whiter than white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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不規則な少年少女

 

 

 

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――都内 サイコパス矯正センター

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

透明の壁を隔てた無機質な室内。

その壁の先で孤独そうに肩を落とし、心に闇を抱いて悄然とうなだれる最愛の妻の姿。

そんな相手を見る度に胸が酷く痛む。

イグナトフは膝に乗せた手を強く握りしめていた。

 

 

 

「――ごめんなさい。」

「何故、舞子が謝る?」

「色相が濁っちゃって……、本当にごめんなさい……炯。」

 

弱々しい彼女の声。

今すぐにでもこの壁を叩き割って優しくその手を握ってやりたい、抱き締めてやりたいと。

 

しかし、それは叶わない――

 

 

 

「施設で色相が回復した例もある。状況によっては殺人でも犯罪係数は上昇しない。監視官や国防軍の兵士と同じで。」

「……ごめんね……」

「安心しろ。しっかりメンタルケアを行えば大丈夫だ。俺たちを迎え入れてくれたシビュラを信じよう。」

 

俯いていた舞子の顔がゆっくりと持ち上がる。目元には変わらず包帯が巻かれ、術後の大事なこの時でさえ病院からの療養を受けることも出来ない。

イグナトフは絶望の縁に立たされている気分だった。

 

 

 

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――同時刻

公安局刑事課 一係オフィス――

 

 

 

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「都知事を守った。ヘブンズリープの違法な行為も摘発。矯正センターでの火災事故の死者もゼロ。征陸元執行官も回復。」

 

「なあ、監視官。あんたはよくやった、自分を責める必要は無い。」

 

 

廿六木と入江は傍らで憂鬱そうに外に視線を向ける慎導に向け、言葉を放つ。

 

 

「――はい。ありがとうございます。」

 

どこかぼんやりと、納得いかな気な雰囲気を漂わせる。

モヤモヤと晴れない気分。

脳裏に残り続ける舞白の切羽詰ったあの表情――

 

 

「にしても、あのお嬢さんは?火災後の足取りは追えてないんだったよな?」

「はい。…舞白さんはあの後行方を眩ませてます。話によると、行動課とも合流してないとか……」

「いよいよ怪しくなってきたな、あの女。なんかやべー事になってんじゃねぇの?――監視官、なにか情報ねぇのかよ?」

 

廿六木、雛河、入江の視線が再び慎導へと向けられる。すると慎導は自身のデスクのモニターに視線を移すと、なにやらカタカタとキーボードを操作し始めた。

 

つい先程、霜月から送られてきていたメッセージ。

それを3人に転送すると、神妙な面持ちで3人に視線を向ける。

 

 

「――舞白さんに関して、新たな情報が課長から送られてきてます。征陸さんの証言です。」

 

3人のデバイスに同時に通知音が鳴り響けば、3人はそれぞれ転送されたメッセージを開封し、中身の報告書に目を通す。

 

 

 

 

 

 

「――これって……」

「おいおい、マジかよ。」

「これが事実なら、かなりヤバいぜ?」

 

 

 

 

 

「舞白さんは梓澤廣一と繋がっている。そして敵味方はさて置いて――」

 

 

慎導の顔には、固唾を吞んでいるような真剣な色が表れた。

 

 

 

「狐側の人間に間違いない。」

 

 

 

 

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数刻前――

――公安局内 特別医療室

 

 

 

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『――霜月美佳 公安局刑事課所属

権限確認 ロックを解除します――』

 

 

厳重なセキュリティ管理が施された特殊な病室。重厚な扉のロックが解除されると室内へ足を踏み入れる。

 

視線の先に移るのは力なくベッドに横たわる人物。

 

それはかつての部下の姿。共に刑事課で働いたのは短い期間ではあったものの、大切な"恩師"といっても過言では無い。そして霜月にとっては珍しく、唯一"抗弁"できない相手でもあった。小生意気な自分に対して、いつも訓示を垂れるも霜月にとってそれは決して居心地が悪いと感じたことは無かった。

 

 

傍らのパイプ椅子に腰掛け、霜月はその人物の手にそっと触れる。

 

 

「征陸さん。お久しぶりです。」

「…ん………霜月監視官……」

「そのままでいいですから!無理しないで――」

 

手の感触に気づいた征陸はゆっくりと目を開き、体を起こそうと背に力を込める。しかし霜月に肩を押されれば力なく再び背を預ける。

 

 

「まさか……久しぶりの再会がこの場所になるなんてな。」

「古巣にまた戻ってくるなんて、ある意味運命ですね?」

「ハハハッ……切っても切れない妙な縁があるんだろうな。」

 

