快感に大きく表情を歪ませながらもポケットに手を伸ばし、デバイスの通話に応じる事に――

 

 

 

 

 

 

『そこから南に30m。職員専用駐車場の一角のバイク置き場に白いバイクがある。それを使ってその場から離れるんだ。』

「…………」

『君の痕跡を残したくない。早々に立ち去れ。』

「…了解―――」

 

 

今にも倒れてしまいそうだ。

おぼつかない脚で言われた方向へと向かうと、男は言葉を続ける。

 

 

『君はとにかく"逃げ続けろ"。都度指示は出す。…お仲間と接触しようとしても無駄だ。』

「……それをすると、また誰かが殺されるって訳ね。」

『へえー。…もう聞かないのかい?"目的は?"と』

「聞いたところであなたは答えない。…それは今後もそうでしょう?だったら、自分の行動を改めるわ。もう誰も危険な目に晒したくない。」

『ハハッ、賢明な判断だ。やはり君は"セカンド・インスペクター"に相応しい。』

 

 

道無き道を突き進む。

すると徐々に聞こえてくるサイレン音、赤い光――

瓦礫の陰に隠れ状況を確認すると、ようやく各部隊の応援がたどり着いた様子だった。

 

舞白はただただ征陸の安否を心配する。

慎導達が無事に脱出出来たことを信じるしかない。

 

 

 

「――梓澤廣一、必ず…あなたをこの手で捕まえる。」

『おーー怖い怖い。報復心ほど恐ろしいものはないからね。』

「もう、絶対…誰も危険な目に遭わせない。…狙いが何であれ、私は護るのみ。」

『ハハハハッ…それは楽しみだな。――せいぜい、足をすくわれないように気をつけるんだな――』

 

 

切れる通話。

デバイスをポケットに再び戻せば誰にも接触しないようにと物陰に隠れながら白いバイクを探し出す。

 

 

「……見つけた。」

 

 

不自然に置かれた白い大型バイク。

ハンドル部分に掛けられていたフルフェイスのヘルメットを手に取り、結っていた髪の毛を解くと手早くヘルメットを被る。

 

 

「((とにかく…このままじゃ低体温で死んじゃう。解毒も、着替えも…傷の手当ても何とかしないと…))」

 

バイクに跨り、アクセルスロットルに手を伸ばすと大きなエンジン音が鳴り響く。まだ僅かに火災が続く巨大な施設へ視線を向け小さく息を吐くとその場から逃げるようにバイクを走らせる――

 

 

冷たい雨が降り注ぐ闇夜へと消えていく舞白。

 

極地の島に一人で取り残されてしまったような激しい孤独感、久しぶりに味わう"その孤独感"に"喪失感"に、苦しげな瞳の色を表していた。

 

 

 

 

 

 

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――外務省本庁 行動課オフィス

 

 

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深夜のオフィスに集まる4人。

公安局からの報告に大きく反応を示す宜野座―――

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれ…一体どういう…」

 

 

文京区の矯正センターが火災と爆発物により半壊。患者たちはちりじりに公安局管轄の矯正施設へ移送されたらしい。

そしてそのリストの中に自分の父親の名前は無い。何故か施設内に取り残されていたところを何者かに襲われ、一係に救われたという報告が入っていた。

そして、そこには舞白の姿があったという事実も。

 

 

「銃弾が3発命中、一時は心肺停止状態まで陥った。でも、適切な応急処置と駆け付けた刑事課一係の助けによって"あなたのお父さん"は一命を取り留めた。」

 

「それに、何故か舞白が噛んでるって訳か。」

「舞白さん…」

 

 

公安局からの情報を読み上げる花城。狡噛と須郷も続いて言葉を放つと、一際険しい表情を見せる宜野座へと3人は視線を向ける。

 

「それで、舞白の行方は?」

「…残念だけど、舞白に関しては行方が分からないの。」

 

 

狡噛のデスクのモニターに、とある画像を表示させる。そこに映る画像は火災現場から立ち去る舞白の後ろ姿だった。

左腕を押さえ、白いシャツには赤い血が所々付着している様子。白銀の長い髪の毛にも血液が付着した痕跡が見て取れる。

 

 

「22時40分――これ以前、以降のカメラ映像、画像情報はすべて削除されてるわ。この画像だけ、なんとか手に入れることが出来たみたいよ。環境音含め、音声データも、火災発生時からのカメラ映像全てがクラッキングされてたわ。」

 

「明らかに不自然だ。位置情報含めて何も足取りを追うことができない。…あいつも一体何を考えてるのか…」

 

舞白が今どこで何をしているのか。兄の狡噛でさえ読み取ることはできない。

何を目的に、誰かの指示のもと行動を図っているのか、それとも単独で何かのために動いているのか…

 

 

重苦しい空気が漂う中、埒が明かないその状況。花城はそれを一刀するように手を叩くと3人に視線を向け小さく息を吐く。

 

 

 

「さっきも言ったけど、私たちは私たちの行うべきことを優先に。舞白が単独で私たちに何も連絡さえ寄越さない以上、詮索はしない。―――良いわね?"宜野座"」

 

平然を保っているようで、未だにどこか納得いかない様子の宜野座。それに念押しするように花城は名指しで言葉を放つ。

 

 

「………ッ…」

 

 

傷だらけでたった1人で歩くその姿。

どうしても揺らいでしまう自分の感情に嫌気が差してしまう。

 

闇に堕ちていく、深く、沼に沈んでいく。

また、…まただ、

自分の側から消えていく。

 

 

グッと手に力を込めると微かに眉を寄せる。

…また、信じることしか自分にはできない―――

 

 

 

「問題ない。俺は俺が成すべきことを行う。"事件の解決"…ただそれだけだ。」

 

 

真剣な表情の中に悔しそうな、諦めの色を微かに感じる。それを察した花城は内心哀し気な気持ちが浮かぶも、それを決して表には出さなかった。

 

 

 

「―――よろしい。

…ここからは公安局と合同捜査を行うわ。彼らが握っている情報と、私たちが持っている情報を元に"黒幕"を追う。」

 

モニター画像を消すと改めて3人に向けられる視線。

 

 

「私たちは"行動あるのみ"。

そしてその先に、私たちが追う先に舞白の姿があることを心から願ってる。…だけど、それが私たちの障害となるものであるなら―――」

 

「「………」」

 

 

その先の言葉に詰まる様子。僅かに視線を落とし臓腑を抉られるような葛藤に苛まれるも、意を決してその先を口にする。

 

 

 

「―――どんな手を使ってでも彼女を止めて。…以上よ。」

 

 

その言葉に、3人の心中には細かい霧のようなかすかな焦燥が漂う。

 

 

そして窓の外は雨の銀糸が黒い幕面にかすれる。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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