whiter than white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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赦罪

 

 

 

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闇夜に降り注ぐ雨―――

 

 

 

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地下水路に浮かぶトーリの死体。

教団内に身を寄せていた信者たちは列をなし、公安局の護送車へと乗り込んで行く。

 

教団周辺には大量のパトカーにドローン、鳴り止まないサイレン音。しとしとと降り注ぐ雨の中、物々しい雰囲気を漂わせていた。

 

 

 

 

 

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「舞子…。」

 

気を失い担架に乗せられているのは最愛の妻。すぐに公安局の護送車へと運ばれ、イグナトフは神妙な面持ちでそれを見送る。

 

妻は"殺人"を犯した。

それは直ぐにサイコパスに影響する。

 

色相悪化、犯罪係数の上昇。

暫くはセラピーの為に矯正施設へと隔離されるのは確実だろう。

 

 

護送車の扉は閉められ、車が動き出す。

そして同時にイグナトフの背後に現れた人物は人一倍険しい表情を浮かべ、そっと声をかける―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――炯」

 

どこか弱々しいその声。

信頼を寄せていた相棒のその声が、今は憎くて仕方がなかった。

 

「……ッ…!!」

 

刹那、イグナトフの拳が慎導の顔に命中。その場に力なく倒れ込む慎導。そして突然の出来事にただただ見守ることしかできない雛河、入江、廿六木―――

 

 

「いっ……イグナトフ監視官!」

 

雛河が咄嗟に手を出そうとするも、それを阻止する執行官の2人。凄まじい剣幕でイグナトフは慎導に伸し掛ると強引に襟元を掴み声を荒げる。

 

 

「何でっ…何で舞子が巻き込まれたァ!?」

「…………ッ……」

「何とか言え!!おい!!」

 

相手の気迫に圧倒される。

しかし、慎導は言い返すことも理由も見つからない。

 

 

 

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"灼。俺が潜入している間、舞子を頼む"

"勿論だよ、炯。――"

 

 

 

 

 

"舞ちゃんの事は心配しないで。炯が戻るまで、俺が見守ってる。"

 

 

 

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潜入前にイグナトフに約束した身勝手な自分の台詞。

慎導は静かに相手を見上げ、苦しげに眉を顰める。

 

 

「……言い訳は……しない……」

 

いっその事、言い訳でもなんでも並べて欲しかった。

ただ弱々しく言葉を放つ相棒の姿に、無性に苛立ちを浮かばせていた。

 

もう1発、いや何発でも

その相棒を殴ってやろうと再び拳を振り上げるも、怒りの矛先の間違いに気づけば力なく腕を地面に垂らす―――

 

 

「――このっ…………ぐ……

……クソぉぉぉ!!」

「…炯…ッ……本当に―――」

 

 

「そこまでよ!!」

 

執行官達も手出しできない中、そんな2人を一刀する力のある声に一同は静まり返る。

 

腕を組み、凛とした冷たさを感じさせる視線で2人を見下ろす霜月。雨に打たれる中、霜月は一切物怖じすることなく、動じることも無く、2人に向けて言葉を続けた。

 

「イグナトフ監視官。あなたもカウンセリングとメンタルケアを受けなさい。話はそれからよ。」

 

 

 

「……はい。」

 

 

上司の命令を素直に受け入れる。

その姿にいつものイグナトフの様子は微塵も感じられなかった。

 

ガックリと肩を落とし、地面に視線を向ける。

慎導はゆっくりと体を起こし、霜月から感じる視線に気づくと彼女に目を向ける。

 

 

 

「慎導監視官。

あなたには後ほど、矯正センターで起こったこと全てを話してもらうわ。」

「…はい。勿論です。」

 

このたった数時間で起こった出来事。

久利須オブライエンが起こそうとした都知事殺害を目的とした爆破未遂事件。そして矯正センターでの一連の出来事―――

 

そんな大混乱に苛まれた数時間。慎導も同じく混乱している様子だった。

 

 

 

 

 

 

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―――港区 港南近辺

 

 

 

 

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久しぶりに帰ってきたその場所。

元々人気が少ないこの場所は深夜となればより一層人の姿は見てない。ある意味それは舞白にとっては好都合だった。

 

 

「……っ……ぅ」

 

 

バイクを停め、"マンション"のエントランスへと駆け込む。自身の顔認証でロックが解除されると念の為人と出くわさないようにと慎重に歩みを進めると目的の扉の前へとたどり着く。

 

 

「((よかった…、何とか辿り着いた…))」

 