案外元気そうな征陸の様子にほっと胸を撫で下ろす。にこやかに微笑むその表情を見るだけで不思議と霜月にも笑顔が伝染する。

 

しかし、痛々しい程に征陸の体を通る管の数や心拍を管理する独特なモニター音、以前よりも痩せたその姿には目を瞑りたくなる。

 

その反面、奇跡的にほぼ危篤状態から回復した征陸は、やはり何か持ってるらしい。

 

「――舞白ちゃんはどうなった?」

「行方不明です。話によると外務省関係者全員とも連絡が途絶えているみたいです。」

「…単独行動か。嫌な予感しかしないな。」

 

"全く……"と呆れた様なため息を漏らす。

ふと昔の事件を思い出すとその表情はより一層深刻なものへと変わっていく。

 

 

「ところで矯正センターでの事。何か事件に繋がる事が?」

「ああ。……本題はその話だったな?――――」

 

 

 

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銃火器を扱う人間の存在。

 

 

"セカンド"

"インスペクター"

"アズサワ"

 

怪しげなワード

 

 

"君のせいで、親友の咲良ちゃんは命を失った、そして今度は義父、次は……誰だろうか――"

 

 

そして舞白の持っていたデバイスから漏れていた男の声。ハッキリと聞こえたその台詞。

舞白の過去を知る者、そして次から次へと関わりのある人間に手をかけていくような発言。

 

征陸は耳にしたことやその時の舞白の状況を事細かに霜月に伝えるのであった。

 

 

 

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「――なるほどね。」

「力になれる情報があったなら良いんだが…」

「十分すぎる情報です。ていうか、そんな状況だったのに冷静に舞白の状況を分析してるなんて……やっぱり凄いです、征陸さんは。」

「まだまだ頭は現役だ。体は動かなくともな?」

「さすが"伝説の刑事"。傷が治ったら、またうちで活躍して欲しいです――」

 

尊敬に満ち溢れた瞳。

やっぱり――この人はすごい。

 

 

「この"アズサワ"という男は何者なんだ?」

「……詳しくお話はできませんが、私たちが追ってる重要事件に関連している人物です。すみません、答えられなくて。」

「いいや、それについては構わん。俺は部外者だからな。話せなくて当然だ。……ただ、なぜその男が舞白ちゃんの過去の事を……」

「"花橋咲良"、ですよね?」

 

 

8年前のあの事件。

箝口令が敷かれ、詳しく内容は知らずとも大体の事は聞いていた。

 

親友を失った事件。

狡噛兄妹が海外へ失踪するきっかけとなった事件でもあった。

 

 

「あの事件は報道規制もされた。その後の事件内容のアーカイブも閲覧不可。ほとんど抹消されたといっても言いだろう。」

「花橋咲良の事件とその男になにか接点があるのでしょうか?」

「…どうだかな。だが、それと舞白ちゃんが繋がっている事を知っているという事実。それが足枷となって舞白ちゃんは"いいように使われてる"。そうとしか考えられん。」

 

まるで弱みを握られているようだった。

彼女が抱えている過去のトラウマを上手く使い、舞白を振り回している。果たしてその先に何があるのだろうか。

 

 

「舞白ちゃんは"あの事件"で人生の全てがひっくり返ったと言っても言い。いつも慎重で冷静な判断ができていても、それを掘り返されたら堪らない気持ちになるんだろうな。」

「…そんなに酷かったんですか?」

 

若干前のめり気味になりながら征陸の言葉に聞き入る霜月。閲覧出来る限りのアーカイブを覗き、大まかな事件内容は把握していたものの詳細なものは知らなかった。

舞白は免罪体質者ではあるものの普通の女の子だった。

 

そんな女の子が波乱万丈な人生を歩むきっかけとなった事件。今の今まで、霜月が気にならないわけがなかった。

 

 

 

「思い出すのも嫌になるほどだ。俺も数々の悲惨な事件を扱ったことは勿論ある。その中でも、圧倒的に残虐非道だったさ。」

「…………」

「それを経験した中で、多少荒っぽさはあるが真っ直ぐに生き続けている舞白ちゃんは鋼の精神の持ち主だ。」

 

征陸の脳内にハッキリと残っている事件の全容。

複数のヘルメット集団に襲われた時、親友を身を呈して逃がし自らが囮になった事。そして目の前で親友が木っ端微塵になった時の事。メモリースクープでそれを再現した時の事――

他にも思い浮かぶことはあったが当時の舞白の様子を思い出すだけで胸が痛む。

 

ベッドで苦しげに眉を顰め肩を落とす征陸の姿を目にし、何となく察する霜月。膝の上に乗せた両手を強く握りしめ、スカートの裾を掴むと霜月も苦しげに口を開く。

 

