whiter than white(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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勝手気儘

 

 

 

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同日 午後18時過ぎ―――

 

 

―――有明空港 中央ロビーにて

 

 

 

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一般客も誰一人居ない中、3人の人物が先の道を遮るように佇んでいた。

 

左から、

宜野座、舞白、狡噛―――

 

 

パンツスーツ姿の宜野座、舞白。細身のネイビーのパンツに黒シャツ、黒ジャケットというラフな服装の狡噛。

3人はそれぞれガンホルスターを装備しており、見えないように胸元には拳銃が携帯されていた。勿論、課長命令で使用することは止められているが、万が一の時に役に立つだろうと、所持は認められた。

 

 

「お兄ちゃん、タバコ何本目?吸いすぎじゃない?」

 

 

この場所で待機を命じられ、数十分が経過。隣の狡噛に煙たそうに視線を向ければ、さすがに吸いすぎでは?と心配していた。

 

 

「別に一般客もいないし、誰にも咎められないだろ?」

 

「…ヘビースモーカーも、ここまで来ればいよいよだな。」

 

狡噛の台詞に宜野座も視線を向けると、呆れたように腕を組む。

 

確かに、何も無いこの時間が数十分も続くと、何か持て余した気分になりそうだった。それに、刑事課の人間たちがここまで追ってくる事は確定では無い。あくまでも予想であり、些々河も航空機に乗り込んだという報告も入っていた。

 

些々河が乗り込んだ巨大航空機が、彼らの佇むロビーの大窓から伺える。まだ動いてはいないものの、そろそろ離陸準備に入るだろう。

 

 

舞白は狡噛から視線を外すと、右手に装着した革手袋に触れ、なにやら義手の動きを確かめるかのように、腕を回す。

 

「気合十分だな?」

 

「そんなに構えなくても、舞白は手を出さなくていい。俺と狡噛で最悪相手をするさ。」

 

狡噛、宜野座は自分たちの間に佇み、ストレッチをするような素振りを見せる舞白に視線を向け"俺たちでなんとかなるさ"と言わんばかりに言葉を放つ。しかし、舞白は眉を顰めると、"ふぅーー"と息を吐き、言葉を放つ。

 

「ロシアの元軍人の監視官、それに、スラム出身の体術に長けた強面の執行官…、その2人だけならともかく、他の監視官や執行官、何人も相手にすることになるなら、それなりに構えておかないと…」

 

"雛河さんは分かってくれるはずだけど―――"と口にし、最後に大きく、ぐーーーっと体を伸ばす。

 

 

「お前にしては珍しいな。いつもなら、どんな相手でも余裕そうにしてるだろ?」

 

新しいタバコを1本取り出すと、ライターで火をつけ"フーー"と白い煙を吐き出す狡噛。どんな相手にも物怖じしない筈なのに、やけに慎重すぎる舞白を不思議に思う。

 

「……あくまでも相手は"敵"じゃない。むしろ一緒に協力関係にあってもおかしくなかった相手だし。いつもみたいに何も考えずに、振り切って相手をして怪我でもさせたら、美佳ちゃんになんて言われるか。」

 

 

霜月の苦情の電話に想像が着く…と脳裏に浮かべると頭を抱え込む仕草を見せる―――

 

 

 

 

 

 

―――刹那、

3人の片耳に嵌められているイヤホンから花城の声が入ると、和やかだった3人の空気が一気に変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『有明空港の駐車場に、刑事課の車両確認の連絡が入ったわ。既にそっちに向かってるみたいよ。人数は"4人"、……あと、後ろから歩いて向かってる"2人"も確認。』

 

―――合計6人。

恐らく一係の面々総出でこちらに向かっている。

 

 

『―――狡噛、宜野座、舞白。そっちは頼んだわよ』

 

 

 

 

「「「了解」」」

 

 

 

迫り来る足音。

3人は横並びのまま、じっと現れるであろう人物たちを静かに待ち構える。

 

 

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刑事課一係

―――有明空港到着30分前

 

 

 

 

 

 

 

 

都内廃棄区画―――

 

 

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数刻前に些々河と与根原が居たであろうマンションを訪れた一係。しかし、既にもぬけの殻、彼らは逃亡していたのだった。

 

 

主犯の些々河はクリアな色相の為、スキャナーは無反応。些々河の捜索は唐之杜へと委ね、与根原の捜索に重きを置くことに―――

 

 

 

 

彼のサイコパスは悪化の一途を辿っていた。その証拠に、街灯スキャナー未配備地区へと移動した情報を掴み、廃棄区画へと向かっていたのであった。

 

 

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そして、廃棄区画出身の執行官、入江一途の案内により、とある"闇組織"のアジトへと潜入した一係。

 

戦闘慣れした闇組織の人間。そしてこの一体を仕切っている"沼倉"という、入江曰く"悪のじいさん"。彼は銃火器を"何処から仕入れたのか"、違法に所持していた。

 