扉の鍵が解除されると、舞白は力なく部屋に倒れ込む。室内にもちろん人は居らず、微かに埃臭さを感じると同時に懐かしさも感じていた。

 

 

たどり着いた場所は長年兄と住み続けていた海辺の"実家"。都内に別の住居を構える舞白にとっては久しぶりの帰郷。今は兄が住んでいるものの、殆ど帰ってきていないのか寂しげな雰囲気を醸し出していた。

 

リビングに入るなり、ネクタイを解き汚れたシャツをその場へ脱ぎ捨てる。そしてキッチンに向かうと解熱剤や消毒液などの薬品が入ったプラスチック製の箱を棚から取り出し、シンクの上に並べていく。

 

「((即席でしか作れないけど…。前に須郷さんが教えてくれた簡易解毒の方法をやってみよう。幸いにも注射器だってあるし、私が使ってた薬の残りも…))」

 

 

ふらふらと混沌する意識の中、必死に頭を働かせる。時たま激しく咳き込むと未だに血液の味が口内に広がる。たった微量の煙を吸い込んだだけでこの状況だ。この先も、一体何を仕掛けてくるのか分からない。考えるだけでも恐ろしい事だ。

 

「…この強肝剤の成分と……多分これも使える……ッ…ケホッ…ゲホッ…」

 

 

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「ったく…また男の子相手に…」

「だって!向こうが先に私の事―――」

 

 

 

 

舞白が6歳、狡噛が18歳の時の記憶。

 

妹が通う小学校から連絡が入り、授業を終えた兄が急いで学校に向かうとツンと口を尖らせ腕を組む妹と、その傍で半泣きになりながら手当を受ける男の子が2人―――

 

一旦自宅に戻ると、怪我を負い手当を受けた箇所に再度処置を施す。

 

消毒液を浸したコットンを妹の膝の擦り傷に押し当てる。ピリッと痛むその感覚に一瞬顔を顰める姿はやはりまだ幼い。小生意気に強気で喋り続けるその姿に、"可愛い"だなんて考えてしまった狡噛は思わず笑ってしまう。

 

 

「お兄ちゃん酷い!何で笑うの!」

「…いや、悪い…」

 

年の離れた妹の扱いはどうにも難しい。

どんなに勉強をして、考査で高得点を叩き出したとしても、歳を重ねていく可愛い妹の扱いに関しては万年赤点だろうか。

 

ガミガミと生意気な言葉を口にし続ける妹を他所に、薬品が入った箱の蓋を閉じる。そして椅子に座る妹に跪いた形で見上げればため息混じりで言葉を放つ。

 

「―――とにかく、今から向こうの親に謝りに行くぞ。一緒に俺も行くから…」

「嫌!」

「…舞白」

「だって…、だって!私悪くないもん!向こうが先に押してきて、だから私も―――」

 

 

 

「舞白」

 

兄の穏やかだった表情が瞬時に真剣な顔つきに。

その顔を見た妹の舞白は直ぐに口を噤むとバツが悪そうに自分の足元に視線を移す。ツンっと口を尖らせるその癖はいじけている証拠だ。歳相応というか、幼い子供のする行動は分かりやすく、同時に対応に困り果てる。

 

しかし、狡噛は諦める様子は無い。

そっと舞白の両手を握り、跪いたまま言葉を続ける。

 

 

「"だから私もやり返した"、そういう事か?」

「……」

「仕返しして、同じ目に遭わせてやろうって、そう思ったんだろう?」

「………うん。」

 

不貞腐れた声色に再び狡噛はため息を吐く。

そして自分の知っている知識をつらつらと言葉にするも―――

 

「―――心理学には"返報性"っていうものがあってだな。それは好意や敵意……」

 

 

 

"譲歩、自己開示など相手の態度に対して、自分も同様の態度で相手に返すという傾向"

…なんて、6歳の女の子に言ったところで理解するわけが無い。

 

 

兄の小難しい言葉の羅列に、そして少しずつ状況を飲み込んだ舞白は目に涙を溜め込んでいる様子だった。

 

"はぁーー…"と息を吐き、舞白の手を再び握り返すと妥協する訳にはいかないと心の中で念じる。

 

 

「自分が嫌だったことをやり返した。それでお前は満足したのか?」

「………」

「その行動は自分のため、相手のためになったのか?」

「……ううん。」

「結果、お前は膝も擦りむいて、額には痣ができた。痛いだろ?」

「…うん。…痛い……痛かった…」

 