「――――私、詳しいことは聞いたことがないんです。聞くことも出来ないし。あの子が抱えている事を、私はちゃんと聞けてなくて。……聞く度胸がないのかも。」

 

手元に視線を落とす霜月を心配そうに見つめる征陸。弱々しく言葉を吐く霜月を見るのは珍しい。

 

「あの子、……舞白はいつもそう。無茶苦茶で1人で突っ走って、いつも1人で傷ついて、周りを頼ろうとしてるくせにいざとなれば全部1人で抱え込む。」

 

ニコニコと天真爛漫な笑みを向ける舞白の姿が目に浮かぶ。誰よりも強く、賢く、逞しい彼女。しかしその反面、誰よりも弱い部分を持っていることも分かっていた。

 

 

「"死んでもいい"って。誰かのためなら自分のことなんてどうでも良くて真っ先に死ねるって。でも酷いんですよ?私や宜野座さんには"死なないよ〜"なんて呑気に口にして約束するくせに……大嘘つきなんです。本当はめちゃくちゃ弱くて、大きな事言って強く見せてて、……死んでもいいって――」

 

珍しく上手く言葉がまとまらない。

張り詰めた心の糸が切れ、悲しい快さに襲われているようだった。

 

「私……あの子の為に何もしてあげられてないんです。結局いつも助けられてるのは私で。あの子が助けて欲しいって言うのを待つしかなくて……いつも自分ばかり――」

「ハハハッ…………何言ってるんだい、監視官。」

 

突然笑いだした征陸に対して驚きを見せる霜月。神妙に俯いていたその表情は一変、目を見開けば真っ直ぐに相手に視線を移す。

 

 

「舞白ちゃんの事を全て理解して行動出来る人間なんざこの世にいないさ。唯一の血縁者のコウでも、昔から馴染みの伸元も、あの常守監視官でも、勿論俺もな。」

 

あっけらかんとした相手の言葉に霜月は黙ったまま耳を傾ける。

 

「あの子はそれを望んでない。自分のために"こうして欲しい"なんて思っちゃいない。"誰かの為なら死んでもいい"、護れるなら、それがその人間にとって"要"となるなら、周りが止めてもどうなってもいい。」

 

征陸の言う通り。

呑気に軽薄に、悪く言えば適当に言葉を放つ舞白の姿が容易に浮かぶ。

 

「霜月監視官が抱いている舞白ちゃんに対する思いは全員が抱いたことのある感情だ。――コウは理解した上で諦めてる。伸元は未だに舞白ちゃんの行動を認められない、夫婦になったからには違う感情があるからな。……常守監視官はコウに似た感情だろう。」

 

舞白の行動に一切怯まない兄の狡噛。

何かある事に未だに揺さぶられている宜野座。

そして、舞白の行動全てを見透かしているような様子を見せていた常守。

 

 

 

「――"イレギュラー"なんだ。舞白ちゃんは誰にも理解し難い存在。だから色相も曇りにくいんだろう。常守監視官と似ているようで、少し違うタイプだな。」

「…………((イレギュラーな存在……免罪体質……))」

 

征陸の的確すぎる言葉に納得してしまう自分がいた。

 

そもそも、あの子を理解しようなんてこと自体が間違っている。なんて考えてしまう程に。

 

 

「だから心配しなさんな。……心配する気持ちは分かるが、舞白ちゃんが無事生きていることを願うこと、信じることしかできない。」

 

類似した言葉をつい先程宜野座に若干上から目線で伝えたばかりなのに、まさかその父親に言われるなんて……と思わず口角を緩ませてしまう。

 

だが、征陸を目の前にして弱ったのだろうか。霜月は心の奥底に隠していた舞白に対しての本心がついつい漏れてしまったらしい。

 

相棒として、友達として、親友として――

数年間で築いてきたこの関係性は自分が思っている以上に大きなものに膨れ上がっていた。

 

 

「まあ、さすがに義父という立場から言わせて貰えるなら"いい加減落ち着いてほしい"なんて気持ちが本心だがな。」

「舞白に再会したら説教してください。連れてくるので。」

「可愛い娘に説教はできないな。」

「本当に、親子揃って舞白に甘いんだから……」

「"血は争えない"。そんな言葉があるだろう?」

「……ふふっ。確かに。」

 

 

 

 

「霜月監視官。舞白ちゃんにとってお前さんは大切な存在だ。誰よりも仲がいいのは皆知ってる。」

「……そうであって欲しいです。」

 

霜月の表情が柔らかく穏やかになっていく。

嬉しそうに笑みを浮かべる霜月のその顔は初めて見るほどに珍しい表情。

その顔が、舞白と霜月のより良い関係性を表している様子だった。

 