アジトへ潜入したイグナトフ、入江、廿六木はアジトを制圧。そして、慎導、雛河、如月は、廃棄区画内でイグナトフ達がドミネーターを使用できるようにと中継器の設置――

 

 

 

 

 

"早く与根原さんを無事に捕まえてあげないと"と口にした慎導の思いは呆気なく崩れ去る。

 

 

 

 

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「あ〜、バラ売りするつもりだったな、こりゃ」

 

 

廿六木は台上の青白く変色した人間を見て、言葉を放った―――

 

 

 

 

 

アジトの最奥に隠されていた部屋は、まるで手術室のよう。壁面の棚には様々な人間の内臓らしき物が保管された瓶が大量に並べられており、部屋の中央の台には、既に死亡している与根原の姿があった。まるで映画に出てくるようなゾンビと同じような肌の色に変色し、虚ろに開かれたままの瞳。

 

 

イグナトフはそっと手のひらで与根原の瞼を閉じてやる。

 

 

 

 

 

臓器の密輸、密売―――

 

与根原は旧友に"売られた"

それも一番最悪な形で。

 

 

 

 

 

 

「今でも、豚より人がいいってやつは、わんさかいるからなー」

 

入江は死体を見下ろし、彼も微かに残念そうな表情を浮かべていた。他の面々も与根原の結末に悲痛な表情を浮かべては、小さく息を吐く。

 

 

 

するとその瞬間、全員に分析官の唐之杜から連絡が入る。

 

 

 

『報告よー。些々河を見つけたわ。有明空港を目指して自家用車で移動中…。航空機を使ってどこかへ逃亡する気ね』

 

 

「…有明空港?トランスポート社の航空機は、有明空港には置いていないはず。まさか、他にも奴に協力するツテでもあったのか?」

 

唐之杜の報告に疑問を抱くイグナトフ。

 

 

『恐らくはその通りなのだろうけど、まだ"ツテ"とやらは調べられてないわ。把握したら直ぐにまた連絡するわね?』

 

「ありがとうございます。唐之杜さん」

 

慎導は礼を述べると通信を遮断する。

するとイグナトフは与根原から慎導へと視線を向けると、眉を顰める。

 

 

「…友人がどうなったか教えてやらないとな―――」

 

 

そう口にすると、左手首のデバイスに触れ、とある人物へ連絡を図る。連絡相手は"霜月"だった。

 

 

 

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―――公安局ビル 課長室

 

 

 

 

 

霜月は椅子に腰掛け、デスクのモニターへと視線を向ける。そしてイグナトフから連絡が入ると、すぐさま反応を見せる。

 

 

「与根原を見つけたわね?」

 

『はい。到着時死亡。今から些々河を追います』

 

イグナトフの言葉に、霜月は一掃する。

 

「任務は完了。あとは私に任せなさい」

 

『些々河を逃がす気ですか!?』

 

霜月の台詞が聞こえた慎導は声を荒あげ、霜月に疑問を投げかける。しかし当の霜月は至って冷静。"とにかく、我々の仕事はここまで"と言わんばかりに彼らに戻ってくるようにと言いつける。

 

 

「説明が欲しければ戻りなさい。私たちはここ―――」

 

 

刹那、通信が途切れる音。モニター画面には、イグナトフ、慎導共に"オフライン"になった事を告げるエラーメッセージが表示されていた。意図的に通話を遮断されたのだ。

 

また彼らが命令違反を行うと察した霜月は、かなり苛立った様子で、デスクを思いっきり叩きつける。

 

 

 

「う…っ…このクソバカコンビ!!!」

 

どうしても言うことを聞かない新任監視官に怒りが収まらない。

 

 

 

 

 

 

『手綱は握っていたはずでは?』

 

イグナトフ達とは別に繋がっていた通信相手、その相手がクスクスと微かに笑いながらそう言捨てると、霜月はその相手が映っているカメラ映像に視線を向ける。

 

「んっ!!すぐに止める!手を出さないで!」

 

 

 

 

 

 

 

『"行動こそ私たちのモットー"

…部下が可愛ければ引かせなさい?』

 

「……ッ」

 

『すでに"私の部下"が待機してるわ。勿論、あなたの"お友達"もね?早くしないと、可愛いあなたの部下達が怪我をするわよ?』

 

 

すると、花城は通信を遮断。暗くなったモニターに向かって霜月は拳をぶつけ、怒りを露わにしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「可愛いわけあるか!!」

 

椅子に掛けていた監視官ジャケットを手に取り、すぐにその場から駆け出す。

 

 

 

「舞白……うちの部下、少しくらい怪我させてもいいわよ?」

 

エレベーターに乗り込み、小刻みに足を揺らせば更に怒りを露わにする。しかしそれと同時に、久しぶりに会えるであろう友人に、微かに高揚した気分を感じていた―――

 

 

 

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