ぽたぽたと瞳から零れる涙が狡噛の手の甲に落ちていく。

素直に"痛い"と口にした妹はまだまだ幼い子供だ。

 

どうしていいか分からない幼子の心は扱いが難しい。そんなどうしようもない状況に、狡噛は微かに頬骨を緩ませ、優しく涙を拭ってやる。

 

 

「仕返ししたい気持ちも分かる。だけどそれは互いに何も得をしない。……ちゃんと謝ろう。きっと友達も分かってくれる。お兄ちゃんが側についてる。」

 

「……っ…ぅん…、グスッ…」

 

 

 

 

 

 

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昔から、兄の大きな手に頭を撫でられると安心していた。辛いことがあっても、風邪をひいていた時も、その存在があればなんでも乗り越えられた。

 

 

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"復讐より身の保身を第一に"

…なんて、私たち兄妹が言えたものでは無いけど。

 

あの時のあの言葉、温和な優しい兄の表情。

ぼんやりと夢の中に現れた過去の自分たちの姿―――

 

 

 

 

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「――――――ッ!?」

 

 

慌てて体を起こす。

ふかふかのソファに体を預け、数時間気を失っていたらしい。頭の片隅に入れていたあやふやな解毒薬の調合のせいか、やたらと眠気に襲われたのだった。

 

そしてそっと自身の額に手を添え、息苦しさも無くなっていることに気づくと安心したように溜息を漏らした。

 

「((…熱は下がってる…、解毒剤も効いてるみたいだし。―――ていうか、この毛布…、ソファに来た記憶は無いけど…))」

 

 

体に掛けられていた毛布、起動した覚えのない暖房。左腕には丁寧に包帯が巻かれ痛みが軽減していた。

 

 

「…お兄ちゃん?」

 

 

ソファから立ち上がると、ふと目の前のテーブルに置かれた本に視線を奪われる。

意図的に置かれているようなその本は哲学者"エピクテトス"の著書。その本に手を伸ばすと、ふと過去の記憶が蘇る。

 

 

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―――復讐は復讐しか生み出さない。本当の復讐は自分が同じ行動を起こさないこと、許すことは復讐に勝る―――

 

 

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それは2年前、あの事件で少年に言い放った自分の台詞。

 

 

復讐に駆られる事ほど醜いものは無い。それを経験してきた舞白も、兄の狡噛も痛いほど分かっていた。

 

何故、この本が置かれていたのかは本当のところ分からない。意図的に兄が置いたというのであれば、報復心に燃えていた舞白の事を想っての精一杯の行動だったのかもしれない。

 

兄妹だからこそ通じ合うもの。

やはり、兄には敵わない―――

 

 

 

「―――復讐よりも身の保身を。今護るべきものを見つめ直す。」

 

 

本をテーブルに戻し、そっと手当が施された左腕に手を添える。

 

…だけど、自分は本当に許せるのだろうか。あの男が行った、仕掛けてきたそれに対して。悠長に穏やかな気持ちで、果たして許せる?

 

苦しげに顔を歪ませその場に俯く。

 

 

そして刹那、ポケットに入れていたデバイスが通話を知らせる通知音を鳴らし始める。

 

 

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―――外務省 本庁

展望テラス―――

 

 

 

 

 

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昨晩から続いていた雨は止み、明けたばかりの空が、朝の冷気とともに新鮮に輝いていた。

凍てつく冷たい風の中、宜野座は白い息を吐き"元上司"に1本の連絡を入れる。

 

 

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「仁世教祖と久利須オブライエンの息子はうちで保護する。公安局が確保しても施設に送るだけだろうからな。

『…そりゃどーも。宜野座さん…』

 

"あの金髪からの連絡じゃなくてよかった"

なんて密かに心内で考えるも、一歩上手で先々に姿を現す外務省に対してどこか不服そうに返答する。

 

 

 

『…"仁世は外務省の協力者"だったのね。』

「さすが、頭の回転が早いな。」

『花城フレデリカに伝えておいて。――アンタに必ず屈辱を与える、私の足元に"這い蹲らせてやる"って』

「…自分の口で伝えてくれ」

 

冗談交じりで口にした霜月の言葉に素っ気ない宜野座の言葉。

 

どこか力のない声色、その理由は霜月は何も言わずとも理解していた。

 

そしてひと呼吸置き、咳払いすれば宜野座に伝えるべく本題の話へと切り替える。

 

 