 

 

穏やかな空気が漂うその時。

霜月のデバイスが鳴り響くと、そっと椅子から立ち上がる。

 

 

「――――すみません、そろそろ行かないと……」

「ああ。事件後で忙しいだろう。」

「大したことないですよ?……また来ますね。」

 

征陸は暫くこの場所で預かることが決まっている。何者かに命を狙われていたという事実がある以上、一般の施設に移すことは危険だという判断だ。

 

霜月は征陸に軽く一礼すると足早に病室から出ていく。

その後ろ姿を目で追う征陸。

 

ふと、脳裏に男の声が再度蘇る。

 

 

 

 

 

"次は誰だろうか……――"

 

 

 

アズサワという男の残した言葉。

やけに後を引く台詞が嫌な程に残り続ける。

 

 

 

「((……まさか、とは思うが――))」

 

 

舞白にとっての重要な人物が狙われる。

だとすれば……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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"カツカツカツ"と忙しなく響くヒールの音。

霜月は先程の穏やかな表情から一変し、眉を顰め不機嫌そうな様子だった。

 

 

 

「全く、報告書のひとつやふたつ纏めるのが遅いのよ……」

 

 

雛河から、遅れて報告書が届く。そこには久利須の一件について、そしてもう一件は矯正センター。発生日時、その時の天候、発生場所諸々が事細かに明記されているもの――

 

霜月は歩きながらも項目一つ一つに目を通していくと、被告状況欄に記載されている情報に目を見開く。

思わずその場で足を止め、立ち尽くす。

 

 

――"慎導灼

本件中に犯罪係数を計測。結果、数値がゼロまで下がる"――

 

 

 

「……はぁ!?」

 

 

測定値 00.00

事細かに残された係数履歴の最終数値はハッキリと"ゼロ"と残されていた。

 

 

「はぁ……?はぁあああ!?…まさか――」

 

"免罪体質"

 

 

赤字で記された最終計測値は間違いなくゼロ。

目を擦って、細めても間違いなくそこにはゼロと記されている。

 

 

「まさか先輩……これを承知の上で――」

 

 

 

 

 

 

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――都内 某隔離施設

 

 

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「慎導灼の免罪体質が周知の事となるのは――君が望まない展開かな?」

 

 

矯正センターの最奥。

サイコパス重篤者が隔離、収監されている室内に2つの影。

 

 

 

公安局 局長 細呂木晴海

そして常守朱―――

 

 

2人はテーブルを間にコーヒーを飲み交わす。

 

 

 

「シビュラには、それでも彼を監視官に起用した理由がある。だから引き続き彼は監視官のままでしょう?」

「我々にとって最も有効な人材だ。シビュラの盲点を埋められるのはシビュラの一員になれる者だけ…」

 

免罪体質者。

そのイレギュラーな存在こそ、シビュラにとっては今後のシステムの基盤を作り上げるために必要不可欠でもあり、都合の良い存在とも言える。

 

"他人にいたずらに共感することなく、物事を俯瞰的に観る"才能を持つ者。

 

既に死亡した槙島聖護。

そして生存している宜野座舞白と慎導灼――

 

 

常守は険しい表情を浮かべ、手に持っていたコーヒーカップをテーブルに置くと目の前の人物に睨みをきかせる。

 

 

 

 

 

「"狡兎死して走狗烹らる"――」

「……フフッ」

 

 

すばしっこい兎がいなくなることで、獲物を失った優秀な猟犬は不要となり、煮て食われてしまう――

 

転じて、重用されていた部下も能力を発揮できる場や対象がなくなると無価値と見なされるという意味で用いられるその言葉。

――舞白も慎導も、決して彼らに利用される訳にはいかない。

 

 

「誰も使い捨てにはさせない。必ず彼らは、自分たちの力で真実にたどり着く。」

「……1人の猟犬はあちら側に堕ちたようだが。それでも君はあの娘を信じるのかな?」

「あら。あなたたちの方が彼女を理解しているのでは?」

「…………」

 

常守はニヤッと口元に弧を描く。

 

「彼女は堕ちてなどいない。見ていればわかるわよ。」

 

そして、自信に満ち溢れた常守の瞳は炯々と光りを放つ。

 

 

 

「誰にも理解されることの無いイレギュラーな存在。一般倫理に囚われない、特徴的視野を持つ者。――その素質が宜野座舞白にある。……そうでしょう?」

「……皮肉だな」

 

「言ったでしょう?彼らは自らの力で真実に辿り着く、と――」

 

 

その堂々とした声色には、相手の抗弁を許さぬ響きがあった。

 

 

 

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