『征陸さんは一命を取り留めた。後で私が会いに行くけど、十分に会話ができるほどに回復してるみたいよ。』

「よかった。」

『志恩さん曰く、"舞白ちゃんのことに関して、伝えたいことがある"って話してるみたい。もしかしたら、舞白に繋がる重要な事を征陸さんは握ってる。その情報は直ぐに今後の捜査のためにも役立たせてみせる。』

 

 

公安局内の緊急治療室で管理されている征陸。

予想以上に回復が早く、傍で見守っていた唐之杜も驚くほどだった。

 

 

 

『これからは私たちと一緒に合同捜査が始まるわ。…その先に、舞白が居ることを私も願ってる。』

「…心強いな。」

 

 

ぼんやりと何かを考え入っているような芯のない沈んだ声。冷静沈着でどんな物事にも物怖じしない宜野座。

霜月にとって、こういった状況に対面するのは久しぶりの事だった。

前回は、舞白が公安局に出向した時の事。命知らずな行動ばかりする舞白に対して苦言していた宜野座。

 

そして今回。

また宜野座を振り回す行動を起こした舞白に対して、霜月も呆れるほどだった。

彼女も彼女なりに何かのために動いているのは重々承知の上だ。しかし、相変わらず人に心配をかける癖は治るどころか酷くなるばかり。

 

宜野座の気持ちは痛いほどに分かっていた。

 

 

『舞白に再会したら私が代わりに説教してやるわ。心配ばかりかけて、あの子は自分が最強だって…過信しすぎなのよ。』

「俺よりも霜月に言われる方が堪えるだろうな。」

『それが私の役目よ。昔からね。』

 

ガミガミと説教される姿が目に浮かぶ。そんな光景を想像すると思わず宜野座の口元に笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

『―――宜野座さんはあの子を信じてあげて。私が説教した分、その時はあの子を甘やかしてあげなさい。』

「………」

 

らしくない相手の言葉に目を丸くする宜野座。霜月も精一杯振り絞ったその台詞に小恥ずかしさを感じるも、反応のない相手に不機嫌そうに口を尖らせる。

 

『ちょっと!?無視!?』

「……ふっ…」

『なっ…、今笑いましたよね!?』

 

"酷くないですか!?"と顔を真っ赤に染めると、デバイス越しにガミガミと文句を言い放つ。

 

口うるさいお嬢さん、だなんてクスクスと笑みを零すと不意に宜野座は本心を漏らした。

 

「霜月がいてくれて良かった。――舞白にとっても俺にとっても、その存在は不可欠だ。」

『………急に何ですか。気持ち悪いんですけどー…』

 

 

相手の予想外な言葉。じとっとした目つきでデバイスに目を向けると、霜月は両腕を組み、話を逸らす。

 

 

『と、…とりあえず征陸さんの事も伝えたかったし、あの金髪に文句の伝言を言うつもりで連絡させてもらっただけだから。』

「文句の伝言って何だ…。悪いが俺はそれを伝えるつもりは無い。直接言うんだな。」

 

宜野座の台詞に"何よ、もうっ……"とツンと口を尖らせると椅子に思いっきり背を預ける霜月。冗談交じりのなんと無いこの会話が、少しずつ互いの曇を晴らしてくれているようだった。

 

 

柵に手を添え、ビルの隙間から昇っていく朝日に視線を向ける。微かに眉を寄せその陽の光に怪訝そうにするも、明らかにその表情には色が戻っていた。

 

 

「―――霜月。悪いがそろそろ時間だ。また合同捜査の打ち合わせで会おう。」

『はいはい。……じゃあ、また。』

 

 

切れる通信。

宜野座はデバイスから視線を外すと再び立ち並ぶビル群へと視線を逸らす。早朝だというのにビルの合間を縫うように続く道路の音がずっと切れ目なく聞こえていた。

 

人々の足が浮き足立つ師走。

煌びやかで幸福そうな人々の空気。

宜野座はひとり、取り残されたような気分に陥っていた。

 

ただ追い求めているのは、探し求めているのは―――

 

 

 

 

 

 

 

「……舞白。

頼むから、どうか無事で居てくれ。」

 

 

今どこにいるのだろうか。

怪我は?どこかで休めているのだろうか。

義父の事で気が立って、我を失いかけているのでは。

そうなれば、お前は獣の如く相手を狩り取るに違いない。

 

 

 

 

「お前が戻ってくるなら、……今までの事を全て赦す。どんなことでも、お前が無事なら―――」

 

 

 

右手に光る指輪に手を添え、宜野座は真っすぐと陽を見つめる。

 

 

 

 

 

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